翼持つものたちの夢

霜月天馬

第二部 第五話 〜新人さんいらっしゃい〜


「はあ〜。今日は暑いわね深山さん」
「ええ。そうですね。そういえば治……いや店長は」
「あ。店長なら今、事務所にいるわね。何でも新人の面接をしているみたい。男性だったわね」
「そうですか。それにしても男手が増えるのはありがたいわね。これで私の負担も少しは減るかしら……」
「確かに深山さんにしてみれば倉庫整理に借り出されているものね」
「まあ、立っているものは親でも使いかねない人ですからね。まあ、此処は棚から落ちても死ぬ事は無いから別にいいけれどね」
「深山さんの口ぶりだと一度死に掛けたことがあるような感じね」
「ええ。実際に死にかけたことが有りますからね。っと。お客さんだ」
 私は御堂さんとの会話を打ち切り、接客をするべくフロアへと向い接客をしていた。
 そんな感じで今日は閉店まで特にこれと言ったトラブルも無く仕事が進んでいた。そして、数日後……。
「みんな。おはよう。今日から新しく入ってきた新人を紹介するわ。秋山純一君と椚あやのさんの二名よ。自己紹介をお願いね」
「秋山純一です。マネージャー候補として入店しました。宜しくお願いします」
「椚あやのです。よろしくおねがいします」
 と、まあ。新人二人の紹介がすんだ。二人は北川さんと一緒に事務所へと行っていた。私は今日の配置はキャッシャーなのでレジの機械を動かし、つり銭のチェック作業を行っていた。
 そして、開店の時間と共にお客さんが店にやって来ていた。まあ、平日だけあって。あまりお客の入りは少なかったが、それでも昼と夜のピーク時には8割位の席の埋まり具合だったけれどね。そして、その日も無事に閉店を迎え私は所定の作業を終わらせて、更衣室で着替えていた。
「あ、お疲れ様です。深山さん」
「ああ。お疲れ様。椚さんでしたね。パッと見でだけれど、今日入ってきた秋山君とは一体どういう間柄なのかしら。ある程度親しみを持っているように見えたからさ」
「え、そう見えましたか。実は私、野球部にいたんです。そして純一とは選手とマネージャーの関係だったわけで、彼は受験に失敗して此処に就職しましたし、私は夏休みだけですがここで働かせ貰う事になったんです」
「へえ〜。じゃあ年齢的には私と変わらないわね。私も今年の春に卒業したからね」
 私がそう言うと、彼女は大いに驚いた。
「え、もっと歳を取っているように見えましたよ。私はてっきり20歳を超えているとおもっていましたから驚きです」
「まあ、生活にかかわっている状況に幼い頃から身を置いていたからそれだけ鍛えられたわけよ。まあ、貴方もすぐにこの仕事を覚えるわよ。さて、と帰って風呂に入って寝るとしますか。そういえば貴方も寮だったわね。一緒に帰るかい」
「ええ。お願いしますわ」
 そんな訳で私たちは寮への足取りも軽く戻っていた。
 そして、寮にもどって部屋でくつろいでいると……。
『コンコン』
「ん。誰」
「あ、トキ子です。あの歓迎会の準備が出来たからそれで」
「ん。判ったわ。じゃあすぐに行くから」
「はい」
 そんな訳で私は宴会場へ足を運んだ。私が宴会場についた直後新人のあやのたちがやって来た。
「ようやく主賓の登場ね。遅いわよ」
「ご、ごめんなさい」
「ふふ。まあ良いわ。じゃあみんなグラスはいきわったったわね。では新しい二人を紹介するわね。椚あやのさんに秋山純一君のふたりね。二人のこれからを祝って乾杯〜」
「「「「「「かんぱーい」」」」」」
 そういって私たちは渡されたグラスの中身を飲み干していた。
「くー。やっぱり仕事の後の一杯は良いわね〜」
「は、治子さん。明日もあるんですからその辺を考えてくださいね」
「わかってるって直ちゃん」
「んふっふ〜。秋山く〜ん。なんでこの店に来たのかしら〜。もしかして意中の人がここにいるからとか〜」
「な、何でそれを」
「あはは〜。やっぱりそうだったんだ〜。ねえ。お姉さまが手取り足取り教えてあげようかしら〜」
「ちょっと〜。純一の事を誘惑しないでよね〜」
 私は周りの様子を見回してため息をついていた。
「はあ〜。こりゃまた回収作業するはめになるのかね〜」
「深山。何を陰気になっているんだ。折角のハレの時だ。騒がないのか」
「あ、北川さん。確かにそうなんですが。少なくても動ける人が居ないと後がね」
「そうか」
 そんなわけで宴は進んでいった。で一時間後……
「そろそろお開きにしようかしら。飲み足りない人はまだ飲んでいても言いけれど後に残らない程度にしなさいよ」
 治子さんの言葉で歓迎会は終わりを告げた。そして、みんなそれぞれ去っていった。そして最後に残ったのは。
「残ったのは直ちゃんと北川君のふたりだけか。それじゃあ片付けましょ。直ちゃんは皿をまとめて、そして北川君は空き瓶をお願いね」
「「わかった」」
 そんなわけで3人はそれぞれ後片付けをしていた。まあ、小規模なんですぐに終わったけれどね。
「北川君、明日も早いんだからもう寝なさい」
「え、ですが」
「もう。人の好意は素直に受け取るものよ」
「は。はい。わかりました。それではまた明日」
「ええ。おやすみなさい」
「じゃあ私もこれで」
「ええ。それじゃあおやすみなさい」
 そんな訳で私も部屋へとひきあげて、寝床に潜り込んだ。まあ、その後すぐに私は眠りの世界へと誘われていた。

(続く)


管理人のコメント
 今回は「ぴあGO」の主人公&メインヒロイン、純一とあやのの登場です。顔見せ程度なので尺は短いですが……
 
>「そうですか。それにしても男手が増えるのはありがたいわね。これで私の負担も少しは減るかしら……」

 いつも思うのですが、「Piaキャロット」は男手が少ないです(笑)。
 
 
>「秋山純一です。マネージャー候補として入店しました。宜しくお願いします」
>「椚あやのです。よろしくおねがいします」

 ということで、今回のメインゲスト、純一&あやの登場。原作では純一は留美に憧れて入社したのですが、留美が五号店にいないこの世界では、果たして彼の入社理由は……?
 
 
>「んふっふ〜。秋山く〜ん。なんでこの店に来たのかしら〜。もしかして意中の人がここにいるからとか〜」
>「な、何でそれを」

 聞き出しているのはたぶん千尋でしょうが、やはり「意中の人」がいる模様。そう言う描写がないので直子でないのは確かでしょうから、やはり治子か……?
 
 
>「深山。何を陰気になっているんだ。折角のハレの時だ。騒がないのか」

 原作よりは柔らかいものの、やはりクールな北川。彼も騒いでいるようには見えません(笑)。
 
 
 ということで、新キャラも増えてきましたが、純一とあやのに対して、直子はどう振舞うんでしょうか。


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