翼持つものたちの夢
霜月天馬
第二部 第六話 〜とある場所での製作作業風景〜
「つかさちゃん。A02出来たよ」
「ん。じゃあ、治子ちゃんはこの生地の端を持って欲しいの。深ちゃんの方はどう」
「ん。D01、02の本縫い出来たよ。これからR01を縫い合わせるところだよ、でも、悪いわねミシンを私が使っちゃって」
「だって、深ちゃんはボクよりも裁縫の手際がいいんだもん。ボクも自信あったんだけれどなあ」
「まあ、場数の多さでしょうね。それにしても、C、Rシリーズは布地が少ないからそれだけ縫製作業も楽だよ。っと、これで一丁上がりっと」
私は会話を行いながらもまた一着制服を作り上げていた。ちなみにAやCなどはそれぞれのタイプの頭文字である。
Aは天使、Dは悪魔、Cはネコミミ、Iはアイドル、Rはウサミミの略で、近く行われるデザートフェア用の制服である。
ちなみに私はAを選んでいた。まあ、治子さんからはCないしはRの方を勧められていたけれど、テストの時に両方とも背中の傷痕がモロに見えることが判ったため断念せざるを得なかった。まあ、つかさちゃんが残念そうにしていたけれどね。
なお、千尋さんはCを、美森はDを、香苗ちゃんと私はAを、あやのはRを、治子さんはIを選んでいる。
なお、正規メンバーに関してはミーティングで自分の意思によって選んでいるし、フェア限定の臨時メンバーに関しても採用が決定した直後に制服を選んでもらい、治子さんが採寸をしていた。
「こいつがフェア用の制服か。まあ、ラフデザインは治子さんですが、色彩などのレイアウトはつかささんか。二人ともすごいね」
「まあね。ねえ、ねえ。ところで深山ちゃんはコスプレに興味があるの」
「ん。なんで」
「だって、衣装を作るときも楽しそうだからさ」
つかささんの問いに私は少し考えたが、すぐに答えを出した。
「んー。確かに嫌いじゃあないけれど。どちらかと言うと貧乏だったからかな」
「え。どういうこと」
「だから、服にお金を掛けられない、でも、おしゃれはしたい。そのジレンマを何とかしようと思って古着を直したり、型紙を作って廃材から服を仕立てたりしているうちにね」
その話をすると二人とも固まっていた。
「な、直ちゃん。そんなに貧乏だったのね」
「す、凄くヘビーな話だワン」
「と、とにかく二人とも固まっていないで。早く仕上げてしまいましょ」
と、まあ、そんな感じで製作作業は進んでいた。
そして夜ももうじきあける頃……。
「ようやく全員の制服が出来たね。それじゃあボクがお昼頃に寮の管理人さんへ届けておくから。治子さん達はそろそろ引き上げないと」
「た、確かにそうね」
「つ、疲れた〜。それじゃあつかささん。お疲れ〜」
そう言って私と治子さんの二人は疲れた体を引きずるように彼女の部屋から出て行った。
「治子さんそれじゃあ行きますよ。しっかり掴まっていないと吹っ飛ばされますからね」
「わかったわ……」
私は単車に治子さんを乗せたあと、彼女の両手を縛り付けてあまり爆音を上げないようにスロットルを絞りながら寮へと戻っていた。
「治子さんしっかりしてください。無理も無いかそれに流石の私も治子さんの所まで引き上げるほどの力は無いわね」
私は治子さんを抱えつつ自分の部屋に戻ってそのままお互いに眠りの世界へと沈んでいった。まあ、治子さんの方は既に落ちちゃっていたけれどね。
翌日……
「ん。あれ、今何時かしら、それに此処は……」
私は寝ぼけた頭をやりながら腕に付けていた時計を見ていた。0730。まあ、いつもどおりの時間に目を覚ましていた。
もしかして、此処って直ちゃんの部屋かしら……。
「ん〜。勇蔵〜すきすき〜」
そのようね。どうやら彼女が私を部屋まで運んでくれようとしたけれど無理だったから此処でダウンしちゃったようね。
「直ちゃん。朝よ。今日も仕事があるんでしょ」
「ん……。そうだった。って治子さん。もしかして私、部屋を間違えたかしら」
私は治子さんの顔をみるなり慌てた。このまえ治子さんのところでそのまま寝てしまったことがあったからだ。
「ん。それは違うわよ。直ちゃんの部屋であっているわよ。それじゃあ私は着替えるから行くわ。それじゃあお店でね」
「ええ、ではまた」
そんな訳で私は汗で汚れた体を洗うべく風呂道具を持って浴場へと向った。
そして、今日もまたいつものように店が開店した。まあ、夏休みさなかで、海岸沿いの店のせいかお客の入りはかなり多い上に土曜日とあいまって店は開店から閉店時間まで目の回るような忙しさとなった。
「ようやく。みんな揃ったようだな。ではそろそろミーティングを始めよう。では店長お願いします」
「ええ。わかりました。明日からいよいよ……」
そんな訳で私達は明日から始まるデザートフェアについてのミーティングを受けていた。まあ、臨時の人間も同じくだ。ちなみに二人の名前は堀内さなと楢原燕の二人で二人とも寮住まいになると聞いた。まあ、彼女達も真剣にメニューなどの説明を受けていた。
そして、そのあと、制服のチェックすることにした。私の方は試作型なので他のみんなと僅かなところが違っていたが、それでも衣装自体のバランスや見た目はおんなじにしてあるけれどね。
他の人たちもキツイとかそういうような問題も無かったので私は安心していた。
私は今まで使っていたメイドタイプの制服をハンガーにつるしてロッカーの扉を閉めようとしたとき後ろから声が聞こえていた。
「あ、直ちゃん。やっぱり貴方の長身とスタイルは迫力があるわね。露出の少ない衣装だけれどこれだけインパクトがあるなんて驚きよ」
「あ、有難うございます。それをいうなら。店長も中々のものですよ。なんにしても明日からのフェアは成功させるよう精進しますよ。治子さんの将来がかかっているからねえ」
「そうね。明日から2週間のデザートフェアとその次のアジアンフェアをなんとしても成功させたいわね」
「そうですね。それじゃあ今夜から次のフェアの制服製作の作業になるわけね」「ん〜。今日はやらなくても良いわよ。それよりも明日に備えて十分休んでおきなさいよ。明後日からまたお願いね直ちゃん」
「ええ。わかりました。店長の為ならばえんやこらですよ。まあ、基本メンバーの寸法はありますからそれを元にすればいいだけですから。パターンはM、K、C、Sの4パターンでしたね。まあ、私が衣装のテストモデラーになるとは思っても居ませんでしたよ」
「つかさちゃんもそうだけれどね。それにしても9パターン全部の制服を着てみてどうだった」
「一部の制服は着る人を選びますが、それでもかなり可愛いデザインだと思いますね。ところで店長。良かったら一緒に帰りませんか」
「んー。そうしたいけれどまだ、本部へ報告するべき書類があるから無理ね」
「そうですか。では私はこれで」
そんな訳で、私は明日から始まるフェアに向けて帰ろうと更衣室を出てみると其処には新人マネージャー君がいた。
「あ、秋山君。おつかれさん」
「あ、深山さんおつかれです」
「秋山君、店長はいま事務仕事をしている所よ。ここで彼女を手伝ってあげれば貴方の株も上がるわよ。それじゃーね」
私は彼に耳打ちをすると彼はすぐに事務所の方へ駆けていた。それを横目で見ながら私は店の通用口から外へと出るとそこには彼女がいた。
「あ、つかさちゃん。どしたの」「うん。どうだったのかな〜って思ってね」
「ああ、それなら大丈夫だったよ。とくにこれといった苦情も無かったから大丈夫」
「そっか〜。それを聞いて安心したよ。とりあえず今日は思いっきり寝るとするよ。じゃあね〜」
「うん。つかささんもまたね」 そんな訳で私はつかさちゃんと別れて一人寮へ続く道を歩いていた。
(続く)
管理人のコメント
「G.O」の主人公カップルが参戦し、いよいよフェアも押し迫ったある日。直子たちも準備に余念がないようです。
>Aは天使、Dは悪魔、Cはネコミミ、Iはアイドル、Rはウサミミの略で、近く行われるデザートフェア用の制服である。
うーむ、デザイン的には結局「G.O」と同じになりましたか。
>「だから、服にお金を掛けられない、でも、おしゃれはしたい。そのジレンマを何とかしようと思って古着を直したり、型紙を作って廃材から服を仕立てたりしているうちにね」
流石の生活力。天涯孤独の身ではしょうがない部分もありますが、逆境は人を強くしますね。
>彼女の両手を縛り付けてあまり爆音を上げないようにスロットルを絞りながら寮へと戻っていた。
いや、それ危ないし。
>「ん〜。勇蔵〜すきすき〜」
どんな夢をみているのだ、直子よ……
>「あ、直ちゃん。やっぱり貴方の長身とスタイルは迫力があるわね。露出の少ない衣装だけれどこれだけインパクトがあるなんて驚きよ」
個人的には、直子はエンジェルよりもデビルの方が似合うような気もしますが……デザインがわからない方は「G.O」のHPを見てみましょう。
>「秋山君、店長はいま事務仕事をしている所よ。ここで彼女を手伝ってあげれば貴方の株も上がるわよ。それじゃーね」
>私は彼に耳打ちをすると彼はすぐに事務所の方へ駆けていた。
純一、やっぱり店長狙いなのかっ!? 治子狙いか!? あやのはどうなってしまうんだっ!!
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