あゆちゃんの冒険
第2話
スプーンあゆちゃん(後編)
作:モーグリさん
夢・・・
夢を見ていた・・・
「うーん、うーん、うーん」
あゆが目を覚ました。さっきのジャムのせいかまだ頭がズキズキ痛んでいた。
「あれ、ボクはたい焼き食べて、中にジャムが入って、気絶して、どうしちゃったんだろう?」
あゆが周りを見渡すと、今まで見たことのない風景が広がっていた。あゆはリビングのテーブルの上にいる、らしかった。しかし様子が変だった。テーブルやテーブルに置かれている皿やコップやスプーンがみんな妙に大きくなっていた。
「あれあれっ?」
いや、よく見ると逆にあゆの体が縮んでいたのだ。身長は横のコップの大きさから見てだいたい15センチくらいだろう。
「うぐぅ、ボクどうなっちゃったの!?」
「あらあら、ようやくお目覚めですね、あゆちゃん」
後ろから声がした。あゆが振り向くとそこには秋子さんがいた。今のあゆから見るとまるで巨人のような大きさだった。
「うぐぅ、秋子さん、助けてよっ」
あゆが秋子さんに泣きついた。
「あゆちゃん、あなたの体が小さくなったのは私の作った特製ジャムの効果なのよ」
「え?」
「あゆちゃんが食べたあのジャムは私が作った特製ジャムなの。この特製ジャムはね、食べた人の体を小さくする効果があるのよ。このジャムを作るのに色々な薬効のある成分を混ぜて三日三晩かけて作ったから、作るのにとっても苦労したわ」
「特製ジャムって、まさかあの時食べたたい焼きに入っていたあのジャムのこと?」
「正解です。あのジャムはわたしがたい焼き屋さんにプレゼントしたものなの」
秋子さんが笑顔で答えた。
「うぐぅ、ひどいよ秋子さん。何で秋子さんがそんなことするのっ」
あゆが泣き顔で言った。
「これもあゆちゃんがいけないのよ」
「え?何で」
「あゆちゃんは今まで何度もたい焼きの食い逃げばっかりしてきたでしょ。そのせいでたい焼き屋さんや周りの人たちの迷惑をかけてきたのよ」
「うん・・・」
「だからね、わたしは『今後あゆちゃんが絶対食い逃げをしませんように』って思ってあゆちゃんにお仕置きをすることを考えたの。この姿ではたい焼きの食い逃げは出来ないでしょう?」
秋子さんはそう答えた。
「ねえ秋子さん。ボクは一生このままなの?元の大きさは戻れないの?」
あゆが涙声でたずねた。
「大丈夫よ。このジャムは効果が一週間で切れるように作ってあるから心配しなくていいわ。一週間もこの姿のままだったら、あゆちゃんもこれにこりて二度とたい焼きの食い逃げをしないですよ、ね」
「秋子さんごめんなさい。もう食い逃げはしないよ」
あゆが謝った。
「もうおそいですよ」
秋子さんが笑顔で答えた。
ガッターン
バタバタバタッ
その時、玄関で勢いよくドアが開く音がした。祐一と名雪が学校から帰ってきたのだ。
「お母さん、ただいま〜」
「秋子さん、今帰りました」
「秋子さん、ジャムの効果どうでした?」
帰ってくると真っ先に祐一がたずねた。
「ばっちりですよ、祐一さん」
どうやら秋子さんはあらかじめ特製ジャムの事を祐一たちに聞かせてあったようだ。
「お母さん、あゆちゃんどこにいるのかな?会いたいんだよ」
「あゆちゃんはリビングにいるわ。今二人にも見せてあげるわ」
あゆはすっかり見世物と化していた。
「あゆちゃん、どこかな」
「おい、あゆ、帰ってきたぞ」
名雪と祐一がリビングに入ってきた。そしてテーブルの上にちょこんと座っているあゆを見つけた。
「わー、あゆちゃん、かわいいんだよー」
「おおっ、ちっちゃくなったな、あゆあゆ」
祐一があゆの頭をなでなでしながら言った。
「うぐぅ、ひどいよ祐一君」
あゆが頬をプーッと膨らませて怒った。
「ところで秋子さん、何で特製ジャムを使ってあゆを小さくしたんです?秋子さんのジャムって確か性転換じゃ?」
「祐一、それは作者が違うよ」
名雪がすかさずツッコミを入れる。
「祐一さん、あゆちゃんを男の子にしてもあまり意味がないでしょ。もしも性転換して男の子になったらさらに食い逃げが悪化しそうだったからよ」
「そうだよな、あゆはもともと一人称が『ボク』だし、男の子にしてもあまり印象が変わらないな」
「それに祐一さん、わたしが子供のころ読んだ童話で悪さばかりしていた少年が罰で小さくされる話があったでしょ。それをヒントにしたの」
「そういえばそういう話があったな、題名が思い出せないけど」
「確か『ニルスの不思議な旅』だよ」
名雪が答えた。
「そうだったな、サンキュー名雪」
「祐一、今度からあゆちゃんのこと『スプーンあゆちゃん』って呼ぼうよ」
あゆを見ていた名雪が提案した。
「名雪、俺はどうもそのあだ名は気に食わないな」
「そうかな?かわいいと思うよ」
「祐一君、名雪さん、みんなボクを置いてきぼりで勝手に話をして!ひどいよっ!」
それを聞いていたあゆが怒り出した。
「ごめんね、あゆちゃん。実はあゆちゃんのためにいいもの買ってきたんだよ。『たい焼き』だよ」
名雪が鞄からたい焼きの入った袋を取り出した。
「わーい、食べる食べるっ」
あゆは大喜びで名雪がテーブルに載せた自分の身長ほどもあるたい焼きに飛びついた。やっぱりあゆはあゆだった。
もぐもぐもぐ
自分と同じくらいの大きさのたい焼きを必死にほおばるあゆ。何ともユーモラスで愛くるしい場面だった。
「うぐぅ、うぐぅ・・・」
しばらくしてあゆが苦しそうにせきこみ始めた。
「あゆのやつ思いっきり食べるからむせちゃってるぜ」
「わあ、お母さん、かわいそうだよ」
「あゆちゃん、ミルクを持ってきましたよ」
秋子さんが冷蔵庫からミルクを持ってきた。
秋子さんはそれをちっちゃな小皿に移し変えてからあゆの目の前に差し出した。
こくこくこく
一心不乱に小皿からミルクを飲むあゆ。
その姿はとっても愛くるしかった。
「うわー、その姿とってもかわいいよ、あゆちゃん」
名雪がうっとりとした目つきであゆを見ながらつぶやいた。
ミルクを飲み終わってしばらくするとあゆが眠そうな顔つきになった。
「秋子さん、たい焼き食べたら眠くなっちゃった。眠ってもいいかな?」
「いいですよ」
「そうだ、あゆちゃん、わたしのハンカチを使ったらどう?」
名雪が鞄からハンカチを取り出してテーブルに敷いた。
「秋子さん、名雪さん、祐一君、おやすみなさい・・・」
あゆはハンカチの上に寝転がるとまぶたを閉じてその場で眠り始めた。
眠った姿のあゆもまた可愛らしかった。
「ねえお母さん、明日学校にあゆちゃんを連れて行っていいかな?」
「そうだな、あゆのやつ前々から俺たちの学校に行きたがってたしな。ちょうどいい機会だから連れて行こうか」
「了承(一秒)」
つづく
あとがき
皆さんはじめまして、はじめてさたびーさんの所にSSを投稿することになったモーグリです。
今回がはじめてのSSなのでまだ馴れない部分も多く読みにくい部分や誤字、脱字等があると思います。
それと、自分はあまり体調がよくないので他の人のように早いペースで更新出来ないと思いますが、出来れば早いうちに「第3話・学校編」に取り掛かりたいと思います。
このSSを掲載していただいたさたびーさん、および読んで頂いた皆さん、本当にありがとうございます。
管理人のコメント
さて、前回で見事に毒物(爆)を口にしてしまったあゆですが…
>あゆの体が縮んでいたのだ。身長は横のコップの大きさから見てだいたい15センチくらいだろう。
これが本当のちびあゆ…(殴)
>「祐一、今度からあゆちゃんのこと『スプーンあゆちゃん』って呼ぼうよ」
これはまた懐かしいネタを…と言うか、名雪の世代が知っているとは思えないのですが。
>名雪がうっとりとした目つきであゆを見ながらつぶやいた。
既に愛玩動物扱い…あゆ、哀れ(笑)。
>「そうだな、あゆのやつ前々から俺たちの学校に行きたがってたしな。ちょうどいい機会だから連れて行こうか」
連れて行って何をする気なのやら…
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