翼持つものたちの夢
霜月天馬
第20話 それぞれの年始模様
直子、勇希の場合……
「あけましておめでとう。ことしもよろしく。勇希」
「こっちもね。よろしくね。直子」
私たちはそれぞれ新年の挨拶をしていた。
「さて、それじゃあ雑煮の支度をして、食ったら初詣にいこうか」
「そうだね。私はともかく、勇希は受験だからなゲンを担いでおいた方がいいしね」
「なんとしても疾風と一緒の学校に行くんだから……」
「そう。まあ、がんばれよ」
そんなこんなで私たち二人は雑煮の仕込みをしていた、まあ、二人とも両親が死別していたし、御節を用意していても食いきれないし、面倒だから雑煮だけ用意して食うことにしていた。
それからしばらくたって。
「それじゃあ行くか」
「ええ、うまくすれば疾風達と会えるかもしれないね。この姿で疾風を撃墜してやるぜい」
「勇希……。まあ、私も人のことは言えないか……」
そんなこんなで私達二人は振袖姿で初詣にでかけることにした。なお、私達は二人とも勇希の母親から着付けに関しては徹底的に仕込まれているので着付けに関しては全く問題はなかった。そこで意外な人間と出会うことになる。
治子さんの場合……
「あたた……。昨日はたしか……。ああ、そうだったわね。確か葵さん達の宴会に巻き込まれて年末から飲んでいたんだったね」
私は周りを見渡してみると……。その惨状に苦笑していた。周りには酒瓶やらビールの空き瓶や缶がゴロゴロ散ばっていた。隣を見てみると、床に大の字になって葵さんと信君が寝ていた。私は今更だが、そのままでは風邪を引きかねないと思い、寝床から毛布を持ってきて彼女達に掛けてやった。そして、私は痛む頭を抱えながらも、散ばっている瓶や缶の片付けをはじめていた。
無論彼女達を起こさないようにだ……。
「一段落したら、初詣に行くか……。ひょっとしたら直ちゃんたちに会えるかもしれないしね」
私が台所の片付けも終わろうとしていた頃、二人が寝ていた部屋から話し声がしていた。
「んが……。ここは……って何で俺が葵さんと……」
「ん。何騒いでいるのよ……。もう少し寝させて……って何で信君が一緒の毛布なのよ……」
「え、葵さん……なんで、そういえば俺は、店長達と飲んでいて、それから一体何をしていたのか……」
「まあ、あたしを襲いはしなかったわね。信君も意外と紳士なのね……。でも、あたしを押し倒してくれても良かったのよ……」
「葵さん。俺も男だそういうこと言うと襲いますぜ。でも、この毛布を掛けてくれた人って葵さん?」
「ん。違うわね。だってあたしは信君が潰れた後、治子と飲んでいたから……多分この毛布治子ね。それにしても、ずいぶんと心憎い事してくれるよ」
「だからこそ、俺や深山さんたちも店長を慕っていると思いますよ」
「深山のどっち、直ちゃん、それとも勇ちゃん」
「俺が見る限り直子さんの方が店長と仲が良さそうに見えますね。まあ、自分の判断なんでなんとも言えませんがね」
「そう、でも、彼女達をゲットするのは不可能よ……」
「葵さん。なぜそう言えるのですか。やってみもしないのに」
「ん。だってねえ。あの子達のしぐさを見ていたら彼氏が出来たのくらいすぐに判るわよ。特に直ちゃんの様子をみていればね……。それに、彼女ああ見えて治子以上の実力を備えているわよ。強引に押し倒そうものなら信君だったらボコボコ。いや、ボコボコで済めば良い方ね。下手したら物言わぬ体になるわね……」
「葵さん。それ、マジっすか」
「うん。マジな話よ。だってこの前の事件でいきさつを治子から聞いたからね」
「はあ〜。俺、女運無さすぎだな……。一人は、事故で死んでしまったし、そして今度は……か。畜生。こうなったら自棄だ。飲んでやる……」
「ちょ、一寸。信君ここじゃあまずいわよ。そうね。よかったらあたしのところで飲み直さない。あたしもつきあってあげるからさ……」
「良いんですか。それじゃあお願いします……」
「ん。あたしで良かったらいくらでも付き合ってあげるよ。それじゃあ治子に挨拶したら行こうか」
「そうっすね」
「そう、話は聞かせてもらったよ……」
「げ、治子」
「て、店長……」
「ん、別に良いわよ。葵さんがどんな人と付き合おうとそれは自由なんだからさ。それにしても葵さんも大胆ね……」
私は二人の祝福を心から祈りつつ笑顔で言っていた。
「ありがとう。それじゃあ治子。今年も宜しく。それじゃあ行こうか信君……」
「は、はい。それじゃあ店長。今年も宜しくお願いします。あ、待ってくださいよ……」
そういって二人は、そう挨拶するや否や去っていった。その様子を呆然と見ていた私はすぐに気を取り直し、出かける
準備を始めていた。
疾風、桜花達の場合……
「あけましておめでとうございます。疾風。それに桜花」
「あ、あけましておめでとうっす。蝉夜さん。今年も宜しくお願いします……」
「おめでとうございます。蝉夜さん……。ところで父さん達は……」
「ん。まだ。寝ているんじゃあないかな。あの人たち二年参りに行って、帰ってきたのが初日の出が出た後だったしね」
「もしかして、蝉夜さん。徹夜していたのか」
「いえ、少し眠りましたが……。えーと。もうすぐご飯が出来ますので……。ところで餅はいくつ食べます」
「俺は7つ頼む」
「私は4つでいいですよ」
「了解したよ。じゃあしばらく待っていてね。すぐ用意するから」
そう言うと彼女は台所へと去っていった。
「ねえ、お兄ちゃんはこれからの予定って何かある」
「そうだな……。とりあえず初詣に行って勇希達とどこか行こうと思うがな。桜花はどうする」
「そうね。初詣行って来たらあとは映画館で映画を見てこようと思うんです。今『漢達の武蔵』やっていますからね〜」
「あれ、一度見に行ったのでは無いのか」
「良い作品は何度見ても良い物だっておにいちゃん」
「そうか。じゃあ行けば良いさ、今日は映画館の入場料も1000円のキャンペーン中だしな」
「うん。ありがとうね」
「二人とも、出来たよ〜」
「お、いつもながら早いですね」
「あ、出来た。そうだ蝉夜さんはこれからどうするつもりです」
「私?。そうですね特に予定は無いね……」
「そう。それじゃあ一緒に行きませんか。何時も家に居たのではつまらないでしょ。偶には外の世界を見るのも良いんじゃあないかしらね。心配しなくても私が奢るよ」
「ありがとう。桜花さん……。それじゃあお言葉に甘えるとしようかね」
「そうだな。折角のチャンスを活かさないでおくなんて愚か者のすることだ。チャンスがあるならそれを活かすべきだな。蝉夜さん」
「それじゃあ。早いところ食事を済ませて行こうかね」
そんなこんなで3人は初詣に行くことになった。
神社にて……
「さすがに人が多いね。いつもは閑散としている神社がそれなりの人がいるよ」
「まあ、地方の小さい神社だからこんなもんかもしれないけれどね」
「あ、直ちゃんに勇ちゃん……。あけましておめでとう」
「あ、治子さん。あけましておめでとうございます。今年も宜しくおねがいします」
「久しぶりですね。治子さん」
「それにしても二人とも着物姿が板についているわね。私は今回は無理だったからね……」
「いよう。勇希。それに直子……あけましておめでとう」
「疾風。あけましておめでとう今年も宜しくね」
「はは、勇希にそういわれるとうれしいぜ」
「直子先輩、勇希先輩、治子さん。あけましておめでとうございます今年も宜しくお願いしますね」
「ああ、桜花ちゃんあけましておめでとうね」
「直子さん。あけましておめでとう」
「あ、蝉夜さん。久しぶりです。そしてあけましておめでとうございます。えーと親父さんに伝えてください。松が取れるころに回収作業を行いたいから機材の手配をお願いしますとね……」
「判ったよ。そう伝えておくわね」
「お願いします」
「直子よ。親父に何か頼みごとがあるのか……」
「ああ、牧場と家が借金の形に売られるのが決定してしまってな。叔父や祖父達には申し訳ないとはおもうが、私達だけでは維持できなくてね。せめて父の遺品だけでも避難とレストアを頼もうと思ってね。親父っさんああ見えて操縦だけでなく、整備、改造、修理に関しては神業的な腕を持っているからね。それで頼むことにしたわけだよ疾風」
「そうか、そういえば直子もちょくちょく家の工場に来ていたのはもしかしてそれに関係するのか」
「ん、あれ。あれは。私が所持しているV-Maxのレストアをしていただけだよ。そういえば疾風のZZR1100のレストア終わった?」
「ああ、無事に終わったぜ。ナンバーも取ったから公道で走ることが出来るぜい。ついでといっちゃあなんだが勇希のCBR1000RRのレストアを手伝っている。それにしても冷静に考えたら俺達も凄いこと考えたよな事故で大破したマシンを格安で引き取ってそれを再生して自分のものにしようなんて普通じゃあ考えられんよ」
「でも、まともにリッタークラスのマシンを買おうとしたら私達の稼ぎじゃあおっつかないからね……。ヤバイことに手を染めれば別だけれどね」
「確かにそれはいえる」
「直子。何、疾風と仲良く話をしているのかしら……」
「ゆ、勇希。落ち着け。どうどう」
「あたしは馬かい」
「別にやましいことを話していた訳じゃあないぜ。ただ直子が蝉夜さんと話をしていたからそれが気になって話の内容を聞いていただけだ」
「そう。直子ついに回収に踏み切る訳ね」
「そういうこと。これから何かと忙しくなるから今のうちからやれることはやっておかないとね。ところで勇希のマシンももうすぐレストアが完成するようだしな。なんなら私がやっておこうか」
私がそういうと勇希は頭を振っていた。
「ううん。あと一息で完成するから、それに……」
「ああ、言わなくても良いよ。そういうなら私は何も言わないよ。疾風に勇希こういうのも野暮だけどあんた達一応は受験生なんだからこれで試験落ちるなんてへまするなよ……」
「わかっているぜい。すくなくても俺と勇希二人とも模試の結果は上々なんだぜ」
「そうよ。すべて疾風のおかげだよ」
「そう言ってくれると俺も教え甲斐があるぜ」
私はラブラブモードに入ったのをみてもはや手がつけられないと判断し他の場所に移すとそこには……。
「へえ〜。蝉夜さんって桜花ちゃんのところで住み込みで働いているのね……」
「そうです。それにしても治子さんもこの年齢で店の店長を勤めているとは凄いね……」
「まあ、臨時で代理の店長だけれど、任された以上はやるだけだよ……でも、蝉夜さん。顔に傷痕があるようだけど、どうしたの別に嫌なら言わなくても良いけれど」
「ん。昔、事故で怪我した」
「腕の良い形成外科医知っているけれど紹介しようか」
「ん。嬉しいけれど。この傷は友との友情の証だから消すわけにはいかないんだ……」
「そう」
とまあ、治子さんと蝉夜さんの二人が妙にウマがあっているように見えていた。
「それにしても治子さんと蝉夜さんの二人って会うの初めてだよね……。桜花ちゃん」
「確かそうだったと思うけれどね。直子先輩」
「そうだよね……。でも、あの様子見ているとなんだかね……」
「うわ。確かに凄い雰囲気のようですね」
「そうでしょ。あの空気だと下手に入ろうものなら身がヤバイよ……」
「直子先輩がそう感じるようなら本物なんでしょうね」
「それじゃあ桜花ちゃん私達だけでも行こうか……」
「そうですね。下手に触れて怪我するのも嫌ですからね」
「そういうこと。じゃあ行こうか」
そんなこんなで私は桜花ちゃんと一緒に参道をあるいていた。するとそこに意外な人物と出会うこととなった。
「あれ、もしかして深山さんえーと直子の方ね。隣に居るのは桜花ちゃんね」
「誰……ってもしかして雅?」
「そうだけれど、直子が振袖姿とは……以外ね」
「失礼ね。私だって着物を着るときは着るわよ」
「あら、失言だったなら謝るよ」
「ところで、雅はこの後何か予定ある?」
「私は……」
「雅さん、何こんなところで油売っているのこれから年始の挨拶がありますからね」
「お、お祖母さま……。判りました……。直子、そう言うわけだから御免」
「そう。それならしょうがないわね……じゃあ」
「雅さん」
「は、はい」
雅はそう言うなり私達のもとから走って去っていった。私はかつて彼女のいった言葉を思い出していた。
「なるほど。そう言うことだったのね」
「どうしたのです。直子先輩」
「ん。一寸ね……。それじゃあ行こうか」
「おっと。直子ばっかりに先には行かせないわよ」
「ごめんごめん。つい話に夢中になっていたわね。それじゃあ行こうか」
私達が拝殿で御参りしようとしていた所で後ろから声が聞こえて振り返ってみるとそこには勇希や治子さんたちが居た。
「それじゃあみんなでおまいりしようか」
そんなこんなで私達はそれぞれの思いを込めて初詣の参拝をしていた。
そして、参拝も終わり……私達は参道を下りながらそれぞれの予定を語り合っていた。
「蝉夜さんはこれから何をするのかしらね」
「え、私。私はこれから桜花ちゃんと一緒に映画を見に行こうと思っているけれどよかったら治子さんも一緒にどうです」
「そう、桜花ちゃんとか……。それじゃあ多分、見る映画はアレでしょうね。まあ私も興味はあるから良いですよ」
「直子先輩はどうします……」
「え、私?私は止めておく。ひさびさに寝正月と行きたいからね……」
「そうですかそれじゃあこれで」
「ああ、桜花ちゃん達もお達者で……」
そういって3人と2人は同じ方向へと去っていった。まあ、目的が同じだからね……。
「さて、それじゃあ行くか」
私はそうひとり呟いて家路を歩いていると……
「きゃ」
「おっと。すまない。大丈夫か……って直子か」
「そういうマント姿の貴方は……勇蔵?」
「そうだ。直子新年明けましておめでとう……」
「あ〜。お兄ちゃん……何油売っているの……って直子さん」
「あら、郁美ちゃんだったわね。あけましておめでとう」
「はい。あけましておめでとうございます。って何よ。何でお兄ちゃんに抱きついているのよ」
そう、今の私は勇蔵に抱きついているような格好であった。
「あ、あの御免……」
「い、嫌。俺は別に嬉しかったぞ……」
「はあ〜。お兄ちゃんたら。所で直子さん」
「なにかしら郁美ちゃん」
「貴方とは一回サシで話してみたいものね。今日時間ありますか」
「それは大丈夫だけど……」
「ま、まて郁美。直子に喧嘩売るのだけは止めろ。直子すまん郁美には俺がよく言っておくから……」
「お兄ちゃん。私は別に直子さんに喧嘩を売るつもりは無いわよ。ただ直子さんがどんな人なのか知りたいだけ。いずれ私の義姉になる人だからね……」
「そうか。それじゃああまり遅くなるなよ……。それじゃあ直子またな……」
「あ、勇蔵。明日天気がよかったら飛ぶつもりだけれと、時間に都合があったら来て欲しい……」
「判った。明日は万難を排して来てやるよ……。じゃあな」
そう言うなり彼は去っていった。
「さて、郁美ちゃんだったわね。貴方、何処か行きたい所ってあるかしら?」
「えーと。その直子さんの家で話をしたいのですが……」
「ん。そう。まあ、何も無い所だけれどお茶くらいならだすよ。じゃあ行こうか」
「はい……」
それから約15分後……。
「着いたよ。ここが私と勇希の住んでいる家さ……」
「お邪魔します……。私が言うのもなんですがご両親は……」
「ん。両親?居ないよ」
「え、もしかして、2人とも海外に行ったのですか?」
「そうだと良かったけれど生憎とそうじゃなくて二親とも死んじゃったよ」
「ご、ごめんなさい。知らぬこととはいえ直子さんの古傷を抉るような事して」
「いや、別に良いよ。私の両親が死んでからかなり時間がたっているから私は大丈夫。所で郁美ちゃん私に話したい事があるって言っていたわね私が知っている限りのことなら何でも言ってあげるよ」
「そうですか。それじゃあ聞きたいのですが直子さんは何でお兄ちゃんの事が好きになったのです。自慢じゃあないですがお兄ちゃんって女の人と付き合うなんて話を全然聞いたことが無いから心配していたんです……」
私は暫く考えてみたが、別に馴れ初めを話したところで別に影響が無いと思い私は話すことにした。
「そうね。私と勇蔵の馴れ初めといえばアレは確か私の所属してる高校の文化祭のことだったわね……」
それから私は後夜祭で行われたダンパでの経緯を彼女に話していた。そして、それから付き合いだした事もだ。それを聞いた郁美ちゃんは呆れというか驚きの表情をしていた。
「直子さんって凄い人です。あのおにいちゃんに勝ったなんて。お兄ちゃんが必死で止めていた理由がよく判りましたよ」
「あのね。郁美ちゃん。私の方が異常なだけだよ。私は一人で生きるために体を鍛えていたから出来ただけ。今思えば彼も
私と遣り合っている時に何かを感じていたんだと思う……。それに勇蔵は郁美ちゃんのことを真剣に心配しているわよ」
「え、それ本当ですか」
「ええ。本当よ。それと郁美ちゃん体が弱いって言っていたけれど、貴方循環器系に何か病気を持っているでしょ」
「はい。生まれつき心臓が悪くて、でもなぜそこまで……」
「ん。一緒に歩いていた時にそれとなく様子がおかしかったからね。さて、私に関してはこれでおしまい。次は郁美ちゃんの番だよ。貴方の言いたいことがあったら何でも言ってくれれば良いわよ」
「実は私片思いしている人が居るんです……。でも、私にはその人に会う資格なんて……」
それを聞いた私は暫しどう答えようか迷っていたがある決断をした。
「郁美ちゃん。片思いしているって言ったわね。私にどうこう言う資格は無いのかも知れないけれど、でも、これだけは言わせてもらうわよ。あきらめちゃ駄目。そりゃ。告白して駄目だったら諦めも着くけれど戦いもしないで諦めるなんて駄目だよ。私だって勇蔵に告白されなきゃ私が告白しようとしていたんだから。だから、一度その人に会って告白をしてみなさい。それで駄目なら。ワンワン泣いて忘れることね。まあ時間はかかるかもしれないけれどね」
「直子さん。私あなたのことお姉さまと呼んでも良いですか……」
「それはまだ早いわよ。郁美ちゃん」
「残念です……」
「それはそうと郁美ちゃん。勇蔵にも言っていたけれど明日勇蔵と一緒に家に来ない?面白い経験をさせてあげるよ」
「それは楽しみです……」
「そう。それじゃああまり遅くなると勇蔵が心配するだろうしバス停まで送るよ」
「あ、ありがとうございます……」
「じゃあ行こうか」
「はい」
そんなこんなで彼女をバス停まで送り届けた私は家路に着こうとしたところで意外な人物と出会うことになった。
「おや、直子じゃあないか久しぶりだな」
「久しぶりね直ちゃん」
「ん。ああ、親父っさん。それに小母様も、疾風達なら勇希と一緒に映画見に行くって言っていましたよ」
「ああ。そうか。所で新年おめでとう……」
「はい。おめでとうございます。買い物ですか」
「ああ。そうだ。せがまれてな……」
「そうですか。ところで小耳に挟んだのですが親父っさんがULPを買ったって本当ですか」
「ああ。そうだあいつが死んでから飛ぶ気は無くなったが直子たちが飛ぶようになってからな」
「そうですか。それじゃあ話は早いです。実はですね……」
私は彼に明日天気がよければ飛ぶ事を彼に告げていた。すると彼はすぐにうなずいていた。
「なるほど。確かに一機で飛ぶよりか二機の方が何かと都合が良いからな。わかったぞ明日は我も飛ぶぞ。久々に血が騒ぐ」
「その、病弱な人も居るからお手柔らかにお願いしますね。それと例の件なんですが……」
「ああ。そっちの方も手配しておく。そうか、もうすぐなんだな」
「はい。もうすぐです……」
「直ちゃん。いつか機会があったら家に来てねまっているから」
「はい。小母様も。えーとこの話桜花達にも教えてやってくださいね。そうでないと彼女拗ねるから」
「判ったわ。それじゃあ私達はこれで」
「それでは私はこれで……」
そういって私は白菊夫妻と別れて一路家路についた。家に戻ると勇希がにやけた表情で立っていた。
「ただいま〜」
「お帰り直子。直子〜あんた私達と別れた後、彼と良いことしていたでしょ」
「いや、別に彼を連れ込んではいないよ。まあ彼の妹は連れ込んだけれどね」
「え?もしかして、あの人に妹が居たの」
「ああ、居たよ。さて、勇希。明日は久々に飛ぶよ。多分これがここでの最後のフライトになるから念入りに整備するわよ。勇希も手伝ってもらうわよ……」
「わかったわ。そうか。ついに最後のフライトか……。疾風達も来るの」
「一応、親父っさんに言っておいたから大丈夫とは思うけれど心配なら勇希が言っておいたらどう」
「そうね。それじゃあやりますか」
「そうだね」
そんなこんなで私達2人は久々のフライトに備えてULPの整備を行うことにした。まあ、私達の生命に関わることだから特に念入りに私達は機体の整備を行っていた。
(続く)
管理人のコメント
年が明けて、今回はお正月の話。なんとなくまったりモードのようです。
>「ええ、うまくすれば疾風達と会えるかもしれないね。この姿で疾風を撃墜してやるぜい」
>「勇希……。まあ、私も人のことは言えないか……」
ちゃんと着付けできるのか、二人とも……
ちなみにうちの娘たちはひろのしか着付けができません(笑)。
>「あたた……。昨日はたしか……。ああ、そうだったわね。確か葵さん達の宴会に巻き込まれて年末から飲んでいたんだったね」
治子のほうは正月そうそう堕落気味。前回も宴会で引きだったので、クリスマスからこの方ずっと飲んでいたように見えます(笑)。
>今『漢達の武蔵』やっていますからね〜
……パチモン?
>「はい。あけましておめでとうございます。って何よ。何でお兄ちゃんに抱きついているのよ」
郁美、それなりに将来の義姉に対する対抗心はあるようです。
>「それはそうと郁美ちゃん。勇蔵にも言っていたけれど明日勇蔵と一緒に家に来ない?面白い経験をさせてあげるよ」
郁美も一緒に空を飛ぶ事になった様子。さて、将来家族になる(?)三人はここで何らかの絆を結ぶんでしょうか。
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