「……そうですか、そんな事が」
「嗚呼、メーカーは致命的な自体が起こりでもしない限りはこのまま放置のつもりだ。しかしだからってこのまま放って置く事は出来ない。だから……」
 私たちは静香さんに事情を説明して、協力を仰いでいた。
 彼女は一言で言えば天才、コンピュータ関係でも圧倒的な能力を持ってる。
 現にマスク・ド・ライダーシステムなんかは一般人が作れるレベルを遥かに超越してるし、他にも信じられないような物がまぁイロイロと……
 それで静香さんならあるいは……と、思ったのだ。
「いいですよ、協力させて貰います」
 あっさりと言い切った、凄い決断力。
「本当かい、ありがとう!」
 と静香さんの手を取り握り締めて喜ぶ店長、それ一歩間違うとセクハラですよ。
「いえ、聞いちゃったからには見過ごしておけませんし。それに……こういう展開って燃えるじゃないですか♪」
 静香さんの頭上にいるココちゃんが、呆れ顔でため息をついてる。
……聞かなかったことにしておこうっと。
「うむ! 燃えるなぁ。正義はどんなにピンチになっても諦めず、最後には逆転勝利するものなのさ!」
……店長さんまで燃え出した……
 と、意気投合したのかそのまま店の奥へと消えてゆく二人。ワクチン製作に入るんだろうけども、店番は……?
「……美砂さん、バイト代出しますので店番お願いします。トホホ」
「了解、ジェニーちゃんも大変だ」
 呆れ顔でそう呟くジェニーちゃん、苦労してるねぇ。


〜ねここの飼い方・劇場版〜
〜四章〜


「此処の管制プログラム、処理力の割には若干容量が多くありません? ウィルス、少なくともその一部が仕掛けられていると思いますけど」
「……確かに、てっきり不可視属性ファイルの方がメインだと思ってたからな。こいつは飛んだ盲点だ」
「えぇ、そっちだけ削除してもこっちから復元されてるんでしょうね。他にもほら……」
 店の奥にあるPCで作業中の二人。
H OSの解析を行い、物凄いブラインドタッチでワクチンのコードを組んでいく。
「えぇと……よし、繋がりました。これで鈴乃さんの方とデータがダイレクトにリンク出来ます」
「ご苦労様、美砂さん」
「いえ、これ位しか出来る事がありませんので」
 私は鈴乃さんとのデータ共有のお膳立てをした程度。
 プログラム関連は二人にはとても適わないのでホントに補助する位。
「それじゃ、店番の方に戻りますね。あ、コーヒー置いときますから」
 邪魔にならないうちに戻ろっと。

……しかし暇だねぇ。
 カウンターからチラリと目をやるとウサ大明神様の神姫学校が開催されてるわけなんだけど、みんなあの事件以来敬遠気味なのか、生徒の数が少ない。
 そんな中ねここはフルパワーで張り切って授業を受けている。
 全力で手を上げて指されようとしたりしちゃって、未だあどけない可愛さがいいよね。
 逆に雪乃ちゃんはアーンヴァルの飛行ユニットとストラーフのサブアームを装着して、お店の在庫管理や整理整頓なんかを行ってる。
 テキパキと仕事をこなしてて、出来るオンナって感じよね。
 まぁアレがねここの前だと途端に真っ赤になっちゃうんだけれど。
 その姿を眺めてるうちに、先ほどのポスターが再び目に入る。
 大きく、第一回全国バトルロワイヤル開催! 来たれ戦士たちよ!!! 賞金一億円は君の手に、とかなんとか。
 一億ね……慎ましくそれなりに暮らすなら一生分あるかなぁ等と考えつつも、何か喉の奥に引っかかった感じが拭えない……
 何だっけな……結構重要な事だった気が……

「あ!」

 飛び起きてダッシュで奥へと急ぐ私。そうだよ、何で気づかなかったんだろう。
 バタンと扉を乱暴に開けて入る私。あまりに急に入ってきたもので。
 二人とも少し驚いているけど構わない。
「店長、HOSの開発元って傘下企業の一つって言ってましたよね。それってアムテクノロジー社じゃありません!?」
「あー、確かにそうだ。でもそれが?」
「ですよね。それで、アムテクノロジー社は半年ほど前、敵対的TOBで鶴畑傘下の神姫開発メーカーに入る格好に……そしてその後、人員とノウハウを吸い上げた後、傘下から離脱させ独立路線を強制的に命じた」
「そうだったなぁ。すっかり忘れてたよ……まぁ怨みの動機としては十分だが、それこそ関わってるとするのは今更じゃ?」
「そうじゃなくて大会ですよ、あのバトルロワイヤル。関わってるとした場合、あの大会を利用する腹積もりなんじゃないかって事です。
 いや、むしろ今までが実験か不慮の事故で、それが本命なのかもしれない」
「……それらしいですね。ちょっとコレみてください」
 と、今まで解析に集中していた静香さんが声を上げる。
「HOSのサンプリングパターンをほぼ解析しました。その場合電脳空間での発症の場合でも、暫くすると現実空間でも神姫の暴走を引き起こす可能性が高いです。今までそういう報告がないのは初期に鎮圧されてた、もしくは報告が握り潰されていたんだとすると……」
「……下手すれば全国数千、いや数万の神姫が一斉に現実で暴走か。あまり想像したくない光景だな」
 ゾクリと店長さんがそう呟く。
 武装神姫は全長15cmサイズとはいえ、その刃が人間に向けられた場合その殺傷能力は馬鹿にならない。
 例えば、ねここの研爪で動脈を切られたりなどしたら、ほぼアウト。
 一部では暗殺に使われているという噂まであるほどだし……
 そもそも反射神経が人間より良くて更に小型なので、人の手で直接捕まえるのは非常に困難だ。
 その割に戦闘能力は高い、改めて考えると結構怖いかもしれない。
 そんなのが一斉に暴走するとなれば、怪我人だけでは済まなくなる……

『そんなのわざわざ想像しなくても、すぐ現実になりますわ』

 と、PC画面が切り替わり、Webカメラによる鈴乃さんの顔が映し出される。
「何かわかったんですか?」
『えぇ、貴方達が今話していた事がね。裏付けが取れたと言った方がいいかしら。アムテクノロジー社は独立以来業績不振、鶴畑を初めとした上位企業に憎しみを懐いていたわ。それが遠因。ただ吸収された人員の中にも怨みを持つ者が多かったようね。HOSの完成度が高いのはそのため。最高機密レベルの情報まで持ち出してアムテクノロジーに横流ししていたのね。それに内部の研究員そのものが開発に関わっていた可能性もあるわ。』
「じゃあ鶴畑家での爆発事故は……」
『そ、うかつにHOSをぶち込んだ酬いね。まぁ自業自得と言えるかしら、それに黒コゲになりつつもあのピザは無事だったらしいしね』
 ホホホと笑う鈴乃さん。貴方も怖いよ……
『で、本題なんだけど』
「まだあるんですか……」
『嫌なら聞かなくても構わないですけどね。バトルロワイヤルで一斉暴走をさせると言う話、割と真実よ。大会は主催側のホストコンピュータを介して各センター繋ぐシステムなのだけれど、そのホストコンピュータから起爆プログラムを流して、一気に暴走させる可能性が高いわね。それと、暴走開始した場合ネットワークにも大きな問題が出そうね。識別信号が勝手に変更されたりとか電源が切れなかった件。その程度だったら可愛い方だけど、最悪全ネットワークがシステムダウンする可能性もあるわね。無論一般回線まで巻き添えに』
「なんというか……また随分と回りくどいテロですねえ」
『ふん、こんなの唯のガキの仕返しですわよ。まぁ私でしたら、もっと上手くやる自身はあるけれど。ちなみにホストコンピュータは現時点だと物理的にネットワークと接続されてないようで、電脳側からの手出しは現状不可。設置場所も最高機密らしくて、掴むのにはもう少し時間がかかりそうですわ。 全くいい迷惑よね』
 そんな大事件になる可能性のあるものを、いい迷惑程度に言える鈴乃さんは大物よね……まぁ、血筋かしら。
『あぁ、あと言い忘れてたけどあの大会、ファーストランカーは出れないみたいね。ファーストでHOSなんて物を使う御馬鹿さんはあのピザくらいだった、と言う事かしら。それじゃ今回はこの辺で。ごきげんよう』
 プツッ、と通信画面が落ちる。
 言いたい事だけ言うと通信を切った鈴乃さん。志郎とは別の意味で少し疲れる……

「……さて、どうしたもんかな」
 店長さんが重い口を開く、私も一気に話されて少し思考がまとまりきらない。
「とりあえず危険性を訴えるのは……無駄でしょうかね」
「ですね。ネットではデマ扱いされるでしょうし、メディア媒体だと更に無理なんじゃないかなぁと。あと賞金一億円ですから……多少の危険には目を瞑る人多そうよね」
 と、ため息混じりに静香さんが的確な相槌を打つ。
「それに、サンプリングは終わってるけど未だ完全にバラすのには成功してないの、もうちょっと時間が……」
「それは大会までに間に合います?」
「……なんとか、いえ、間に合わせてみせるわ」
 普段の柔らかな顔つきとは違う、真剣な眼差しでそう答えてくれる静香さん。
 我ながら失礼な質問だったね……これは。
「しかし、ワクチンが完成したとしてどう流すかが問題だな。それこそさっきの話じゃないがデマかスパイウェアとでも思われて警戒されたら叶わない」
 店長さんが警告を促す、確かにそうなんだよね……しかも相手は現状手の出しようが無いし。
「HOSの危険性を暴ければ、おのずとそういった信頼性の低さも改善するとは思いますけど……」
「それ自体を模造と言われたらおしまいでがあるんだが」
 うぅ、身も蓋もないけど真実。
「それじゃ警察に持ち込むのは……証拠がないかな」
「ちょっと証拠不足だな、HOSを完全にバラせれば物的証拠になるがそれもまだだしな。もしくはホストを押さえるか……こっちもネットに繋がれてないとなると、場所を把握するのは俺の方では困難、か。危険性を暴いた後持ち込んで警察発表して貰う……辺りが妥当な線ではあるが、タイムラグが心配だな」
「確かに……万一大会後になってしまっては元も子も……う〜ん」
 私と店長さんは頭を悩める、どうにも穴がある方法ばかり思いついてしまうから。
 何かこうズバっといける方法は……

「……うん、これならいけるかも」

「「はい?」」
 と目線を静香さんへと向ける私たち。
 その視線の先には、ありありと自信に満ち満ちた表情の静香さんが……


管理人のコメント
 暴走を引き起こすシステムのワクチン開発を決めた一行。そこに新たな助っ人がやってきます。

>彼女は一言で言えば天才、コンピュータ関係でも圧倒的な能力を持ってる。

 まぁ、ハウリンの変身システムなんか見ても、只者じゃないですわな、静香。


>「いえ、聞いちゃったからには見過ごしておけませんし。それに……こういう展開って燃えるじゃないですか♪」

 性格も只者じゃないわけですが(苦笑)


>「……美砂さん、バイト代出しますので店番お願いします。トホホ」

 真面目なキャラの宿命ですね。


>大きく、第一回全国バトルロワイヤル開催! 来たれ戦士たちよ!!! 賞金一億円は君の手に、とかなんとか。

 一億……結構人生かけてやろうかと言う気にはさせる値段かもしれません。そうでもないか?


>「ですよね。それで、アムテクノロジー社は半年ほど前、敵対的TOBで鶴畑傘下の神姫開発メーカーに入る格好に……そしてその後、人員とノウハウを吸い上げた後、傘下から離脱させ独立路線を強制的に命じた」

 うーむ、それは酷い。だからってテロに走って良いわけではないんですが。


>その視線の先には、ありありと自信に満ち満ちた表情の静香さんが……

 なんか、こういう状態の人に提案された事って不安だと思いません? 私は不安です。


 と言う事で、システム解析も進み、少しずつ対策が進んでは来たわけですが、静香は何を思いついたんでしょうね?  
 

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