翼持つものたちの夢

霜月天馬

第22話 〜飛び初め 後編〜


「あ、おまたせ勇希」
「あ、直子。それじゃあ始めようか」
「そうだね。誰がどの機体を操縦するのか決めて、それから誰が乗るか決めるしかないとおもうけれど、勇希はどう思う」
「うん。それでいいと思う」
「じゃあ。治子さんたちは誰がどの機体に乗るか籤でもジャンケンでも何でもいいからやって決めてください。私達はどの機体に乗るか決めますので」
 私はそう言って勇希たちの所に戻った。まあ、オヤッサンが回転翼機に乗る事が決まったので私達二人がどちらの機体に乗るかどうか決めるのだけれど……。結局、経験の長さから私がオヤッサンの持ってきた機体に乗る事ですんなりと話は決まった。
「ねえ。雄蔵。決まった」
「ああ。一応な。小父さんの機体に桜花が、そして勇希の機体に疾風が、直子の機体に郁美が乗る事になった。俺達はその後だな」
「そっか。それじゃあ、貴方の番になったら思いっきり強烈なアクロしてあげるよ」
「お手柔らかに頼む。それじゃあ今回は俺が無線を担当する」
「大丈夫か高出力のデジタル無線機だよ」
「一応、無線に関しては大丈夫だ。一応、無線に関する資格と知識はあるからな」
「ああ、雄蔵さん。無線通信なら私がやるよ」
 私と雄蔵のやり取りにとつぜん蝉代さんが入ってきた。
「え、良いんですか」
「一応、この手の無線機なら使ったことがあるし、それに電鍵、電話ともOKだからね。何なら帝国陸軍の暗号もいけるよ……」
「い、いや。私が暗号わからないからとりあえず平の無線交信をお願いします。まあ、もし、無線が無理な場合はそこに発光信号用のライトもありますし、緊急用ならば非常用の信号弾がありますのでそれをつかってくれれば。信号弾の打ち方は判りますね」
「わかったわ。それじゃあ注意してね。すくなくても銃火器に関しては直子。あんたよりも経験も知識もあるんだからね」
「はい。じゃあ蝉代さんは今回は飛ばない訳ですね」
「そうね。そうなるわね。まあ、今回は私が無線管制を行うのでよろしく頼むわね」
「えーと。私の無線機の周波数はチャンネル12だから。周波数のチェックをお願いしますね」
「おうよ」
 そういいながら私も機体に搭載されていた無線機の周波数を合わせていた。そして無線のスイッチを入れてヘッドセットをつけてテスト交信を始めた。
『天使より。親鳥へ本日は晴天なり。本日は晴天なり。ただいま無線のテスト中』
『こちら。親鳥。本日は晴天なり。無線感度は良好。雑音なし』
『教官より。天使へこちらも無線感度良好。交信は問題なし』
『こちら牛飼い。感度良好』
 なお、天使は私のコールサイン。オヤッサンが教官。勇希が牛飼いである。そして管制が親鳥という状況だ。
 無線の調子を確かめた私達は飛行前の舵のチェックを行い、同乗者を招いた。
 そして、彼女の座席ベルトを締めようとしたけれどどう締めていいのか判らなかったみたいだったので私が締めてあげた。
 締まっているのを確認した私は操縦席に着いて自分もまた座席ベルトを締めた。そして、エンジンのスターターボタンを押してエンジン始動。エンジンはすぐに始動した。
 エンジンが動いたことを確認した私は油圧、油温、回転が正常値になっている事を確認して滑走路へと移動を開始していた。
『天使より親鳥へエンジン始動完了。異常なし。これより滑走路へ向う』
『了解した。天使へ離陸を許可します。ご武運を……』
 その通信を聞いた私は吹流しを見て以上が無いことを確認し、そしてスロットルを全開の位置にもって行き離陸滑走を始めた。
 無線機からは勇希たちの交信のやり取りが聞こえていたが、私はそれに構わずに速度計を睨み、離陸浮揚速度に達したと同時に操縦桿を引いて機体を離陸させていた。そして規定高度の150メートルまで一気に上昇させていた。ふと後ろを見てみると、勇希達も離陸を無事に終わらせていた。そして、3機が無事に離陸を終わらたのを見届けた。その時、不意に無線機から声が聞こえた。
『こちら教官。天使、牛飼いは我に続け。送れ』
『了解。こちら天使。教官の右後ろにつきます。送れ』
『牛飼い。了解。天使の左につきます。終わり』
 その通信のやり取りをしながら私と勇希はそれぞれの位置へ機体を移動させていた。もちろん、空中接触やニアミスをしない程度の距離を保ちながらだ。そして、オヤッサンは当たり障りの無い挙動をしながら機体を操縦していた。もちろん私もしっかりとその動きをトレースしていた。勇希のほうは若干もたつくような感じがしたけれど、こればっかりは経験がモノをいうからね……。
 そんなこんなで私達3機は編隊を組みながら遊覧飛行をしたのであった。そして30分後私達は3機揃っての着陸は無理なので、燃料の少ない勇希から着陸を行った。そして3機がそれぞれ所定の位置まで機体を持っていき。機体にブレーキをかけてエンジンを停止させた。
 そして、私はすばやくベルトを外し後席にいた郁美ちゃんのベルトを外そうとしたが、彼女は既にベルトを外していた。
「直子さん。初めてULPの飛行を体験しましたが、こんな貴重な経験を有難うございます。私も空に関する道を歩みたくなってきました」
「そうか。それは良かった。そういってくれると私も乗せた甲斐があったね。さて、機体に燃料補給するから其処の燃料缶持ってきてくれる」
「はい。わかりました。燃料缶ってどれです」
「ああ、赤い鉄製のタンク。重いから注意して」
 そう言って彼女はよろめきながらもジェリ缶を持ってきてくれた。ふと、勇希たちを見てみると勇希たちも燃料の補給を行っていた。
 それにしても、疾風と勇希の奴結構いい雰囲気じゃあない。今度は私がその雰囲気を見せ付ける番よ。
 そんなこんなで、私達の機体の燃料タンクに燃料を満タンに補給した私達は飛行前点検をしていた。まあ、一度飛んだとはいえ、何かあったら一大事になるのは明らかだしね。そして、10分後3機とも特に問題も見つからなかったので、私達は同乗者をのせていた。
 そして、座席ベルトの固定を確認した私達はそれぞれコックピットに乗り込み、自分の座席ベルトをしっかりと固定して、エンジンを始動させていた。
 なお、オヤッサンの機体には治子さん、勇希には蝉代さん、私には言うに及ばず雄蔵が乗り込む事になり、今回の管制は疾風がやることになった。まあ、桜花や郁美ちゃんがやるよりかはるかに安心できるからねえ。
『キュルルルバルン』
 エンジンは軽快な始動音を立てて順調に動いていた。私は計器の油圧、油温、水温、回転が正常範囲内にあることを確認しスロットルをゆっくりと開けて機体を滑走路へと移動させた。
 そして吹流しを確認し問題が無い事を確認して私は一気にスロットルを開けて滑走を開始した。勇希も軸線をずらして滑走を開始していた。
 速度計を確認し、離陸浮揚速度に達すると同時に操縦桿を引いて上昇を始めた。そして規定高度をオーバーした高度250まで上昇後、水平飛行に移った。
 そして勇希が私の機体の左サイドに着けたのを確認し、右側にはオヤッサンのジャイロが飛んでいる事を確認した私は手信号で開始を提案していた勇希も了解したのですぐさま私はプロペラのカウンタートルクを利用した左旋回を行ないつつ上昇行動を行い、その直後にバレルロールからブレイク、インメルマルターンを流れるように行い、高度計をチラリと確認320Mそこで、スロットルを全開にしてスプリットS、シザース、ラグターンとかなりGが掛かる運動を行っていた。
 一方オヤッサンのジャイロは私達の挙動に追随せずに高度をとって私達の挙動を見ていた。まあ、すきあらば急降下と急上昇の繰り返しを行なっていた。まあ、一撃離脱のやり方だ。
そして、地上から2発信号弾が上がった。青、赤。私はそれを見てすぐさま機体を滑走路へと向けて無線のスイッチを入れて勇希達と連絡を取った。
『教官。牛飼い。今、信号弾が上がったのを確認ありや。送れ』
『ああ、青、赤の二発。どうやら時間のようだな。それじゃあ降りるか。天使、牛飼い我に続け。送れ』
『『了解。終わり』』
『親父〜。勇希。直子。そろそろ時間だ。現在風向は北北東。風力5だ』
『判った。天使、牛飼い我に続け』
 そういって私達は3機揃って滑走路へ着陸態勢をとった。
 私は直ちに着陸体制に入った周りを見ると私が最後だった。ここでしくじれば物笑いの種になる。
 と、私はいつも以上に慎重にコップの水もこぼれないような軟着陸で着地した。
 そして、私は機体を格納庫前まで移動させ、ブレーキを掛け、同時にエンジンを停止させ、そして座席ベルトを外して機体から降りた。
「遅かったな。直子」
「あ、オヤッサン。ついに終わりましたね。最後に一回だけ私と勇希で飛ぼうと思うんです。ああ、オヤッサンたちが持ってきた機体はもう、分解を始めていても構わないですよ」
「そうか。名残の飛行か。わしはやめておく。お前達の思い出を邪魔するほど野暮でもないしな」
 私はオヤッサンに提言をした。その提言はすんなりと通った。で、勇希も飛ばないかと誘ってみた。
「勇希。最後に私たちで飛ばないか。此処での最後の飛行だから、此処の上空からの風景を目に焼き付けておこうと思ってね」
「そうだね。でも、私は遠慮しておくわ。少し疲れた」
「ん。そうなの。それじゃあ私だけで飛ぶよ。それじゃあ準備しようか」
 そう言って私は自分達のULPを再び飛ばすために飛行前点検を行っていた。
「直子。また飛ぶのか」
「あ、雄蔵。ごめん今度の飛行は私たちだけで飛びたいの。此処のラストフライトだから……」
 私がそういうと、雄蔵も何かを察したみたく何も言えなくなった。
「そうか。とりあえず無事に戻って来いよ。いえるのはそれだけだ」
「ありがとう。雄蔵」
 私は愛機の燃料を調べた。まあ20分前後の飛行なら大丈夫な程度の燃料が入っている事を確認し私はULPのコックビットに座わり、座席ベルトを締めた。そして、周りを確認し、エンジン始動。そして機体を滑走路へとタキシングを始めた。そして吹流しを確認し向かい風の状態になったことを確認したと同時にスロットルを全開の位置にもって行き滑走を開始した。そして、速度計を確認し離陸可能速度に達したことを一瞬で判断し、操縦桿を手前に引いて高度150まで上昇させた。
 そして、雲ひとつ無い空を飛んでいた。そして、かつて、いや、今でも愛している天使の姿が見えた。ううん。愛しているといっても彼女に対しては既に姉貴や妹のような愛情になってしまったけれどね。
「直人、いえ。もう、直子と呼んだ方がいいのかしら」
「しずく……。まあ、どっちでもいいけれどね。こうして話が出来るなんて夢にも思っていなかったよ」
「直人。本当は貴方はあの時死ぬはずだったの、でも、私は貴方を死なせたくはなかった。だから、私の持ちうる力を使って運命を変えたの」
「それで、私の記憶と姿を変えたという訳ね……。まあ、しずくには感謝している。たとえどんな形であれ生きていればなんとでもなるからね。それに、私も夢を適える為に進む事にしたわ。それに……」
「判っているわ。姿と記憶を変えた時からそうなる事はね……。直人。私はあなたのことを愛していた。それだけは本当よ。私のこの姿は残留思念。何時まで持つかわからないけれど、力が持つ限り直人、いえ直子の事を守るわ……」
「しずく……。俺も愛していた。でも、それはもう遠い昔のこと……。私は良くも悪くも直子になったから……」
「ありがとう。直子、貴方はこの空を超え星の海に行くわ。あきらめないでね……」
 そう言ってしずくの姿は消えていった……。
「しずく……うぅぅ……」
 不思議に私の両目から涙があふれ出ていた。そして、我に返ったときに既に機体は着陸していたあとだった。どういう風に着陸したのかさっぱり判らなかった。
「直子。大丈夫……」
「勇希か……。ありがとう……。私は大丈夫だから……」
「これじゃあ一寸作業には加わらない方が良さそうね……。いいわ。小父様にはあたしから言って置くわ」
「ごめん。恩に着るよ……」
 そう言って勇希は私たちの機体を格納庫へと入れて分解作業に入っていた。
 私は格納庫から離れた草むらに寝そべって空を見上げていた。そう、私を愛していた天使のことを思っていた……
「よう。隣良いか……」
「あ、雄蔵。どうしたの……」
「ああ。直子、君の事が心配になってな。俺でよければ力になるぞ」
「ん。そう……。それじゃあ一寸ばかりあんたの胸貸してくれる……」
「ずいぶんと変なおねがいだな。って……おいおい……」
「うううぅ。うわああああああああんん」
 私は泣いた。そう、思いっきり泣いた……。それから30分後……
「よう。泣き止んだか……。驚いたぞ突然直子になかれるとは……」
「ごめん。でも、私にとって頼れる男性って雄蔵しかいないから……」
「そうか。まあ、何があったのか詮索したくないし、する気もないから安心しろ」
「ありがとう。それじゃあ行こうか」
「ああ。そうだな」
 そんなこんなで私と雄蔵の二人が格納庫に戻った時には3機分の機体が一機ずつ木箱に入れられ、そしてトラックの荷台に乗せられていた。
「おやっさん。それに勇希。分解してくれたんだな。有難う」
「ううん。あたしだって、分解くらい出来るってことが証明できたでしょ」
「確かにそうね。オヤッサン、私たちの機体の保管お願いしますね。必要になったら組み立てて使ってもいいですから」
「そうか。確かに任させたぞ。あと、「九三中練」の方は一週間後に回収しにいくからな」
「判りました。よろしく頼みます」
「ああ。それにしても、歴史的な遺産をレストアできるとは整備屋としてうれしいぜ」
「そうですか」
 そう言って私たちの周りにはのんびりとした雰囲気が回りにただよっていた。
「おまたせ〜。みんな冷え切っているでしょ。とりあえず汁粉を作ったからみんなで食べて」
 その静寂を破ったのは亜矢さんの一言だった。
「あれ、郁美。お前、居ないと思っていたらそんなところに居たのか」
「へへへ〜。お兄ちゃんや直子さんをうならせてあげようと思ってね」
「なるほど……。それじゃあ早速ご相伴にあづからせてもらうか……」
「ええ。皆さん遠慮なく食べてね」
 そんなわけで私たちは煤だらけ、油まみれの顔をしたまま、汁粉を美味そうにたべていた。
「直ちゃんずいぶん煤だらけね」
「そういう治子さんだって煤だらけですよ……」
「確かにそうね」
「直子先輩にこんな煤だらけの顔をみられるなんて……」
「でも、桜花ちゃん。ULPに乗れば誰でもそうなるわよ」
「え、勇希先輩そうなんですか」
「ええ。あたしも煤だらけだしね。とにかくこんな格好じゃあどうにもならないわね。とりあえずこれを食べたら風呂に入って着替えないと駄目ね」
「そうだね。一応、牧場の従業員用の浴室を使えるようにしてあるから良かったら使って」
「それじゃあ直子さんの好意に甘えます」
「あ〜。桜花さん。ずるいです。桜花さんが入るなら私も入る〜」
 桜花と郁美ちゃんのやり取りを聞いて私は雄蔵の顔を見ていた……。
「ねえ。雄蔵。郁美ちゃんもずいぶん打ち解けた感じだね」
「まあ、アイツにとってもこういう風に打ち解ける友人が居なかったからな。まあ、アイツも春には治療の為にドイツに渡る事になっている。俺も東京に移動だな。まあ、学費はともかく、生活費は出さんと言っているからかなり苦学しそうだがな……」
「そうか。雄蔵も進路が決まったのね。まあ、私とは進路が離れることになるわね……」
「まあ、それも覚悟の上で付き合っていたしな」
「そうだね」
 私はふと周りを見渡してみた。すると、治子さんと蝉代さんもなかなか打ち解けているような感じにみえた。
 そして、場面は変わり……。
「ふう〜。やっぱり風呂はいいねえ〜」
「確かにそうね」
「直子さん背中を流してあげようか」
「あ、蝉代さんじゃあお願いします……」
「じゃあ。私は勇希ちゃんの背中をながしてあげる」
 私達が浴場の洗い場で体を洗っている頃、浴槽では……。
「うー。直子さんも、蝉代さんも治子さんも勇希さんも胸大きいです〜」
「郁美ちゃんはまだ良いわよ。あたしなんかこれ以上大きくなる保障なんてないんだから……」
「特に蝉代さんと直子さんは凄いですぅ。まさに”ザクとは違うのだよ”って感じね」
 桜花と郁美の二人が私たちの胸を見て羨ましがっていた。
 一方、男性陣は……。
「ふう〜。やっぱり風呂は良いぜ〜」
「親父。楽しかったぞ。ありがとな」
「ふん。礼なら直子に言ってやりな。アイツかなり苦しい状況でやっていたみたいだったぜ」
「確かにそうだな……。って疾風よ何している……」
「バカ。立川。デカイこえ出すな。男なら女湯を覗かずしてなんとする……」
「疾風よ。成長したな……」
「バカどうなっても知らねえぞ……」
 雄蔵の制止を振り切って壁を登って覗こうとした白菊親子。結果は……
「「うぎゃあああああ」」
 ものの見事に覗きがばれて迎撃されていた。
 一方その頃……。
「疾風とオヤッサンだね。まったくあの二人あれさえなきゃ良いのに……。まあオヤッサンについては亜矢さんに任せるとして。
 疾風は私たちでつるし上げるのはまずいわね。直子さん彼どうしよう」
 蝉代さんに話を振られた私はチラリと勇希の方を見た。それで蝉代さんは察したみたいだった。で、治子さんたちは何が起こったのかさっぱりわかっていなかった。まあ、蒸気の陰になっていたし、あいつらもかなり気配を消していたみたいだったし。
 まあ、私や蝉代さんが居たことがあいつらの不幸ということでしょうかしら……。
 そして風呂から上がり衣服を変えた私たちが見たものは亜矢さんに折檻されてボロボロになっていたオヤッサンとワイヤーケーブルで雁字搦めにされていた疾風だった。もちろん60ミリ級のワイヤーでだ。
「二人が脱兎のごとく逃げたんだが、すぐに亜矢さんにボコボコにされたな。亜矢さんって恐ろしい人だな」
「そりゃそうよ。だって私と勇希の師匠だからね。さて、勇希。疾風をどう料理する」
「そうね。まあ、暫らくつるしておいてから考えるわ」
「じゃあ勇希。疾風については任せるよ。やりすぎるなよ……」
「判っているわよ」
 勇希はそう言って嬉々として疾風の元に行っていた。
「治子さん。郁美ちゃん。これで今日のイベントは終わりだけれど貴方達これからどうするの」
「私は別に特に予定もないので問題ないですが」と治子。
「私は夜から予定がありますので。それに帰らないとお父さん達心配するから」
「と、いう事は雄蔵もそうなの」
「はい。お兄ちゃんもそうです」
 郁美ちゃんの言葉に私はがっかりした。
「そう、それじゃあ。これから私たちだけで飲まない」
 その言葉にわたしは驚いた。
「私と勇希と桜花ちゃんは未成年ですが……」
「かまわないわよ。正月なんだから。それに保護者公認よ。呑まないっていうの」
「わ、判りました。判りましたから。何気に得物の鉄パイプを振り回さんでください」
「判ればよろしい」
 そんなこんなで私たち女性陣は打ち上げと称した飲み会に巻き込まれる事になった。で、私は雄蔵達を送ってあげようと玄関先で彼を見送ることにした。
「雄蔵。それじゃあ新学期にまた会おうね」
「そうだな。今日は楽しかった。また新学期に会おうぜ。それじゃあな」
 私と立川兄妹とは玄関で見送った。
「雄蔵のバカ〜。折角のラブラブのチャンスだったのに〜。こうなったら自棄よ呑んでやる」
 私はそう一人つぶやいて打ち上げの会場でもある居間に向った。

(続く)

管理人のコメント


 直子たちのラスト・フライト、いよいよ本番です。
 
>思いっきり強烈なアクロしてあげるよ

 ULPの事は詳しくないのですが、けっこう派手なアクロバット飛行もOKなんでしょうか?
 
 
>私達3機は編隊を組みながら遊覧飛行をしたのであった

 とは言え、流石に郁美が乗っている間は大人しいようです(笑)。
 
 
>その直後にバレルロールからブレイク、インメルマルターンを流れるように行い、高度計をチラリと確認320Mそこで、スロットルを全開にしてスプリットS、シザース、ラグターンとかなりGが掛かる運動を行っていた。

 どれも戦闘機の空戦機動ですが……こんな事ができるのなら、一度乗ってみたくはありますね。
 
 
>「しずく……。俺も愛していた。でも、それはもう遠い昔のこと……。私は良くも悪くも直子になったから……」

 これで、「直子」は「直人」に別れを告げたのかもしれません。
 
 
>「確かにそうだな……。って疾風よ何している……」
>「バカ。立川。デカイこえ出すな。男なら女湯を覗かずしてなんとする……」
>「疾風よ。成長したな……」

 シリアスな余韻をぶち壊すバカ親子……ダメだこいつら(笑)。
 それに引き換え、雄蔵は真面目ですね。
 
 
>「雄蔵のバカ〜。折角のラブラブのチャンスだったのに〜。こうなったら自棄よ呑んでやる」

 まぁ、妹がいる間はそんなものでしょう。
 
 冬休みのイベントも終わり、いよいよ卒業に向けての最後の学期が始まります。直子たちはどんな進路を歩んでいくのでしょうか?


戻る