「うにゃ!?」 

 バッタリとその場に倒れこむ、ねここ。

『試合終了。Winner,十兵衛』 

 無慈悲に流れるジャッジAIの合成音アナウンス

『い、以上がこの試合の内容だぁぁぁ!!なんて正確無比な射撃!タイプストラーフとは思えない落ち着いた攻撃法だぁぁぁ!』 

「え……」

 私は呆然としてスクリーンを眺めるしかなかった。全身真っ白になって崩れそうだったかも……


 
ねここの飼い方、そのに ライバル登場!? 編


「ねここ頑張って優勝する〜☆」
「よぉし、応援いっぱいしちゃうよ♪優勝したらねここの好きなご飯作ってあげるー」
「わぁい♪じゃあじゃぁみさにゃんお手製の杏仁豆腐がいいの☆」
 などと今日は2人とも妙なハイテンションになってます、その理由はねここの公式戦デビューの日だから。
 この前センターに行って買い物をした時、新人戦のチラシを貰いそれをみたねここは、
「バトルしてみたーい!いっぱいフィールドかけまわるのっ」
 と何時になくハイテンションになってて、見てるこっちまで影響される始末。
 その日以来、毎日どんな装備にしようかあれやこれやと悩んだのだけれど、
 まずはねここの素質を見ようということでほぼノーマルのまま出場することに。
 きっと過剰装備させてもこの前のミーティ○の時みたいに使いこなせないのがオチだろうし、ね
 …家の修理代高かったよぅ、ぐすん
 ねここは反射神経はいいと思うのだけれど、集中力があるようでないのでそこが心配よね。
 開始直後なんか空回りしそうだし。
 やっぱり自主性に任せきらないで、少しは手伝ってあげた方がいいかしら。

 まぁでもなんとかなるよね、多分〜
 と思いながらも受付にて各種参加登録を済ませてく。
 バトルサービスには実力に応じたリーグが存在してて、実力が上の順から
 ファーストリーグ(別名リアルリーグ)
 セカンドリーグ
 サードリーグ
 それに非公式の草試合
 が存在していて、ねここはまず一番下のサードリーグに登録されるらしい。
 ちなみにファーストリーグがリアルリーグと呼ばれるのは、主に武装神姫同士が実弾を用いて直接戦うから。
 セカンドやサードだと主に電脳バトルと言われる、専用の電脳筐体を使用してのバトルになるみたい。
 もっともこれは目安らしくて、大会や状況下で融通の利くものらしいけど。
 さぁて、精一杯ねここの晴れ姿を応援してあげますか!



 そして現在魂の抜け掛けた、真っ白な彫刻状態のワタシ

 ねここが飛びかかろうと身を縮めるよりも早く、レーザーの閃光がデッドポイントを貫いていた。
 開始わずか2秒。
 しかも相手は開始地点から一歩も移動せずに、超遠距離からの一撃で。
 相手は、天使型MMSアーンヴァルの標準装備の1つである、LC3レーザーライフルを装備した悪魔型MMSストラーフタイプ。
 悪魔型の標準装備は主に中〜近距離の白兵戦用兵装がメインで、普通はあまり遠距離装備をさせないのだけれど、
 この相手は白兵戦用の武装の大半を降ろして、レーザーライフルのみをメイン兵装にしているみたい。
 ちなみにこのレーザーライフルは大型で大出力かつ長銃身で、主に中〜遠距離でその威力を発揮する武装。
 威力は今見たとおり折り紙付。
 そのストラーフの片目には一見可愛い眼帯に見える特殊カメラ(だと思う)を装着してるから、それで狙撃が出来たのだろうと思う、けど。
 やがて片目を眼帯で覆ったストラーフは、LC3レーザーライフルを下ろして射撃態勢を解いた。
 マスターの方に向き直り、小さく頷いている。……不覚にも、ちょっと可愛い。
 スクリーンの方ではスロー映像が先ほどから何度も流れていて、それを見ても一瞬、まさに瞬殺だった。
 鮮やかすぎというのだろうか、サードリーグなのにここまでレベルが高いとは予想外も激しくて。
「……あ、ねここはっ!?」
 はっと我に返り、慌ててアクセスポッド、ねここの元へと駆けてゆく。
 急いでポッドを開けてもらうと、そこには隅にしょんぼりと座り込んだねここがいて
「大丈夫なのねここ!?」
「……みさにゃん、ねここ負けちゃった……」
「よかったぁ、何処にも怪我とかしてないみたいね?」
「うん…ねっとわーく対戦だからへいきなの。でもねここ……」
 それだけ聞くと、周りの目なんか気にせず私はねここを思いっきりぎゅぅっ、と抱きしめて。

「さ、おうち帰ろ?」
「…うん」

 そのまま私は胸の中にねここを抱いて、帰路に着いたのでした。



「あれ、ねここドコなの〜? 杏仁豆腐作ってあげたよ〜?」
 帰宅するまで一言も喋らずにずっと泣いていたねここ。
 なので少しでも元気を出して貰おうと思い、台所で杏仁豆腐を作っていたのだけれども、
 いざ出来上がるとねここの姿が見当らなくなってしまっていた。

 やっぱりあそこ、かな。

「ぐす…ひっく…うぅ…」
「こんばんわ、こねこさん。やっぱりここにいたんだね」
「あぅ…みさにゃん」
 やっぱりねここは私のベッドの下で一人泣いていた、こんな時はもっと甘えてくれてもいいのにな。
「今日は何で泣いてるのかな。試合怖かったの?」
 ふるふると首を横に振るねここ、ぐしぐしとまだちょっと泣きながらも答えようとしてくれて。
 私は出来るだけ優しく、でもしっかりと
「じゃあ、なんで?」

「…いの」

「…悔しいの、負けたことが… みさにゃんと約束したのに… 優勝するって… 勝ってほめてもらおうって
 でもねここ負けちゃった… 約束破っちゃったの みさにゃんとの大事な約束…っ
 こんなのじゃみさにゃんに嫌われちゃうの!  凄いとこみせてあげたかったの!!
 なにもできなかったねここが嫌なのぉ!!!」

 そう言うとねここはベッドの下から飛び出し大泣きになりながら、しゃがみ込んだ私の顔へしがみついてくる。
 悔しいの、約束したのに、と何度も嗚咽しながら繰り返して


「じゃあ、勝とうよ」
「……ふぇ」
 ねここはキョトンとした顔になって
「また戦って、今度は勝って、見返してあげるんだよ。ねここはこれだけ強くなったんだぞっ、って」
「でも…」
「2人で一緒に頑張ろう、ね?」
「…いいの?」
「私はねここのマスターなんだよ。
 それ以前に泣いてるねここなんて、放っておけるわけないじゃない大切なねここなんだから。 
 それにどんな事になっても、私はねここを嫌いになんかならないから、
 安心していいんだよ、ねここ」

 私はねここを柔らかに抱きしめ、あやすようにゆっくりと優しく、でも力強く

 「ねここ、あの人に、勝ちたい?」

 「うんっ!ねここ……あの人に勝ちたいっ!」

 「じゃあ、勝ちに行こ、頑張ろっ」

 ねここはまだ目に涙を残しながらも、精一杯の笑顔で 力強く

 「うんっ!!!」


 そのあとは、2人で一緒に杏仁豆腐を食べました。
 ねここには私が、ちっちゃなねここ専用スプーンで食べさせてあげると、ねここはにぱっと微笑むと
「とぉってもおいしいの〜 でもちょっとしょっぱいかな、てへへ」
 と、ちょっと恥ずかしそうに笑ったねここの顔は、何時もより輝いて見えて。
 一緒に、強くなっていこうね、ねここ。



*なぜなに武装神姫*
「さて今週の武装神姫の時間です。ハイテンションから一気にローテンションになるとその後のリハビリが大変なみさにゃんです」
「ぼへー……」
「なんか呆けてるわねぇ、ねここ。とにかく今回のお題はこちら」

 『リーグって何?』

「これはかなり独自設定で申し訳ないんだけどね。
 実は武装神姫は来年からネットでバトルサービスを始める事になっているの。
 でも小説の舞台は2036年で、来年からスタートするバトルとは多分風味が違うんじゃないかってお話。
 それにバトルサービルの詳細が余り出てこないので、それを元にすることも出来ない」
「それでオリジナル設定なのね、みさにゃん」
「そうなの。だから便宜上、実力に応じたランク分けをして3つのリーグを設定したと言う訳。
 やっぱり野良試合だけじゃつまらないしねっ☆」
「本音はそこかにゃ……」
「ちなみに某掲示板で書いていたものが原型なのでそこの設定を流用しています。
 なので盗作だ!と言われても設定を借りて使ってるだけとしか言えません。あしからず」


管理人のコメント


 いよいよ始まった美砂とねここのリーグ戦挑戦。ところが記念すべきデビュー戦は……
 
>私は呆然としてスクリーンを眺めるしかなかった。全身真っ白になって崩れそうだったかも……

 ということで、何と秒殺にて敗北。うーむ、これは意外な展開でした。
 
 
>「よぉし、応援いっぱいしちゃうよ♪優勝したらねここの好きなご飯作ってあげるー」
>「わぁい♪じゃあじゃぁみさにゃんお手製の杏仁豆腐がいいの☆」

 ねここ……普通の食べ物が食べられるのか……そういえば、武装神姫のエネルギー源って何なんでしょうかね?
 
 
>ちなみにファーストリーグがリアルリーグと呼ばれるのは、主に武装神姫同士が実弾を用いて直接戦うから。

 なんかすっげぇ危ない気がするんですが。プラモ狂四郎みたいだな……
 
 
>鮮やかすぎというのだろうか、サードリーグなのにここまでレベルが高いとは予想外も激しくて。

 秒殺ですからねぇ。とは言え、相手は相当狙撃に特化したタイプみたいですから、接近戦の得意そうなねここには相性が悪すぎたというべきか。
 

>…悔しいの、負けたことが… みさにゃんと約束したのに…
>じゃあ、勝とうよ

 敗北が悔しいのはねここだけではなく、美砂も一緒。これを糧に絆も深まった二人は、今度こそ初勝利を得ることでしょう。



戻る