あゆちゃんの冒険

第6話
放課後の出来事

作:モーグリさん

 午後の授業が始まった。
 あゆは再び名雪の鞄の中で授業を聞く事になった。もし顔見知りの人間以外に今のあゆの姿を見たら大騒ぎになってしまうだろうから、当然と言えば当然だが。
「ああ、今日の授業は退屈だな」
 あまりの授業の退屈さに眠気に襲われた祐一が背伸びをして後ろを振り返ると、香里が興味深そうな顔つきでじーっと名雪の鞄を覗き込んでいた。どうやら香里はあゆが気に入ったようで、機会があればまたあゆを頬ずりしたいらしい。
(香里の奴、さっきの出来事であゆが好きになったんだな。また変なことやらなきゃいいけど)
 祐一は再び前を向いて授業を聴き始めた。

 キンコンカンコン

 チャイムが鳴ってようやく今日の授業が終わった。教室ではクラスメートがあわただしく帰り支度を始めていた。
 祐一も鞄に今日の教科書やノート類を詰めて帰る支度をしていた。するとそこに鞄を持った名雪がやってきた。
「祐一、これからわたしは陸上部の部活動があるんだよ。いくらわたしでも陸上部まであゆちゃんを連れて行くことは出来ないし、あゆちゃんも早く家に帰らせた方がいいと思うの」
「そうか、名雪は今日陸上部だったんだな」
「そこで祐一があゆちゃんを責任を持って自宅まで返しね。お願いだよ」
「よし、分かった」
 祐一は名雪の鞄からあゆを取り出すと、今度は自分のポケットにあゆを入れた。
「さああゆ、これから帰るぞ」
「うんっ」
 あゆも納得した。

 祐一が鞄の整理を終えて教室を出ようとしたとき、そこに香里と北川がやってきた。
「ねえ相沢君、もう一度月宮さんを貸してくれない?」
 香里があゆを触りたくて祐一に頼み込んできた。
「香里、午前中に一回思う存分触っただろ。あゆも嫌がってるし今日はもうダメだ」
「ケチね、まあいいわ。一回でも月宮さんを触れたんだから。じゃあね相沢君」
 香里はそう言うと教室を後にした。

「よう相沢」
 今度は北川が話しかけてきた。
「何だ北川?」
「朝持ってきた『戦国葉鍵隊』のDVD、後で水瀬さんちで見ようって約束しただろ。俺は今日これから水瀬さんちに寄ってくから、そこで二人で見ようぜ」
「そうだった、じゃあ北川、一緒にうちまで来るか?」
「OK、一緒に帰ろうぜ」
 祐一と北川はそう言うと、二人一緒に鞄を持って教室から出て行った。

 二人が教室から出ると、廊下の向こう側に美汐が立っているのが見えた。
(あれ、あんな所に天野がいる。どうしたんだろう?)
 祐一は美汐がなぜこんな所にいるのだろうと不思議に思った。
「ん、どうした相沢」
「北川、俺ちょっと用が出来たからさ。先に校門の外の所で待っててくれないか」
「じゃあ、俺は先行ってるぜ」
 北川にそう言って外で待っていてもらってから、祐一は気になっていた美汐の方へ向かった。

「おい、どうしたんだ天野」
 祐一が立っている美汐に声をかけた。
「相沢さん、あの子が、真琴が帰ってきたという話は本当なのでしょうか?」
 美汐は真剣な眼差しで祐一に向かってたずねた。
「ああ、本当さ。真琴はあの後ちゃんと家に戻ってきたんだ。今では過去の病気がうそのように元気にはしゃぎまわってるぞ」
 祐一は苦笑いを浮かべながらうれしそうにそう答えた。
「そうですか、それは本当に良かったですね」
 それを聞いた天野もうれしそうに答えた。真琴が帰ってきたことは美汐にとっても重大な事件だったからだ。
「でも、どうして真琴は戻って来れたんだろう?」
 祐一は真琴が帰ってきてからずっと疑問に思っていることを美汐にたずねた。
「それは相沢さんの思いが生んだ『奇跡』だと思います」
「思いが生んだ『奇跡』?」
「そうです。相沢さんが真琴に『戻ってきて欲しい』と強く念じた思いが、あのものみの丘の妖狐たちに通じたのだと思います」
「そういうものなのかな?」
 美汐の力説に何となく納得がいかないものを感じる祐一。
「ちょっとセンチメンタルでしたか?」
 美汐が少し照れながら言った。
「いや、そんなことはないさ、とにかくあいつが、真琴が戻って来れくれたんだもんな。それだけで俺は十分さ」
 祐一はそう返答した。

 真琴について話し終わった二人は校舎の外に向かって歩き始めた。そして階段を下りて下駄箱で靴を履き替えた。
 祐一が下駄箱から出ると、そこに校門の門柱のそばで真琴が一人で立っているのが見えた。
(あれ、真琴だ、何やってるんだろう?)
 祐一が不思議に思っていると、
「あっ、祐一!見つけた!」
 下駄箱から出てきた祐一を見つけた真琴がそう叫んで祐一の元に飛び込んできた。
「おい、どうしたんだ真琴。何でそんな所に突っ立てるんだ?」
「あのね、真琴は祐一が帰ってくるの待ってたの」
「そうかそうか、えらいぞ、真琴」
 祐一はそう言って笑った。そして真琴の肩をポンポンと叩いてやった。
「ありがとう、だから後で肉まん買って」
「はいはい、分かったぞ、真琴」
 肉まんの催促にちょっと困惑気味の祐一だった。

「お久しぶりですね、真琴、天野美汐です。憶えていますか?」
 二人の会話を見ていた美汐が真琴に話しかけた。
「わーい、美汐、美汐。お久しぶり」
「もう体調は大丈夫ですか?」
「真琴、もう体の方は大丈夫よ。だから心配しないでね」
 真琴の顔が笑顔になった。真琴は美汐と出会ったことがとてもうれしかったので満面の笑みを浮かべた。
「あうー、ただいま美汐」
 美汐に向かって照れながら挨拶をする真琴。
「お帰りなさい、真琴」
 美汐もうれしそうな顔でそう挨拶を返した。

「ところで相沢さん。先ほどから何かがポケットの中でもぞもぞと動いているようですが、いったい何なのでしょうか?」
 少し前からじっと祐一のポケットをのぞき込んでいた美汐が質問した。
「祐一、真琴も見たい、見たい。見せて」
 真琴もつられて言った。
「天野、真琴、驚くなよ。実はポケットの中には・・・」
 祐一はポケットの中からやにわに15センチほどに小さくなったあゆを取り出した。そして彼女を手に乗せて二人の目の前に見せた。
「あうー、何であゆがこんなにちぢんじゃってるのよ!?」
 あゆを見た真琴が驚きの叫びを上げた。
「まあ、この子は一体?」
 あゆを見た美汐はビックリした顔つきになった。
「こんにちは、ボクは月宮あゆだよっ」
 ポケットから出てきたあゆが美汐に向かって元気に答えた。
「天野、真琴、驚かしてしまったようだな。すまん」
 祐一がフォローする。
「相沢さん、この子はコロポックルですね」
「えっ!?」
「この町の近辺の野山には人間よりも小さなコロポックルと呼ばれる人たちが住んでいると言います。この話はものみの丘の妖孤と並んで有名な話です。この子も皆さんから見れば危険に見えるかもしれませんが、この子たち本当は心優しいものたちなのです」
「うぐぅ、ボクはコロポックルじゃないもんっ」
 美汐の話を聞いてすねるあゆ。
「違うんだ天野、これには深い理由があって」
 美汐が誤解しているのを見て祐一はあわてて割って入った。

 祐一は美汐に今までの事情を話した。
 今までにあゆが何度もたい焼きの食い逃げばかりして周囲に迷惑ばかりかけてきたこと、そしてその罰として秋子さんが特製の謎ジャムであゆを小さくしてしまったことを説明した。
「そうだったのですか、分かりました」
 祐一の説明を聞いた美汐は納得した。
「しかし、いくら食い逃げで他人に迷惑をかけたからといって、お仕置きで体を小さくしてしまうなどと、こんな酷なことはないでしょう」
 美汐は顔を下にそむけた。
「あれっ、天野さん、泣いてるの?」
 あゆが美汐の表情を見てそう言った。
「いえ、私はただ月宮さんの立場に同情したのです。月宮さんも小さくなってからはずいぶんと苦労をされているでしょう?」
「うん、ボクも今朝から色々と事件続きで大変だったんだよ」
 あゆが答えた。
 そのあゆの返事を聞いた美汐は、さっそく自分の制服のポケットからハンカチを取り出した。そしてハンカチで大事そうにゆっくりとあゆをつかむと、そおっと自分の顔に持っていき、自分の頬にあゆの顔を当てた。
「月宮さんの体はとても柔らかくて暖かい、まるで妖精のようです。こんな大切な月宮さんですから、これから皆さんも大事にしてあげなければいけませんね」

「あうー、面白そう。真琴にも触らせて」
 それを見ていた真琴がたまらなくなって声を上げた。
「はい」
 美汐が真琴にあゆを手渡した。
「わーい、すっごくかわいい」
 真琴は一目見てあゆが気に入ったようだった。
 あゆを手渡された真琴はうれしそうにあゆを肩に乗せたり頬ずりをしたりして楽しんだ。しばらくすると今度はあゆを手の平に乗せてお手玉のようにころころ転がして遊びだした。ついにはあゆを手でつかんでさかんに上下に振り回し始めた。
「あはは、面白い、面白い」
 大喜びであゆをおもちゃにしてはしゃぎまわる真琴。
「うぐぅ、やめてよっ、目が回るよっ」
 たまらずあゆが悲鳴を上げる。
「止めなさい、真琴!月宮さんがかわいそうですよ」
 それを見ていた美汐が真琴をたしなめた。
「今の月宮さんは小さくてちょっとした衝撃でも大けがをしてしまうんですよ。真琴も『自分が月宮さんの立場だったら』ともっとよく考えてから行動しなさい」
「あうー、美汐、ごめんなさい。あゆちゃん、ごめんね」
 さすがにやりすぎたと思った真琴が反省した。
「分かればいいのですよ」
 美汐も納得した。

「おっと、さっきから校門の外で北川を待たせてあるんだった。早く帰らないと北川のヤツ怒ってるだろうな。真琴、早く帰るぞ」
 さっきした北川との会話を思い出した祐一が急いで校門の外へ帰ろうとした。
「相沢さん、もしよろしければ私も相沢さんの家に行ってもいいでしょうか?」
 そこに美汐が声をかけた。
「天野、どうして急に?」
「実は真琴と色々とお話をしようかと思っていたのです。真琴の部屋も見てみたいですし」
「そうか、俺は北川とDVDを見てるから別にかまわないけど」
「ありがとうございます」
「わーい、美汐、一緒に帰ろう」
 それを聞いていた真琴がうれしそうにはしゃいで校門の外へと走っていった。


 さて、こちらは代わってあゆが通っている花山第二小学校の六年一組。小学校なので高校より一足早く授業が終わり小学生たちが帰宅を始めていた。

「やれやれ、ようやく授業が終わったぜ」
 席に座っていた色黒のちび少年がそう言って思いっきり背伸びをした。彼の名前は八谷良平、もっともクラスメートは普段彼のことをハチベエのあだ名で呼んでいた。
 ハチベエは得意な体育を除いて勉強の成績が悪く、普段からよく言えば元気すぎる、悪く言えば無鉄砲な性格のためにクラスのトラブルメーカーとなっていた。当然、女子生徒からの人気もなかった。
 ところが今年から入学してきた新しいクラスメート女の子、月宮あゆは違った。事故で7年間も眠ったままだったという彼女は、女の子でありながら自分のことを「ボク」という口ぶりと、その17歳という容姿に似合わない子供らしい態度とおっちょこちょいな性格のせいで、たちまちハチベエと友達になった。それは今までの「女子にはもてない」というハチベエのジンクスをくつがえす出来事だった。
 ハチベエはあゆと友達になってからは彼女からたい焼きをおごってもらったこともあった。あゆを連れて一緒に釣りに出かけたこともあった。そうこうしているうちに、いつしかハチベエはあゆに単なる友達関係を超えた淡い恋心を抱くようになっていた。

「よう、モーちゃんにハカセ。授業が終わったから放課後に近所の柳が池まで釣りに行かねえか?」
 ハチベエは親友の太っちょの少年、奥田三吉と眼鏡をかけた少年、山中正太郎に声をかけた。二人とも普段はモーちゃんとハカセというあだ名で呼ばれている。
「うん、じゃあ行こうか」
「賛成、そうしよう」
 二人もハチベエの意見に賛成した。ところが・・・

「こら八谷君、待ちなさい」
 そこに学級委員の荒井陽子が声をかけてきた。
「今日休んだ月宮さんの分のプリント、これを月宮さんの自宅まで届けてちょうだい」
「えっ、でも何でまたこのおれが?」  
「八谷君が普段月宮さんと仲が良さそうだったからよ。だからあなたに任せようってわけ、わかったかしら?」
「ええ、そんな」
「ここに月宮さんの自宅までの地図を書いておいたわ。これを頼りに行けば大丈夫よ」
 荒井陽子はそう言うとプリントの入ったフォルダーと手書きの地図をハチベエに手渡した。
「そりゃないよ、とほほ・・・」

「悪いねハチベエくん、今日の釣りはぼくたち二人で行って来るよ」
「じゃあハチベエくん、頑張って月宮さんの所にプリント渡してきて下さい」
 モーちゃんとハカセはそう言うとそそくさと教室を出て行った。

「ちぇ、結局おれ一人だけかよ」
 結局ハチベエはたった一人であゆの自宅―水瀬さん宅―に行くことになった。
 しばらく歩くと辺りは小ぎれいな住宅街が立ち並ぶ一角になってきた。しかし大川を越えたこのあたりは普段ハチベエが行ったことのない場所である。いつもとは見慣れない町並みにハチベエは次第に不安になってきた。
「しっかしこの地図、本当に大丈夫なんだろうな?」
 地図を片手にぶつくさ言うハチベエ。
 そうこうしながら10分ほど歩いていくと、右手に二階建ての白い建物が見えてきた。荒井陽子からもらった地図によるとここがあゆの自宅らしい。

 その頃、祐一たちのいない水瀬家では秋子さんが一人でのんびりしていた。秋子さんは午後のひと時を居間でワイドショーを見ながら楽しんでいた。
 そんなとき、突然家のベルが鳴った。

 ピンポーン

「あら、こんな時間にお客さんかしら?珍しいわね」
 秋子さんはそう言うと玄関に向かって歩き出した。

「はい、水瀬です。どなたですか?」
 秋子さんがドアを開けると、そこには今まで見たことのない野球帽をかぶった色黒のちび少年が立っていた。背中にランドセルを背負っているところを見ると小学生のようである。
「こんにちは、花山第二小学校六年一組の八谷良平です。今日休んだ月宮あゆさんのプリントを届けに来ました。月宮さんのお宅はここでいいんでしょうか?」
 そのちび少年、ハチベエが緊張しながら秋子さんにそうたずねた。
「あらあら、誰かと思ったらあゆちゃんのお友達だったんですね。ええ、あゆちゃんの家はここですよ。どうぞ中へいらっしゃい」
「それじゃお邪魔します、月宮さんのおばさん」
 ハチベエはそう言うと玄関から中に入っていった。
「あらあら、そんなにかしこまらなくても。今度からはわたしのことは『秋子さん』と呼んで下さって結構ですよ」
「はい分かりました、秋子さん」
「あなたは八谷さんでしたね。リビングルームへいらっしゃい。今お茶とケーキをお持ちしますからね」
 秋子さんはさっそくハチベエをリビングルームに通した。
 二人がリビングルームに入ると、そこには一匹の猫が床の上にちょこんと寝そべっていた。
「ほらぴろ、お客さんよ。いい子だからここでおとなしくしているんですよ」
「うなー」
「よしよし、いい子ね」
 秋子さんはぴろになでなですると、今度はキッチンに向かって歩いていった。
(月宮さんところの秋子さんって、うちの母ちゃんと違ってすごく若くて美人だな)
 リビングルームのイスに座りながらふとハチベエはそんなことを考えていた。

 秋子さんがキッチンから紅茶とケーキを持ってやってきた。ハチベエはさっそく紅茶とケーキを食べ始めた。
「秋子さん、これが今日担任の宅和先生から月宮さんに配られたプリントです」
 ハチベエは出されたケーキを一口食べてから、秋子さんにプリントの入ったフォルダーを手渡した。
「あらあら、それはわざわざどうもありがとうございます」
 秋子さんはプリントを眺めながらそう答えた。
「ところで月宮さんのリハビリって大丈夫なんですか?今日から一週間もリハビリのために学校を休むって聞いてたんで心配してたんです」
 ハチベエが心配して質問した。
 秋子さんはあゆをジャムで小さくした後、小学校に「あゆちゃんは病院のリハビリ治療があるので、ここ一週間ほど学校を休みます」と通知していたのだ。そのため、小学校のクラスメートは「あゆは病院に通っている」とみんな信じていたのである。
「ええ、あゆちゃんは病院で元気にリハビリに励んでいますよ。安心して下さい」
 秋子さんはそう言ってにっこり笑って答えた。
「それを聞いて安心しました。てっきり月宮さんの病気がまた悪化したのかな、って心配していたのもですから」
「ええ、八谷さんに心配してもらって、あゆちゃんもうれしいと思いますよ」

「ところで八谷さん、もしあなたの都合がよろしかったらしばらくここにいてもいいですよ」
 ちょうどハチベエがケーキを食べ終わった頃に秋子さんがそう言った。
「えっ、本当にここにいてもいいんですか?」
 ハチベエがビックリしてたずねた。
「今は祐一さんや名雪もいなくてうちにはわたし一人だけですから」
「じゃあ秋子さん、これからしばらくここにおじゃまします」
 ハチベエはうれしそうな表情でそう答えた。
 その返事を聞いた秋子さんは先ほど手渡されたあゆのプリントを持ってリビングルームを出ると居間の方へと戻っていった。

 一人になったハチベエはふと壁にかけてある時計を見た。ちょうど4時を指していた。
「4時か、そろそろアニメの始まる時間だな」
 ハチベエはテーブルに置いてあるテレビのリモコンをつかむと、ボタンを押してテレビをつけて見たいチャンネルにあわせた。
 テレビ画面にアニメのオープニングとテーマソングが映し出された。
「おっと、『宇宙不沈戦艦Key』がちょうど始まったところだ」
『宇宙不沈戦艦Key』はSFアニメ物で、小学生の間でも大人気だった。ストーリーは突如地球を侵略してきた凶悪な宇宙帝国「葉帝国」に対し、滅亡寸前の人類がその総力を結集して建造した宇宙戦艦「Key」で立ち向かうというものだ。当然のことながらハチベエもこのアニメにはまっていた。

『Key攻撃に向かった第一次攻撃隊、全滅しました!』
『ぐわぁ、これが奴の20インチショックカノンとコスモ三式弾のパワーなのかっ!?』
『何だと、宇宙魚雷を50本も受けて沈まないとは!モ、モンスターだ・・・』
「うーん、いつ見てもSFアニメ物は燃えるぜ」
 ハチベエはダイニングルームで一人夢中でアニメを見ながら楽しんでいた。

『サンゴ色に輝く惑星が集まる宇宙の名所、サンゴ星団。打倒宇宙戦艦Keyに燃える来栖川艦隊はその星域を決戦場に選んだ。次回「激闘!サンゴ星団海戦」お楽しみに。
 この番組は株式会社ビジュアルアーツ、ポプラ社の提供で・・・・・・』
「ああ、今日の展開も面白かったなあ」
「にゃー」
 気が付くといつの間にか猫のぴろがハチベエの横に座っていた。
「そうか、お前もアニメを見てたんだな。よしよし、お前も面白かっただろ?」
 ハチベエは笑いながらぴろの首元をなでなでしてやった。
「にゃー」
 それが気持ちよかったのかぴろはうれしそうに一声あげた。

 アニメが終わって次の番組を見ようかな、とハチベエが思っていたそのとき、突然玄関が騒がしくなってきた。

 ガターン

「ただいま、秋子さん」
「こんにちは。名雪のお母さん、相沢の親友の北川です。ちょっとお邪魔します」
「あうー、ただいま、真琴たちといっしょに美汐が来たの」
「天野です、ごめん下さい」
 祐一たちが帰ってきたのだ。


 つづく


あとがき

 第6話です。今回は真琴と美汐が登場しました。真琴は第3話で出す予定が出せなかったので今回ようやくの登場となります。真琴ファンの方、遅れてすみません。
 それと後半でKanon以外の作品からの初登場となるあゆの友達の八谷君(ハチベエ)が登場しました。実は第4話で登場の伏線を張っておいたのですが、気が付いたでしょうか。
 次回は第7話、おそらく次の話であゆの一日の行動が終わる予定です。


管理人のコメント

>「ねえ相沢君、もう一度月宮さんを貸してくれない?」

香里…空気読めよ…


>「ありがとう、だから後で肉まん買って」

真琴、ちゃっかりしてます(笑)。


>「相沢さん、この子はコロポックルですね」

この街は北海道だったのか…そう言えば、北海道には狐もいるし、そうであってもおかしくはありません。


>「しかし、いくら食い逃げで他人に迷惑をかけたからといって、お仕置きで体を小さくしてしまうなどと、こんな酷なことはないでしょう」

さすが美汐。非常にまともな反応です。他の人も見習うべきですね(笑)。


>彼の名前は八谷良平、もっともクラスメートは普段彼のことをハチベエのあだ名で呼んでいた。
>二人とも普段はモーちゃんとハカセというあだ名で呼ばれている。


そして、ついにこの三人組も登場。どういう風に物語に絡んでくるのかと思いきや。


>いつしかハチベエはあゆに単なる友達関係を超えた淡い恋心を抱くようになっていた。

なんとっ!?


>「おっと、『宇宙不沈戦艦Key』がちょうど始まったところだ」

「不沈戦艦紀伊」と言う小説は実在します。


さて、あゆに恋しているらしいハチベエ少年ですが、小さくなったあゆを見た彼はどういう反応を示すのでしょうか(笑)。次回が楽しみですね。


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