夢。

 夢を見ている。

 それは悲しい夢。

 愛しい人が、目の前で倒れている。

 彼女は動くこともなく、目を開くこともなくて……。

 ただ、彼女に何もしてやれない自分が、悔しくなる。

 自分のいるべき場所は、翼が刺さって、大切な人たちもろとも奪われて……。

 その翼が、舞い上がる。

 黄色い翼となって。

 それが、俺に襲いかかって来る。まっしぐらに向かって来る。

 はじめは墜とそうとする。でも、相手は強く、美しく空を舞った。

 尊敬すべき大空の勇者。そして、恐るべき俺の仇敵。

 俺はたちまち不利になる。追い詰められる。

 どんなに逃げても、どんなに離れようとしても、そいつは迫ってくる。

 やがて、黄色い敵が目の前に迫り、機関砲の砲口が、閃光を――。



 
カノンコンバットONE シャッタードエアー


   
Mission9 翼の末裔



 
2005年3月14日 0603時 Air皇国 首都カンナ郊外 ISAF空軍ウラハ基地


「!!」
 相沢祐一は顔を恐怖で歪ませ、夢の世界から帰還した。
 飛び起きたはずみで、薄い羽毛布団がベッドからずり落ちる。
「……また、あの夢か」
 水瀬家が墜落した戦闘機の直撃を受けて倒壊し、恋人の名雪とその母親の秋子が意識を失う悪夢は、その悲惨な現実が起きてから時々は見ていた。最近ではその夢に「黄色の13」に殺されるシーンまで加わり、その度に彼はうなされ、そして飛び起こされていた。
 額にじっとりと滲んだ汗を手の甲で拭う。下着も不快感を与えるほどに汗を吸い、肌に張りついている。
「名雪……」
 祐一はそう呟き、すぐに立ち上がった。全身を濡らす苦しみの汗と、目から滲み出した悲しみの涙を洗い流すために。

 朝のシャワーを終えた祐一は、基地の食堂で朝食を摂っていた。
 水瀬家が災いに見舞われる夢を見た日の朝食のメニューは、いつも決まっている。
 イチゴジャムがたっぷり塗られた食パンと、ホットコーヒー。
 前者は名雪の大好きだった食べ物のひとつで、後者は水瀬秋子が毎朝、祐一と名雪のために淹れてくれたものだった。
 しかし、メニューは同じでも、味は大きく違っていた。食堂のコックの名誉のためにつけ加えるが、彼らは明日をも知れぬパイロットたちのために腕と心を尽くして食事を作ってくれている。が、比較する相手が悪かった。
(秋子さんの作ってくれた方が、美味しかったな)
 そして、それを食べていた頃のことを思い出す。
 朝、学校に遅刻しそうだというのに、イチゴジャムのパンをゆっくりと食べる名雪を急かして、名雪のコーヒーを奪って飲み干して、名雪が頬を膨らませながらぼやいて、秋子さんがそんなやり取りを見て微笑んで……。
(幸せだったな……)
 たとえ同じメニューを食べていても、昔と今では何もかもが異なっている。それを思うと、無性に悲しくなった。
(名雪、またお前とイチゴジャムを食べたいよ。秋子さんの作ったイチゴジャムを……)
 心の中で哀願するようにそう訴えると、聞き慣れた声が正面から聞こえ、祐一の意識は現実へ引き戻される。
「よう、メビウス1。朝なのに陰気なツラして、どうかしたか?」
 祐一の戦友、斎藤が朝食を乗せたプラスチック製のトレイを手にし、祐一の向かいに立っていた。
「斎藤か。いや、何でもないんだ」
「そうか、ならいいけど」
 祐一の返答からその心情を察したのか、斎藤はこれ以上詮索しなかった。そして彼も腰を下ろし、自分の食事を始める。ふたりはここ最近の空戦とか、戦争全体についての流れや噂話など、自分たちが持っている限りの情報を開陳しながら、食物を口に運んだ。
 このような会話は別に珍しくない。彼らにとってはごく普通の食事風景である。現に、彼らの周りで朝食を取る他のISAF軍人たちも、大なり小なり似たような行動を取っていた。
 しかし、この日ばかりは男同士の朝食に、大きな変化が現れた。
「祐一君?」
 祐一と斎藤が、明るく可愛い声に振り向くと、そこには淡い栗色のショートカットをカチューシャで飾った、可憐と表現し得る女性が朝食のトレイを持って立っていた。その上には大きな紙袋が鎮座している。
「おっ、あゆか」
 祐一は気軽に言うが、彼の向かいに位置する男は、三音階の口笛を発し、次いで道端で金塊でも見つけたような顔つきになる。
「うんっ! おはよう祐一君。ここ、いいかな?」
「あっ、どーぞどーぞ! さっ、こっちへ」
 ぱっと席を立ち、隣の椅子を引いてそこにあゆをいざなう斎藤。彼の行為は、まるで敬愛する上官への対応に似ていた。祐一は斎藤がなぜそんな滑稽な行動に出たのか、頭の中に疑問符を浮かべる。
「ありがとう、斎藤さん」
「いいえ、どういたしまして。スカイエンジェル――ああ、いや、月宮中尉」
(ああ、そうか。前に聞いたっけな)
 あゆと斎藤のやり取りを観察する祐一の記憶の奥底から、かつて同僚から聞いた噂が発掘された。
 いわゆる、斎藤があゆのことを好きなのではないか、という話だ。無論、この「好き」は、「Like」ではなく「Love」である。斎藤のコールサイン「アクトレス(女優)」は、あゆのことを指している――祐一は噂を耳にした時、教えてくれた者からそう説明を受けたものだった。
(まぁ、確かにあゆは人気者らしいけど……)
 あゆがISAF内で女優のごとき人気を誇るのも、斎藤がそのあゆに想いを寄せていることも、最初は単なる与太話だと思っていた。だが、それが事実だと気づくまでにそう長い時間は必要としなかった。容姿に惹かれる者、空中での指揮管制に惚れた者、または多少子供っぽい言動に魅力を覚える者など、人気の理由はいくつかに分かれたが、祐一の周りでもあゆに一定の好意を持っていない者を探す方が難しかった。
「斎藤さんって、優しいんだね」
「いやー、そんな誰にでもって訳じゃないんだけどね、月宮中尉」
「ボクのことはあゆでいいよ」
「そう? じゃあ……あゆさんと呼ばせてもらうけど」
「うん。そっちの方が自然でいいな」
 そのあゆは斎藤と、まるで数年来の友人同士のように親しげに話している。以前、コンベース港の上空で考えたことが真実ではないかという思いがますます強まる祐一だった。
(望みはあるぞ、斎藤)
 俺は大抵、あゆのサポートを受けてミッションをこなしてきたけど、あゆがコールサインじゃなくて名前で、しかも階級じゃなく「さん」付けで呼ぶのは俺とお前(俺は「君」だけど)くらいしかいないようだ。となると、お前はあゆに憧れるISAFパイロット数千人の中でも、見込みは極めて大きいだろう……。
 もしかしたら、あゆは俺に好意を持ってくれているのかもしれない(これまでの体験からほんの少しそう思っただけだけど)が、俺には名雪がいるし、俺がなぜパイロットになったのかも、このふたりは知っている。
 名雪はいつになったら目覚めるんだろう。もしかしたら、このまま……。
(いや、そんなことはない!)
 ともすれば悲観的になる思考を、祐一は頭を振って追い払う。その時、あゆのトレイの上にあった紙袋の中から出されて、山状に積み上げられたそれに気がついた。
 魚――いや、正確には魚をデフォルメした小麦粉を焼いた食物。綺麗な焦げ目が食欲をそそる。中には間違いなく餡が入っていることだろう。
 祐一が前にそれを見たのは、もう2年以上も前になる。たい焼きだった。
 しかし、祐一がたい焼きとあゆのふたつから連想することはひとつしかなかった。
「あゆ、お前まさか……またやったのか?」
「ん? なにを?」
「食い逃げだ」
「う、うぐぅ……そんなことしてないもんっ!」
「食い逃げ?」
 一体何を話しているのか理解できない、といった表情で問う斎藤に、あゆはぶんぶんと手を振りながら叫ぶ。
「わーっ、うぐうっ! なんでもない、なんでもないよっ!」
「じゃあ、このたい焼きはどうしたんだ?」
 再び祐一が聞く。
「作ってもらったんだよ、ここで」
「……たい焼きなんてメニューにあったっけ?」
 斎藤が率直な疑問を口にしたが、あゆは今度は淀みなく答えた。
「ないよ。だから、お願いして作ってもらったんだよ。ボク、たい焼きが大好きだから」
 あゆは花が咲くような笑顔のまま、たい焼きの頭にかぷっ、とかぶりついた。

 普通の朝食だったはずが、いつの間にかたい焼きパーティと化していた。3人でたい焼きを頬張りながら、和気あいあいと話す。
「そういや、何でお前がここにいるんだ?」
「メビウス1、知らなかったのか? 昨日はあの“スカイエンジェル”がここに来るって、ちょっとした騒ぎだったんだぞ」
「そうなのか? 全然知らなかった」
「ボクのAWACSは昨日、急にここに行くように命令されたんだよ」
「理由は聞かされてないのかい? あゆさん」
「うん……。とにかく、ボクたちは命令を受けただけだから」
「そうか……」
 祐一はそう言って頭を捻った。
 あゆが優秀な管制官だというのは、祐一も含めた全てのISAF軍人が認めるところだ。その彼女が、何の意味もなく移動を命じられることなどあり得ない。今後、それも近いうちに何か新たな作戦があるという兆候かもしれない。
 しかし、祐一も斎藤も、そしてあゆも、何も知らない。大抵ミッション数日前、遅くとも前日には必ずブリーフィングがあるはずなのだが……。
(まさか、秘密の――極秘任務でもあるのか?)
 そこまで考えが及んだ時、食堂にアナウンスが流れた。
『空軍の相沢中尉、斎藤中尉、月宮中尉、大至急ブリーフィングルームに出頭して下さい。繰り返します……』
「え、ボクたち?」
「ああ、そうみたいだな」
「うぐぅ……まだ食べ終わってないよ……」
 そう言って、涙目でトレイに残った数個のたい焼きを見やるあゆ。そんな彼女を見て、祐一は思った。いくらこいつがISAF随一のAWACS乗りになっても、こういうところは昔から変わらないな、と。そしてそれを微笑ましく感じるのだった。
「後で俺が奢るよ、あゆさん」
「えっ、本当!? ありがとう、斎藤さんっ!」
(斎藤に先手を打たれたな)
 祐一は軽く苦笑した。彼も同じことを言おうとしていたのだ。
 でもまぁ、それで良いんだろうな、多分。名雪のために戦っている俺よりも、斎藤の方がよっぽどあゆを幸せにしてやれるだろうから……。
 そして祐一は表情を引き締める。その顔は相沢祐一中尉の、「メビウス1」としての剽悍なものになっていた。
「ほら、行くぞ。ふたりとも」
「おう。お仕事お仕事っ、と」
「うん! 行こっ!」
 あゆは残っていたたい焼きを名残惜しそうに一瞥すると、その一つをひょいと摘んで口に咥え、ようやく席を立った。男ふたりは既に軍人としての行動を開始している。
「おい、メビウス1。後で『食い逃げ』が何のことか教えてくれよ」
 食堂から出る間際、斎藤が祐一にそう囁いた。顔は少し笑っていたが、なんとなく焦っているようだった。やはりあゆについてのことは何でも気になるらしい。祐一は笑って斎藤に頷いた。
 3人は小走りでブリーフィングルームに向かった。


 
同日 1531時 ノース・オブ・チョッピンブルグ地方


 旅客機は高度を急激に落としていた。
 理由はふたつある。まずひとつは、コクピットが与圧能力を失ったこと。至近距離で炸裂した空対空ミサイルの破片が、操縦席の風防ガラスに直撃してそれを叩き割ってしまったからだ。酸素だけなら非常用の酸素マスクで何とかなるが、気圧や温度は高度を下げないと改善しない。
 もうひとつの理由は、ミサイルの破片が、ガラスを割っただけにとどまらず、旅客機――エアバスA320−100の主操縦士の肩をも抉ったことである。操縦士が負傷して一時的に操縦不能に陥っている。
 気圧の急激な変化と、操縦者の突然の喪失。このふたつの理由が重なって自動操縦装置が緊急作動し、機体を勝手に(与圧されていない操縦室の人間を保護できる高度へ)下げていた。これがエアバスA320−100――Air航空の第701便の置かれた現状で、どう控えめに見ても危ういものである。

「っ……くっ」
「にょわああっ!」
 急降下していた機体が姿勢を水平に戻す。人体にかかる重力はジェットコースターに似ているかもしれないが、この場――701便のコクピット内にいる2名は必死だった。
「……アイ・ハブ・コントロール」
 701便機長、遠野美凪は苦痛に顔を歪め、額には脂汗を浮かべつつも、自動操縦装置を切ってなお操縦を継続する意志を表明した。
「美凪っ、もうやめてよ!」
「……へっちゃらへー、です」
「でも、こんなに血が出てるよ!」
 美凪を補佐する目的で、701便に同乗していた見習い操縦士(本当の意味での「見習い」で、実機の操縦経験は全くない)の遠野みちる――名字が示す通り、美凪の妹である――が、姉の身を案じて怒鳴る。彼女の言う通り、美凪の右肩は鮮血で真っ赤に染まっていた。
「……敵が、来ます……」
「そ、それでもこのままじゃ美凪が!」
「機長さんは、飛行機で一番偉いんです。えっへん。だから、責任も大き……っ」
 深手を負った右腕で、美凪は操縦桿を回した。機体はその大きさに似合わぬ機敏な動きで、Tactics空軍機の放った機関砲の弾幕を紙一重で逃れた。
 敵機が至近を通過し、701便はジェット排気の巻き起こした異常気流に震える。まるで獰猛な肉食獣を恐れる大型草食動物のように。

 そもそも、民間機である701便が戦闘機――Tactics空軍機に狙われるのは、機内にいる人々がその理由である。
 ISAFの上陸作戦が成功すると、ストーンヘンジを開発した技術者とその家族はTactics軍に強制連行された。ストーンヘンジの整備補修を容易に行うためである。ISAFが大陸に還って来たのだから、ストーンヘンジが忙しくなることは火を見るよりも明らかだった。そうなると、もちろん整備の機会も増える。
 一方ISAFも、ストーンヘンジの存在は自軍への大いなる脅威として認識していた。ISAFが大陸の解放を目指すなら、ストーンヘンジの破壊、もしくは無力化は絶対条件だった。その存在がある限り、ISAFに勝利の女神は微笑まない。
 そこでISAFはストーンヘンジ攻略に先立ち、その情報の収集に全力を尽くした。そもそもストーンヘンジは国連管理下の元に建造された隕石迎撃砲、兵器として運用するために造られた訳ではない。だから諸元や性能は広く公開されていた。しかし、それはあくまでも2003年以前――Tactics連邦が大陸制覇に動く前のことで、Tacticsの手に陥ちた後のストーンヘンジは、秘密のヴェール、いや分厚い壁で覆われていた。
 もしかしたら、改造を受けてさらに高性能になっているかもしれないし、装甲が張られて堅固になっているかもしれない。それらの情報を確実に得るためには、ストーンヘンジに工作員を忍び込ませるか、造った本人たちから直接聞き出すしかない。
 諜報(可能であれば破壊も加わる)活動は既に幾度も試みていた。だがその全てがみじめな失敗に終わっている。一度だけ、ストーンヘンジを至近距離で撮影した写真が送られてきたが、それを電波で送信した工作員はその直後、消息を絶った。それ以外に、工作員潜入で得られた成果らしい成果はない。
 では、なぜ技術者の身柄確保という第2の手段をISAFが取らなかったのかというと、それは直接的な――工作員による――情報収集に力を入れ過ぎていた、というのが本当の理由である。それ以外にも、技術者たちがあらゆる場所に分散されていて同時多発的な救出が不可能だった、という理由もあるにはある。
 しかし、ISAFが大陸の土を踏んでから少し経つと、技術者とその家族が1ヶ所に集められたという情報が入る。連行された技術者たちは、ストーンヘンジから十数km離れた小都市に、閉じ込められるように住まわされているというのである。無論警備は厳重で、ストーンヘンジも技術者も断固として渡さない、というTacticsの意志を具現化していた。
 だが、ストーンヘンジ攻略にかけるISAFの闘志は、Tacticsのそれを上回っていたようだ。ISAF陸軍の特殊部隊が苦労の末、連行された技術者とその家族を救出したのである。その後、特殊部隊と技術者一行は民間人に偽装して、あらかじめ手配してあった民間旅客機(Air航空701便のことである)でISAF占領地域への亡命を試みた。
 が、Tacticsとてけして無策を決め込んだ訳ではない。しかも彼らは万全を期した技術者の警護をあえなく破られて面子を潰され、怒り心頭に達していた。
 その結果、Tactics軍中部総軍(Air皇国を含む大陸中部を管轄している)司令部は旅客機ごと亡命者を抹殺するという非情の手段を採択した。一方、ストーンヘンジの砲台長、中崎准将は名誉を重んじる良識派の軍人で、民間人である技術者を戦争に巻き込んだことに負い目を持っていた。そのため彼は亡命旅客機の撃墜措置に激しく抗議したが、たかだか准将の彼に、上級司令部から既に出された命令を覆すことはできなかった。

「……」
 かろうじて敵の一撃をかわした美凪に、限界が訪れる。彼女の手がついに操縦桿を離れ、崩れるように気を失った。
「にょわっ! 美凪、みなぎーっ!」
 その時、コクピットに飛び込んできた人影がふたつ。いや、丸く小さいものも含めて3つ。701便に乗り合わせた医者の霧島聖と、彼女の妹でストーンヘンジの弾道計算プログラムを組んだ天才プログラマー少女、霧島佳乃。そして霧島姉妹の飼い犬(?)のポテトである。
「わっ、座席が血の海だよぉ」
 口元に手をあてて驚く佳乃。しかし、口調からは驚いているという印象を受けることはなかなか難しいだろう。
「佳乃、手伝ってくれ」
「う、うん」
 一方、医者である姉は極めて冷静に言った。妹の力を借りて、計器やスイッチに囲まれた狭い操縦席からどうにか美凪を下ろすと、持参した救急箱を開いて応急手当を始める。
「うーむ、これは酷いな。佳乃、止血をするからこっちを持ってくれ」
「消毒液はまだ使わないの?」
「おっと、そうだったな。佳乃、頼む」
「わかったよぉ」
 霧島佳乃はプログラマーであると同時に、医者である姉の薫陶を受けた結果、看護師の資格も持っている。手際良く美凪の治療をこなしていった。
「ぴこっ、ぴこぴこっ!」
 そこへ、ポテトが救急箱から包帯を咥えて取り出し、聖の元へと持っていく。
「ん? おお、済まない、ポテト」
「ポテトはおりこうさんだねぇ」
 ふたりと1匹の応急治療は、与圧を失っている苛酷な環境下でも、着実に成されていった。機体は再び自動操縦となっていたが、姉を案じつつ見習いの自分にもできること――操作の仕方がわかるエンジンの出力を調整して墜落を阻止していたみちるは、傍らで姉の命が引き伸ばされていることに安堵を覚える。
「えっと、スロットルを少し引いて……美凪をお願いします」
「うむ、任せたまえ。君は飛行機を頼む」
「このまま落ちたくはないからねぇ。みちるちゃん、よろしく」
 その間にも701便は飛び続けるが、新たな危機はすぐそこに迫っていた。今度は外すまいと、Tactics戦闘機――Mig−29が肉薄してきたのだ。
「にょわわわ……ええいっ!」
 みちるは先ほどまで美凪が座っていた操縦席に飛びついた。血に塗れた座席に躊躇なく座ると、やはり血のこびりついた操縦桿を握った。顔の正面にあったはずの風防ガラスは消え失せ、目を開けていられないほどの風圧が小柄な少女を襲う。しかし、彼女は怯まなかった。今や701便に乗る人々――ストーンヘンジの技術者と、彼らを命がけで救ったISAF特殊部隊――の命運は、操縦を経験したことのない見習いパイロットの双肩にかかったのである。

「わああっ!」
「きゃあああっ!」
「落ち着いてください、皆さん!」
 冷静な戦いの続く操縦室とは対称的に、客室はパニックに包まれていた。無理もない。本来安全に飛ぶはずの旅客機がアクロバットさながらの乱暴な飛行をしているのだ。その上、自機が敵戦闘機の襲撃を受けているのはわかっていたから、座席でシートベルトを締めた人々の顔色と感情は恐怖一色に染められていた。
 特殊部隊の隊員たちが乗客を安心させようと怒鳴るが、厳しい訓練に耐え、実戦にも慣れた彼らとて今は乗客と立場は変わらない。機内の落ち着きをどうにか取り戻そうとするも、全く手出しのできない現状、内心では自分たちもどうなるかわからないと思っていた。しかも戦場での号令さながらの声で客を「安心」させようとしているのだから、完全な逆効果になっていた。
 そんな混沌の中、客席の一角だけは騒ぎとは無縁だった。
「お母さん……」
「どうした? 怖いんか?」
「うん……」
 不安そうな表情を向ける神尾観鈴を、母親の神尾晴子がなだめていた。もちろん晴子も恐ろしいと思っている。だが、娘の前でそれを出すことは断じてできない。その点では、神尾晴子は立派な母親と言える。
「大丈夫や、観鈴。今までどうにかなって来たんやから、これからもなんとかなるやろ」
 全く持って根拠のないことを言う晴子。が、晴子の一言は観鈴にとってはこの上ない安心材料になる。
「そうだね、にははっ。うん、大丈夫……ちょっとお水飲んでくるね」
 と、健気に笑いかけた。
「よっしゃよっしゃ! 行ってきぃや。転ばんよう気ぃつけるんやで」
 観鈴は席を立った。激しく揺れる中、通路で何度もよろめきつつも、ISAF特殊部隊員の助けで機内の奥に消えた。
 それを見計らい、晴子はふたつ隣――観鈴の隣の席に、黙って座っていた国崎往人に話しかけた。
「なぁ、居候。ちょっと話を聞いてくれんか? あの子の……観鈴のことや」
「観鈴の?」
「ああ。あの子がウチの本当の子供やないのは、前に話しとったよな」
 往人は以前確かに、観鈴が晴子の実の娘ではないことを聞いていた。観鈴と晴子の両者から。往人は黙って頷くと、晴子は真面目な顔で話を続ける。
「観鈴はな……ウチの姉さんの子なんや。姉さんが早くに死んでまって、ウチは無理矢理姉さんのダンナ――敬介っちゅう奴から観鈴を預けられたんやけど……もう10年以上前の話や」
 過去を思い返す晴子は、どこか遠い目をしていた。
「最初は、あの子のことが鬱陶しいと思った。あの頃のウチは大学での研究が楽しくて楽しくてしょうがなかったからなぁ」
 と、苦笑して言う。が、今度は優しい、本当の笑みを浮かべる。
「でもな、それも最初だけでな、時間が経つにつれて、観鈴のことが可愛くなってきて……まぁ、今は居候の見ての通りや」
 ここで、晴子の顔から一瞬、笑みが消えた。
「いや、一時期ちょっと危ういことがあったんや」
「それは何だ?」
 話の続きを待ちきれない往人が晴子を促す。すると彼女は再びいつものような、くだけた調子に戻って、いや、戻ったふりをして話を再開する。
「橘の家――ああ、姉さんが嫁いだとこなんやけど、いきなり観鈴を返せ、なんて言うてきたことがあってな。いや、そん時は苦労したなぁ〜。ちょうどストーンヘンジ開発の時期と重なっとって、忙しかったうえに橘の家をどうにか説き伏せなあかんかった」
「それで……どうなったんだ?」
「アホ、どうにかなっとったら、今ごろ観鈴はウチと一緒におらんわ」
 思わず「アホとは何だ」と言い返そうとした往人だったが、その言葉は彼の口から出ることはなかった。晴子の顔が、これまでにない悲しみと戸惑いの色を見せたのだ。
「でも、それも今だけかもしれんのや……。橘の家は、まだ観鈴のことを諦めておらん」
 はぁ、と、晴子の口から溜息が漏れる。が、すぐに真剣な表情に戻り、正面から往人を見据えた。
「とにかくウチはそれを全力でつぶしたる。だからな、居候。あんたは観鈴のそばにずっといてくれんか? 観鈴はあんたのことを好いとる」
「晴子……」
「ウチは観鈴に母親らしいことはなんもしてやれんかった。それどころか、今こうして危険な目にあっとるんも、みんなウチの責任や。だから、せめてあの子には幸せになってもらいたいと思っとる」
「あんたは……本当の母親だよ。そこまで考えてるんなら、あんたは本当の母親だ」
 往人が感嘆しながらいつわざる本音を漏らすと、晴子は微かに微笑んで、ありがとな、と言い、往人に質問を投げかける。
「で、どうなんや? 居候、あんた……観鈴のことをどう思っとるんや? それだけは聞かせて欲しい」
 突然の質問に、往人は沈黙した。一体、俺は彼女のことをどう考えていたんだろうか? 単なる友達か? いや、違う。じゃあ妹のような存在? 確かにそう思ったこともある。しかし、いつからだ? 観鈴の存在をそう思えなくなったのは。いや、いつからなんてどうでもいい。今の俺は観鈴をどういう存在として見ているんだ? ……そうか、そうだ。俺は……。
 往人は、今はっきりと自覚することができた。放浪の旅の末、とある海辺の町で出逢った不思議な少女。変わり者ではあるが、優しい、芯のしっかりした少女。その少女の存在は、いつの間にか往人にとって、限りなく大きなものとなっていた。彼はようやくそれに気づいた。
 そして、出された結論は、ひとつ。
「俺は……ああ、そうだ。俺は観鈴のことが、好きだ」
 往人がはっきりと言い切った直後、
「往人さん……お母さん……」
 その声に往人と晴子が振り向くと、話の主題である人物が立っていた。
「観鈴……」
「なんや、聞いとったん――」
 晴子は言いきることができなかった。彼女の娘が、胸元に飛び込んできたのだ。
「往人さん! お母さん!」
 一組の男女の恋が成就し、愛に変わった瞬間だった。

 客室で絆の再確認が成されている間も、操縦室では戦いが続いていた。
「にょわっ! このこのっ!」
「わととっ……お姉ちゃん、揺れるよぉー」
「ぴ……ぴこおぉぉっ!」
「みちるくん、あまり揺らさないでくれるか? 治療ができない」
「そんなの無理っ!」
 確かにそれは不可能だった。自機よりも速く軽快な戦闘機の攻撃を見事に回避している現状では。動きを緩めたらたちまち餌食になってしまう。いや、このままでは緩めなくともそうなる可能性が濃厚だが。
「それにしても……上手いな。君は本当のパイロットだったのか?」
「うにゅ……美凪がやってたのを真似てるだけ……っ!」
 聖の問いに対し、かぶりを振る余裕すらない。敵機の動きをある程度予測して機体を横に反らす。が、今回は敵の方が少しばかり上手だった。主翼が機銃で撃ち抜かれ、一部がささくれ立つ。
「にょわっ、やられたっ!」
 これまで最適に保たれていた空力に狂いが生じた。どこか重要な箇所――例えばフラップにでも命中したのだろうか。速度が落ち、安定性も乱れる。みちるは必死に機体を操ろうとするが、フライ・バイ・ワイヤの操縦装置でも庇いきれないほどの性能低下を招いた機体の操縦は、これまで奇跡的に回避を続けていた彼女の偶然の能力を超えるほど難しかった。
「みちる……まだ、です」
「!? 美凪っ!」
 すると、気を失っていたはずの美凪が、みちるの手に自分の手を添えて操縦桿を握った。機長としての責任感が、重傷の彼女を目覚めさせ、操縦に駆り立てたのである。同時にスイッチ類を操作すると、途端に機体は安定を取り戻す。
「でも、撃たれちゃったよ! 美凪、どうしよう?」
「何もしなくても、へっちゃらです」
 まだ苦しそうな表情をする美凪の言葉はすぐに証明された。
『ISAF空軍“スカイエンジェル”よりAir701便へ。ボクたちが来たからもう大丈夫だよっ!』
 突然通信機から飛び込んできた声に、コクピットにいる4人と1匹の表情が輝いた。
『メビウス1、交戦開始』
『アクトレス、右に同じく!』
 左右を爆音が包む。戦闘機が高速で701便を追い抜き、翼を翻して先ほどまで自分たちをつけ狙っていた敵機へ突っかかっていった。今度は狩っていた方が逆に狩られる立場になったのだ。ISAFで最も有名な戦闘機パイロット、メビウス1とその僚機、アクトレスという狼に。
「言った通りになりました……」
「美凪……助かった……の?」
 脱力して、呆然となって呟いたみちるに、美凪は無言で頷く。しかし、彼女もみちるとそっくりな顔をしていた。
 美凪を蘇生させ、その後は一部始終を見守っていた聖と佳乃も口を開く。無論、彼女たちも安堵の表情を浮かべて。
「お姉ちゃん、もうすることはないかなぁ?」
「うむ、まぁしばらく遠野さんの様子を見るくらいだな。まったく、君たち姉妹は無茶をしてくれるな」
「そうだよ、ホントにビックリしたんだからね。名パイロット1号2号に任命しちゃうよぉっ」
「ぴこっ、ぴこぴこっ」
 霧島姉妹プラス犬1匹の変わった賞賛に、遠野姉妹は疲れた、しかし何かを成し遂げた満足感に溢れる笑顔で答えた。


 
同日 1630時 ISAF空軍ウラハ基地 駐機場


 まだ足はついているな……。生きているという実感をかみ締めつつ、国崎往人は701便のドアをくぐった。
 タラップに出ると、春のやわらかな日差しが彼を迎えた。太陽は西に傾きつつあり、あと小1時間もすれば空は黄昏の光に満たされることだろう。
「往人さーんっ! 早く早くっ」
 どさくさに紛れて告白してしまった女性、神尾観鈴は既に地面に降り立ち、背伸びでもするかのように手を大きく広げていた。まるで往人を出迎えているみたいだった。
 往人が地面に足をつけた途端、観鈴は往人に飛びついた。
「わっ、いきなり何をする」
「にははっ、往人さんだ……」
 観鈴が顔を胸にすり寄せ、しっかりと抱きついている。往人もそんな彼女への愛しさを我慢できず、観鈴の背に手を回して応えた。
「なにやっとんねん、ちっとは場所をわきまえんか」
 しかし、晴子に冷やかすような声をかけられると、ふたりはぱっと離れて、観鈴は弁解を試みる。
「あ、お母さん、これは……」
「……」
 一方、往人は何も言うことはできなかった。ただ、赤面していることがふたりとも共通している。
「まったく……観鈴ちんもいつの間にかいっぱしの恋ができる大人になってたんやなぁ。お母さんは嬉しいでぇー」
「……」
 今度は観鈴が絶句してしまう番だった。
「……もう勘弁してくれ」
「ははっ、そのくらいにしといてやろか。ま、とにかく、観鈴のことは頼んだで、居候」
「ああ」
 そしてようやくこの家族は歩き出す。向かうは基地の施設、亡命者たちの集合場所になっている食堂だったが、そこにつく前に、彼らは思いがけない足止めを食うことになる。
 燕尾服を着た、いかにも上品な紳士――執事といった雰囲気を持つ初老の男が、3人に近づいて、恭しく一礼をしたからである。
 足を止め、訝しげにその男を見つめる3人。やがて男は深く曲げていた腰を持ち上げると、潤んだ眼をして、感激に震えるような声で言った。
「おお、殿下。ご無事でしたか。お待ちしておりましたぞ」


 
同時刻 ウラハ基地上空


「御落胤!?」
 祐一は素っ頓狂な大声を上げた。機体は既に着陸態勢に入っている。驚いたついでにスティックを少し操作し損ねると、愛機は敏感に反応して翼を揺らす。
「おっとっと……っ」
 慌てて着陸態勢を維持する。機体は正直で、注意力を取り戻したパイロットの指示に従い、安定を回復する。
「あゆ、いきなり驚かすなよ。危うく操縦ミスするところだったぞ」
『うぐぅ……ボクだって驚いたよ。さっきのエアバスにAir皇国の皇太子さんが乗ってたなんて。あ、でも、正確には前の皇主さまと皇妃さまの実の子供だから、御落胤じゃないよ』
 あゆの説明はこうだった。今回彼らが護衛したAirの皇太子は、幼い時に訳あって皇家から放逐されたらしく、正統な皇位継承者にもかかわらず本人すらそれを知らなかったという。Air宮内省でも真実を知るものはごく僅かで、しかも時が記憶を風化させていたから、この事実が判明したのはつい最近だった。
 そこで、皇主を喪った皇国は、本当は存在する皇太子を探し出して、新たな皇主に据えようとした。しかし、その皇太子はよりにもよってTacticsの人質になっていた……というのが、今回の一件の始まりである。特殊部隊を投入しての皇太子(と一緒に囚われていたストーンヘンジ技術者)の救出作戦、その総仕上げが、祐一たちによるエアカバーだったという訳だ。
『まぁ……確かに隠し子と言えなくもないな、そりゃ』
 隠すという意味がちょっと違うけどな、とつけ加えて斎藤の苦笑が無線に漏れる。
「だから『万難を排して』なんて大袈裟な表現を使ったのか……」
 交戦前、祐一たちはISAF空軍総司令部から直接命令を受けていた。曰く「万難を排して701便を護衛せよ。一寸たりとも傷をつけさせるな」と。祐一たちが到着する前に701便は被弾していたので命令を完全に履行するには至らなかったが、作戦目的は先ほど701便が基地の滑走路へ無事着陸したことによって達成された。
『なーるほどね。だから俺たちにも内緒だったのか……ついでにあゆさんがここに来た理由も』
 と斎藤が、いかにも納得したと言わんばかりの声で会話を続ける。
『まぁ、防諜上の理由ってやつだな。秘密を知るのは少なければ少ないほど、バレる可能性が低くなるし』
「でも、その皇太子殿下を護衛する俺たちにまで秘密ってことはないだろうに」
『航空無線を傍受されたらすぐに見つかっちゃうよ。祐一君』
『そう言うことだ、メビウス1。それに旅客機を狙ってた敵機は何機ぐらいだったっけ?』
『えーっと……最初は2機だったけど、全部で6機だよ。斎藤さん』
「……敵は知らなかったのか? 皇太子があれに乗ってたってことを」
『わかってたら、もっとたくさんの戦闘機で追いかけてたと思うよ』
 あゆの分析は的を射ていた。祐一も思わず納得してしまう。さすがはISAF最高の航空管制官と呼ばれるだけのことはあった。
「じゃあ、その重要な旅客機に俺たち2機しか護衛につけなかった理由は?」
『……お偉いさんはお前と俺だけで護衛可能だと思ったんじゃないか? 今や“メビウス1”はISAFで最も強い戦闘機乗りだからな』
 どことなく祐一を冷やかすように、斎藤が言った。
「おいおい、勘弁してくれよ。俺はスーパーマンじゃないっての」
 祐一は心底まいった、と言わんばかりに嘆く。ここがコクピットでなければ、両腕を広げて肩をすくめていたかもしれない。
『なーに、お前を直接知らない奴はみんなそう思ってるさ。特に陸軍の連中は、お前に何度も救われてるからな』
「……はぁ、なんてこった。そんなに期待されても困るぞ」
『祐一君、諦めた方が良いよ。ボクから見ても祐一君は凄いパイロットだから。それにね、頑張れば戦争も勝てるし、名雪さんも秋子さんも助けられるよ』
 まさか、ここで慰められるとは思わなかったな。祐一はそう思うと、もうひとりの同僚にまで慰められた。
『メビウス1、あゆさんの言う通りだぞ。お前には大きな目標があるんだろ? お前が有名になればなるほど目標に近づく、とでも考えた方が建設的だよ』
「……」
『だからね、ボクも祐一君を全力でバックアップするから、頑張ろうよっ!』
『俺もいるぞ、メビウス1。お前の後ろは俺が引き受けたから、安心して飛べよ!』
「……あゆ、斎藤……」
 祐一は、それだけを言うのが精一杯だった。これ以上何かを喋ったら、言葉の代わりに感動の嗚咽が出てきただろう。
 ヘルメットのバイザーを上げ、涙が溢れそうになる眼を拭うと同時に、祐一のF/A−18Eはタイヤを地面に接触させ、ゴムが一瞬、アスファルトとの摩擦で煙を発した。
 ここにも、確かな絆が存在していた。先ほどまで彼らに守られていた人々のそれとは違うものだが、戦いの中で鍛えられた堅く、強い絆だった。

 この「ノアの箱船」作戦(ISAF上層部で極秘につけられた作戦名)の成功は、Air皇家皇位継承者の救出により政治的に絶大な効果をもたらしたが、これは軍事面においても同様だった。ストーンヘンジを生み出し、さらにそれがTacticsの巨大野戦砲兼対空砲になってからは整備維持に従事した――ストーンヘンジを知り尽くした人々が、その秘密の全てをISAFに明らかにしたのである。
 それから2週間後、準備は整った。ISAF空軍のストーンヘンジ攻撃作戦は、本来の目的を欺瞞するため、大陸の全戦線において陽動作戦を実地するという極めて大規模なものになる予定で、陽動部隊も含めた作戦参加総機数は400機以上にも達する。
 さらに、作戦の決行に合わせて、大陸各地のレジスタンスが一斉にTactics軍への破壊活動を実施し、ストーンヘンジ攻撃隊を間接的に援護する手筈が整えられた。その時間を調整した結果、「ストーンクラッシャー」と名づけられたストーンヘンジ攻撃作戦の決行日は、4月2日に決定した。
 大陸の守護者として建造されながら、ISAF将兵の血を際限なく吸わされた哀れな人類の英知の結晶は、今やISAFの復讐をただ待つだけの悲しい運命しか与えられていなかった。

 「Mission10 巨人の最期」につづく


管理人のコメント


 冒頭の部分を見ると、この作品がKanonの二次創作であることを実感できます(笑)。

>(望みはあるぞ、斎藤)

 おぉ…斎藤君にも春の予感が…(笑)

>だから、お願いして作ってもらったんだよ。

 きっと、基地の人は必死にたい焼きの型を探して走り回ったのでしょうね。

>機体はその大きさに似合わぬ機敏な動きで、Tactics空軍機の放った機関砲の弾幕を紙一重で逃れた。

 美凪…凄いんですね。しかし。

>「うにゅ……美凪がやってたのを真似てるだけ……っ!」

 みちるの方がもっと凄いかもしれません。

>「おお、殿下。ご無事でしたか。お待ちしておりましたぞ」
>「御落胤!?」


 ここで、私はてっきり観鈴が殿下だと思ったんですよ。そしたら、往人君のほう…
 Air皇国の未来に幸いあれ(爆)。



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