翼持つものたちの夢

霜月天馬

第13話 どきどき文化祭 2日目 中編



「結構人が多いな。多分全校生徒の4割位いるんじゃあないかな」
「先輩〜。まだこれなんて序の口ですよ。本当のコンサートだったら、もっとすごい人数と熱気ですよ」
「へえ〜。まるで桜花ちゃんコンサートに行ったような口ぶりだね」
「まあ、あちこちのコンサート会場で警備のバイトもしましたし、自分で行ったりもしましたから」
「そうか。それにしても両親が健在な桜花ちゃんがなぜにバイトをする?私や勇希みたいに生活費を稼ぐ目的でもないし一体なぜに・・・」
 私は桜花に一寸質問をした。すると桜花はにっこりとした表情で答えた。
「ええ、それは実は私には欲しいものがありましてね、それを入手する目的でバイトをしているんです」
「欲しいもの?どんな物なのか興味があるが、言いたくないなら別にいいけれどね」
「ええ、じつは私も直子先輩と同じくULPの操縦技能資格を取ろうと思っているんです。規定年齢に達するまでに免許代を稼ごうと思ってバイトに励んでいたんですよ」
「そうなんだ。まあ、がんばればきっと取れるさ」
「そうですね。あ、先輩いよいよ始まりますよ」
「そう。それじゃあ聞いてみるかね・・・」
 そんなこんなで私達は照明が落とされて暗くなった体育館のステージ部分を見つめていた。
 そしてスポットライトが照らされ、彼女が出てきた。そして、観客の興奮した歓声があたりに広がり、そして静まった。その直後に落ち着いた雰囲気の歌が流れ、彼女の歌声があたりに流れていった。
 私は、彼女の歌を聞きながら心が洗われると言うか、癒されるような感覚を味わいながら彼女の歌声に聞きほれていた。そう、かつて天使の歌声を聴いた時と同じような感覚に似ていた。

 そして、約2時間経ったころ・・・。
「先輩、直子先輩・・・」
「ああ、桜花か、いやはや、この私があそこまで深く感動させられるとはね。なんというか心に響く歌だったな」
「そうですか。私には良く判らないですね」
「まあ、受け止め方や価値観は人それぞれだからとやかくは言わんし、言えないから。さてと、桜花ちゃんそれじゃあ行こうか」
「そうですね。片付けが終われば後夜祭をかねたダンスパーティがありますからね。衣装は自由と来ていますから、気合がはいりますよ・・・」
「桜花ちゃんのことだから二種軍装だとおもうが・・・」
「近いですが、はずれです。まあ見れば判りますよ」
「そうか、まあ私はどんな衣装で行くかは秘密だよ」
「そうですかそれじゃあ先輩、またあとで会いましょう」
「そうだねそれじゃあ」
 そう言って私は桜花と別れて、一人教室に向かっていた。途中で委員長や疾風たちと合流し教室に戻っていた。
「片付けって言っても昨日のうちにあらかた済ませてしまったしね。一体何をするのかな」
 と、私。
「うーん。ここに立てかけてある、コンパネ等を元の場所にもどして置いてくれればいいから。あとはカーテンなどを外して片付ければそれで終わりだよ」
 委員長の指示に私達は的確に動いた甲斐あって、片付けは他のクラスよりも早く終わっていた。そして、イベントの解散を聞いた私達は一度着替えに家に戻ることにした。
「はあ〜。それにしてもあのコンサートは良かったよ。特に疾風と一緒に聞くことが出来たのは本当に良かったよ。直子の姿が見えなかったけれど、直子も行ったのでしょ」
「ええ。桜花ちゃんと一緒に見たよ。有線なんかで時々は聞いていたけれど彼女の歌は天性の歌だよ。天使の歌を聴いたような感覚を覚えたね」
 私は勇希の質問に思ったことを素直に答えていた。
「そうなんだ。ところで直子は後夜祭行くの」
「そうだね。まあ今までうざいと思って行かなかったけれど最後だから私は行くよ。イベントで作った私達の制服だけれど、あれのエプロンを外せば立派なドレスに様変わりするように作ってあるから。衣装に関しては勇希の分もOKだよ」
「へえ〜。直子ってあんな状況でもそれなりにつくっていたんだ」
「って勇希。私と勇希と委員長の分だけだよ。あとは急造品だからそういう風には作っていない」
「そう、それじゃあ委員長にもいっておいた方が良いわね。それじゃあ私言っておくよ」
「ああ、頼むね」
 そう言って勇希は一目散に委員長の所に駆けて行った。その様子を見ていた私は夜のダンパを思いっきり楽しもうと心に思っていた。
 10分後・・・
「直ちゃん。勇希から聞いたけれど貴方ダンパに出るの」
 私は声が聞こえた方向を向いてみるとそこには息せき切って駆けて来た委員長が立っていた。
「出るつもりだけれどそれが一体なんなんの。委員長」
 私がそういうと委員長は安堵したような表情になって私にしがみ付いてきた。
「ちょ、ちょっと。委員長どうしたの」
「あ〜。良かった〜。実は警備の人間が足りなくて困っていたのよ。直ちゃんが来てくれるなら100人力だよ」
「どういうこと。詳しく聞かせてもらおうかね・・・」
 私は委員長から話の経緯をきいていた。話はこうだ。本来ならば薙刀部と剣道部、柔道部などの格闘系の連中に警備を頼む予定であったが、柔道部と剣道部の連中が理由をつけて逃げていったので困っていたということらしい。
 まあ薙刀部の連中が残っていたのは幸いであったと言う話だが。
「そうかい。それじゃあ私は戦闘用の装備で参加するかね。外見はごく普通だけれどね。勇希すまないが助太刀を頼むかもしれないから疾風と一緒に参加してくれるか」
 わたしがそういうと勇希は微笑みながら答えていた。
「もちろん。疾風と一緒に踊れるなんて夢のような出来事なんだからやるわよ」
「じゃあ勇希。疾風に防御用のベストを渡しておいて。用心に越したことはないからね・・・」
「直子。委員長それじゃあ。あたしはこれで・・・」
 そう言って勇希は駆け出していた。私はとっさに後を追いかけることにした。
「それじゃあ委員長またあとで。ちょ、一寸待て〜」
 そんなこんなで後夜祭の準備へ私達は学校を後にした。

(続)

管理人のコメント


 文化祭もいよいよラストのようですが、まだまだ事件は残っている様子。

>「そうですね。片付けが終われば後夜祭をかねたダンスパーティがありますからね。衣装は自由と来ていますから、気合がはいりますよ・・・」
>「桜花ちゃんのことだから二種軍装だとおもうが・・・」


 それは相手がドン引きするんじゃないだろうか……


>イベントで作った私達の制服だけれど、あれのエプロンを外せば立派なドレスに様変わりするように作ってあるから。

 器用なデザインですね。まぁ、メイド喫茶とかのメイド服風制服には、かなり華美なものもありますから、そういうノリなんでしょうが。


>その様子を見ていた私は夜のダンパを思いっきり楽しもうと心に思っていた。

 直子よ、相手はどうするのだ?


>戦闘用の装備で

 何故そんなものを用意しているのか……


 次はダンパのシーンでしょうが、この連中が張り切ってるからには、血の雨くらいでは収まりそうも無いですね(笑)。

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