※このお話は、日々可愛くなっていく一人の女の子と、日々人として大切な何かを失っていく彼女の友人たちの物語です(殴)。

前回のあらすじ

芹香の薬を飲んだひろのは見た目6歳児くらいの小さな女の子に変身してしまった。小さな身体の不便さや無力さに涙するひろのだったが、芹香と一緒に服を買いにいくことになる。

To Heart Outside Story


12人目の彼女


第三十五話 「迷子の天使」


 商店街の大アーケードの前に停車したバスから、どっと人々が吐き出される。さすがに街の中心部の商店街ともなると、平日とは言え人通りが激しい。その人ごみの中に、子供服を買いに来たひろのと芹香の二人もいた。本当は綾香や真帆も来たがったのだが、綾香は学校、真帆は仕事があり、あえなく断念している。
「やっと着いたね、先輩。足とか痺れてない?」
 ひろのは彼女の手を引く芹香の顔を見上げて聞いた。バスが混んでいて、一人ぶんしか座るスペースがなかったので、芹香はひろのをひざの上に乗せて座っていたのである。
「…」
「え?軽かったから大丈夫です?…なら良いんだけど」
 芹香の答えにひろのは複雑な表情になった。やっぱり、軽いとか小さいとか言われる事が気になるようだ。
「それより先輩、どこのお店に行くの?」
 気を取り直したひろのが訊ねると、芹香はすっと手を上げ、大アーケードの先にある建物を指差した。ひろのはそれを見てびっくりした。その建物は高級品しか使わないことで有名なデパートだったからである。当然、彼女が男の頃からでも入ったことのない場所だ。
「先輩…あんな高い所もったいないよ…え?いつもあそこで買い物をしてる?…そっか、そうだよね」
 気後れしかけたひろのだったが、芹香の言葉に改めて上流階級の人々の感覚を知る。来栖川家に世話になるようになってもうずいぶん経つ彼女だったが、やはりまだ経済感覚は一般庶民のそれだ。
 そんな会話をしながら二人がデパートへ近づいていくと、なにやら大きな行列がアーケード街の真ん中に出来ていた。何かイベントがあるのかな?と不思議に思いつつも、それ以上は気にせずデパートの入り口へ近づく。すると、その前に立っていたドアガールと思しき制服の女性が声をかけて来た。
「すみません、お客様。今日は…」
 何か言おうとしたドアガールだったが、芹香の顔を見て急に愛想のいい笑顔になった。
「…失礼しました。来栖川のお嬢さまであれば問題はありません。どうぞ中へ」
 そう言いながら彼女はドアを開いた。芹香は会釈してドアをくぐる。ひろのも後にくっつきながら感心していた。
(へぇ…さすが高級店。いちいち客を呼び止めるなんて…それにしても、先輩くらいの人になれば顔パスなんだ。すごいなぁ…)
 芹香の顔を見上げていたひろのだったが、中に入るとすぐ入り口近くの柱に掲げられた売り場案内に近寄り、目当ての子供服売り場を探した。
「えっと…子供服、子供服…っと。あった。6階だね」
 ひろのが指差した場所にその表示があることを確認し、芹香はひろのの手を引いて歩き出した。行き先はエレベーターホールである。エスカレーターもあるのだが、あれは小さい子供にはいろいろと危ないと言うことを芹香は知っていた。それに、ちょっと人とテンポがずれている彼女自身もエスカレーターは苦手なのである。
「へぇ…面白いエレベーターだね」
 ホールに着いたひろのはエレベーターのデザインに感心した。ドアの代わりに鉄格子タイプのシャッターが付き、階層表示は時計のように針で表示する、よく外国のアパートに付いているようなクラシックなデザインのものである。しばらくしてやって来たエレベーターに乗り込み、二人は6階へ向かった。

 6階は服飾全般のフロアで、そういう情報には疎いひろのでも聞いた覚えのあるような高級ブランドショップが並んでいた。やがて、芹香が足を止めた一軒の店。それは、今ひろのが着ている芹香の子供時代の服よりも、さらにリボンとフリルを多用した人形のドレスのようなデザインで、黒や白の地味な色使いの服…俗にゴシック・ロリータと呼ばれる種類のものが並べられた店だった。
「こ、これは…」
 決して派手ではない色使いにもかかわらず、「絢爛豪華」な感じを漂わせるそれらの服に、ひろのは圧倒されるような思いを抱いた。そして、服につけられた値札を見てさらに驚愕する。どの服も確実に5桁、物によっては6桁の値段がついている。いくらなんでも後数日で着なくなる服に払うには高すぎる額だ。
「先輩、こんな高い服…」
 ひろのは芹香の服の裾を引っ張って違うところへ行こう、と言おうとしたが、芹香はひろのを見下ろしてふるふると首を横に振った。
「…」
「え?後少しだからこそ、記念にいい服を着せてあげたい…?先輩…」
 芹香に抱きしめられて頭をなでられ、ひろのは何も言えなくなってしまった。何かが違うなぁ、と思いつつも、芹香が自分の事を思ってくれているのは確かだし、その気持ちを邪険には出来ない。
 ちなみに、芹香はこの服を数着買っても小揺るぎもしない財力を持っているので、本当は遠慮しなくとも全く問題ないのだが、庶民のひろのにそんな事がわかるはずは無かった。

 1時間後、
「…」
「え?とても可愛いです…?そ、そうかな」
 何着目かの服を着たひろのを芹香が誉める。さっきからどれも「可愛い」としか言っていないのだが、芹香にしてみればそれしか言う言葉が見つからなかった。ひろのの方もいちいち照れている。素直な二人だった。
「それにしても…こう言う服って着てみると結構楽しいかも…」
 ひろのは試着室の鏡を見た。今着ているのは黒の地にリボンやフリルを白のレースであしらったもので、比較的飾り付けが少なくシンプルなデザインのものである。他のものに比べると、これが一番ひろのの趣味に近かった。
「…」
「え?じゃあ、これにしますか?って…そうですね、これが一番良いです」
 ひろのは頷いた。いったん着て来た服に着替え直し、支払いを済ませる。ちなみに、値段は56000円。これでも安い方だというのだから恐ろしい。しかし、芹香はあっさりとカードで支払いを済ませてしまった。
 支払いを済ませると、ひろのは買ったばかりの服にまた着替えた。元から着ていた服は丁寧にたたんでバッグに詰め、芹香が持つ。
「…」
「え?終わったから、どこかでお茶でも飲みましょう?はい、先輩」
 ひろのが芹香の言葉にうなずいたその時、なにやら地響きのような音が聞こえてきた。
「…なに?」
 ひろのは思わず周囲を見回し、そしてある一点を見つめて仰天した。目を血走らせ、殺気立った女性の大群がまるで洪水のように押し寄せてくる。
「せんぱい!」
「…!!」
 咄嗟に二人は手を繋いだが、それよりも逃げるべきだっただろう。しかし、どのみちこの二人では迫り来る恐怖から逃げることはできなかっただろうから、同じ事かもしれない。謎の女性たちはまるで二人が見えていないかのように、たちまち彼女たちを飲み込んだ。
「…きゃっ!?」
 視界が利かなくなり、ひろのは圧力に抗しかねて芹香の手を離してしまった。彼女は激流に流されるボールのようになす術もなく流れの中を運ばれて行き、気付いた時には資材搬入口の人が来ないところに打ち上げられていた。芹香の姿はどこにも見えない。
「…これは…いったい?」
 ひろのはあたりを見渡した。見渡す限り人、人、人…彼女たちは殺気立った声で「それは私のよ!」「いいえ、先に目をつけたのは私よ!!」などと言い合いながら高級ブランド品を奪い合っている。
 この日は、季節の変わり目を前に、このデパートが定期的に行っている大規模なバーゲンの日だったのだ。つまり、さっきひろのと芹香が見た大きな行列は、この入場待ちだったと言うわけである。混乱を避けるために平日に行っているにも関わらず、このとんでもない人出。まさに修羅場だった。
「…どうしよう」
 ひろのは途方にくれた。いつもの彼女ならともかく、この身体でこの人垣の中を突破しようとするのは、暴走するバッファローの群れに立ち向かうようなものだ。
「先輩…無事だと良いけど」
 目線が低いために芹香の姿を見つけることは出来ない。いったいどこまで流されていっただろう、と思うと心配だった。多分、向こうも心配しているに違いない。
「困ったな…」
 仕方なく、ひろのは床に座り込んだ。案内カウンターまで行けば場内アナウンスで芹香を呼んでもらえるだろうが、もちろんそれも無理だ。人ごみがなくなるまで、ここでこうしているしかない。
「…ぐすっ」
 自分が困っているのに、まるで関心も向けず、品物の取り合いに熱中している人々の中で一人でいると、涙があふれてきた。
「また…どうしてこんなに涙もろくなっちゃったんだろう」
 視界がにじみ、鼻の奥が痛くなってくる。涙が買ったばかりの服の上に落ち、ひろのは慌てて床を向いた。その体勢で必死に涙をこらえていると、頭上からやさしい声が聞こえてきた。
「どうしたノ?」
「…え?」
 見上げたひろのは、視界が明るくなるのを感じた。それは、声をかけてきた人物の持つ陽性の雰囲気のせいだったかもしれない。ひろのはその雰囲気を纏った人物をよく知っていた。
「レミ…」
 名前を呼ぼうとして、ひろのは口篭もった。今の姿で彼女の名前を知っているのは変だと思ったからだ。しかし、それに気付いた風もなく、彼女…レミィはしゃがみこんでひろのと同じ目線になった。
「どうしたノ?迷子になっちゃっタのカナ?」
「え?…う、うん」
 ひろのは頷いた。同時に、安堵の気持ちが湧き上がってくる。こんな所で、こんな状態で知り合いと出会えるとは思わなかったからだ。
「一緒に来たノはお母さん?」
 ひろのが安心した様子を感じ取って、レミィが質問してきた。ひろのは少し考え込んで、首を横に振った。
「お姉さん…かな」
 正しい答えではないが、先輩というのも変だし、その辺がちょうど良いだろう。レミィは頷くとひろのに手を差し出してきた。
「インフォメーションまで行けバ、放送でお姉さんを呼んでもらえるヨ。一緒に行こ?」
 あ、そうか、とひろのは頷いた。案内所の事に全然気付かなかったのは迂闊だった。
「うん、ありがとう、お姉ちゃん」
「ドウイタシマシテ」
 ひろのがレミィの差し出した手を握って微笑むと、レミィもにっこり笑って頷き返して来た。立ち上がったひろのだったが、すぐに困ったことに気が付いた。
(これ、どうしよう)
 目の前には相変わらず人が溢れかえっている。レミィは芹香よりもパワーがあるだろうが、ひろのを連れてこの人の流れを通過するのは無理そうだ。途中ではぐれてしまうに違いない。レミィも同じことを考えたのだろう。あごに手を当てて一瞬考え込んだが、すぐに名案を思いついたらしく、ひろのの横にしゃがんだ。
「?」
 ひろのがそのレミィの行動に戸惑っていると、レミィはひろののほうを振り返り、微笑んで言った。
「肩車してあげるヨ。サァ、捕まっテ」
「えっ…?そんな、悪いよ…」
 ひろのは首を横に振った。しかし、レミィはお構いなしにひろのの身体を持ち上げ、肩車の態勢になった。
「ココではこの方ガ楽だヨ」
 ひろのの足をしっかりと持って固定したレミィは、そのまま人ごみの中に分け入った。さすがに彼女は圧力に対抗してすいすいと進んでいく。
「あ、ありがとう…お姉ちゃん」
 レミィの頭を抱えるようにして身体を固定し、ひろのは礼を言った。2メートルを越す高さからだと、人ごみの様子がよく見える。ひろのは芹香がいないものかと見渡してみたが、彼女の姿はどこにも見えなかった。
「いいヨ。気にしないデ」
 レミィはそう言いながら、あっという間に案内所に到着した。ひろのはレミィの背中から降りた。
「ちょっと待っててね、お姉ちゃん」
 レミィにそういうと、ひろのは案内所の係員に話し掛けた。
「すいません…人の呼び出しをお願いします」
「え?」
 案内係がきょろきょろとあたりを見回す。まさか、カウンターから顔が出るか出ないか、と言う小さな女の子がその発言をしたとは思わなかったらしい。
「あの、ここです」
 ひろのが頭上で手をパタパタと振ると、ようやく案内係はひろのの存在に気が付き、声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい。…どうしたの?」
 やはり子供に対する話し方だが、ひろのはもう気にしないことにしていた。
「えっと、連れと離れ離れになっちゃったんです。呼び出しをお願いします」
 ひろのはもう一度用件を言った。しかし、案内係は鳩が豆鉄砲を食らったような呆けた表情でひろのの顔を見ていた。
「…あの、何か?」
 ひろのが言うと、案内係は慌てたように姿勢を正した。我に返ったらしい。
「はっ!?ご、ごめんなさい。ずいぶんしっかりしているのね。えらいわ…相手の人のお名前は?」
「来栖川芹香、です」
 案内係はひろのが言った名前をメモに書き取り、ちょっと待ってね、と言うと全館放送のスイッチを入れた。
『東鳩市よりお越しの来栖川芹香さま、お連れ様が6階案内所でお待ちです。繰り返します…』
 放送が流れ、ひろのは案内係に礼を言って、ベンチのところで待っているレミィのところへ歩いていった。
「終わったよ。ありがとう、お姉ちゃん」
 ひろのが呼びかけると、レミィは顔を上げた。
「あ、終わったノ?それじゃあ、お姉さんを一緒ニ待とうカ?」
 ひろのはびっくりしてレミィの顔を見上げた。こっちの事が片付いたのだから、もうお別れだと思っていたのだ。
「お姉ちゃんは自分の買い物とかしなくていいの?」
 聞いてみると、レミィは苦笑を浮かべて人ごみの方を差した。
「そのつもりだったんだケド、人が多すぎてとても買えないヨ」
 確かに、とひろのは思った。今も猛烈な商品の取り合いが続いている。ひろのはレミィの横にちょこんと座った。ただ待っているのもつまらない。レミィとおしゃべりをしているうちに芹香も来るだろう。ひろのはレミィに尋ねた。
「お姉ちゃんは何を買いにきたの?」
 だんだん、レミィをお姉ちゃんと呼ぶのにも慣れてきた。レミィは苦笑いを浮かべてひろのを見た。
「うん、バッグとか、服とか…見たい物はいろいろあったケド、何か気に入ったら買う、って言う感じデ、特には決めてなかったヨ」
 要は、たまたま行ける日にバーゲンがあったから身に来ただけ、と言うことらしい。まぁ、この修羅場っぷりを知っていたのなら、物好きに入って来たりはしないだろう。
「それで…エット…そう言えば、名前ハ?」
「え」
 ひろのは焦った。まさか、本名を言うわけにもいかないだろう。ひろのは辺りを見回した。すると、たまたま高級婦人服のブランド名が目に入ってきた。
「えっと…さ、沙織」
 ひろのはそのブランド名を偽名に使う事にした。レミィは特に疑った風も無く、にっこりと笑う。
「サオリ…可愛い名前ネ」
「あ、ありがとう」
 適当に決めた偽名を誉められ、ひろのはちょっと良心が痛むのを感じた。レミィはそれに気付いた様子も無く、にこやかに話し掛けてくる。
「で、サオリは何を買いにきたノ?」
 これには嘘をつく必要も無く答えられる。ひろのは腕を広げて、今着ている服を強調するようにした。
「この服だよ」
 あの中では比較的地味めとは言え、やはりそこは人形に着せるような服ではある。少し恥ずかしいかな、と思ったひろのだったが、レミィの反応は悪くは無かった。
「Oh…ベリーキュートネ…あ、すごく可愛いって言う意味だヨ」
「あはは…ありがとう、お姉ちゃん」
 ひろのは笑った。レミィはこう言うときにお世辞を言うような性格ではないから、彼女なりの本心だろう。変ではない事がわかっただけでも収穫だ。
 それから三十分ほど、ひろのはレミィとおしゃべりを楽しんでいた。しかし、芹香はやってこない。さすがに心配になって来て、ひろのはそわそわと落ち着き無く売り場の方を見た。その気分はレミィにも伝染したらしい。
「お姉さん、来ないネ…」
 心配そうに言うレミィ。その時、ひろのは重大な事に気が付いた。あの芹香が、この人ごみを突破してここまで来れるはずがない。魔法を使えば別だが、その場合は大惨事必至である。
「きっと、どこかに流されて行っちゃったんだ…助けに行かなきゃ」
 ひろのは椅子から飛び降りた。すると、レミィも立ち上がった。
「サオリ、行くならアタシも行くヨ」
 その思いがけない言葉に、ひろのは驚いてレミィの顔を見上げた。レミィはひろのの身体を抱き上げ、再び肩車にすると、ウィンクしながら言った。
「サオリ一人じゃ、ここから出ることもできないデショ?手伝ってあげるヨ」
「…ありがとう、お姉ちゃん」
 ひろのはお言葉に甘えて、レミィの頭に再び掴まった。レミィはそのまま人の流れに乗り込んでいく。流れに沿っていけば、そのうち芹香が見つかるだろう。その流れはどうやら下りエスカレーターに通じているようだった。
「下の階に行っちゃったのカナ?とにかく、先へ進むヨ」
 レミィはそう言うと下りエスカレーターに乗った。その間、ひろのはごったがえす人ごみの中に、見知った芹香の顔が見えないかと探してみる。しかし、一向に見つかる気配は無い。5階…4階…3階…とどんどん降りていく。とうとう1階まで降りてきてしまったが、芹香の姿は見えなかった。
「ひょっとしたら上の階かな…」
 案内板を見てひろのは言った。さっきまでいた6階の上にも、7階と8階、それに屋上がある。芹香が乗ったのが別の流れで、上の階へ行ってしまった可能性も無きにしも非ずだった。
「OK、今度は上だネ」
 レミィは鷹揚に頷き、再び人ごみを突破して上への流れに乗った。ひろのは下りエスカレーターに目をやって、芹香とすれ違わないように監視した。しかし、すれ違う事はなく二人は7階へ来た。ここは催物会場で、次の季節に備えて新作冬物の発表が行われていた。人口密度は今までに無く高い。
「こ、これはきついカモ」
 さすがのレミィもたじろいだが、探さないわけには行かない。人ごみを掻き分け、必死に前へ前へと進んでいく。7階を過ぎ、食堂街の8階へ…しかし、芹香は見つからない。
「ダメ?」
 さすがに少し疲労の色をにじませ、レミィがひろのの顔を見た。
「うん…ごめんね」
 申し訳ない気持ちでひろのは頭を下げた。今の彼女がいくら小さくて軽いとはいえ、それでも20キロくらいはあるだろう。それを背負ってこの人ごみの中を移動するのだから、いくらレミィが体力があると言ってもかなりの負担になっているはずだ。
「やっぱり、6階に戻って待ってよ。もう少し待ってたら、人が空いてきてお姉さんも来るかも知れないし…」
 ひろのが言うと、レミィは頷いて下りエスカレーターへの流れに乗った。そして、6階のさっきまでいたベンチコーナーへ戻る。芹香はそこにもいなかった。念のため案内所でもう一度聞いてみたが、それらしい人は来なかったと言う。仕方なく、二人はまたベンチに座って人ごみの方を見つめた。人が減る気配は一向に見えない。するとその時、館内放送が流れた。
『皆さま、本日のご来店誠にありがとうございます。用意していた商品がなくなったため、本日の営業は終了させていただきます。またのお越しを心よりお待ちしております…』
 周囲の客たちが一斉に不満の声を漏らしたが、既にめぼしい商品が売り切れているのも事実だった。それまで、何か掘り出し物はないかと辺りを睨んでいた人々が、エスカレーターやエレベーターの方へ流れ始める。
「サオリ…これなら、お姉さんも来るかもネ」
 休憩して疲れが取れたのか、レミィが笑顔になってひろのを見た。
「うん、もう少しだね」
 ひろのも安堵して頷いた。見ている間にも、人がどんどん減っていく。下りエスカレーターは満員だが、上りのほうはもう人が来ない。芹香が何階に行ってしまったのかはわからないが、これならここへ来るのも楽だろう。
 ところが、いつまで待ってもやはり芹香は現れなかった。既に館内の客はほとんどが帰ってしまったらしく、「蛍の光」の静かなメロディだけがゆっくりと流れていく。しかし、それも消えた。案内所の係の女性がゆっくり近づいてきて、気の毒そうな表情で言った。
「あの…ごめんなさい。もう閉店だから…」
 ひろのは首を横に振った。
「すいません。もう少し、もう少しだけ待ってください」
 芹香は来るはずだ、と思って案内係の言葉を拒否したひろのだったが、案内係はゆっくりと首を横に振った。
「あのね、他の階の人たちにも電話で聞いてみたの。でも、もう誰も残っていないって」
「…そうですか…」
 ひろのはうつむいた。彼女の肩を、レミィが優しく叩いた。
「サオリ、きっとお姉さんは外で待ってるヨ。探しに行こう」
「うん…」
 ひろのは案内係に礼を言い、レミィと連れ立ってデパートを出た。ひょっとしたら、出たところで芹香が待っていないかな、と思ったのだが、そこにも芹香の姿は見えなかった。
(どこまで行っちゃったのかな…)
 ひろのが辺りを見回したとき、「きゅう…」と言う音がした。お腹が鳴ったのである。ひろのは真っ赤になった。
「アハハ…何か食べてからにする?」
 しっかりその音を聞きつけていたレミィが思わず笑いながら言う。ひろのはますます顔を赤くしながらも頷きかけたが、すぐに重大な問題を思い出した。
「私、お金持ってない…」
 普段はお金を持ち歩くところだが、何しろ外見が子供なので、あまり大金を持ち歩くと危険と言う事で財布は芹香に預けてあったのである。しかし、その言葉を聞いてレミィは大声で笑い出した。
「アハハハハッ!子供がそんな事気にしないノ。お姉さんが奢ってあげるヨ」
「え…そんな、悪いよ…」
 ひろのはそう言って断ろうとしたのだが、結局レミィに押されて近くの店に入った。と言っても、定番のヤクドナルドである。レミィはメニューを見ながらひろのに言った。
「ラッキーセットにする?おまけがついてくるヨ」
「そ、それはちょっと…」
 ひろのは首を振った。この歳で海外アニメのキャラクターグッズなんかもらっても仕方が無い。結局、遠慮して一番安い普通のハンバーガーのセットにした。これでも、今の身体の大きさだとそれなりに食べごたえがある。
「美味シイ?」
 ハンバーガーを両手で支えながら食べるひろのを微笑ましそうに見ながらレミィが尋ねてくる。
「うん」
 ひろのは頷いた。ヤクドで美味しいも何も無いとは思うのだが、レミィがすごく嬉しそうな顔をするのでついつい頷いてしまうのだ。ちなみん、レミィはハンバーガーを2段にはさんだビッグヤックのセットにさらにフィッシュバーガーを付けている。ポテトとコーラもLサイズで、実に食欲旺盛だ。
 食べる量は全く違っていたが、二人はほぼ同じ時間をかけて食べ終え、再び芹香探しに出発することにした。まず、念のためさっきのデパートに行き、ドアのところにいた警備員に尋ねてみた。食べに行っている間に後から出てきた可能性も考えたのだ。しかし、やはり芹香の目撃情報は無かった。
「困ったネ…お姉さんはドッチの方に行きそうナノ?」
「わかんない。この近くにいるとは思うけど…」
 ひろのは言った。芹香のことだから、自分を置いてどこかに行ってしまう事は無い。絶対にこの近くにいるはずである。
「ウン、それじゃあ、この辺をぐるっと歩いてみようカ」
 レミィの言葉に賛成し、ひろのは歩き始めた。念のため、レミィと手を繋いでいく。普段は自分とほとんど同じ大きさの彼女だが、こうして小さくなってから見ると実に頼りがいがある。
「お姉さん」
 ひろのが呼びかけると、レミィは「ウン?」と言いながらひろのを見下ろした。
「色々とありがとう」
 礼を言うと、レミィは屈託のない笑顔を見せた。
「ダカラ、全然気にしなくて良いヨ。どうせアタシも予定は無いし、困っている子を放って置くわけにはいかないヨ」
 そう言って、ひろのの頭を撫でる。丸っきりの子ども扱いだったが、不思議とレミィに頭を撫でられるのは気持ちが良かった。
(あ…マルチもこんな気持ちなのかな…)
 家でマルチを誉めるとき、ひろのは良く頭を撫でてやっていた。そうすると、マルチはものすごく気持ちよさそうな表情をするのだ。微妙なくすぐったさの混じった気持ちよさにぼうっとしていると、レミィがぱふぱふと頭を叩いた。我に返ったひろのに、レミィが微笑みかける。
「笑顔になったネ。さぁ、元気良くお姉さんを探しに行こう」
「うんっ!」
 二人はまた歩き出した。とりあえず、デパートの周りの店を次々に覗いていく。

 しかし、どうしても芹香が見つからないまま、捜索範囲を広げているうちに、とうとう商店街の端まで来てしまった。時間ももう4時近くになっている。
 ひろのは心配の余り黙りこくってしまい、さすがのレミィも気持ちを盛り上げるのに限界が来ていた。二人は商店街のベンチに座り込み、少し休憩を取った。
「…どうしよう」
 ひろのは暗い声で言った。レミィにお金を借りれば、来栖川邸までは帰れる。しかし、芹香を見捨てるわけにも行かない。
 手詰まりになって溜息をついた時だった。
「あれ…ひろの?こんなところで何をしてるの?」
 突然、聞きなれた声で呼ばれてひろのは顔を挙げた。そこには、圭子とセリオを連れた綾香が不思議そうな表情で立っていた。
「ヒロノ?」
 これまたよく知った名前を耳にしたレミィが不思議そうな表情で辺りを見回す。まずい、と思ったひろのは、とっさにベンチから立ち上がると、走って綾香に抱きついた。
「綾香お姉ちゃん!」
「えっ…!?お、お姉ちゃん!?」
 ひろのにそう呼ばれ、驚いた綾香だったが、すぐに顔を緩ませてひろのを抱き上げる。
「ひ、ひろの…それが今日買った服?凄く可愛いじゃない」
 ほお擦りをしようとした綾香だったが、ひろのは手で抑えて、真剣な表情で綾香を見た。
「な、何?どうしたの?」
 ひろのの真剣な表情に、綾香もどうやらふざけている場合ではない、という事を察した。ひろのの手招きに応じて、彼女の口元に耳を寄せる。
「芹香先輩が迷子になっちゃったの。それで、クラスメイトに助けてもらったんだけど、この格好で本名名乗るわけにも行かないから、この場での私の名前は沙織。後は適当に合わせて」
「了解」
 綾香は頷いて、あらためてひろのの身体を抱えた。圭子が顔を寄せてくる。
「へぇ〜可愛い娘ですね。綾香さんの親戚ですか?」
「ま、似たようなもんね」
 感心する圭子に、我が事のように自慢げに答える綾香。そこへ、ひろのの後を追ってきたレミィがやってくる。もちろん二人は顔見知りだ。
「アレ…来栖川センパイの…アヤカさんだっけ?」
「綾香でいいわよ」
 綾香は微笑むと、レミィに軽く頭を下げた。
「この娘が世話になったみたいね。ありがとう」
「イヤ、大した事じゃないヨ。と言うことは、サオリが探していたお姉さんってアヤカ?」
 レミィの言葉に綾香は首を横に振る。
「いえ。あたしの姉さんの方。まぁ、この娘はあたしの未来の伴侶って…っ!?」
 綾香が最後まで言う前に、ひろのがズビシ、と綾香の喉元にツッコミを入れた。思わず咳き込む綾香。
「あたしの親戚の娘…みたいなものよ」
 綾香は言い直した。横目で軽くひろのを見る。怒った顔つきが相変わらず愛らしい。
「ナルホドネ」
 レミィは頷くと、ここまでの事情を話した。途中でひろのもフォローを入れ、綾香も完全に事態を把握した。
「わかったわ。じゃあ、姉さんに電話してみましょ」
 そう言うと、綾香はカバンから携帯電話を取り出した。それを見てひろのは「あ」と声を漏らした。そう言えば、芹香はちゃんと携帯電話を持っていたのだった。ひろの自身は持っていないし、使ってもいないので、すっかり忘れていた。
「い、今までの苦労はいったい…」
 落ち込むひろのの横で、綾香は芹香の番号を呼び出して通話ボタンを押した。数回の呼び出し音の後、芹香が電話に出た。
「もしもし、姉さん?あたしよ。今どこ?…何…え?警察ぅ!?」
 綾香の珍しく動揺した叫びに、ひろのもレミィも、セリオも圭子も驚愕の表情を浮かべる。何しろ、芹香ほど警察沙汰という言葉から縁遠い人間はいない。
「で、何があったの?…あ、はい。そうです。ええ、確かに姉ですが…はい?私の名前ですか?はい、来栖川綾香といいます」
 どうやら、途中から電話の相手が変わったようだ。恐らく警察の人間だろう。綾香はしばらく話した後、電話を切った。全員が固唾を飲んで見守る。
「どうやら、平日に出歩いていたから、少年課の見回りに引っかかったみたいね」
 綾香の言葉に、全員がなるほどと頷いた。いくら芹香のように清楚な少女でも、平日に街中を歩いていれば、それは充分職務質問の対象になりうるだろう。
「しかも、姉さんはあの喋り方だし、黙秘してると勘違いされたのね」
 これまた頷ける話である。普段から一緒に暮らしている家族や、ひろのなどそれに準じる人々、それに親しい友人でなければ芹香との会話を成立させることは難しい。警察の人たちでは、芹香の言葉を聞き取ることすらできないはずだ。
「じゃあ、迎えに行く?」
 ひろのが聞くと、綾香は首を横に振った。
「あたしじゃダメよ。お祖父様かセバスチャンか、とにかく大人でないと。とりあえずお祖父様に電話してみる」
 そう言うと、綾香は再び携帯電話を操作した。
「もしもし、お祖父様?綾香です。実は…」
 電話が通じ、綾香はしばらく話していたが、やがて通話を切って4人の方へ向き直った。
「お祖父様は忙しくて来れないけど、代わりにセバスチャンが来るわ。それまでに警察に行って、事情だけでも話さないと」
 一行は頷き、警察の方へ向かって歩き始めた。

 商店街から少し離れた所に、市役所や市の中央郵便局などが立ち並ぶ官庁街があり、東鳩市中央警察署もその一角にあった。入り口の受付で事情を話すと、とりあえず肉親の綾香だけが面会を許される事になり、ひろの、レミィ、圭子、セリオはロビーでセバスチャンの到着を待つ事になった。そのまま4人で待つことしばし。適当におしゃべりをしていると、玄関の方で車が止まる音がした。そちらに目をやると、来栖川家の関係者には馴染み深い車が停車しているのが見えた。
「あ、先輩の家のリムジン」
 ひろのが言うと同時に、助手席側のドアが開いてセバスチャンが降りてきた。かなり赤い顔をしている。セリオが立ち上がり、玄関の自動ドアを抜けて中に入ってきたセバスチャンを迎え入れた。
「長瀬様」
「おぉ、セリオ、セリオではないか。と言うことは、綾香様もご一緒か?」
 セバスチャンの言葉にセリオは頷き、それからなにやら耳打ちをした。セバスチャンはセリオの顔と、ソファに座っているひろのの顔を交互に見て頷くと、ソファの方に近寄ってきた。
「大丈夫か?沙織」
 セバスチャンはひろのを偽名で呼んだ。どうやら、セリオがうまく説明してくれたようだ。ひろのは片手拝みにセリオに感謝の意を伝え、セバスチャンに頷いて見せた。
「うん、大丈夫だよ、おじいちゃん」
「そうか。では、ワシはお嬢様を迎えに行って来る。大人しく待っているのじゃぞ」
 ひろのの笑顔に、セバスチャンは頷くと、署内の奥の方へ去っていった。すると、レミィがひろのとセバスチャンを交互に見ながら首をひねった。
「ヒロノのグランパがサオリのグランパ…?サオリって、もしかしてヒロノの親戚ナノ?そう言えば、よく似てるケド…」
「え?えーっとぉ…」
 ひろのは動揺した。確かに、今の状況的には「ひろの」と「沙織」の間に血縁関係があることになるが、そこまでの設定は全く考えていなかった。
「沙織さんはひろのさんの従妹ですよ。たまたまこっちに遊びに来てたんです」
 そこへセリオが助け舟を出す。
「そ、そうなの」
 ひろのは一瞬驚いたが、すぐにセリオの考えた「設定」に乗っかった。どうやら、レミィはそれに納得したらしいが、すぐに別の疑問に突き当たった。
「ソウナンダ…アレ?でも、そうするとヒロノが一緒に来てないのはドウシテ?」
「そ、それは…お姉ちゃんがちょっと具合が悪くて」
 ひろのは必死に言い訳を考えた。芹香、綾香、レミィに続いてついに自分のことまで「お姉ちゃん」と呼んでいる。その情けなさに思わず溜息が出そうになった。
「ヒロノ、具合が悪いノ?お見舞いに行こうカナ」
 レミィが心配そうな顔になる。どうやら、ひろのの言い訳は豪快に墓穴を掘ったらしい。慌てて別の言い訳を考えようとすると、ロビーの奥の方から綾香とセバスチャンにエスコートされた芹香が現れた。
「先輩!」
 ひろのが抱きつくと、芹香は黙ってようやく再会できたひろのの頭を撫でた。そして、事情を話し始める。
 あのバーゲンの時に押し流された芹香は、そのまま店の外まで流されていってしまったのだ。そこで、ひろのを探そうともう一度店に入ろうとしたが上手くいかず、外をうろうろしているうちに警察に補導されてしまったのである。
「…」
「え?心配かけてごめんなさい?…いいよ、先輩。お互い様だから」
 こうして二人の再会を見守っていたセバスチャンが豪快な笑い声を上げて言った。
「よし、無事に再会も出来た事じゃし、そろそろ帰りましょうかの、お嬢様方!」
「そうね。圭子、また明日ね」
 頷いて、綾香がセリオを連れて車に向かっていく。圭子も別れの挨拶をして去っていった。続いて、芹香がセバスチャンに連れられて車に向かって歩き出す。ひろのはそれに続こうとして、立ち止まるとレミィのほうを見た。
「お姉ちゃん…今日はいろいろとありがとう」
「ドウイタシマシテ、ダヨ。よかったネ、サオリ」
 心から喜んでくれているらしいレミィに、ひろのは嘘を付き通した事への良心の呵責を感じた。それ以上なんと言っていいかわからず、立ち尽くしているひろのを、セバスチャンが呼んだ。
「どうしたんじゃ?帰るぞ」
「うん…さよなら、お姉ちゃん」
 ひろのは頷き、最後にもう一度レミィに頭を下げ、車に乗り込んだ。車が走り出しても、レミィは見えなくなるまで手を振っていた。

 3日後。
 仮設校舎が完成し、今日から平常授業が再開された東鳩高校。横では破壊された特別教室棟と、半壊した校舎の再建作業が始まっている。教室に来たレミィに、声をかけた人物がいた。
「おはよう、レミィ!」
「あ…ヒロノ。身体はもう大丈夫ナノ?」
 満面に笑みを浮かべたひろのはその場でくるりと一回転して見せ、頷いた。
「うん。おかげさまでね」
 迷子騒ぎのあった翌日、芹香の薬が完成し、ひろのは無事にもとの17歳の少女の姿に戻る事が出来た。あの服は記念にカバーをかけてクローゼットにしまってある。
「良かったネ。サオリにもよろしくネ」
 これもまた笑顔で頷いたレミィ。ひろのはその手を握って言った。
「その事なんだけど、今日ヤックに行かない?お礼がしたいの。今度は私がおごるからさ」
「アハハッ、気にしなくていいのに。デモ、せっかくだからお呼ばれしようカナ?」
 二人の少女は笑いながら教室へ入って行った。

 その頃、3年生の教室では芹香が液体の入った小ビンを見つめていた。ひろのに使った若返り薬(?)の残りである。使い道は無いが、捨てるのももったいないので取ってあるのだ。やがて、何も考えが浮かばなかったのか、芹香は小ビンを鞄の中にしまいこんだ。
 この薬が再び日の目を見ることはあるのか…それは、誰にもわからない。

(つづく)

次回予告

「お嬢様がたをしっかりエスコートするのだぞ」
 そのセバスチャンの言葉と共に、上流階級の人々が集うパーティー会場にやってきたひろの。しかし、着飾った彼女は来栖川姉妹を差し置いて各界のお坊ちゃまたちにダンスの相手を求められてしまう。
 当然ながら、その状況を座視する来栖川姉妹ではない。はたして、パーティー会場は死屍累々の修羅場になってしまうのであろうか。
 次回、12人目の彼女第三十六話
「宴は踊る。されど進まず」
 お楽しみに。

あとがき代わりの座談会 その35

作者(以下作)「こ、今回は疲れた…」
ひろの(以下ひ)「私も…」
作「風邪引いたりしてむちゃくちゃスケジュールが狂ったしな…こんなに書くのに苦労したのは初めてだ」
ひ「でも、他の作品は結構書いてる…」
作「早く完結しそうな方を優先して、負担を減らそうとしたんだけどな」
ひ「そうなんだ。でも、元に戻れてほっとしたよ」
作「そうだな。でも、子供状態のお前は妙に大人気だったぞ」
ひ「私はもう嫌。身体の自由が利かなくて凄く大変なんだもの」
作「女の子になった時を考えれば楽なモンじゃないのか?」
ひ「…どうかな」
作「まぁ、次回からは普通の身体に戻っての話。それはそれで大変な日が続くけどな」
ひ「もう、男でも女の子でも良いから平穏な生活が欲しい…」
作「切実だな」
ひ「あんたが言うな!」

収録場所:東鳩中央警察署ロビー


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