「直子〜。そろそろ準備しないと遅刻するわよ〜」
「判ったわよ。勇希〜」
私は勇希にそう返事するとハンガーに掛けられていた。
晴空の制服に袖を通しそして鏡の前で胸元のリボンを直して異常がないことをみてそして全身を一回りして見て見た。
見た目には制服に着られているように見えるがそれも一瞬のことであった。身支度を終えた私は勇希の元に向かった。
「おはよう。勇希」
「ん。おはよ。直子。良く似合っているんじゃあない。あ〜なんかそう言う制服を着ている直子も可愛い〜」
勇希はそう言うや否や私の身体に抱き着いてきた。
「ちょ、ちょっと。早くしないと遅刻するよ。新学期早々遅刻なんて言ったら洒落にならないわよ」
「あ、そうね。じゃあ行きましょ」
そんなこんなで私達は学校に向かう道を歩いていた。スカートがめくれないかと少々不安な思いがあったがまあ勇希と一緒にいるのでそれほど心配もしていなかった。まあ勇希の腕っ節はそこいらの男なんかよりもあるしね。私も腕力に関してはなら勇希と似たようなものなんだけれどね。そして学校に近づいた頃後ろから声が聞こえてきた。
「よ、お二人サンお久しぶり〜。相変わらずだな〜」
「お、お兄ちゃん。やめてよ。あ、勇希先輩、直子先輩おはようございます。また九三中練見せてくださいね。今「信濃」のモデル製作していますから完成したときにでもまた写真に収めさせてくださいね」
桜花がにこやかに朝の挨拶と、ともにトンでもない事を言ってきたが、私は少々ぎこちない感じで返事をしていた。
「あ、おはよう桜花ちゃん、疾風も久しぶりだな。それは別にいいけれどね。桜花ちゃん」
「お、珍しいな直子の方から挨拶するなんて、こりゃ明日雨が降るかもな」と疾風が言うと勇希が噛み付いてきた。
「ちょっと。疾風。それってどう言うことよ」
「悪い悪い。済まなかったな。二人が相手じゃあ、俺も勝ち目無いしなあ」
「それってまるであたし達が狂暴コンビって言っているのと同じじゃあない。どうやら本当に涅槃に行きたいようね。は・や・て」
勇希は指を鳴らして疾風の元に駆け寄っていた。それを見た私は桜花ちゃんを巻き添えにしまいと逃げる算段をしていた。
まあ、疾風のことだから死ぬことは無いだろうと思いつつ、私は桜花ちゃんの手をとってその場から去っていた。そして桜花ちゃんが
私に話し掛けて来たので答えることにした。
「先輩。お兄ちゃんと勇希先輩って何時もそうなんですか」
「ん、そうね。まあ、お互いに本気で遣り合っていないからまあ一種のコミュニケーションだね。もっとも、あの二人が本気でやったら
どちらか一方もしくは両方とも数ヶ月は病院にいる事になるけどね。私も勇希よりか喧嘩慣れしているけれど、私は面倒だからやりたくないだけだね。桜花ちゃん」
「へえ。あのお兄ちゃんがね。意外な一面を見ちゃった」
「それは良かった。実の兄妹でも意外と知らない一面って奴があるしね。まあ姉妹もいない私が言うことじゃあないけれど」
そんなことを言いながら私と桜花ちゃんの二人は先に校門をくぐって其処で分かれたのであった。
そして教室で待つこと10分後、私が時計を見るとそろそろ予鈴が鳴る時刻になる頃、一組の男女が教室に掛け込んできた。
良く見ると勇希と疾風の二人であった。二人とも擦り傷が数カ所ある程度であり見た目には酷いダメージを追っているようには見えなかったが、全力疾走が堪えたらしく息も絶え絶えに私に噛み付いて来た。
「な、直子。薄情者〜あたしのこと待っていてくれたって良かったのに」勇希。
「そ、そうだぜ。気がついたら桜花と共に行ってるなんて酷いぜ」疾風。
二人の言葉に私は苦笑しつつこう答えた。
「ごめん、ごめん。だってさ桜花ちゃんに二人のシーンを見せるには忍びなくてね」
「「なんだ。そうだったのね(のか)」」
「やっぱり勇希と疾風って傍目から見ると気があう二人って奴なのかな」
「なんでこんなガサツな奴とおにあいなんていわれなきゃならないのだ」
「そうよ。あたしがなんであんな奴と…」
「こら〜。おまえら。とっくにHRが始まっているんださっさと席につけ〜」
担任の雷が私達に落っこち、私達の言い争いも終止符がうたれた。
私達はそれぞれの席に座わり午前中の授業を受けていた。そして午前中の授業が終わり昼休みの時間になった。
「はあ〜。ようやく食事の時間ね。ねえ直子どこで食べよっか」
「ん。屋上でいいんじゃあないか。それにしても勇希と一緒に食べるなんて久々だね」
「そうね。それじゃあ行こう」
私達はいろいろな会話をしながら屋上に上がった。そして適当な場所を見つけてビニールシートを広げて
何時でも食べる体制にした私は勇希から弁当箱を受け取ってその包みを取り除いて蓋を開けてみた。
「うーん。やっぱり勇希のお弁当っておいしそうに出来ているわね〜。それにこのご飯にかかれているパンダが可愛いわ〜」
私が素直な感想を言うと勇希の方は顔を赤らめていた。
「あの。直子…。実はそれパンダじゃあなくてくまなんだけれど…」
「あ、そうだったのてっきりわたしはパンダかと思ったわ」
「はあ〜。絵を書くの止めようかな。いっつも直子に間違われているんじゃあねえ。あたしって絵の才能無いのかな」
勇希がつぶやいたのを聞いた私はすぐさま反論した。
「でも、私には出来ないからさ、やっぱり勇希は凄いよ」
「ふふ。ありがと。早いところ食べないと後々大変だよ」
「そうだね。それじゃあいただきま〜す」
それから二人はある程度会話をしながら弁当をつついていた。
そして二人とも食事が終わって茶を一杯飲んでくつろいでいるところに疾風の奴が乱入してきたのであった。
「いよ〜お二人サン。ってもう終わっちまった後か…」
「生憎だったわね疾風。あたし達ならもうお昼終わっちゃったわよ」
「ああ〜。直子ちゃん。勇希が苛める〜」そう言やいなや疾風は私の背中に抱き着いてきた。
私は咄嗟のことだったので反射的に彼を投げ飛ばしていた。
「あたた。連れないじゃあないか。折角二人の仲なのにさ」と疾風。
「疾風。あんたも、いいかげん直子にべたべたするんじゃないわよ。直子が切れたらあたしよりか怖いわよ」
「あたた。納得したよ…。でも俺は諦めないぜきっと直子を俺の彼女にしてやる…」
疾風がそう言い終わる直前に鈍い音が聞こえて疾風は崩れ落ちていた。私がふと見ると勇希が回し蹴りを決めていたのであった。
私は恐る恐る何をしたのか聞いてみた。
「ね、ねえ。勇希。さっき疾風に何発蹴り入れたの」
「ん。蹴りだけじゃあないわよ。鳩尾に掌底1発と側頭部に回し蹴り1発ってところかしらね」
「んで、彼をどうするのよ」私が勇希にたずねてみると勇希の答えはあっさりとしたものだった。
「ん。ほっときゃ気がつくでしょ。まあこれでも死なない程度に手加減しているからね」
「そう。それなら良いけれど。でもせめてキズを冷やしてやらないとね…。それにしても、疾風の奴落ちる直前に天国見れて良かったのかもね。
勇希言いたくないけれど、貴方さっきパンツ見えていたわよ」
「な、直子。知っていたなら言いなさいよ」
「言う間も無く、蹴りがはいっていたんじゃあ、いくら私でも止められないわよ。さて冷やしておきますかね」
私は伸びている疾風の顔に水でぬらしたタオルをあてがったのである。そう仏様のように顔が覆い被さるようにし、手を胸に合わせておいた。
そして一連の処置が終わった私達がたちあがると丁度、予鈴が鳴り響いていたのであった。
「あ、直子。急がないと遅れたら洒落にならないわ。行くわよ」
「あ、待ってよ〜。勇希〜」
私達は伸びている疾風を尻目に教室へと歩いていた。そして彼が戻ってきたのは放課後のことであった。
私達が教室を出ようとしていた頃、疾風が教室内に入ってきて勇希に食って掛かってきた。
「ゆ〜う〜き〜。お前やりすぎだっつうの。死ぬかと思ったぜ」
「あんたがあたし達にちょっかい掛けなきゃ。あたしだってやりたくは無いわよ」
「なんだと。やるか」
二人の言い争いがヒートアップするのを見た私は喧嘩の仲裁に入ることにした。
「はいはいはい。二人とも夫婦喧嘩は犬も食わないって言葉知っている。それとここじゃあいろいろと危ないから、止めといた方が良いわよ」
私が二人の喧嘩の仲裁に入ると二人はあっさりと引き上げたのであった。
「そうね。疾風この決着は場所を変えてやるわよ」
「望むところだ。勇希」
「え、え。駄目だよ喧嘩は。二人とも病院行きなんて私嫌だよ。だから二人とも仲良くね」
「は〜。なんか直子のそんな姿を見ていたら毒気抜かれてしまったぜ。確かに俺も調子に乗りすぎたな。直子ありがとうな。
それから二人ともじゃあな〜」
「直子にちょっかい出すんじゃあないわよ〜。それからまたね〜」
疾風はそういって教室から去っていった。そして勇希も彼の去りぎわにぶっきらぼうだけれど挨拶をしていた。
そして私は勇希に話し掛けた。
「それじゃあ帰ろうか。勇希」
「そうね。幸いというか今日は珍しく二人ともバイトが無いから。一緒に帰ろう直子」
「そうだね」
私達二人は校門を出て道を歩いていた。
「はあ〜」
「ん。直子なにため息なんかついちゃってさ」
「ん。またバイト探さないといけないからさ」
「そうだね。でもまあ労災保険が下りたから当分はバイトしなくても良いんじゃあない」
「まあ。確かにそれは言えてるけどね。でも、私達の夢の為には額に汗して働かないと駄目だしね。さて、それじゃあバイト誌を買いに駅前へ寄り道しますか。勇希も一緒に行く」
「直子と一緒なら何処でも良いわよ。それに食料の買い出しもしないと駄目だしね。それにしてもあたし達って所帯地味た会話しているわね」
「しょうがないじゃあない。少しでも生活費を切り詰めようとするなら必然的にそうなるわね。ん。何かしらあれは」
私はそう言うや否や脱兎のごとく駆け出していた。勇希も影のごとく私の後を追いかけていた。
そして2分ほど走ってみると一人の女性が不良たちに絡まれていた。勇樹は喧嘩に乱入したのであった。
「あんた達何しているのよ。か弱い女の子相手にカツアゲ。情けないわね〜。でっかい図体しててさ。どうせ稼ぐなら額に汗して働きなさいよ」
勇希が、一気呵成に不良たちにまくし立てると、不良たちは私に気がついたらしく、私達に顔を向けてきた。
「んだと。このアマやるか」
「おもしれえ。カツアゲよりも強姦の方が、やりがいがあるぜ」
「くくく。泣きを入れるなら今のうちだぜ」
「勇希」
私は勇希に目配せし、勇希が肯いたのを確認すると、すぐさま行動に移した。
そして不良たちがゲラゲラ笑っている隙に、私は一瞬躊躇したが、すぐさま気持ちを切り替えて不良たちの急所、そう男性諸君にしか判らない箇所へ膝蹴りをくらわせたのである。
そして勇希がひるんだ隙をついて当身を不良たちに食らわてせいた。
私は、すばやく状況を見て、不良たちがしばらく動けない状態にしたことを確認するや否や。すぐさま女性の手を取って大通りまで逃げた。
勇希も当然一緒である。そして大通りの広場で私達は足を止めた。
「あ、あの、痛いんですが…」
女性が私に訴えて来た。それを聞いた私は、今まで手を取ったままであった事に気づきすぐさま彼女の手を離した。
「ああ、ごめんなさい。私は深山直子。そして隣にいるのが勇希。あなた危なかったわよ。
あそこは女の子が一人で来るような場所じゃあないわよ」
「え、そうなんですか。ごめんなさい私、この町に来たの始めてで勝手がよく判らなかったの。私は前田治子。助けてくれて、ありがとうございます。二人とも強いですね」
「別にかまいませんよ。それに女の子を苛める奴が、あたし一番嫌いなの」と、勇希。
「そうですか。あ、いけない。もうこんな時間だ。あたし行かなきゃ。
それじゃあ、ありがとうございました。きっとこのお礼はするわ」
そう言って治子は二人から離れて駅の方へと走り去っていった。
そしてそれを見ていた私達はそれぞれの感想を述べていた。
「なあ、勇希。凄い女性だったね」
「そうね。直子行こうか」
「そうだね。じゃあ行こう」
そして、私達は商店街へと向かっていったのである。そしてその日の夜更け、夕食も終わり私は自室で一人バイト誌を眺めていたのであった。
「うーん。なかなか条件的に適合するのがないな。おや、これは結構行けそうだな。ふふふ、ここに決めた。そうと決まれば善は急げ。
履歴書なんかの書類を準備するわよ」
そう、私はとあるファミレスのバイトの記事を見つけたのであった。
そしてその時の決断が後の私達の運命を左右する決断になるとは当時の私には想像がつかなかった。
一週間後 〜Piaキャロット三号店〜
「ふふふ、直子〜。良く似合っているじゃあない。やっぱり直子って美人なんだよ」
「勇希こそ、似合っているよ。折角見つかったこの仕事だから、やれることを全力でやるだけだね」
「あ、二人とも着替えが終わったみたいね。それじゃあいらっしゃい。みんなに紹介するわ」
「「はーい。治子さん」」
そう私が、バイトの記事を見つけて手続きを行おうとしたところ、勇希も一緒にやりたいと言ってきた。
特に断る要素も無かった私は一緒に仕事が出来るならそれでも良いなと思い、勇希の願いを受け入れたのである。
そして、私達の面接時に治子さんと再会したのであった。それを見たとき私達は世間の意外な狭さにおどろいたのであったが、もっと驚いたのは治子さんの方であったろう。そして、治子さんの強い推薦もあり、私達二人はすぐさま採用試験に合格し、「Piaキャロット三号店」の店員として働くことになった。これから私達はどうなるのかわからないけれど、やれるだけのことはするわ。だって私の夢はこれから始まるところなんだから。
後書き
霜月天馬です。今回は新学期の一こまを書いてみました。ちなみに劇中に出てきた治子さんの位置付けなんですが、一応、店長候補生という位置付けですね。位置的には店長の補佐、フロアチーフを兼ねると言ったところですかね。なお、ここの制服は他のPiaキャロットの店と違い黒を基調としたかなり落ち着いた感じの制服とおもってください。それでもワンポイントとして腰についた白いリボンが目立ちますがね。まあ四号店のぱろぱろタイプのベースになったと思ってくれれば良いかと思います。それではまた次回お会いしましょう。