「随分と貫禄と重厚さがありますね」
聳え立つ新居、それはヨーロッパ調の豪華なホテルのようで
「当然よ。本場モノだし、アンティークだしね」
「でもユーレイとか出そうなの☆」
「そうねぇ、出たら凄いわねぇ」
縁起でもない事言わないで下さい二人とも……
ねここの飼い方、そのじゅういち
「ね、二人とも自分のお部屋欲しくない?」
そう姉さんが言ってきたのはまだ寒い冬の日でした。
「と、言われますが既にお部屋を頂いているのですが……」
私は炬燵に入りながら、ねここにみかんをあーんと食べさせてあげながらそう返答する。
そうなのだ、私とねここは姉さんの部屋の一角に家具などを持ち込み部屋に仕立て上げて使っている。
「いやいや、まぁあのお部屋には違いないんだけどね。色々と神姫用のサイズじゃないと何かと不便かな、と」
「そう仰られればそういう観点もありますが、私は特には……」
えー、つまんなーい。と頬を膨らませて非難する姉さん。私の方が話の脈絡がわかりません……
「ねここはどうかな、お部屋欲しい?」
ねここは、う〜んと口をと尖らせて考え込む。其の仕草がまた可愛くて、私を魅了して……は! 真昼間から何を考えているんだ!?
「みさにゃんと一緒のお部屋ならいいの〜☆」
……姉さん、其の発言ちょっと羨ましいです。
「ふふ、どうもありがと。まぁ数日後にはわかるわよ」
と、意味深な発言の姉さん。全く何なんだろう……
そして数日後。
「あぁ、そのタンスは隣の部屋に。で、さっきのをあっちにー」
其の日は朝から大勢の人がやってきて、部屋の内装変更をしていた。
姉さんの部屋からタンスなどの大きな家具の幾つかを運び出し、空きスペースを作っているようなのだが。
「みさにゃんみさにゃん、何やってるの〜?」
と、姉さんの頭で寝そべっているねここが尋ねる。
「ん、二人の家が届くからその下準備☆」
「……家、ですか? 部屋じゃなくて」
「そ、家だよ」
家の中に家とは意味がわかりません。
その時ピンポーンとチャイムの音がして
「シロネコムサシでーす、宅配便お届けにあがりましたー」
との声が。
「あ、届いたみたいね。今行きますー」
と玄関へパタパタと駆けてく姉さん。気になるので私も付いて行く。
玄関へ着くと、そこには巨大な梱包が。全長2m、横幅や奥行きも1m近いのではないだろうか。
……タンスにしか見えないんですが。
「じゃ、上までお願いしますね〜。案内しますので」
と言うと宅配業者を案内していく姉さん。
そして数分後、部屋の中には先ほどの物体が鎮座することに。
「じゃ、お披露目と行きましょうか〜。お願いしますね」
梱包を手羽早く外して行く業者の人。中から現れたのは
「……わぁ〜♪ ホントに家なの〜♪」
「確かに……家、というかマンションかホテルというか……」
そう、ミニチュアの家が出てきたのだ。しかも4〜5F建てはありそうなシロモノ。
日本風ではなく、中〜近世ヨーロッパの建築のような雰囲気を持っている。
「ふふん。ドールズハウスって言うのよ」
「おぉ〜☆ スッゴイの♪ でもでも、これどうやって手に入れたのみさにゃん?」
ねここが疑問を呈する、私も同意見、目の前にあるのは玩具と言うよりアンティークの風格を漂わせる立派な作りのもので、とても国内製や大量生産品の新品には見えない。
「いやそれがね。ねここたちの事を写真と一緒に手紙で両親に伝えたら、なんか凄い喜んじゃったみたいで、出張先のヨーロッパからわざわざ贈ってきてくれたのよ。現地で手に入れた逸品だから使いなさいって」
「わぁい、みさにゃんのパパママも良い人なの〜☆」
素直に喜ぶねここ。この両親にして、この娘有かと思う私……
しかし地獄はここからだった。
「さて、それじゃ大掃除しないとね。二人も頑張ってよ」
「……は?」「うにゃ?」
その一言にキョトンとする私たち。
「結構コレ埃っぽいからね、きちんと掃除しないと住めないでしょ。
それに細かいところは私より二人がやった方が綺麗に出来るしね。はい、コレ専用の道具」
と言って私たちに掃除道具一式を渡す姉さん。
エプロンにバンダナ、雑巾にモップ、はたきに箒、さらには小型掃除機まで……何時の間にこんなに揃えたんですか。
「ナイショ☆ さてさて手早くやっちゃって、引越しそばを食べましょ〜」
「おぉー☆」
ねここは既にやる気モードみたいだ、新しい部屋が出来てワクワクしてるようで顔から嬉しさがあふれ出している。
「と、これ前が観音開きで開くみたいだからまず換気のために開けましょ……ぶへっ」
姉さんがドールハウスを開けると、ぶわっと埃が舞って……これは結構大変そうだ。
「けほけほ、で、でもねここまけないのっ!」
と、いつの間にか顔にはゴーグル口元に三角巾、更にエプロンと完全武装したねここが。も…燃えている。
でも微妙に一昔前の強盗に見えた……
「じゃ、開始しましょ」
『おー!』
と言う訳で新居の大掃除が始まった。
基本的に大きなところや外観は姉さんが、各部屋の奥まったところや細かい裏などは私たちが担当することに。
で、その家だが相当放置気味だったらしく結構な埃の量が。
モップや雑巾があっという間に真っ黒になってしまうので、特に序盤は拭いてる時間よりも、それらを洗ってる時間の方が長いのではないかと感じたほど。
内装は綺麗なシャンデリアやカーテンなど、高級ホテルを思わせる佇まいなのだが、これではせっかくの高級風味も台無しだ。
ベッドも外観はともかく、マット等は新品に換える必要がある。あとできちんと姉さんに伝えないと。
……でもこうして掃除しながら、どんな部屋にしていくか考えるのは楽しい。
実家では何でもあったが、自由はなかった。ただ押し付けられてるだけで……
なとど考えてるうちにも手は動いている。
「ふぅ、この部屋はこんな所かな」
と、私は一息つく。その時
カサカサ……カサカサ、と何か背後で動く音が。
……ま…さ…か……
ギギギと硬直しながら振り向くワタシ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?!?!?!?」
そこに鎮座するはG!
ダメだぁ、ワタシはGだけはダメなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ! 反射的に脇腹のガンベルトから銃を抜くと乱射するワタシ!
「こっちくるな、くるな! お願いだから来ないでぇぇぇ!!」
ドギュン!バギュン!バキィン! ドガァン!
……後から思えば当然なのだが、目を瞑った上に視線を背けて撃ってるのだから中るはずもない。
やがてカチ、カチッ、と銃から気の抜けた音が
「た、弾切れ!? こ、こっちくるなぁ……!」
最早恐怖で腰砕けになって動けない……嗚呼、ワタシの人生(神姫生)はここで終わってしまうのか……
Gはカサカサとワタシに向かって詰め寄って来る……その時、ふっと前に人影が。
「大丈夫、ユキにゃん!?」
嗚呼、ねここだ……助けに来てくれたんだね……まるで騎兵隊だよ。
ねここはギっとGを睨み付けると、チロリと唇を舐め
「さぁて、久しぶりにいっくよー☆」
と、モップを構えながら言う。……モップって、ねここ武器は!?
そしてGはそのスキにねここ目掛けて突進! でもねここはジャンプしてそれを避けると、天井を蹴って反動で急降下。
グチャ! と嫌な音が聞こえたような気が。
……目を背けていた私がねここの方をみると、そこには一仕事終えてにっこり微笑むねここと串刺しになってピクピクと動くGが。
「ユキにゃんもう平気だよ、ぶぃ☆」
そのまま私のAIはフリーズしたのでした……
私が目を覚ますと、既に夕方で大掃除は終了してしまったらしい。
結局あの事件の部屋は(というより全室)滅菌消毒をして、あの部屋は後日リフォームという事になったらしい。
そう、私の撃った弾丸で部屋中穴だらけになってしまったから……
ちなみに、他にも消耗品の買出しやリフォーム作業もあって、結局新居に住むことが出来たのはそれから一週間後でした。
今度お友達の神姫を呼んで、あの家でパーティーでもしてみたいね、ねここ。
でもあの部屋は今でも(個人的に)開かずの間です……
管理人のコメント
いろんな意味で身も心も結ばれた(爆)ねここと雪乃ですが、そんな二人にスイートホームが。
>「でもユーレイとか出そうなの☆」
>「そうねぇ、出たら凄いわねぇ」
>縁起でもない事言わないで下さい二人とも……
雪乃、実は心霊現象とかダメ?
>「いやそれがね。ねここたちの事を写真と一緒に手紙で両親に伝えたら、なんか凄い喜んじゃったみたいで、出張先のヨーロッパからわざわざ贈ってきてくれたのよ。現地で手に入れた逸品だから使いなさいって」
なるほど、美砂が神姫関係になるとやたらお金を使ってしまうのは血筋ですか(笑)。
>と、いつの間にか顔にはゴーグル口元に三角巾、更にエプロンと完全武装したねここが。も…燃えている。
そういえば、ネコは結構きれい好きだったような……
>「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?!?!?!?」
雪乃……もう少し可愛い悲鳴を、と言いたいところですが、生きるの死ぬのの時はこんなものですね。
>Gはカサカサとワタシに向かって詰め寄って来る……
神姫の大きさを考えると、人間に例えれば中型犬くらいのG……うーむ、それは怖い。
そういえば、Gはどういうわけか嫌いな人の前に良く出てくるようです。
>でもあの部屋は今でも(個人的に)開かずの間です……
そりゃそうだ。
しかし、ああいう事があってもこの三人の関係は変わらないのですね。ちょっとホッとした気分。
戻る