翼持つものたちの夢

霜月天馬

第二部十三話 〜同人の世界へようこそ 中篇その2〜



エントリー控え室
「結構集まっているみたいね」
「ええ。そうね。もしかしたら賞品目当ての人たちかしら」
「蝉代ちゃん……それは違うと思うけれど……」
「でも、それにしても商品券10万円分ももらえるなら私は気合はいるわ〜。だって稼がなきゃ浮世は過ごせないからね〜」
「ふっ。それにしても坂上貴様も変わったな。女性化したことはわかるがまさかこうまで俗物になりさがっていたとはな……」
「誰。って岩切。何故。あの時私は確かにアンタを射殺したはず……。それになぜ此処に」
「幸い急所を寸前で止まっていたのさ。それで自分自身で弾を抜き取ったわけさ。今、貴様の敵を討った所で奴らが喜ぶはずも無いしな。それに、私も牧村さんに恩義がある。心配するな私はコスプレ関係の警備員兼コンテストの司会者だ。不穏なやからは通しはしないよ」
「そうか。積もる話もある。祭りが終わってから話そう」
「そうだな。強敵(とも)と酌み交わす酒は美味いからな」
「そうね」
 そう言って蝉代さんともう一人の女性は別れていった。私は何があったのか聞いてみた。
「ねえ。蝉代さん。彼女は一体だれなの」
「ああ。彼女は私の旧友よ。そう。かつては仲間、そして敵だった時もあったわね。でも、彼女もまた自らの意思で悠久の時を生き抜こうとしているわけよ」
「そうか。それよりそろそろ時間だから行こうか蝉代さん」
「そうね」
 で、一方他の場所では
「ふふふ。待っていてくださいお姉さま。私は負けないわよ」
「治子さんをゲットするのはあたしなんだから美春なんかに負けないわよ〜」
「ふーん。小娘たちがピーチクパーチクさえずったところでアタシの魅力には勝てるはずないわ〜」
「私だって負けないから。治子まっていてね」
 とまあ、それぞれ気合を入れていたようだ。ちなみに貴子と朱美は『戦姫無双』の「前田慶次」と「真田幸村」のコスプレを、そしてさやかと美春の二人は 『恋姫バサラ』の「華雄」と「張遼」のコスをそれぞれしていた。
 そしていよいよ、お祭りの幕は上がろうとしていた。
「さて〜。ついに始まりました〜。コスプレコンテストの始まりだ〜。さて〜お嬢さんに野郎ども。気合入れて見るんだぞ〜」
 とまあ、岩切のだみ声がマイクを通して流れていた。そして周りのボルテージは上昇しつつあった。
 私はふと蝉代の方を見ると彼女もまた気合をいれているようだった。治子さんたちもまた落ち着いた様子をみせているようだった。
「直子行くわよ」
「OK」
 治子さんの一言で私はステージへと躍り出た。
「エントリーナンバー1番高瀬瑞希〜」
「エントリーナンバー2番芳賀玲子〜」
「さてエントリーナンバー3番深山直子〜」
「4番坂上蝉代〜」
「5番前田治子〜」
「6番榎本つかさ〜」
「7番深山勇希〜」
「8番木ノ下貴子〜」
「9番羽瀬川朱美〜」
「10番高井さやか〜」
「11番冬木美春〜」
「12番楠花梨〜」
 以上12名のいずれも劣らぬコスプレイヤーが勢ぞろいした。そしてどういうことをやるのか私は不安な気持ちでいたが、それも司会のコメントでかき消された。
「さあーて。12名のコスプレイヤーが集まったわけだが。このバトルロイヤルを最後まで生き延びたものが優勝者となる。さあ各自気合を入れてやりな。ちなみにそれぞれ戦闘不能かギブアップするまで戦うセメントだから悪しからず。さあ、それぞれ褌しめてかかりな。では〜コスプレファイトレディーゴー」
『カーン』
 とまあ、ゴングが鳴りひびき私たちはバトルロイヤルを経験することとなったわけである……。

高瀬 瑞希VS楠花梨
「あなたとは戦いたくは無かったけれどこれも勝負ですから手加減はしませんわ」
「それはあたしの台詞よ」
 そういうなり掴み合い取っ組み合いとあいなった……。で結果は双方相討ち戦闘不能となっていた。
 1番 12番 両名戦闘不能(リタイヤ)

 一方私と蝉代の2人は……4号店の連中と戦うこととなった。
「さやか。貴方と戦うことになるとはね。悪い事は言わないわ。棄権しな」
「なにいっているのよ。そうはいかないわ。棄権するのは蝉代さんのほうじゃあないかしら」
「そう……。恨むなら自分の未熟さを恨む事ね」
 そう言って蝉代は目にも留まらぬ早業でさやかの鳩尾と延髄にそれぞれ一発ずつ打ち込んでいた。
 10番 戦闘不能(リタイヤ)

「ひゅー流石に蝉代さん凄いわね。っとこっちもまけられないわね」
「あんた。あのときのV−maxの女」
「そう、あのときインプレッサを運転していたのは貴方ね。よくもまああんな危険な行為をやってくれたわね。なら私も容赦はしないわよ」
 私はそういいながら彼女の鳩尾へ強力な一撃を喰らわせた。
 8番 戦闘不能(リタイヤ)

 で、一方勇希は美春と戦っていた……。
「へー。冬木美春っていうんだ。あたしは深山勇希。アンタに恨みはないけれどこれも浮世の義理。死んでもらいましょ」
「ふん。アタシを舐めないでよね。こう見えても場数は踏んでいるわ。治子お姉さまの為にも貴方を殺ります」
 お互いの挨拶が終わると同時に彼女達は手合いを始めていた。そして……
「はーはー。やるわね美春……」
「ハーハーハー。貴方こそでもこれが最後よ〜」
 そういいつつお互いに最後の右ストレートが炸裂、拳闘でいうところのクロスカウンターの状態となりその後静かに勇希は倒れた。
「くっ。勇希……。敵はとってやるわよ。やい美春といったわね。よくも勇希をやったわね今度は私が相手になるわ」
「そう、さやかと貴子さんもやられたようね。面白いあたしも貴方と手合わせをしたかったのよ。それとあまり舐めないでね……ぐふ……」
 私は言っている間に彼女の至近距離まで近づいてそのまま鳩尾へ強力な一発を食らわせ完全に行動不可能な状態に陥らせていた。
「やるときはごちゃごちゃ言わずにすぐやるべきよ……。所詮貴方もその程度だったわけね……」
 7番 11番 戦闘不能(リタイヤ)残り6名

 で、一方治子さんは……
「朱美さん。まさかこんな場所で貴方と戦うとはね……」
「治子さん……。私もそう思うわ。この一戦に勝った者が治子さんと付き合えるから私もまけられないわ」
「あの〜。朱美さんこういちゃあナンだけれど。4号店の皆さんリタイヤしちゃったよ」
「なんですって。そう。でも、私も負けれないわ。治子ちゃんごめん」
 そういいつつ彼女は大振の拳を振るったが、治子はその腕を取って朱美を豪快に投げ飛ばし、そして彼女の腕を掴んでねじり上げた。
「な、なんで治子ちゃんがこんな関節技を」
「蝉代から護身術として合気道を習っていたのが幸いしたよ。人は見かけによらないという事ね。朱美さん降伏して。そうしないと貴方の腕をへし折るわよ。それに直ちゃんや蝉代さんが相手だったら貴方黄泉路へと旅立つことになるわよ」
 治子はそう言いつつ朱美の腕をさらにねじり上げていた。それから数秒後彼女はタップアップした。
「ごめんね」
「ううん。いいわ。私も手に届く幸せをさがそうかしら〜」
 9番 ギブアップ 

 一方、つかさちゃんは2番の選手と鉢合わせしていた。
「なるほどね〜。ボクと殆ど系統は同じだワン。負けられないんだワン」
「ふーん。アタシもまけられないわね〜」
「「勝負」」
 二人の声と同時に殴り合い、蹴りあいの死合が始まった。
「「これでさいご〜だ(ワン)」」
『ボゴ』
 強力なカウンターが双方に炸裂しそのまま両者とも戦闘不能状態になっていた。
 2番 6番 戦闘不能(リタイヤ)残り3人

「どうやら、私達が残ったようね」
「そうね。誰が一番になっても恨みっこなしってところね」
「そうね。まさか蝉代さんと死合ができるとはね……。私も本気でやらせてもらうわよ」
「おおっと〜。深山選手脱ぎ始めた〜」
 私はそういいつつ手甲、それにリストカバー等の装備品を外し初めた。そして私はアンダースーツ姿になった所で司会者に頼んでいた。
「ああ、司会者さん。それちょっと舞台の袖にでも置いておいてもらえないかしら」
「判ったわ。ってなにこの重さは」
「手甲、装備品なんかを合わせて30キロほどになるかしらね……」
「もしかして直ちゃん。店で着ているいつもの制服もそうしているのかしら」
「そうだよ。あー久々に体が軽くなった」
「とても勝ち目ないわ。死にたくないから私はここでギブアップを宣言するわ」
「そう」
 私が治子さんと会話している間にも蝉代もまた私と同じような事をしていた。
 5番 ギブアップ 残り2名

「坂上、お前もそうなのか……」
「ええ。まあそうね。多分凄惨を極めると思うわよ。やばくなったらとめなさい。もっとも貴方に止める事ができればの話だけれどね」
「蝉代さんも準備できたようね」
「直子もね。それじゃあはじめようか」
「ええ」
 そんな訳で私と蝉代さんの一騎打ちになった。リーチとパワーは蝉代さんが上。スピードと機動力は私の方がやや上回っている状態でのせめぎ合いとなった。お互いにリミッターを解除した状態での戦いなのでステージ上のライトやら機材などを巻き込みまさに怪獣大決戦の状況となっていた。
 で、一方観客席とリングの外にいた勇希や治子さんたちは……
「直ちゃん恐ろしい娘ね」
「直子。今のお前では俺でもやばいかもしれんな」
「直子、蝉代さん怪我しないでね」
 で、ステージでは……
「くっ。こっちの方が不利かお互いに手の内は知り尽くしているし、さりとてこのままじゃあ私の方がジリ貧になるわね」
「なんてこと。直ちゃんもやるわね。体力の勝っている私が有利だけどあの時の一発であばら骨4〜5本やられたようね。なんて破壊力なの。肺には刺さっていないけれどちょっと厳しくなってきたわね」
「こうなったら」
「次の一撃で」
「「決めるしかない」」
 私と蝉代は殆ど同時に飛び掛った。そして結果は……
「っく。がっちり決められちゃったようね」
「そうね。でも、あなた私の戦いでアバラにヒビ入ったみたいだけど大丈夫かしら」
「ん。1時間もしないうちに直るわよ。直ちゃん私のまけよ決めちゃって」
「ん。判ったわ。むん」
 私は彼女をしめ落して勝利した。
「優勝者は3番深山直子〜」
「わーわー」
「すげー。いいものをみせてくれたぜ〜」
 観客の歓声を耳にしながら私は気を失った蝉代さんに気をいれていた。
「ん〜。はっ。そう、直子がやってくれたのか。ありがと」
 そう言って蝉代は私の腕を高く掲げ上げていた。
「紙一重の差だったわね。賞品は二人で山分けにしましょ」
「そうね」
 そんなことを言いながら私は司会者のインタビューに答えていた。
「なんと〜。先ほどまで健闘していた前田選手もPiaキャロットの店員と店長だったとは驚きです。それに坂上選手もまた
 店は違えどPiaの人間だったというから恐るべき店です。これは是非とも行かなければなりませんね」
「ええ。是非とも着て下さい。いま、アジアンフェアを開催しているのでよろしければ是非きてくださいね。あと、フェアはあと一週間ありますので宜しくね〜」
 とまあ、私はそう言ってマイクを彼女に戻していた。
「そうでしたか。野郎ども、今回の優勝者は深山直子選手に決まりだ〜。さて、今回も熱戦が繰り広げられたコスプレファイト次回もまた熱い戦いを待っているぜ。さあ次は冬にあいましょ〜」
「おお〜」
 とまあ、観客の熱狂的な興奮を後にして私たちは更衣室へともどろうとしていた。そこでは……
「いたわね」
「なによ。やる気かしら。もしやる気なら今度こそ本当に息の根を止めるわよ」
「まってまった。二人とも此処では駄目よ」
 私と貴子が一触即発の状況になろうとしていたがそれを治子が止めに入っていた。
「ちがうわよ。治子。直子って言ったわね。貴方の事をもっと知りたいから仲直りをしようって言ったのだけれど駄目かしら」
「駄目じゃあないわ。私も何故あの時あんな事をしたのか知りたくなってきたし。それに仲直りしたいなら止める理由はないから私は別に良いわよ」
「判ったわ。それじゃあ着替えてどこで落ち合えばいいかしら」
「こまったわね。私も東京は始めてだからどこになにがあるのかわからないしねえ〜」
 そんな時勇蔵が助け舟を出していた。
「だったら。大江戸温泉はどうだ。あそこなら宴会場も借りれるし話し合いをするなら裸の付き合いのほうが……ぶへら」
「ちょっと。勇蔵ってば助平なんだから〜もう。でも良いわね。ほかに代案もないようだしそれで良いわよ」
「そうか。なら、今すぐ手配しよう」
 そう言って勇蔵は電話をしていた。
「それじゃあ私たちも着替えようか」
「そうね……」
 そんな訳で私達もそれぞれ着替えを済ませ集合場所に来た時には閉会を告げるアナウンスがあたりに鳴り響いていた。
「それにしてもお祭りも終わるとさびしいものね……」
「そうだね。それよりも早いところ貴子さんと合流しないとやばいわよ。勇希貴方はどうするの」
「そうね。私は疾風と一緒に上野の方へ行くわ。直子。元気でね。それじゃあね」
「疾風。勇希はダメージを受けているから今日は上野かその辺で一晩止めてから翌朝行った方がいいわよ」
「わかった。確かにダメージを受けていそうだしな。じゃあな」
 そんな訳で勇希と疾風の二人は私達から別れて別の道へといった。で、蝉代にも聞いてみたけれど彼女もまた貴子さんとの会談に興味があるらしく行く事にした。もっとも、岩切とは大江戸温泉で落ち合う事になるのであるが……。
「それじゃあ行こうか。みんな準備はOK?」
「良いわよ」
「こっちもOKだ」
「俺もおkっす」
「ボクも大丈夫だわん」
「大丈夫だ。エンジンも暖まったからいつでも出せる」
「じゃあ行こう。勇蔵君誘導お願いね」
「判った。では」
 そんなわけでまだ、熱い日はまだまだ終わる事はなさそうだ……

(続く)


管理人のコメント

 今回はミスコンと見せかけていきなりバトルロイヤルになってるわけですが……感想は一言。
 
 何でそんなセメントやねん。


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