※ひろのちゃんはひろのちゃんであって、彼女が昔浩之ちゃんだったなんてことは、
どうでも良いような些細な事ではないかと言われつつある今日この頃(猛爆)
前回までのあらすじ
大騒動だらけの夏休みを何とか乗り切ったひろの。いよいよイベントの秋到来!さて、そんな季節で最初に彼女が出会う事件とは…?
To Heart Outside Story
12人目の彼女
第二十七話 「山の天気と乙女心」
夏休みも8月の末で終わり、いよいよ新学期になった。久しぶりに再会した友人たちと夏休みの想い出を語り合ったり、焼けた肌を自慢しあったりした時はあっという間に過ぎ去ってしまい、もう9月も第三週。日中はそれなりに夏の名残の暑さが続いているが、夜ともなれば一気に風が涼しくなり、そろそろ本格的な秋の到来を予感させる季節である。
「さて…今度の土曜日はいよいよ皆も楽しみにしていたと思う遠足である」
ホームルームの時間、木林先生がそう切り出すと、わっと歓声が沸いた。
「静かに。これから遠足時の諸注意を説明する」
そこで、素早く手を挙げた人物がいた。矢島である。
「先生!」
「バナナならおやつに入らん」
発言を読んで先に言った木林先生に、愕然とした顔で固まる矢島。教室中からくすくすと言う笑い声が漏れた。
「まぁ、お約束のギャグは捨て置いて…詳しい事はしおりを読んでもらう事になるが場所は鷹尾山だ」
鷹尾山は東京の西の端にある標高800メートルほどの山だ。ケーブルカーやロープウェイ、登山道等が整備されており、気軽に山を楽しめる観光地としては首都圏でも屈指のポイントである。
「当日は私服OKだが出来るだけ動きやすく、怪我をしにくい服装を心掛けるように」
先生がそう言ってHRを締めくくり、生徒たちの話題は早くも遠足の事に集中した。
「鷹尾山かぁ…そう言えば行った事無いなぁ」
ひろのは浩之時代からどっちかと言うと海の方が好きだ。鷹尾山はこの東鳩市からなら電車で1時間と言う近場にあるのだが、子供の頃から行った事が無い。
「結構面白いところだよ。頂上まで行けば新宿の高層ビルとかが見えたりするし」
あかりが言った。彼女は家族のピクニックで何回か鷹尾山に行った事がある。
「アスレチックなんかもあって、それもなかなか良いわね」
と、これは志保。おおよそ「遊ぶ場所」であれば彼女の知らない場所はない。
「山に遊びに行くんも久しぶりやね」
智子も話の輪に加わってきた。彼女の故郷、神戸はすぐ側に六甲山系を抱え、そこは市民にとっては格好のレジャー対象になっている。山へ遊びに行くのは彼女にとっては慣れ親しんだ事なのだが、山が無くだだっ広い関東に来てからは、そうしたレジャーからは遠ざかっていた。
「う〜ん…みんな山は結構行ってるんだ…」
ひろのが言うと、あかりが笑った。
「まぁ、山と言ってもそんなに高くないし、今行けば上の方は涼しくて良いと思うよ」
「そっか。涼しいのは嬉しいね」
ひろのもつられて笑い、結局この4人で班を結成する事になった。
そして、遠足の前夜。ひろのが部屋で準備をしていると、部屋のドアがノックされた。
「ひろのちゃん、いる?」
「真帆さん?はい、どうぞ」
ひろのが返事をすると、すっかりこの長瀬邸専属メイドとして認知された真帆が部屋に入ってきた。
「ひろのちゃん、明日の遠足なんだけど…お弁当少し多めに用意しておこうか?」
「え?」
真帆の提案に、ひろのは一瞬首を傾げた。しかし、すぐにその意味を理解する。みんなで分けて食べろと言う事だろう。
「あ、それじゃあお願いします」
ひろのが頭を下げると、真帆は親指一本立てて「任せなさい」と言うジェスチャーをすると部屋を出ていった。そうすると、みんなには断っておく方が良いだろう。ひろのは友人たちに電話をかけ始めた。まずは志保からだ。
『はい、長岡です』
「あ、志保?」
ひろのが呼びかけると、受話器の向こうで志保の声が明るくなった。
『あら、ひろのじゃない。どうしたの?こんな時間に』
そこでひろのが真帆が弁当を作ってくれるから、と言う話をした。
『本当?ありがたいわ。じゃあ、明日はおやつだけ持って行くわね』
志保はひろのの話を大歓迎し、電話を切った。続いて智子に電話する。彼女は一緒に暮らしている母親が働いていて、弁当を作って欲しいと頼みにくいと言う事情があるので、たぶん喜んでくれるだろう。
ところが、電話に出た智子に事情を話すと、彼女は『ほんまか?』とちょっと困ったような声で言った。
「どうしたの?」
ひろのが尋ねると、智子はその困った理由を話した。それを聞いて、ひろのも困った声を出した。
「え?あかりからも同じ電話が?」
『そうなんよ。せっかくだからみんなの分もいっぱい作るねって、張り切っとったで』
智子の言葉にひろのは考え込んでしまった。考えてみればすぐに予想の付く事態だ。
「うん、わかった。ありがとう、いいんちょ。私、これからあかりに電話して相談してみる」
『それがええね。ほな、また明日』
智子との通話を終えると、ひろのは急いで神岸家の番号をプッシュした。数回着信音が鳴り、渋い男性の声で応答があった。
『はい、神岸ですが』
「あかりのお父さん?えっと…ひろのと言えば良いのか浩之と言えば良いのか…わかりますか?」
たしかあかりの父親も自分の事は知っていたはず、と思い出して話しかけてみると、受話器の向こうでおお、と言う声が上がった。
『もちろんわかるとも。いやぁ、君が本当にあの浩之君なのかい?声を聞くのは初めてだがずいぶん可愛らしくなったねぇ』
(はうっ、ひかりさんと反応が同じだ。さすが夫婦…)
あかり父の能天気な反応に、後頭部に大粒の汗を浮かべつつ、ひろのは聞いた。
「えっと、あかりいますか?」
『ん?あかりかい?いるよ。ちょっと待っててくれ』
あかり父が受話器の向こうであかりを呼ぶ声が聞こえ、やがてぱたぱた…というスリッパで廊下を走る音が近づいてきた。
「あかり?」
『あ、こんばんわ、ひろのちゃん!どうかしたの?』
ひろのの声が聞こえると、あかりは心底浮き立ったような声で返事と質問をしてきた。さっそく、真帆の弁当のことを伝える。
『う〜ん…そっかぁ…』
かなり張り切って全員分作るつもりだったのだろう。少し落ち込んだ声になったあかりだったが、すぐに立ち直って提案する。
『じゃあ、真帆さんとお話できるかな?二人で相談してメニューを決めてみるね』
「あ、それはいいアイデアだね」
ひろのは頷くと、一度あかりとの通話を待ち受けモードに切り替え、内線電話で台所を呼び出した。
『どうしたの、ひろのちゃん。夜食?太るからやめたほうが良いわよ』
電話に出た真帆がいきなり変なことを言い出した。
「ち、違いますよ…実はお弁当のことで…」
ひろのは顔を赤らめながらも事情を説明する。納得したのか、真帆が電話の向こうで頷く気配がした。
『なるほど。じゃあ、外線に繋いで貰えるかな?あとは神岸さんと相談して決めるから』
「はい、じゃあお願いします」
ひろのは外線に戻すと、あかりに真帆の言葉を伝えて、二人で相談してもらうようにした。そして、自分は受話器を置く。
「あの二人のお弁当か…楽しみだなぁ…」
そう呟くと、残っていた準備を終え、明日に備えて早く寝ることにした。
翌朝、ひろのが窓の外を見てみると、空は綺麗に晴れ渡っており、雲一つ無い快晴だった。目を凝らしてみると、来栖川邸の敷地を取り囲む森の遥か遠くに、微かに山並みが見える。どれかが鷹尾山かもしれない。普段は起きてからも目が覚めるまで20分くらいかかるひろのだったが、この天気と景色にはさすがにすっきりと目が覚めた。
「わぁ…良い天気。今日は楽しくなりそう」
呟いて着替えに掛かる。「動きやすい服装」と言う事なので、スカートは避けてGパンにした。階下に降りると、既にキッチンでは真帆が弁当作りに余念が無かった。
「おはよう、真帆さん。お弁当作り?」
ひろのが朝の挨拶がてらに尋ねると、振り返った真帆はにっこり笑って答えた。
「おはよう、ひろのちゃん。お弁当ならそっちに大体出来てるわよ」
そう言って真帆が指差した物を見て、ひろのは驚いた。そこには、おせち料理にでも使いそうな豪華三段重箱が鎮座しており、一段目にはおにぎり、二段目にはサンドイッチが詰め込まれていたのである。
しかも、真帆は現在デザートにフルーツパンチを作っている最中で、それは3段目に入る予定らしかった。
「真帆さん…これ、ちょっと入れ物が大きすぎるんじゃないですか?」
ひろのが言うと、真帆は首を傾げた。
「そうかしら?芹香お嬢様のお弁当って大体いつもこれくらいだったけど…」
「でも、芹香先輩のお弁当はおじいちゃんが持ち歩いているんですよ」
ひろのの指摘に、真帆はしまった、と言う顔をした。そう、芹香の場合、荷物はほとんどセバスチャンが後ろから持って付いていくのである。彼が持っている限りは三段重箱が五段だろうと5トンだろうと大差はない。
念のため書いておくが、芹香のお弁当の量が多いのは、彼女がそれだけ食べるからではなく、ひろのやあかりたちと一緒に食べる分まで持っていくからである。
「困ったわね〜…それは迂闊だったわ」
真帆がぼやいた。ひろのは試しに重箱の大きさをざっと目検してみた。どう考えても、リュックには入りそうもない大きさだ。
「まぁ…行程のほとんどはバスだし…登る時はケーブルカーの筈だから…別の袋に分けて、帰りに歩いて降りる時だけ気を付ければ良いかな…」
ひろのは言った。せっかくの真帆の心尽くしのお弁当、持って行かないのはあまりにも勿体無い。中身を全部食べてしまえば、ちょっとかさばるとはいえ、持ち歩くのに苦にならない程度の重さに収まるはずだ。
「ごめんね。そうだ、ちょっと、容器だけ入れ替えるから」
真帆はそれでも持っていく、と言ってくれたひろのに感謝と謝罪の言葉をかけ、流し台の下からタッパーを取り出した。全部大きさが違っていて、空の時は一番大きなタッパーのなかに他の全てをしまっておけるマトリョーシカ式のものである。そっちにお弁当の中身を移し替え、大き目の紙袋の中に入れた。これで、帰りには大きさもかさばらないものになっているだろう。
「それじゃ、行ってきます!」
真帆に挨拶し、ひろのは弁当を入れた紙袋を提げて学校へと向かった。
学校に近づくと、校庭に数台のバスが止まっており、生徒たちが集結しているのが見えた。自分のクラスの列に向かうと、あかりたちは既に先に来ていた。
「あ、ひろのちゃん、おはよう!」
真っ先にあかりが気づいて手を振ってくる。ひろのは手を振りかえすと、小走りにあかりたちのところへ急いだ。
「おはよう、みんな」
ひろのが笑って挨拶すると、志保がひろのが持っている大きな紙袋に目を留めた。
「ひろの、それは何?」
「これ?お弁当だよ」
ひろのが答えると、志保とあかり、智子は顔を見合わせてびっくりしたような顔をした。
「…どうしたの?」
友人たちの不審な行動にひろのは首をかしげる。特に、あかりは真帆と相談して弁当の分担を決めたはずだ。すると、志保は黙ってある方向を指差した。ひろのがそっちを見ると、彼女の紙袋よりも巨大な包みがあるのに気が付いた。
「…まさか?」
ひろのが尋ねると、智子が頷いた。
「そうや。神岸さんの作ってきてくれたお弁当や。中身は全部おかず」
「うわ…」
ひろのは自分とあかりのお弁当を交互に見ながら困った顔になった。
「あかり、真帆さんと分担を決めたんじゃなかったの?」
ひろのが聞くと、あかりは一応頷いた。
「うん…わたしがおかず係で、真帆さんが主食とデザートを作ることになってたんだけど、思わず材料使い切っちゃったみたい」
つまり、単独で5人分くらい用意しておいた食材で主食とおかずを作ってしまったので、あわせて10人分の料理があるということになる。とてもではないが、食べきれる量ではない。
「まぁ、私たち以外にも岡田さんたちとかに声をかけて分ければなんとかなりそうだと思うよ」
ひろのがそう言った時だった。
「料理が余ってるんだって?」
「そんな時は我々にお任せを!!」
そう言って現れた二人の人物。それは…
「あ、佐藤君に矢島君、おはよう」
ひろのが二人の顔を見て挨拶をすると、男子二人はそれぞれに挨拶を返して本題を切り出した。
「女の子の10人前なんて、男に取っては3〜4人前。言ってくれれば僕たちが片づけてあげるよ」
雅史が言った。まぁ、下心ありとしても言っている事にまずいところはない。しかし…
「俺としては一度口を付けた物や食べかけでも歓迎…ぐふぁ!?」
ヤバい事を口走りかけた矢島だったが、あかりの放ったすりこぎの一撃をこめかみに食らって一発轟沈。
「雅史ちゃん、それ持って帰って」
ぴくぴくと痙攣する矢島を指して言うあかりに、雅史はため息を吐くと、矢島の足を引き摺って去って行った。
「相変わらず容赦無しね〜…まぁ、気持ちは分かるけど」
志保が呆れたように言いながらそれを見送り、ひろのと智子は苦笑していた。
それから1時間後、生徒、先生とも無事に全員揃い、東鳩高校2年生一行は5台のバスに分乗して鷹尾山を目指していた。週末と言う事で、道は少し混雑している。なかなか動かないバスであったが、こういう時に威力を発揮するのが車載カラオケである。各車内ともそれぞれに盛り上がっていた。
「はい、どなたか歌う方はいませんか〜?」
バスガイドさんの呼びかけに、真っ先に手を挙げたのがカラオケ大好き人間の志保だった。
「はいはいっ!あたし歌いま〜す♪」
ご機嫌で回されてきたマイクを手に取り、既に覚えているらしい持ち歌のコードをバスガイドさんに告げると、車内から拍手が沸いた。そんな中で、良く一緒に彼女とカラオケに行っているひろのは首を傾げた。
「あれ?志保、それデュエットの曲じゃないの?」
ひろのがそう質問すると、志保はニヤリと笑い、いきなりひろのの腕をつかんで立たせた。
「きゃっ!?」
驚くひろのに強引にもう一本マイクを押し付け、志保は高らかにコールした。
「1番!長岡志保あ〜んど長瀬ひろの、『RENAI中!』を歌いますっ!」
「えええええぇぇぇぇぇっ!?」
叫ぶひろの。そして一層沸き立つ車内。志保がリクエストした曲は、男装して好きな男の子の通う学校に潜り込んだ少女が主人公の人気ラブコメドラマの主題歌で…
歌詞が非常に恥ずかしい事で有名だった。
「し、ししししし、志保っ!?私イヤよ、こんなの人前で歌うなんてっ!!」
必死に抗議するひろのだったが、志保は聞く耳持たない。
「ふふふん♪もう前奏始まっちゃったもんね。覚悟決めなさい」
「…うぅ〜、こうなったらもうヤケっ!」
開き直り、堂々と恥ずかしい歌を、しかも高レベルで歌い切った二人には、惜しみない賞賛の拍手が送られた。
こうして2時間後、一行は鷹尾山の中腹にある駐車場に到着し、そこからケーブルカーで約10分、ひろのは鷹尾山頂駅のそばに立っていた。正確に言うとここは山頂のすぐ下の平らな部分で、本当の山頂は更に50メートルくらい上にある。
「ふわぁ〜…風が気持ち良いなぁ…」
バスに乗る前は汗ばむほどの陽気だったが、さすがに800メートルも標高が上がると、下界より確実に5度は気温が低い。湿度の方も低く、実にさわやかな環境だ。
「眺めもすごいよ。ほら、新宿の方まで見えるし」
あかりも鷹尾山の先輩として、ひろのに見所を教える。微かに副都心の高層ビルを確かめてひろのが感心していると、木林先生の声が響き渡った。
「よ〜し、これより自由時間とする。2時に下山道入り口に集合する事!」
「はいっ!」
生徒たちは返事すると思い思いの方向に散り始めた。
「さて、どっちへ行こうか?」
志保が言うと、智子が立て看板を見つけて提案した。
「鷹尾山神社やて。行ってみよか?」
立て看板の先の道は上り坂へ通じている。神社は本来の山頂にあるのだ。
「うん、行ってみようよ。やっぱり山に登ったからには一番高いところまで行くのは基本だし」
ひろのが真っ先に賛成した。あかりと志保も賛同し、4人は山道を登り始めた。同じ事を考えている生徒は結構多いらしく、進むにつれて人数が多くなって行った。その中に、ひろのは見覚えのある人影を発見した。
「あ、レミィ、理緒ちゃん」
ひろのが呼びかけると、その二人は振り返って声の主を確認し、それから走って引き返してきた。
「おはよう、ヒロノ」
「長瀬さん、おはよう」
これでいつものメンバーが揃った。6人は連れ立って会話をしながら坂を登って行く。
「へぇ、ここから富士山が良く見えるんだ」
ひろのが言うと、それを教えたあかりが頷く。
「うん。今日は良く晴れているから、きっとすごく綺麗に見えると思うよ」
「ソレは楽しみネ」
レミィが笑った時、カーブの向こう側に神社の鳥居が見えてきた。一行はまず神社にお参りする。柏手を打ち、頭を下げてそれぞれに祈りを捧げた。
お参りの後、神社の裏手へ向かいながら6人はどんなお祈りや願掛けをしたのか話した。
「長瀬さんは何をお祈りしたの?」
理緒に聞かれて、ひろのは答えた。
「私?私は『日常、平穏無事で済みますように』かな」
まぁ、「男に戻れますように」とストレートに祈っても良かったのだが、まずは普段自分の周囲で起きる様々な騒動をどうにかして欲しかった。
何しろ、彼女は自分のせいで遊園地や暴力団の本拠がものの数分で完全崩壊する様を見ている。そういう事がもう起きて欲しくないと言うのが人情と言うものであった。
しかし、この日神様はひろのの番に限って居眠りでもされていたらしい。彼女の願いが聞き届けられる事は、その後遂に無かった。
さて、神社の裏へ来てみると、そこには抜けるような青空をバックに富士山がくっきりと浮かび上がって…いなかった。
「あれ…?」
志保が首を傾げる。富士山がある方向の空は、白く霞んでいてその輪郭すら見る事が出来なかった。
「見えないね…運が悪いなぁ」
ひろのは苦笑した。まぁ、ここから富士山は100キロ以上離れている。距離的には間に雲の一つや二つ、挟まっていてもおかしくないところだ。
「しゃあないなぁ。戻って別の場所見に行こ」
智子の提案を受け、一行は神社を後にする事にした。
そのまま山道を降り、駅周辺まで戻ってくると、時間的にはやや早いものの、そろそろお弁当を広げ始めている生徒たちも出始めていた。ひろのたちも昼食にする事にして、東鳩市の方向が見える斜面にビニールシートを敷き、お弁当を広げた。
「うわぁ…すごい量ですね…」
欠食娘、理緒が目を輝かせる。ちなみに、彼女のお弁当は小さなおむすびとたくあん二切れと言うなかなかに悲しいラインナップであった。
「これはGREATネ。食べきれるカナ?」
レミィも目を見張る。彼女はサンドイッチとフライドチキンというラインナップ。よく食べそうなイメージのあるレミィだが、意外と量は少なめだった。
「まぁ…たくさんあるから、どんどん食べてね」
ひろのの言葉とともに、昼食が始まった。最初は食べられるかどうかわからないほどの量だと思ったのだが、環境が良いのと、全員朝が早かったため、意外に箸が進んだ。30分も立つと、おむすびが2個、おかずが少々、という程度の量まで減っていた。ただし…
「う〜ん…もう入らないよ」
ひろのが言った。みんなも頷く。のこりのお弁当はせいぜい一人分とちょっと、と言う程度の量なのだが、みんな満腹でとても入りそうになかった。
「捨てるのも勿体無いしねぇ…どうしようか?」
志保が首をひねったとき、理緒がおずおずと手を挙げた。
「あの…それ、もらって帰ってもいいかな?」
一行の目が理緒に集中した。
「そしたら、一食浮くから…」
一行の目に涙が光った。相変わらず彼女は不憫である。
「別にかまわないけど…腐ったりしないかな?」
ひろのは一瞬出かかった涙をこらえて言った。すると、あかりが「う〜ん…」と唸った。
「大丈夫だとは思うけど…いちおう、痛みにくいものばかり作ったし」
「本当に大丈夫なんだったら、私はかまわないよ」
ひろのは言った。ゴミはできるだけ出さないように、と言われているので、いくら残ったからといって捨てていくのはためらわれるし、ちゃんと食べられたほうが、真帆だって喜んでくれるだろう。その言葉に理緒は一瞬笑顔を浮かべ、それからちょっと申し訳なさそうな顔になる。
「ありがとう…でも、無理言ってごめんなさい」
「ううん、気にしないでよ、理緒ちゃん」
ひろのはそう言って理緒に微笑みかけ、それから片付けに入った。理緒の弁当箱にお弁当の残りを詰めてやり、自分の空いたタッパーを一つにまとめ、布で包むとリュックサックにしまいこんだ。その間に、他の少女たちも弁当箱や水筒、レジャーシートを片付けて行った。
片づけが終わると、時間は集合時間まで1時間半くらい残っていた。そこで、ひろのは提案した。
「さて、時間までまだもう少しあるね。どこか別の場所に行ってみようよ」
「「さんせ〜い!」」
一行も異存はなく、まずは志保お勧めのフィールドアスレチックに行き、腹ごなしに軽く運動した。それから花畑を歩いたり、ポニーを飼っている小さな牧場を見たりしていると、あっという間に集合時間の2時がやってきた。
「それではこれより下山する。帰りは下山道を使うが、しおりに地図が載っているので、道を間違えないよう注意すること」
木林先生が言うと、生徒たちが「はいっ!」と唱和した。個性派ぞろいの東鳩高校の生徒たちだが、こういうときは結構素直だ。
「それでは、2−Aより進むように」
別の先生が指示し、ひろのたちを含む2−Aの生徒たちは下山道に踏み込んで行った。標準では1時間半もあれば行きに着いた駐車場に到着するはずだった。
最初は何事もなく進んでいたひろのたちだったが、降り始めてから30分後、志保があることに気がついた。
「あれ?なんだか景色が見えないと思わない?」
その言葉に、ひろのたちは辺りを見回した。確かに、さっきまで木々の陰から見えていたはずの景色が、真っ白に塗りつぶされている。
「せやね。霧でも出てきたんかな…」
智子がそう言った時、風に乗って白い微粒子のようなものが流れてきた。それはたちまち密度を増し、あたりの景色が白く塗りこめられていく。
「わっ…すごい霧…!」
ひろのは息を呑んだ。下山道の周りを囲む並木がたちまち乳白色の闇の中で淡い墨色のシルエットに変わった。気温も急に下がり始め、さっきまでいた山頂よりも寒く感じられるほどだ。
「山の天気は変わり易いって言うけど…こんなにいきなり濃い霧が出るなんて…それになんだか寒い…」
ひろのは身を震わせた。冷たく湿った空気が決して厚手とはいえない彼女たちの服を通して入り込み、急激に体温を奪い始めた。
「急いで降りたほうがええね。雨になるかも知れへん」
智子が言った。この天気の急変は、霧と言うよりは低いところに発生した夕立の前触れの積乱雲のような気がする。つまり、彼女たちは今雲の中にいるのだ。
その想像が正しければ、すぐに雨になるはずだ。この状況で雨なんかに降られた日には、風邪を引くどころの騒ぎではない。山道はぬかるんで歩き辛くなるし、ただでさえ悪化している視界がますます悪くなる。6人はできるだけの速度で先を急いだが、10分もたたないうちにぽつり、とひろのの鼻に冷たい雫が当たった。それはたちまち数を増し、本格的な雨降りになる。
「やば、どこか雨宿りできるところを探さなきゃ!」
志保が言い、6人は道を駆け下った。と、言っても、足元が滑る事を考えるとあまり早い速度では移動できなかったが。すると、丁度良い岩壁のオーバーハングした場所があり、そこへ走りこむ事ができた。しかし、その時にはすでに服までびしょ濡れになっていた。
「うう…寒い」
ひろのは自分の肩を抱きしめた。気温はますます低下していた。濡れた服が身体に張り付いて余計に寒い。
「参ったなぁ…まぁ、通り雨だろうししばらく待つか…って、あれ?」
ふと気がつくと、ひろのは自分一人だけになっていた。一緒にいたはずの5人は影も形も見えない。
「あかり?志保?いいんちょ?…レミィ!?理緒ちゃん!?誰でもいいよ!いないのっ!?」
慌てて叫ぶが、その声は周りの白い霧と雨粒に吸い込まれていくだけ。それどころか、岩壁の前の道をさっきから誰も通る気配がない。よく見れば、登山道とは思えない細い道だ。
「ど、どうしよう…どこかで道を間違えちゃったんだ…!」
ひろのは自分のおかれた状況に愕然となった。慌ててしおりの地図を取り出し、状況を確認しようとしたが…一番外側のポケットに入れていたしおりはしみこんだ雨水でぐしゃぐしゃになり、文字を判読することすらできなくなっていた。
「とにかく…雨がやむのを待とう」
ひろのは手近な岩に腰掛け、リュックからスポーツタオルを取り出した。濡れた服はどうしようもないが、肌の濡れている場所だけでも拭き取ればずいぶん気分が違う。ついでに髪も軽くはたくようにして水分を吸い取らせた。ようやく気分が落ち着いてくると、ひろのは辺りを見回した。
霧のせいで見通しは全く聞かない。ざぁぁぁぁ…という雨の音以外には何も聞こえない。人の気配もしない。世界に自分ひとりしかいなくなってしまったかのような、圧倒的な孤独感。
(みんな…心配してるかな)
岩壁に寄りかかり、岩の屋根の向こうに見える空を見上げる。白かった空は鉛色に濁り始め、雨脚は衰えることなく道に小さな川を作り始める。これでは、道を戻って行って正しいルートに復帰することもできない。
「遭難したときは動かないほうが良い、って聞いたことがあったっけ…とりあえずじっとしておいたほうが良いかな」
口に出して確認し、ひろのはこの場で待つことにした。
「…くしゅんっ!」
身体がぶるっと震え、ひろのはくしゃみを一つした。湿気が高いせいか、なかなか服が乾いてくれないのだ。おかげで容赦なく体温が奪われていく。ひろのは持ってきたレジャーシートが断熱材入りだったことを思い出し、リュックの中から引っ張り出して身体に巻きつけてみた。多少は暖かいような気もする…が、今度は布地のじっとりした感触が気持ち悪い。
「…まぁ、誰も見てないし…」
ひろのは言い訳しながら、思い切って濡れたままの服を脱ぎ、下着姿でタオルを重ねたレジャーシートに包まった。服は風でも吹いて飛ばされないように重石を載せて乾いた岩の上に置いておく。この方が暖かく心地が良い。服も岩が水分を吸ってくれるので、多少はマシになるだろう。
その作業を終えると、ひろのは時計を見た。時間は4時を少し回ったところだ。予定では駐車場に帰り着いているはずの時間である。雨は相変わらず降り続けている。
「まだ動けないか…」
こんな事になるんだったら、雨具の一つも用意しとくんだった、とひろのは思ったが、後悔しても始まらない。しかし、一度気持ちがマイナスの側に振れると、なかなか立ち直れないのもまた確かだ。
(…本当に…どうしよう。北海道の時と良い、何てドジなんだろう、私は)
道に迷ったりはぐれたり。勝手の分からない雨の山中で、ただ一人きり。ものすごく心細い。その瞬間、とうとう堪え切れずに涙が溢れた。
(うっ…ちがう…私は…こんなに弱くないはずなのに)
浩之だった頃、留守がちな両親と離れて、ずっとあの家で一人で暮らしていた。一人でいること、孤独と付き合うことには慣れているはず…と思ったのだが。
「浩之」から「ひろの」へ変わって以来、彼女の周りの人間関係はものすごく濃密なものになっていた。親友ができ、家族ができ、落ち着く暇はないけど、とても心地よい世界。それが当たり前になってしまった今では、もう昔のように孤独と上手に付き合う、ということはひろのには難しい事になっていたのだ。
「あかり…志保…みんな…」
身体を丸め、ひざに顔をうずめる。そのうち、疲れが出たのか、ひろのはそのまま眠りの世界に落ちていった。
その目が覚めたのは、がさがさという茂みを掻き分けるような音がしたからだった。
「…ん?」
ひろのは目を開けた。眠り込んでいた時間はあまり長くはなかったらしい。まだ視界は明るかった。時計を見ると、6時ちょっと前だ。幸いなことに、霧は依然として濃いが、雨はやんでいるらしい。
そこまで観察したとき、再びがさがさっ!と、さっきよりも強い調子で茂みを掻き分ける音がする。
「な…なに…?」
ひろのの声が寒さ以外の要素で震えた。目の前の茂みが激しく揺れ始めたのだ。ばきばきと枯れ枝を踏むような音も混じっている。かなり大きな生き物が近寄ってきているらしい。
(も、もし…熊とか野犬だったら…!?)
当然逃げなくてはならない。しかし、恐怖のせいか、身体が凍りついたように動かない。心臓が激しく鼓動を打ち、冷や汗が流れる。そして、茂みの中に潜んでいた何かがついに姿を現した。
「…えっ!?」
ひろのは信じられない光景を目にした。茂みの中から出現したのは、彼女の良く知っている人物だったからだ。
「やっぱり長瀬さんだ!」
「…ま、雅史…?」
その人物――雅史は、ひろのを見て微笑んだ。ビニールの雨合羽を羽織っていて、泥や枯葉で汚れてはいるが、間違いなく佐藤雅史本人である。
「長瀬さんがはぐれたって聞いて、みんなで探してたんだ。見つかってよかったよ…って、わあっ!?」
雅史の言葉が途切れたのは、ひろのに抱きつかれたからだった。
「うっ…うっ…うああぁぁぁぁんっっ!!」
雅史に抱きついたまま、ひろのはとうとう堪えきれずに泣き出してしまった。緊張の糸が途切れたのだった。
「長瀬さん…落ち着いて、もう大丈夫だから」
憧れの女の子に抱きつかれた雅史が真っ赤な顔をしながらも、ひろのを落ち着かせるように頭を撫でながら言う。しばらく雅史の胸に顔を預けてしゃくりあげていたひろのだったが、なんとか落ち着きを取り戻してきた。
「ぐすっ…でも、どうしてここが?」
雅史に質問する。すると、雅史は霧の向こうを指差した。
「僕はあっちの方の斜面を探してたんだ…その時、一瞬霧の切れ間ができて、この場所が見えたんだよ。はっきり長瀬さんだって分かった訳じゃないけど、人影もあったから…」
「…そうなんだ…」
ひろのが納得すると、雅史は赤い顔のまま言いづらそうな表情で言った。
「それで…その、長瀬さん。服…着てくれないかな。風邪引いちゃうよ?」
「え?…きゃあああぁぁぁっっ!?」
思わず胸を押さえてしゃがみこんでしまうひろの。そう、服は乾かしてる最中で、下着姿だったことをすっかり忘れていたのだ。やはり真っ赤になったまま、雅史に向かって言う。
「ご、ごめん…すぐに着替えるから…ちょっと待っててね」
「あ、う、うん。じゃあ僕向こう向いてるから」
そう言って、ぎこちなく動き出す二人。回れ右した雅史の背後で、ひろのは服を手に取った。生乾きでごわごわっとした感じではあったが、我慢して着込む。
「お、お待たせ」
「う、うん」
服を着終わったひろのが声をかけると、雅史は合羽の内ポケットから地図を出した。現在地を確認しているらしい。
「それじゃ、行くよ」
「うん…あれ?」
ひろのはリュックを背負って立ち上がろうとして…失敗してしりもちをついてしまった。岩にすがって立とうとするが、なぜかうまく歩けない。
「おかしいな…身体が…」
悪戦苦闘するひろの。異変に気付いた雅史が側に寄り、ひろのの額に手を当てる。
「…ちょっと熱っぽいかもしれない。無理しないで、長瀬さん。僕が背負っていくから」
ひろのが雅史の言葉を理解するまで、しばし時間が掛かった。
「え?え?ええっ!?そ、そんな…悪いよ…」
雅史が自分をおんぶして行くつもりだとわかり、慌てて頭を横に振るひろのだったが、雅史が有無を言わせず彼女の身体を担ぎ上げた。
「きゃっ!?」
驚くひろの。女の子の身体とは言え、身長の変わっていない自分は相当に重いはず…と思うのに、雅史は軽々と彼女を背負って山道を登っていく。
「雅…佐藤君、ごめんね」
抵抗するのをやめて素直に雅史に身体を預け、礼を言う。雅史はにっこりと微笑んで振り向いた。
「良いよ、気にしないで、長瀬さん」
再び前を向き、力強く道を進んでいく雅史。その背中でひろのはそっと目を閉じた。
(あ…雅史って、けっこう背中広いんだな…なんだか…すごく安心できる)
男としては華奢に見える雅史も、それよりも華奢な女の子になっている今のひろのにはずいぶんたくましく思える。安心感からか、再び襲ってきた睡魔に抵抗しかね、眠りに落ちていくひろの。そんな彼女に苦笑しつつ、雅史はゆっくりと駐車場への道を降りていった。
そして、数日後。
無事に駐車場にたどり着いたひろのだったが、しっかり風邪を引いてしまい、その日の夜と日曜日はおもいきり寝込む羽目になってしまった。真帆やセバスチャン、急を聞いて駆けつけた来栖川姉妹、マルチとセリオの看病もあって(綾香とマルチはどっちかというと邪魔していたが)熱は引いたのだが、大事を取って月曜も休み、ようやく登校である。
「みんな、おはよう」
ひろのがクラスに入ってくると、一斉にクラスメイトたちが彼女の元に駆け寄ってきた。
「ひろの、もう起きられるの!?」
「長瀬さん、大丈夫!?」
「心配したよ、長瀬さん!!」
口々に言うクラスメイトたち。本気で心配されていた事を知り、思わず涙ぐみそうになるひろの。
「うん…もう大丈夫!ありがとう、みんな」
ひろのは感謝の意を込めてにっこり笑いながら回復をアピールする。すると、出遅れたのか、自分を囲む輪の外にいる雅史の姿に気付いた。
「あ…」
視線の合った二人の顔が赤くなり、本人にしか分からないことだが、心臓の鼓動が早くなった。
「お、おはよう…長瀬さん。元気になってよかったね」
「う、うん…その、この間はありがとう、雅史君」
二人の会話を聞いていた級友たちが、ある一箇所を聞きとがめた。
『雅史君…?』
そう、それまでひろのは人前では雅史のことを「佐藤君」と呼んでいたのに、この日は「雅史君」と名前で呼んでいたのだ。
ひろのとしては、雅史は命の恩人だし、彼は知らないが彼女にとっては大事な幼馴染でもある。そこで、少しでも他人行儀な呼び方をやめようとおもって「雅史君」と呼んでみたのだが、それは人々の想像を逞しくさせるには十分だった。
「佐藤〜!!貴様、長瀬さんと何があったぁっ!?」
「きりきり白状しろっ、この野郎ぉっ!!」
叫ぶや否や、雅史に踊りかかり、拳や丸めた教科書で彼の頭を殴打しまくる男子陣。
「長瀬さん!!佐藤君と何かあったのっ!?」
「そりゃ、助けてくれた白馬の王子様だもんねぇ。気にもなるわよねぇ」
片や、ひろのの周りに押しかけ、口々に問いかける女子たち。目を白黒させて、ひろのは叫んだ。
「な、何がって…そりゃ助けてもらったし…それだけ…って、それで片付けるのは悪いけど…とにかく何もないよ!何もなかったんだからぁっ!!」
否定しながら、なぜかひろのの胸に小さな痛みが走った。
(…なんだろう?この気持ち…)
いまだ殴られまくる雅史を見ながら、ひろのは自分でも名状しがたい感覚に首を傾げていた。
(つづく)
次回予告
あの日から、雅史を見るたびに不思議な胸の苦しさを覚えるひろの。いったい自分はどうなってしまったのか、なぜ雅史を見るたびにこんな気持ちになるのか。どうしても決着をつけなくてはならないと感じたひろのは雅史に一日付き合ってほしいと申し出る。その瞬間、再び立ち上がる人々。はたして、あの悪夢の一日は再現されてしまうのか?
次回、第二十八話「地獄のカオスでーと・リターンズ!」
お楽しみに〜
後書き代わりの座談会 その27
作者です。急遽予定を変更して、一人でお送りします。
え〜…今回の展開は、ひろのが女の子らしさを増しつつあった時期に考え付いたものです。可愛い女の子路線を驀進し続ける彼女ですが、彼女に恋をする人間は多かれど、ひろの自身にはそういう気持ちはあるのかどうか。彼女が恋をすることはあるのだろうか、と。
そこで、今回のシチュエーションを考えてみたわけですが…果たしてうまくいっているのやら。
なお、相手を雅史にした理由は、矢島では世間が許さないだろうと思ったからで、垣本君では「名前で呼ぶ」というネタが使えないから。女の子にしなかったのは、彼女たちが強すぎて一発で手篭めにされかねないからです(笑)。
まぁ、ある意味今後の展開を占うかもしれない次のお話にご期待ください。
…さて、そろそろここも危ないな。逃げ出すか…(部屋のドアを開ける。次の瞬間…)
ちゅどーん!!
…ぐ、ぐはぁ…どこで居場所がバレたんだ…?(がくっ)
瓦礫と化した室内。ぼろ雑巾と化した作者の上に舞い落ちる一枚の紙。そこにはこう書かれている。
「天誅 長瀬ひろの保安協会」
収録場所:国内某所
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