NERV本部 発令所
『エヴァ3体のアボトーシス作業は、MAGIシステムの再開後、予定通り行います』
『作業確認。45から60まで省略』
『発令所承認』
 この日、NERV本部発令所では、各部署における能力評価自己検閲が行われていた。技術部では本部のみならず第三新東京市全域を統括するスーパーコンピューターシステム、MAGIの定期検診がその主なメニューとなる。
 オペレーティングステージでは、マヤが定期検診のプログラミングを担当し、リツコが横でそれを監督している。
「なかなか良い感じよ…あ、ちょっと待って、そこ。A−8の方が早いわよ…ちょっと貸して」
 マヤの手際を誉めていたリツコだが、この出来の良い部下でもまだまだいたらない所があるのを発見すると、手本を見せるように席を替わってもらい、タイピングを始めた。
 そのタッチは流れるような、と言う形容詞がふさわしくマヤの数倍は速い。
「…さすが、先輩。六分儀副司令も速かったけど、先輩のはそれ以上だわ…」
 画面上を高速で流れていく文字に、マヤは感嘆の呟きを漏らす。
「どう?MAGIの診察は終わった?」
 そこへ、ミサトが様子を見に現れた。
「大体ね…。午後のテストには間に合わせるわよ」
「さすが、姉さ…リツコ。同じ物が3つも有って大変なのに」
 リツコはミサトの言葉に微笑む。
「あなたこそ、こんな所に居て…。仕事は大丈夫なの?」
「作戦部の戦術能力評価自己検閲はほぼ完了。まあ、その辺は日向君や霧島航空司令の方がほとんどメインで、私は承認印を押すだけだからね」
 ミサトは軽く笑った。その時、電子ブザーが3回鳴り響いた。
「MAGIシステム。3基とも自己診断モードに入りました」
 マヤが報告する。画面上に『検診中』の文字とメーターが現れ、ゲージがじりじりと100%に近づいていく。100%に達した次の瞬間、画面の背景色が緑から青に変わり、MAGIの3台のコンピューターを表すモニターの文字が『終了』に変わる。
「第127次定期検診終了。異常なし』」
「了解、お疲れさま。みんな、テスト開始まで休んで頂戴」
 リツコはマイクを取ると発令所に指示を伝えた。オペレーターたちがそれぞれ背伸びをしたり、肩を叩いたりして疲れをほぐす。それを見ると、リツコは洗面所へ向かった。

 洗面所に蛇口から出しっぱなしの水の音が響いている。
 リツコは手で冷たい水をすくい、顔を洗った。タオルで顔を拭い、意識をしっかりと覚醒させる。
「異常なしか…。 母さんは今日も元気なのに…。私はただ歳をとるだけなのかしらね」
 水気を切った後、リツコは鏡に写る自分の疲れた顔を見て苦笑した。


新世紀エヴァンゲリオン REPLACE
第拾参話 「使徒、侵入」



同日午後 セントラル・ドグマ「シグマ・ユニット」特殊環境実験室

 ジオフロントの中心から、地下数千メートルに渡って伸びる巨大な縦穴、セントラル・ドグマ。この周辺にはいくつもの特殊な環境実験室が点在している。 その一画でレイの声が上がった。
「え…?服を脱ぐんですか?」
 恥ずかしそうに尋ねるレイに、マヤがスピーカーを通して答える。
『ごめんね。ここから先は超クリーンルームだから、外部から余計なものは細菌一つでも持ち込むわけには行かないの。シャワーを浴びて、下着を代えるだけ、って言う訳には、ちょっとね…』
「普段の試験ならこんなに厳重にはしないのに…」
 レイが言うと、今度はリツコが答えた。
『エヴァのテクノロジーも日々進化しているのよ。新しい結果を出すには余計な要素は1つでも入れたくないから…それじゃあ、始めるわよ』
 そう言うと、チルドレンのそれぞれが1人ずつ乗ったエレベーターは少しづつ下に降りていき、停止するたびに特殊なブラシや薬品が使われ、彼らの体に付着した微細なチリや細菌が徹底的に洗浄される。
「熱いっ!こんな熱風使われたら枝毛が出来ちゃう…」
「…くすぐったい」
「痛いじゃないですか。このブラシ力が強すぎますよ…」
 エレベーターは16回も停止し、最後に上下左右前後から強い風を当てて水気を払うと、ようやく扉が開いた。
「つ、疲れました…あれ?着替えが無い?」
 出てきたレイが怪訝な表情で辺りを見回すと、リツコの声がした。
『では全員とも、この部屋を抜けて、その姿のままエントリープラグに入って頂戴』
「ええぇぇ〜〜〜っ!!」
 顔を紅くしてレイは、どことも知れない方向に向かって悲鳴をあげる。
『大丈夫。映像モニターはないわ。…最低限のプライバシーは保護してあるから』
「そ、そういう問題じゃないありません!気持ちの問題ですっ!」
 レイは真っ赤な顔で抗議するが、リツコの声は容赦が無い。
『このテストはプラグスーツの補助無しに、直接肉体からハーモニクスを行うのが主旨なのよ』
 さらにミサトも説得に加わる。
『レイ、命令よ』
「み、ミサトさんまで…絶対に見ないで下さいね」
 第八使徒戦の後、浅間温泉ではお互いに裸を見せ合った関係だが、やはり環境が変わると恥ずかしい事は恥ずかしいらしい。レイは消え入りそうな声で言うと、先へ進んだ。

「…どうしたの?渚君」
 隣の部屋では、先へ進もうとしたシンジが壁に張りつくようにしているカヲルに声を掛けていた。
「何って…決まっているじゃないか。この向こうには綾波君が一糸纏わぬ姿でいるんだよ。何か心に感じるものはないのかい?」
 カヲルは一見やましい事など何も考えていなさそうな天使の笑みでシンジに悪魔のささやきを投げかける。
「…感じるって…何が?」
 しかし、無垢なシンジの心に悪魔のささやきは取り付く事も適わず、シンジはカヲルに近づくとその手を取った。何故か顔を赤くするカヲル。
「ろ、六分儀君?」
「行こう…実験が遅れるとミサトさんや赤木博士が怒るよ」
 シンジはカヲルの事情には斟酌せず、そう言うとカヲルを引きずって歩き始めた。
「ふ、ふふ…君は相変わらず生真面目だね。敬意に値するよ…って、ちょっと痛いよ、六分儀君…」


シグマ・ユニット 特殊環境実験管制室
「各パイロットエントリー準備完了しました」
 数分後、シミュレータープラグに座るチルドレン達。
「テスト、スタート」
 マヤの最終確認を承認し、リツコは実験開始の指示を出した。
 リツコとミサトは実験室の観察用ウィンドウの脇に立って、巨大な実験室内のエヴァ模擬体を見つめる。
『テストスタートします。オートパイロット記録開始』
 巨大な実験室内には、壁から伸びる無数のパイプやコードに繋がれた模擬体と呼ばれる3体の物体があった。模擬体は装甲を外したエヴァ本体の上半身と腕だけで構成されたような、テスト用の素体である。テスト用と言っても実用のエヴァと全く同じ反応を返すようになっており、実用機に組み込む前の新装備や機能のテストに使われる。
「懐かしいね。ボクも昔はこれで訓練をしたものさ…」
 カヲルが呟く。
『シミュレータープラグを挿入します』
 エヴァと同じく脊髄の位置にあるエントリーコネクターにプラグが挿入された。
「システムを模擬体と接続します」
 画面上に模擬体の神経とチルドレンのそれが接続されて行く様子が映し出された。
「シミュレータープラグ、MAGIの制御下に入りました」
 その実験の展開の速さに、ミサトが満足げな笑みを浮かべる。
「速いわね。リツコ様々だわ。初実験の時、1週間もかかったのが嘘みたい」
 過去の実験を思い出してミサトは言った。当時MAGIのオペレーターは未熟で、リツコがチューニングした今のMAGIとは比べ物にならないほど処理が遅かったのだ。
「テスト項目、順調に処理中です」
 マヤのシステム確認に、リツコは隣のディスプレイを見ると、下から上へ超高速でデータがスクロールしてゆく。
「接続終了。テスト開始できます」
「わかったわ」
 リツコは頷くとマイクを手に取った。
『気分はどう?』
 リツコがチルドレン達に尋ねる。
「…何かが違う」
「うん…。いつもと違いますね」
 シンジとレイが答える。が、二人にはそれが具体的には何なのか説明する所までは行かない。
「感覚がおかしいですね。右腕だけはっきりして後は、ぼやけた感じがしますよ」
 さすがにシンクロ率トップのカヲルは何かを感じているらしく、具体的な感想を言葉に出すと共に自分の右腕を見つめる。
『そう…レイ、右手を動かすイメージを描いてみて』
「はい」
 レイはレバーを握って脳裏にいつものようにエヴァと一体化する自分のイメージを思い描く。すると、模擬体の右手が微かに動いた。
『次にカヲル、やってみて』
「はい」
 レイと違い、シンクロ率の高いカヲルの乗る模擬体は肘から先を振ったり、手を握ったり開いたりとはっきりとした動きを示す。
「ふう…理論的には本物のエヴァと同等の動きが出来るはずだけど…なかなかそうは行かないものね。データをMAGIへ。判断を仰いで」
「はい」
 マヤが答え、データを渡されたMAGはが審議中を示す対立モードに移行する。
「ジレンマか…。造った人間の性格が伺えるわね」
 リツコは対立モードの画面を眺めながら呟いた。
「ナオコおば様ね…確か基礎理論を造ったのは」
 同じくモニターを眺めていたミサトがリツコの方を振り向き、リツコの母の名を口に出した。
「ええ。そして、本体を造ったのは副司令。私はシステムを造っただけよ」
「…」
 未だ父を父と呼ばないリツコの態度に、ミサトはわずかに眉をしかめる。その時、MAGIの審議が終わり、議題が決議された。


同時刻 発令所
「確認しているんだな?」
「ええ、一応」
 同じ頃、発令所では冬月と青葉がNERV本部内で発見された異変をチェックしていた。
「3日前に搬入されたパーツです。ここですね…。変質しているのは」
「第87タンパク壁か…。」
 モニターにはヘックスと呼ばれる六角形のマスで本部の構造が表示されているが、その無数のマスの1部分だけが、赤く表示されていた。
「拡大すると染みの様な物が有ります。何でしょうね…。これ?」
 壁にはカビに似た紫色の染みが広がっている。
「酸素の浸食ではないかと思われます。温度と伝導率が若干変化しています。無菌室の劣化が良く有るんですよ、最近…。」
 隣に座っている日向が口だけ挟む。
「工期が60日近く圧縮されてますから…。また、気泡が混ざっていたんでしょう。…ずさんですよ。B棟の工事は」
 青葉は怒った様に言う。 タンパク壁はその素材自体が呼吸して無菌室内の気体成分を調節する重要なパーツであり、それがしょっちゅう劣化するようでは無菌状態を保つのが難しくなるからだ。
「そこは使徒が現れてからの工事だからな…」
「無理ないですよ。みんな疲れてますからね」
「明日までに処理しておこう。六分儀辺りが見れば手ぬるいと思うかもしれんがな」
「「了解」」
 青葉と日向は命令を復唱し、第87タンパク壁を映したモニターを切り替え、予備のタンパク壁の在庫と、無人作業機ポリソームのスケジュールのチェックに掛かり始めた。
「そうだ。マコト、下のシグマ・ユニットの実験室に、今の事を伝えてくれないか?すぐ近くだろ?」
「ああ、そうだな。一応言っておく方がいいか」
 日向は内線電話を取ると実験室への直通ダイアルを回し始めた。

 そのころ、誰も見るもののいなくなった第87タンパク壁では、壁のつなぎ目から紫色の染みが隣のブロックへと広がりはじめていた。


シグマ・ユニット 特殊環境実験管制室
「また水漏れ…?」
「いえ、浸食だそうです。この上のタンパク壁」
 不機嫌そうな表情で振り返ったリツコに、マヤは日向からかかってきた電話の受話器を置いて報告した。
「まいったわね…。テストに支障は?」
「今の所はまだなにも」
「じゃあ、続けましょう。このテストはおいそれと中断する訳にはいかないわ。準備に手間が掛かるしね」 「そうですね。了解」
 リツコは決定を伝えると、実験室の模擬体に視線を戻した。
「シンクロ位置、ハーモニクス共に正常値」
「シミュレータープラグを模擬体経由で、エヴァ本体と接続します。エヴァ零号機コンタクト確認」
 接続と同時に、モニタにケージに拘束されている零号機の目に光が点った。
「ATフィールド、出力2ヨクトで発生します」
 零号機がATフィールドを発生させたその瞬間、まるでそれに呼応したかのように第87タンパク壁のシミが赤く輝き出した。
 耳障りな警報音と共にモニターを『ALERT』の赤い文字が埋め尽くし、その光が監視室を赤く染める。
「どうしたのっ!?」
 リツコがマヤのいるオペレーター席に駆け寄り尋ねる。
「シグマ・ユニットに汚染警報発令!第87タンパク壁が劣化!!発熱しています!」
 マヤが焦りの色を浮かべて振り返り、リツコに報告する。同時に他のオペレーター達も異常を確認し、モニタリングに全力を注ぎ始めた。
「第6パイプに異常発生!タンパク壁の浸食部が増殖しています!爆発的スピードです!」
 マヤのモニターに映し出されるヘックスが、凄まじい速さで赤に染められていき、たちまち全体へ波及していく。
「実験中止っ!!第六パイプを緊急閉鎖!!」
「はいっ!!」
 リツコは素早く判断を下し、マヤは次々にコマンドを入力して第六パイプの隔壁を落としていく。無数の隔壁により第六パイプは周囲から切り離され、更に隣接する第5、第7パイプの隔壁も落とされた。
「6−0から6−41、閉鎖されました!…!6−42に浸食が発生!ダメです!浸食は壁伝いに進行しています!!」
 マヤはひきつったような顔で報告を続け、リツコの顔は蒼白になっていた。 そこへミサトがアドバイスを出す。
「全部のポリソームを集結させて。浸食部が侵入する前にレーザーでパイプを切断するの。物理的に隔離するしかないわ」
 ミサトの言葉に頷き、リツコは第六パイプの周囲にポリソームを集結させた。
「浸食部6−58に到達!」
 マヤが報告する。が、その時にはポリソームのレーザーが第六パイプを切断した。モニタの中を切断されたパイプの一部がLCLの中をゆっくりと沈降していくのを確認し、管制室の人々がややほっとした表情で顔を見合わせた時、それは起こった。
『キャァァァッ!!』
「「レイ!?」」
 その悲鳴にミサトとリツコがハッとし、レイの模擬体に顔を向ける。彼女たちの目の前で、巨大な模擬体の右腕が勝手に動き出し、壁を叩きつけた。その肩の部分に赤く輝く染みが見える。
「まさか…!?」
 リツコは窓から離れるとマヤの元へ駆け寄り、椅子に手をかけてモニターを見入る。 その向こうで、模擬体が苦痛に体を震わせ、もがき動く。肩に出来た染みは徐々に拡大し、右上腕部全体を侵し始めていた。
「初号模擬体右腕部に浸食部発生!模擬体の活水システムを侵しています!!」
 ついで、実験室を覆うタンパク壁のあちこちに染みが発生し、急速に拡大し始めた。全てのモニターに緊急事態を表わす『EMERGENCY』の文字が点滅する。
「何てこと。経水感染だわ!全プラグを緊急射出!ポリソームをここへ集結!急いでっ!!」
「はいっ!」
 模擬体のシミュレータープラグが射出され、地底の第二芦ノ湖へ続く緊急脱出トンネルに吸い出される。直後、スクリュー全開で下降してきたポリソームがレーザーを模擬体の浸食部に浴びせ始めた。気泡が立ち上り、高熱で浸食部が破壊されていく。
しかし、それも一瞬の事で、浸食部表面にオレンジ色の輝きが発生し、レーザーを弾き返し始めた。
「ATフィールド!?」
「まさか!?」
 目の前の信じがたい現象に目を見張るリツコとミサト。
「マヤっ!分析急いで!」
「はいっ!…パターン青っ!間違いなく使徒ですっ!!」
「何てこと…!」
 リツコが蒼白な顔で絞り出すように言う。その間に初号だけでなく、零号、弐号模擬体も次々に浸食され、真っ赤な輝きを発して暴れ始めた。


発令所
 発令所のあらゆるモニターにも『非常事態』と『EMERGENCY』の文字が点滅し、けたたましい警報が鳴り響いていた。
 冬月のデスクに取り付けられた電話が鳴り響いた。手を伸ばし、受話器を取る。相手はミサトだった。
「私だ。…何?使徒だと!?侵入を許したのか!!」
『…申し訳有りません』
 冬月の叱責に電話の向こうのミサトの声は暗い。
「責任問題は後だ。セントラル・ドグマを物理閉鎖、シグマ・ユニットと隔離する。君たちは直ちに待避しろ」
『了解』
 受話器を置くと、冬月は決定した処置の実施を青葉と日向に指示した。二人は命令を復唱し、直ちに作業に掛かる。その時、冬月の背後にリフトに乗ったゲンドウが降りてきた。 その手には緊急通話用の赤い受話器が握られている。
「…解っている。よろしく頼む」
 そう言うとゲンドウはオペレーターステージを見渡す場所に立って叫んだ。
「日向二尉、直ちに警報を止めろ!」
「はっ!?」
 意外な命令に戸惑う日向を、ゲンドウが「復唱はどうした!?」と怒鳴りつける。
「り、了解!警報、停止します」
 戸惑いながら日向が警報を止め、発令所に静寂が戻ってきた。
「誤報、探知機のミスだ。日本政府と『委員会』にはそう伝えたまえ」
「は、はい」
 やはり、同じように戸惑いながら、青葉は脇にあるホットラインの受話器を取って、既に関係各省へ行った報告の訂正を行う。
「今、使徒が侵入したなどと言う事が『委員会』に漏れてはまずいですからな」
 ゲンドウが冬月に小声で言うと、冬月も頷いた。
「ああ。彼らの介入だけは阻止せねばならん」
 その傍で技術部オペレーター達は報告を続けている。
「汚染区域はさらに下降。実験区域からシグマ・ユニット全域へ広がっています!」
 メインディスプレイに映る浸食部の赤く染まった区域は実験室を完全に制圧し、徐々に周囲に広がっていた。
「場所がまずいぞ…」
 冬月はゲンドウの耳に口を近づけて小声で話す。
「ええ、『アダム』に近すぎますな」
 ゲンドウも他の者に聞こえない様に小声で言う。
「汚染はシグマ・ユニットまでで押さえろ。最悪の場合は完全破棄もやむを得ない。エヴァは?」
「第7ケイジにて待機。しかし、パイロットが…」
 日向が報告すると、ゲンドウは首を横に振った。
「パイロットを待つ必要は無い。すぐジオフロント内へ射出してくれ」
「「えっ!?」」
 日向と青葉が驚きに目を見開き、司令席の方へ椅子ごと向き直った。
「エヴァへの汚染波及だけは絶対阻止せねばならん。緊急避難だ」
「しかし、エヴァ無しでは、使徒を物理的に殲滅出来ませんが」
 日向が今いる作戦部の代表として進言すると、ゲンドウは首を横に振った。
「おそらく、こいつはエヴァでは相手にならん。今までとは異質の相手だからな。急いでくれ」
「はいっ!」
 3機のエヴァは無人のままジオフロントの地表面へ射出されていく。
「しかし、パイロットはどうする?地底湖へ脱出したようだが…」
 冬月が尋ねると、ゲンドウは首を縦に振った。
「見殺しには出来ません。と言って、汚染の危機もあります。私が救出部隊を率いて出ます」
「わかった。気を付けてな」


同時刻 セントラル・ドグマ点検用ゴンドラ
 その時、加持はセントラル・ドグマの自動警戒機構の点検巡回に当たっていた。この辺りはセキュリティレベルが高いため、仕事は彼一人で行わなくてはならない。
 警報が鳴り響いたのは、彼が対人センサーのチェックをしていた時だった。
「うわっ…誤操作か!?…いや、違うな。この音は…特級侵入者警戒警報じゃないか…!」
 使徒が本部へ侵攻したとき以外発令されない事になっている警報。その意味の重大さに気が付いて加持が上を見た時、彼は上部の壁一面を覆い尽くすような赤い輝きを目にした。
「なんてこった…袋のネズミじゃないか」
 上部への脱出口をふさがれた加持は唖然として呟いた。


同時刻 実験管制室
 すでに使徒は管制室の窓枠まで浸食してきていた。
「このボックスは破棄します!総員待避!」
 冬月に繋いでいた受話器を置くとミサトは叫ぶ。 その声にオペレーターたちは書類をかき集め、小脇に抱えると、慌てて管制室を脱出し始めた。
「行くわよ、リツコっ!」
「ええ…!」
 何を思ってか、暴れまわる模擬体をにらんでいたリツコだが、ミサトに促され実験室を出た。最後にマヤが立ち上がり、駆け出そうとして、ふと端末に目をやるとある事に気が付きそれを掴んだ。その瞬間、模擬体の腕が窓ガラスを叩き、浸食によってもろくなったガラスはひとたまりも無く砕け散った。轟音と共に大量のLCLが押し寄せる。
「きゃあっ!?」
「マヤちゃん、早くっ!」
 ミサトは大事そうに端末を抱えて駆け寄ってきたマヤの腕を取り、通路に引っ張り出すとドアの横のプラスチックカバーに覆われた緊急閉鎖ボタンを、カバーを叩き割るようにして押した。ドアがロックされ、更に二重の隔壁が降りる。その向こうでLCLがドアにぶつかり、部屋を満たしていく音が響いていた。
『シグマ・ユニットをEフロアより隔離します。』
 ミサトたちが通路を走り抜けていく傍からアナウンスと共に隔壁が降り、シグマ・ユニットに繋がるパイプラインが全て遮断される。 彼女たちが最後のハッチを抜けると同時にシグマ・ユニットへのフレキシブル・デッキが全て外された。
『全隔壁を閉鎖。該当地区の総員待避完了』
 最後に振り返ったリツコが見たものは、全体に赤い輝きを散りばめたシグマ・ユニットの外観だった。


発令所

『セントラル・ドグマは完全閉鎖』
『シグマ・ユニットは侵入物に占拠されました』
 報告を聞きながら冬月は一人ごちた。
「さて、エヴァ無しで使徒に対してどう攻めるか…?」
 そこへ、命からがら地下から脱出してきたミサト、リツコ、マヤが発令所へ到着した。
「無事だったか。危ない所だったな」
 冬月が言うと、リツコが頷いた。
「はい。もう少し避難が遅れていたら、脱出不能になる所でしたが…」
 赤々と輝くシグマ・ユニットの禍禍しい光景を思い出し、怖気を奮うリツコ。
「それよりも、気が付いた事があるんです!司令、それに先輩も、これを見てください!」
 マヤが大事に抱えてきた端末を広げ、スイッチを入れる。
「ここを見てください。ここはLCLと純水の境目で、酸素の多い所なんですが、ここを境に侵攻が止まっています」
「なるほど…好みがはっきりしてるわね」
 リツコが言う様に、使徒のシグマ・ユニットの浸食状況を映すマヤの端末のディスプレイは、酸素が多い場所で使徒の侵攻が停止している事を示していた。
「そこだけじゃありませんね。無菌状態維持の為、オゾンを噴出している所は汚染されていません」
 青葉がデータを解析する、
「つまり、酸素に弱いって事?」
「らしいわね」
 振り返ったミサトに頷くリツコ。
「日向君、域内の全バルブを解放。シグマ・ユニット全体にオゾンを注入して」
「了解!」
 日向はコマンドを打ち込み、空調施設を通じてシグマ・ユニットへオゾンを送り込み始めた。ちなみに、これは本来招かざる侵入者を麻痺性ガスなどで無力化するための設備なので、まさにこの作戦に打ってつけのものと言える。
「オゾン注入開始。濃度増加しています」
 日向が報告すると、シグマ・ユニット各部を覆う赤い輝きがオゾンに触れた場所から薄れていき、やがて消える様が映し出された。
「おお、効いてる…」
 オゾンは実験室のLCLの中にも吹き込まれ、模擬体や壁を侵している赤い輝きが消えていく。
「いけるか…?」
 冬月が呟くと、希望の有りそうな報告が届き始めた。
「0Aと0Bは回復しそうです」
「パイプ周り正常値に戻りました」
 画面上の赤いヘックスが1つ、また一つと青に戻り、中心部を除く殆どが正常に復帰した事を示す青で制圧された。
「やはり、中心部は強いですね」
「よし、オゾンを増やせ!!」
 止めを刺そうと、冬月はオゾン濃度を上げるよう命令した。更に勢いを増すオゾンの中、最初に浸食された第87タンパク壁とその周囲のみに赤が残り、制圧も時間の問題と思われた。しかし…
「…変ね」
 リツコが呟いた。最後の赤がなかなか消えない。
「あれ?増えてるぞ!?」
 青葉が言った。赤が再び勢力を盛り返している。
「変です!発熱が高まってます!」
 日向が報告した。
「汚染域、また拡大しています!」
「ダメです。まるで効果が無くなりました」
 青葉とマヤのモニターに映る浸食部が、再び爆発的に拡大を開始した。それどころか、最初の大増殖よりも進行速度が速く、見る間に青が赤に塗りつぶされていく。
「今度はオゾンをどんどん吸っています!!」
「オゾン、止めて!!」
 日向の報告に、ハッとリツコが何かに気づき慌てて指示を出す。マヤが感に絶えない、と言った様子で呟いた。
「…先輩、これ…!」
「凄い…。進化しているんだわ」
 その間にも使徒は十分大量にシグマ・ユニット内に充満したオゾンを吸い尽くし、それまで侵攻できなかったエリアすら越えて縦横無尽に繁殖しつづけていた。


セントラル・ドグマ

「また増えてきたな…」
 ガスマスクを外して加持は呟いた。辺りにはまだオゾンの刺激臭が漂っている。最初にオゾンが吹き出してきた時は何事かと思ったものだが。
「いかんな。さっきより増えていやがる」
 ガスマスクでオゾンを避けているうちに頭上の赤い光は一時消えかかっていたが、今は最初に倍する勢いでシャフトの内壁を浸食し、次第に彼のいるゴンドラに迫ってくる。
「どうにか逃げ道を探さないと俺もヤバいな…」
 加持はゴンドラを捨て、シャフトの継ぎ目に足を掛けた。二十メートルほど上に共同溝が伸びている。そこまで手がかりのほとんど無い壁面を登るしかない。落ちれば数百メートルを落下して死ぬ事になるが、他に手はなかった。加持はナイフを取り出し、壁面に打ち込んだ。
 その時、彼の頭上で、黄色の光が複雑な網目模様を描いて走った。
「…なんだ?」


発令所
 突然、中央モニターにサンドストームが走り、同時に発令所に警報が鳴り響いた。
「電子的侵入警報!?どうしたのっ!?」
 リツコが叫んだ。
「サブ・コンピューターがハッキングを受けています!侵入者不明!」
「こんな時にっ!くそっ、Cモードで対応!」
 青葉、日向、マヤの手が忙しく動き始め、ハッカーに対する電子的防御手段を整えていく。
「疑似エントリー展開!!」
「疑似エントリー、回避されます!!」
 侵入者に対し、目的のシステムにたどり着いたように見せかける疑似エントリーをぶつけるが、それらはわずか数秒で見破られ、突破されていく。
「逆探まで18秒!!ファイアウォールを展開しろ!逆探成功まで時間を稼げ!」
「ダメ!ファイアウォールが突破されたわ!!」
「疑似エントリー、第二波を展開!!」
 見えない相手との電子上の戦いは白熱の度合いを増して行くが、オペレーターたちの方が押され気味だ。
「疑似エントリー第二波も回避されました!…くそ、こりゃあ、人間技じゃないぞっ!」
 呟く日向は恐ろしいキータッチの速さでコマンドを打ち込んでいくが、相手の速度がそれを上回り追いつけない。
「逆探に成功!この施設内です!…E棟の地下…シグマ・ユニットだって!?」
 青葉が叫んだ。その時、モニタの映像が回復し、シグマ・ユニットの映像が映し出された。模擬体や壁を覆う輝きが赤から黄色に変わり、複雑な模様を描いている。
「これって…コンピュータのLSIに似てませんか?」
 マヤが言った。彼女の言う通り、模擬体を中心に広がっていく輝きは、コンピュータに内蔵される大規模集積回路と良く似た模様を描いている。
「いいえ…ちがうわ。これは、コンピューターその物よ」
 リツコが言った。模擬体をトライアルCPUとし、周囲の壁がメモリとなっている巨大なコンピュータの姿が彼女の目にははっきりと見えていた。
「疑似エントリー展開…駄目です!突破されました!」
 青葉が絶望的な叫びを漏らす。もう疑似エントリーの予備はなく、これ以上は通用しそうにない。 それを聞いてミサトが言った。
「シグマ・ユニットからの全てのケーブルを切断」
 それをすぐに実行に移そうとした日向だが、コマンドを叩き込んですぐにそれが出来ない事に気が付く。
「ダメですっ!!命令を受け付けませんっ!」
「ポリソーム展開!レーザー撃ち込んで」
「ケーブル周辺にATフィールド発生!効果ありません!」
 マヤがそれも出来ないと報告し、ミサトの表情に苛立ちの色が浮かぶ。その間にも状況は悪化しつづけていた。
「保安部のメインデータベースにアクセスしています!パスワードを走査中!」
 青葉が叫ぶ。
「12桁…16桁…Dワードクリア!侵入者、データベースへアクセス!」
 侵入により青葉のモニターに映し出された保安部データベースが緑から赤へ急激に染まっていく。
「手も足も出ないのか…奴の目的はなんだ…?」
 冬月は焦りの表情を浮かべ、席から立ち上がディスプレイを睨んだ。
「メインパスを探っています!こ、このコードは…!まずい、奴はMAGIに侵入するつもりです!」
 青葉の悲鳴の様な叫びに、発令所全員の動きが一瞬凍り付いた。
 何故なら、MAGIを乗っ取られるという事はNERV本部を乗っ取られる事と同義だからだ。


NEON GENESIS EVANGELION
OTHERSIDE STORY "REPLACE"

EPISODE:13 Lay an ambush

第二芦ノ湖 湖畔
 センサーを持ち込んだ計測の結果は、汚染、異常ともに無しだった。水深70メートルの底に沈むシミュレータープラグ引き上げのため、大型クレーン車が湖を横切る自動車橋の上に停車する。
「こちら六分儀。チルドレンたちの救出作業を開始します…司令?どうしました?冬月先生?」
 電話が通じない事にゲンドウは不審の思いを抱く。またしても破壊工作か?
 だが、電話からは雑音が流れており、停電ではないらしい。
「一体何事だ…」
 ゲンドウが再度電話を掛け直そうとした時、かすかな声が彼の耳に入った。
『…すけて…たす…て…』
 それは女性の声だった。しかも、助けを求めているらしい。
「もしもし?おい、どうした?」
 ゲンドウが呼びかけると電話は再び沈黙した。
「聞き違いか?いったいどうなってる、この電話は!」
 彼が声を荒げた時、今度は声がはっきりと聞こえてきた。それを聞いたゲンドウの顔が見る見る蒼白になる。
『た…すけて…助けて、あなた…』
「お、お前…!!」
 聞き覚えのある、忘れようとて忘れられない声が電話の向こうから聞こえてくる。
『あなた…あの娘に…渡して…私の…』
「わかった。皆まで言うな。必ずお前の言う通りにする」
『…ありがとう』
 通話の切れた電話を握り締め、ゲンドウは作業班の一人に「急用で本部へ戻る。後は任せた」と言い、返事も聞かないうちにジープに飛び乗りアクセルを吹かした。
「待っていろ、ナオコ…今、行く!!」


発令所
「やむをえん。電源をカットする!」
 冬月は遂に最後の手段に出る事を決意した。
「カウント、どうぞ!!」
 青葉、日向、マヤがコンソールの引出から電源スイッチのキーを取りだし、キーボード横の鍵穴に付いたセフティーカバーを外して挿し込んだ。
「3、2、1!電源カット!」
 日向のカウントで3人は同時にキーをひねった。しかし、何の変化も起こらない。
「で、電源が切れません!」
 振り返って日向は司令席に叫ぶ。
「くそ…電源制御までのっとられたか!」
「使徒、更に侵入!『メルキオール』に接触しました!」
 電源が切れないためにオペレート業務に戻り、三人は必死の形相でキーボードを叩き抵抗する。
「ダメです!使徒に乗っ取られます!」
 次々と「メルキオール」を構成するメモリ領域が青から赤に変わってゆく。
「『メルキオール』、使徒にリプログラムされました!」
 オペレーターたちの必死の健闘も空しく、遂にMAGIを構成する三基のコンピューターの内の一基、「メルキオール」が使徒に乗っ取られた。
「人工知能『メルキオール』より、本部の自爆が提訴されました」
 MAGIの人工音声が流す決定的なメッセージに、ミサトとリツコがハッと顔を上げ、MAGIの審議モニターを見上げる。
「『メルキオール』…提訴、賛成。『バルタザール』…否決。『カスパー』…否決。自爆提案は否決されました」  まだ乗っ取られていない「バルタザール」「カスパー」の二基が否決票を投じ、本部自爆の提訴を退けた。自爆はあまりにも重大な提案なので、三基が一致しない限りは受理される事はない。しかし、今度は「メルキオール」から「バルタザール」へ通じるラインが赤く染まり、「バルタザール」のメモリ領域を侵していく。 「こ、今度は『メルキオール』が『バルタザール』をハッキングしています!!」
 オペレーターたちは必死にハッキング防止プログラムをぶつけ、抵抗を図るが、「バルタザール」のブロックは刻一刻と赤に変わってゆく。
「くっ!!早過ぎる!」
「なんて、演算速度だ!」
 空調が利いているにもかかわらず、日向、青葉、マヤの額には汗が浮かびコンソールに垂れ落ちる。立て続けの高速キータッチで指が腫れ上がり、青葉などは爪が割れ血が出ているが、それでも彼らは抵抗を止めない。
 ミサトは何も出来ない己の無力さに唇をかみ締め、リツコも打つ手が見つからず、蒼白な顔でモニタを見つめている。冬月は己が焦りを見せては部下を動揺させるという職業倫理から、どうにか泰然たる態度を保とうしているが、右手の指は司令席の肘掛けを苛だたしげに叩いていた。
「バルタザール」が半分近く使徒にリプログラミングされた時、ゲンドウの声が響いた。
「ロジックモードを変更しろ!シンクロコードを遅くするんだ!」
「…!シンクロコードを15秒単位に変更!」
 ゲンドウの言葉にヒントを得たリツコが指示する。
「…了解!」
 マヤが操作するとMAGIの処理速度が落ち、それは同時に使徒の侵攻を減速させた。
「よし…これでしばらく時間が稼げるな」
 戻ってきたゲンドウが肩で息をしながら言った。
「六分儀…何故この状況が分かったんだ?」
 驚いた冬月が尋ねる。
「話は後です…どのくらい持ちそうだ?」
 ゲンドウが、青葉に尋ねる。
「今までのスピードから見て、2時間くらいは…」
「そうか。わかった。なんとしてもMAGIを守らなくては…」
(さすがね…まだあんな手があったなんて)
 リツコはゲンドウの呟きを聞きながら、肩を落として、まだ自分が未熟である事を痛感していた。


セントラル・ドグマ 共同溝
 ナイフ一本で20メートルを登り切り、メインシャフトから横に伸びる共同溝に入った加持は一息つくと入り口から首だけ出し、上を見上げた。そこには相変わらず黄色い輝きが複雑なパターンを描いている。が、これ以上は侵攻してくる気が無いらしい。
「使徒ならターミナル・ドグマへ一気に降りてくると思ったが…一体何が狙いだ、奴は」
 加持は考え込んだ。1つ、自分が侵入者ならどう行動するかを考えてみる。
(侵入者にとってまず重要なのは…そう、気づかれない事だ。では、気づかれたらどうするか?)
 加持の思考は続く。
(気づかれたら…再度身を隠す。それに邪魔なのは…監視システムとガードマンだ…)
 この場合、監視システムはMAGI、ガードマンはエヴァに当たるな、と考えた所で加持は気が付いた。
(まずい…!ここには監視システムとガードマンをまとめて葬り去る手段があるじゃないか!こうしちゃおれんぞ!)
 加持は慌てて立ち上がり、共同溝の奥へ向かって走り始めた。


発令所

 発令所では、幹部が顔を突き合わせて現状についての状況確認が行われていた。まずゲンドウが端末に画像を表示させた。細胞の模式図に似ている。
「恐らく、今回の使徒は細菌サイズのものだと考えられる…ただ、タンパク壁だけでなくその他の無機素材をも材料に増殖した事を考えると、機能的には細菌よりも分子機械に近いものかもしれないが。しかも、このサイズでもコアは存在し、活動時に見られる光は彼らのコアの発光と思われる」
 ゲンドウが模式図の、通常の細胞なら核に当たる部分を注して言った。続いて、リツコが後を引き取って説明する。
「その個体が集まって群を作り、この短時間で知能回路の形成に至るまで、爆発的な進化を遂げています」
 リツコはテーブルに使徒によって侵され、巨大CPUと化した模擬体の写真を出して説明した。
「進化か・・・。」
 腕を組んで唸る冬月。
「はい。彼らは常に自分自身を変化させ、いかなる状況にも対処出来るシステムを模索しています」
 ゲンドウが答える。
「まさに、生物の生きるシステムそのものだな…」
 これまでの使徒ならコアという目に見える弱点があり、そこを突く事で倒す事が出来た。だが、決まった形を持たず、しかもこれだけ膨大な数に膨れ上がった使徒を相手に、どんな手段が通じるだろう?発令所の中に冷え冷えとした雰囲気が漂う。
「自己の弱点を克服…しかも、1つでも生き残れば今まで以上の速度で再増殖。進化を続ける目標に対して有効な手段なんて…あるのかしら」
 マヤが呆然と呟く。
「とにかく、MAGIの制御を奪還しない限り、奴を倒すのは無理ね」
 リツコが言う。
「彼らはシグマ・ユニットと一体化して自分を超巨大コンピュータ化している。しかし、シグマ・ユニットが他と切り離されている以上、MAGIを乗っ取らない限り彼らはNERV全体を支配する事は出来ないわけだ」 「パイロットの救出後、エヴァによってシグマ・ユニットを物理的に破壊してはいかがでしょうか」
 ゲンドウの言葉にミサトが提案する。
「それは無意味だ。彼らがシグマ・ユニットと一体化している以上、『消滅』させるしかない。あれだけ巨大なユニットを消滅させるにはメガトン級のN2爆弾が核融合爆弾でも持ち込まないと無理だ」
 冬月が言った。
「そんなものを使ったら本部ごと吹き飛んでしまいますね…」
 日向が言った。
「手が無いわけではない」
 その時、ゲンドウが言った。
「何?本当か、六分儀」
 冬月が身を乗り出すと、ゲンドウは頷き、端末に今度は何故か生物の進化図を呼び出した。
「この地球の過去において、生物相の7〜8割、時には9割もの生物が短期間に絶滅した、いわゆる『大絶滅』があった事は良く知られている。一番有名なのは恐竜の大絶滅だな。この時の原因は隕石衝突で、それが俗に『ファーストインパクト』としてセカンドインパクトと対比される事は『定説』となっている」
 発令所の面々は頷いた。冬月やミサトは「定説」と言う言葉に込められたゲンドウの皮肉を感じ取って苦笑する。ファーストインパクトが恐竜絶滅の事を指すのではない事は、二人とも良く知っていたからだ。
「無論隕石激突に代表される大災害が大絶滅の一因となる事は否定できない。しかし、大絶滅が起こる真の原因は、その生物相が進化の限界に達した事にある」
 そこで、冬月、リツコ、ミサトはゲンドウの言わんとすることに気が付いた。
「奴を進化させてやるのか、限界まで」
 冬月が確認すると、ゲンドウは頷いた。
「進化の限界が行きつく先は種としての死…使徒がカスパーに到達すると共にこちらからカスパーを逆ハックし、進化促進プログラムを送り込み奴を自滅させます」
「危険ですね…同時に使徒に対して、防壁を解放する事になります」
 リツコが危惧を表明する。
「それに、プログラムの作成に時間が掛かります。残された時間はあまりに少な過ぎますが…」
 リツコの危惧に対し、ゲンドウは頷いた。
「赤木君…いや、リツコ。お前に見せたいものがある。付いて来なさい」
「え?は、はい…」
 父としての顔に戻るゲンドウに対し、リツコは反感を抱いているはずなのに素直に頷いてしまう。
「葛城君、伊吹君、それに青葉君と日向君も来たまえ。人手はいくらでも欲しいからな」
「「「はいっ!」」」


発令所 MAGIステージ
 ゲンドウがやってきたのは、普段、日向らオペレーターたちが勤務するオペレートステージの1段下にあるMAGIステージだった。
「少し待て」
 ゲンドウは言うと、「カスパー」の横にある小さな蓋を開け、中にあるボタンを押した。すると、「カスパー」本体が上にせり上がり、ハッチが現れた。
「これは…」
 知らなかった機能にリツコが驚く。ゲンドウは首から下げた鍵を取り出し、ハッチを開けた。
「みんな、入れ」  ゲンドウが手招きをする。それに応じ、リツコとオペレーターたちは身をかがめ「カスパー」の中へ入り込んだ。
「凄い…なんですか、これは…」v  マヤが「カスパー」の内部にびっしりと張り付けられた無数のメモ用紙に驚く。
「…これって…母さんの字?」
 リツコは一枚のメモを取り上げ、そこに記された字を見て呟く。今は亡き母の字に、何が書かれているのか興味を覚えて読み進めたリツコは、驚きに目を見張った。
「す、凄い!裏コードだわ!『トリニティ』の裏コードですよ。これ!」
 リツコ同様にその正体を看破したマヤが興奮して叫ぶ。「トリニティ」はMAGIの専用コンピュータ言語だ。
「と言う事は…これは全部MAGIの裏技大全集っていうこと?何故こんなものが…」
 リツコが言った。ただでさえ世界最強のコンピュータであるMAGI。その裏コードとは、いわばコンピュータの世界における最終兵器。これを使えば世界のコンピュータをすべて支配下に置く事も可能なのだ。
v 「これはな…ナオコがここの開発中に残したものだ」
 答えを口にしたのはゲンドウだった。
「母さんが…?」
 リツコが言うと、ゲンドウは頷いた。
「ナオコの遺言でな…何時かこれが必要になる時を考えて、ここに封じておけと。その時が来たら、この知識をお前に受け継がせる、と」
「母さんが…そんなことを」
 リツコはメモ用紙を握り締め、呟くように言った。
「リツコに伊吹君はメモに目を通しておいてくれ。では、さっそく掛かるぞ。青葉君、工具箱を」
「はっ」
 リツコとマヤがメモに書かれた裏コードを読み進める間、ゲンドウと青葉、日向、それにミサトは工具で「カスパー」のメインCPUを露出させる作業を続けていた。
「日向君…そこのレンチ取って」
「はい…」
 仰向けで作業するミサトの横で、リツコがメモの内容をスクリプト化して端末へ取り込んでいる。それを見てミサトはリツコに言った。
「学生時代を思い出すわね」
「そうね…よく、夜通しこうやって二人で機械をいじった事があったわね」
 ガレージの中、リツコが計算したデータを元にミサトが愛車をいじっていた光景が脳裏にありありと浮かぶ。 「懐かしいわ…っと、これで終わりかしら?」
 ミサトがボルトを外し、カバーを開けるとラグビーボールを二回りほど大きくしたような形の「カスパー」のメインCPUが現れた。
「よし、後はここを…」
 ゲンドウがレバーを引くと、最後のカバーが二つに割れ、中からCPU本体が露出した。
「これが『カスパー』、いや、MAGIのCPU本体か…話には聞いていたが…」
「実際に見るとやはりショックがあるな」
 有機素材で作られた第七世代コンピュータ「MAGI」、そのメインCPUは人間の大脳そのままだった。違いと言えば二回り大きい事、表面に外部端子がいくつか付いている事ぐらいだ。
「あとは任せたぞ。リツ…いや、赤木君」
 ゲンドウの言葉にリツコはきっぱりと頷いた。
「ええ、御任せください」


セントラル・ドグマ上層部
 途中使徒に浸食された通路を迂回したりして、かなりの遠回りを強いられたものの、加持は目的の部屋へたどり着いていた。
「まだか…危ない所だな。いや、これは…」
 加持が目指していたその装置の側面には三つのランプがあり、一つが赤に、残る二つは青に輝いていた。
「…拙い」
 加持は急いで工具を取り出し、機械に取り付いた。カバーをはがす最中に赤のランプが二つに変わる。
「早い!…間に合え!」
 冷や汗を流しながら加持はその複雑極まる装置に挑んだ。


発令所

 発令所ではシンクロコードの変更にもかかわらず、再び侵攻速度を上げ始めた使徒の攻勢が続き、オペレーターたちが押され始めていた。マヤがリツコのサポートに回った穴はゲンドウが塞ぎ、指先の怪我がひどくなったためオペレートが思うように行かない青葉、日向の分までカバーする活躍を見せていたが、劣勢は否めなかった。
「リツコっ!姉さん!まだなのっ!」
 ミサトが叫ぶが、リツコは何も応えずキーボードを超高速で打ち、マヤもそれをサポートする。
「来たっ!バルタザールがリプログラミングされました!」
 指先の痛みをこらえて青葉が報告する。
「人工知能『メルキオール』より本部自爆が提訴されました」
 二度目となる決定的な決議が出された事を人工音声が告げる。MAGIが審議モードに入り、程なく結果が出た。
「『メルキオール』…提訴、賛成。『バルタザール』…賛成。『カスパー』…否決。自爆提案は否決されました」
 乗っ取られた二基が賛成票を投じるが、「カスパー」が最後の砦となり反対票を投じ提案を否決する。ならば、使徒が黙っているはずが無かった」
「バルタザール、更にカスパーに侵入!」
「押されているぞ!」
「何て、速度だ・・・」
 ゲンドウは必死にオペレーティングしながらその使徒側の演算速度の速さに驚愕する。
「このままじゃ…!」
 青葉が蒼白な顔で呟く。すで彼のキーボードは割れた爪から流れ出る血で真っ赤になっていた。
「やられる…!カスパー、あと18秒後に乗っ取られますっ!」
 真っ赤に腫れ上がり感覚すらない指で、それでもその18秒をコンマ1秒でも伸ばすべく、日向がキーボードを叩く。
「姉さんっ!!急いでっ!!!」
 ミサトが叫ぶ。
 リツコの顔にも焦りの色が浮かぶ。
「くっ…ぎりぎりだわ」
「カスパー」は既にメモリ領域の1/2を侵攻され、赤いブロックに変わっている。
「間に…合うか…!?」
 リツコの額には汗が流れ、茶色の髪の毛が額に張りついていた。マヤも疲労の汗だけでなく冷や汗でずぶぬれに近い状態だ。
「リプログラミング終了まで、5秒!」
「カスパー」のメモリ領域が更に2/3まで赤に変わる。
「マヤっ!!」
「出来ましたっ!!」
「あと、2秒…!1秒…!」
 遂に、残り数ブロック。
「押してっ!!」
「はいっ!!」
 その叫びと同時にリターンキーを押すリツコとマヤ。

「0秒!」  発令所の誰もが動きを止め、その瞬間を待つ。 「カスパー」のモニターでは、わずかに残された1ブロックが点滅している。
 次の瞬間、その最後の1ブロックが赤に変わった。
「!」
 発令所の全員が凍り付いた。
「人工知能『メルキオール』より本部自爆が提訴されました」
 3度目の、今度こそ止めようのない決議が行われる。
「『メルキオール』…提訴、賛成。『バルタザール』…賛成。『カスパー』…賛成。自爆提訴、受理されました」
「…終わった」
「何てこと…」
 間に合わなかった。NERVは敗北したのだ。
「プログラムの実行時間が…予想以上に長すぎたんだわ。もう止められない…」
 リツコががっくりと崩れ落ち、ミサトが壁に背を預けずるずると座り込む。青葉がコンソールを殴り付け、日向がコンソールに突っ伏し、マヤが顔を覆う。
「自爆までのカウントダウン…10秒前よりスタート」
 人工音声だけが静寂に包まれた発令所を流れていく。
「これも、運命か…」
 冬月は額の汗を拭い、階下のゲンドウを見下ろした。
「…申し訳ありません、冬月先生…」
「先生か…君にそう呼ばれるのも久しぶりだな」
 冬月は苦笑し、ゲンドウも死を覚悟した人間のみが見せる笑みを浮かべた。
「自爆まであと5秒」
 冬月は立ち上がり、口を開いた。
「みな…最後の一瞬まで良くやってくれた。せめて礼を言わせて欲しい。ありが…」
 冬月が口篭もったのは、人工音声が異常を伝えたからだ。
「自爆まであと2秒…予想外のトラブルにより自爆プロセス実行できません」
「えっ!?」
 発令所のメンバーたちが驚きメインディスプレイを見上げる。カウントダウンの数字が停止し、MAGIのモードに移ったかと思うと、真っ赤だったMAGIが見る間に青へ変わって行く。
「人工知能『カスパー』より本部自爆決議の撤回が提訴されました」
 人工音声が告げる。
「『カスパー』…提訴、賛成。『バルタザール』…賛成。『メルキオール』…賛成。自爆決議は撤回されました。特例582による緊急事態令、解除されました。MAGIシステム、通常モードに移行します」
「使徒が…消えていく」
 モニター上の使徒が放つ輝きが消えていく。本部構造図の六角ヘックスが見る見る青に変わり、全ての元凶となった第87タンパク壁のそれも青へ変わった。
「自滅促進プログラムが効いたの?」
 マヤが呟く。
「確かに…爆発していなければ効き始める時間…だけど」
 リツコが答えた。一体何が起きたのか、と呆然となる発令所のメンバーの前で、ディスプレイが切り替わった。
「加持君!」
 画面に加持が映し出されていた。
『使徒のせいでセントラル・ドグマに閉じ込められていたんですが…脱出に成功しまして』
 彼の後ろには何か複雑な機械が映し出されている。
『で、私が使徒なら本命の仕事に関わる前に邪魔な発令所とエヴァを亡き者にするだろうと思いましてね。ビンゴでしたよ』
「ということは、自爆が実行されなかったのは君の仕業か!」
 冬月が加持の背後にある物体の正体に気づき叫んだ。
『ええ、自爆用N2爆弾の有線起爆装置を壊しました。少しは時間稼ぎになりましたか?』
 加持の問いに、ゲンドウが大笑いを始める。
「時間稼ぎだって?とんでもない!君は英雄だよ、加持一尉!!」
 次の瞬間、爆発的な歓声が発令所を満たした。


翌朝 「カスパー」ハッチ内部

『シグマ・ユニット除染処理完了、解放します。MAGIシステム再開まで03です』
 使徒消滅後、中に少しでも痕跡が残っていないかどうか、MAGI全体の再点検を終えたリツコは、「カスパー」のハッチ内で壁に背を預け座り込んでいた。
「コーヒー煎れて来たんだけど…いる?」
「ん…ありがと」
 ミサトに渡されたコーヒーを1口飲み、リツコは大きく溜息をつく。
「ミサトの入れてくれたコーヒーをこんなに美味しいと思ったのは初めてだわ」
「あっ。ひどいなあ…」
 リツコの感想に苦笑するミサト。
「加持君に助けられたわね」
「ええ…科学だけじゃ解決できない事も世の中にはあるって事ね」
「それも、ナオコおば様の言ってた事よね」
 ミサトが言うと、リツコは頷いた。
「母さんか…ミサト、MAGIの人格移植OSの事は知ってるわよね?」
「ええ…」
 突然の質問にミサトが頷く。
「死ぬ前の晩、母さんが言ってた。MAGIは3人の自分なんだって…。科学者としての自分を『メルキオール』に、母としての自分を『バルタザール』に、女としての自分を『カスパー』に。その3人がせめぎあっているのがMAGIなのよ」
「…人の持つジレンマを、わざと残したのね」
 ミサトの言葉にリツコは頷く。
「母さんにはいろんな事を教えてもらったわ。でも、生き方だけは学ぼうとは思わなかった。科学者としては、本当に私の目標とする大先輩だったし、私には優しい母だった。でも女としては理解できなかった。どうして、命を削ってまであの人に尽くしたんだろうと…」
 リツコはナオコの最後の日々を思い出した。医師免許を持っていたナオコはセカンドインパクトで破壊された原発のある街へボランティアとして赴き、被曝した人々の治療に当たり、二つのものを持ち帰ってきた。  多くの人々の心からの感謝と…急性白血病と言う死神を。
 南極から帰還した父は、そんな母をベッドから引きずり出し、己の目的のために酷使した。安静にしていれば助かったかもしれない母さんを…
 今までは、そう思っていたのに。
 ミサトは自分のコーヒーを飲み干し、物思いにふけるリツコに言った。
「今日はお喋りじゃない?」
「たまにはね…」
 リツコは白衣のポケットに忍ばせた一枚のメモ用紙を、布地の上から撫でた。それは、無数のメモ用紙の中で唯一、裏コードに関係ない一文が書かれたものだった。

「――不器用なあなたへ―― 永遠に愛しています。〜Naoko〜」

 それは、死の前日。MAGI完成の日、リツコに会う直前に書かれた物だった。
(女としての自分を宿らせた「カスパー」にこのメモが…母さん…どうしてなの?そんなにあの人の事を愛していたの?なぜ…?私は…間違っているの?)
 リツコは心の中で目の前の「カスパー」に呼びかけた。だが、返事が返ってくる事は、もちろん無かった。

(つづく)
次回予告
NERV、そして人類補完計画を裏で操る秘密結社「ゼーレ」。彼らにより、ネルフの過去と現在が冬月、ゲンドウと共に検証されてゆく。
使徒の襲来、NERVの行動を規定する「死海文書」とは何か?
全ての事象は与えられたシナリオの再現に過ぎないのか?
そして、人類救済の美名に隠された「ゼーレ」の真の意図は?
次回、第拾四話「ゼーレ、魂の座」

あとがき

おや?後半チルドレンたちの出番が全く無いですね。
でも、今回は大人たちが自ら戦うかなりシリアスな展開なので、あえてあのギャグにしかならない脱出したプラグ内のシーンはカットしました。チルドレンファンの皆さん、すいません。
代わりに大人キャラ(特にオペレーター3人組)の出番は異例に多いですけどね(死んだ人もちょっとだけ出演してますし)。大人ファンの皆さんはぜひ楽しんでくださいませ。
さて、次は…困りましたね。原作風にするか、全くオリジナルの展開を書くか…まだ決まっていません。 でもできるだけ速く書きますので、また拾四話でお会いするまで、見捨てないでやってくださいませ。
2000年8月某日 さたびー拝


追伸
最近反応が少ないです。作者からこんな事を催促するのもどうかと思いますが、感想メールを頂けると嬉しいです。

さたびーさんへの感想はこちら


Anneのコメント。

>「作戦部の戦術能力評価自己検閲はほぼ完了。
> まあ、その辺は日向君や霧島航空司令の方がほとんどメインで、私は承認印を押すだけだからね」

マナ父・・・。かなり偉いんですね。
でも、航空司令って何だろう?(^^;)
やっぱり、名前からして使徒と戦う時に戦闘機を率いる部隊なのかな?

>「…どうしたの?渚君」
>隣の部屋では、先へ進もうとしたシンジが壁に張りつくようにしているカヲルに声を掛けていた。
>「何って…決まっているじゃないか。この向こうには綾波君が一糸纏わぬ姿でいるんだよ。何か心に感じるものはないのかい?」
>「…感じるって…何が?」
>しかし、無垢なシンジの心に悪魔のささやきは取り付く事も適わず、シンジはカヲルに近づくとその手を取った。何故か顔を赤くするカヲル。

カヲル・・・。君って奴は(笑)
でも、シンジに手を握られて顔を紅くすると言う事は・・・。もしかして、両刀?(爆)

>「わかった。皆まで言うな。必ずお前の言う通りにする」
>『…ありがとう』
>「待っていろ、ナオコ…今、行く!!」

チルドレンを助けに行く姿でも思ったのですが・・・。
ゲンドウのこの姿っ!!実にソウルフルで熱く格好良いですよっ!!!

>「人工知能『メルキオール』より本部自爆が提訴されました」
>「『メルキオール』…提訴、賛成。『バルタザール』…賛成。『カスパー』…賛成。自爆提訴、受理されました」

てっきり原作の様にとばかり思っていたので、この展開は凄く意外でした。
そして、発令所が絶望色に染まる中、モニターが切り替わって現れる加持っ!!
渋いっ!!渋いっ!!!渋すぎるぅぅ〜〜〜っ!!!!
今回のMVPは間違いなくリツコでもゲンドウでもなく加持ですねっ!!



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