「ねここが、行くよ」

 え?、と驚く店長。
「あんなの見ていたくないもん。ねここにできる事があったら、やるのっ」
「私も行きます。ねここだけを危険な目にあわせる訳には、行きません」
 雪乃ちゃんもそれに続く。
 私は何も言わない、ただ微笑んで二人を送り出してあげるだけ。
 店長さんは一瞬何か言いたげだったが、すぐに気を取り直すと
「わかった、二人にお願いする。でも俺の方もジェニーをすぐ送り出すようにするから、二人は無茶しない事、いいね」
 と、二人に任せてくれた。
「それじゃ、隣の筐体に入って。すぐに繋げるから」



〜ねここの飼い方・劇場版〜




「……何か空気が違う感じがしますね、ねここ」
「うん、嫌な感じがするの」
 そして二人はそのフィールド、ゴーストタウンへと降り立っていた。私もヘッドギアを付けて、二人のサポートと援護。
『二人とも、目標は前方500にいると思われるわ。出来るだけ早く叩いて頂戴……それと、辛いけど頭部を破壊して。100%確実に退場させるにはそれしかないの。悪いけど……』
 さすがにこんな言葉を二人に伝えなければいけない自分が嫌になる。しかも手を汚すのは私じゃない、あの娘たちなのに……
「……心配しないで、みさにゃん。ねここは大丈夫……それに、そうすればあの子たちを助けられるんだから…っ」
『………お願い、ねここ』
……強くなったね、本当に。

「……ねここ、向かってきます。二人とも!」
 と、雪乃ちゃんが言うが早いか、レーザーライフルの連射が二人を襲う。サードリーガー、まして暴走中とは思えない正確な射撃だ。
「とぉっ!」
 だけどねここ達には当たらない。二人は壁や十字路の死角を駆使して、器用に攻撃を回避しつつ接近していく。
 と、壁にドォン!と着弾。壁が粉々に吹き飛びビルが半壊する。
「ふぅ、セーフぅ」
 壁伝いに移動するねここに、ストラーフがグレネードを放ったのだ。
 頭部に大きなダメージを負っているはずなのだが、動きは通常時と変わりなく、それが不気味さを増大させている。
「ねここはアーンヴァルのほうを! ストラーフは私が引き受けます」
「了解っ!」
 言うが早いかシューティングスターを全開にして一気に突進するねここ。
 ストラーフはそのねここに対して攻撃を行おうと
「させませんっ!」
 雪乃ちゃんが左腕に装備したガトリングガンでストラーフを蜂の巣に。サブアームでガードするものの、全身に満遍なく被弾。
 さらにグレネードランチャーにも弾着、爆発。その爆風を全身に浴びてしまうストラーフ。
 既に装甲はメチャクチャに撥ね上がり、既に装甲としての役割を果たさなくなっている。
 見た限り駆動系の一部も破損しているはずだ。
 普通ならとっくに動けなくなっているはずなのに、しかしまだ動く。
 その不死身さはゾンビを連想させる……
「……止むを得ませんね」
 姿勢を低くして一気にダッシュをかける雪乃。
 ストラーフは突進してくる雪乃をメッタ斬りにしようと、自身の腕とサブアームでアングルブレードとフルストゥ・グフロートゥを構え、タイミングを計って一気に振り下ろす!
 が、雪乃は直前に横に細かくステップ。
 そのまま相手の頭上へジャンプし、ストラーフの脳天、ほぼゼロ距離から蓬莱壱式を叩き込む!
 それは頭部に直撃、完全破壊。さらに胴体にも致命傷を受けたストラーフはそのまま倒れこみ、やがて消滅していった。


 一方ねここはアーンヴァルに向けて突撃。
「このくらいじゃ、当たらないよっ!」
 確かに相手の射撃は正確だけども、十兵衛ちゃんに比べれば隙だらけ。
 ねここは紙一重で回避し続け、あっという間に白兵レンジへと持ち込んでしまった。
 と、不利と悟ったのか空中へ飛翔しようとアーンヴァル。
 でもそうは問屋が卸さない。
『ねここ、一気に決めちゃってっ!』
「了解なのっ。いっくよー!」
 ジャンプと同時にシューティングスターを吹かす! と、一気にアーンヴァルの目の前に出現する。
 シューティングスターは空中での機動性こそ殆どオミットしてあるけれど、その推力に任せてある程度飛ぶことは出来るのだ。
「とりゃーっ!」
 ねここはワイヤークローを射出、そのワイヤーでアーンヴァルをがんがらじめにして地上に落下させる!
「ごめんね……っ」
 体制を立て直そうと立ち上がったアーンヴァルに対し、ねここが迫る。
 その左手にはドリルが装備されていて……一気に高速回転、唸りをあげる!

「ドリルクラッシャー!!!」

……次の瞬間、ドリルはアーヴァルの頭を完全に粉砕していた……

 やがてキラキラとポリゴン粒子になり消えていくアーンヴァル、どうやら成功したみたいだ。
『ねここ、雪乃ちゃん。変な影響が出る前に二人とも戻ってね』
「はぁいなの」
「了解」


「……ぅ、ぅぅん。あれ、ますたぁ?」
「よかったぁ…っ、なんともないのね!?」
「ぅん、平気かな……ボクどうしちゃったんだろぅ」
 目を覚ました神姫と、その神姫を抱き上げて喜ぶマスター。
 無事に再起動した二人を見て、ほっと胸を撫で下ろす私達。二人の意識は無事元のボディに戻ったみたい。
 ただ原因は不明。店長さん曰くウィルスの存在もあるけど、現時点では確認されていないとの事。
 店長さんからは当事者たちには、二人の神姫は当分の間バトルは止めた方がいいという事を言っていました。
 で、ねここ達も念のためチェックをした後帰宅、ということに。
「今日はすまなかったね、迷惑ばかりかけてしまって」
「いえ、気にしないでください。ねここたちが選んで決めたことですから」
 と会話している私達。
 この時はまだ、漠然とした不安を抱えながらも、あれ程の事件に発展するとは夢にも思っていなかったのです……


管理人のコメント

 しまった、分割のタイミング間違えた……orz
 と言うことで、今回は暴走した神姫たちを止めるべく、ねここと雪乃が出撃します。


>「……何か空気が違う感じがしますね、ねここ」

 普段とは違う空気に、歴戦の雪乃も緊張気味。


>それと、辛いけど頭部を破壊して。

いくら仮想空間とはいえ、やはり相手に致命傷を与えることのみを目的とする攻撃を加えるのは嫌な感じがするようです。


>だけどねここ達には当たらない。二人は壁や十字路の死角を駆使して、器用に攻撃を回避しつつ接近していく。

 相手が性能アップしているとはいえ、この二人にはやはりそれだけでは通用しません。


>普通ならとっくに動けなくなっているはずなのに、しかしまだ動く。

 美少女の形だけに、想像するとかなり怖そうです。


>「ドリルクラッシャー!!!」

 漢の必殺技、炸裂! やっぱりドリルがあるからにはこういう使い方でなくては。


>あれ程の事件に発展するとは夢にも思っていなかったのです……

 ここでの暴走は止めたとはいえ、真相はまだ闇の中。本番はこれからです。一体この事件の真相は?

 

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