翼持つものたちの夢

霜月天馬

第11話 どきどき文化祭 初日 後編


『もぐもぐ。はぐはぐ・・・』
「い、委員長・・・そんなに急いで食べると詰まるよ・・・」
『んぐ。むしゃむしゃ。うっ』
「ほら、言わんこっちゃ無い」
 私はそういいながら傍らにあった水筒の口をあけて委員長に手渡した。委員長は水筒の水を豪快にラッパのみをしていた。
「ふう。ようやく腹の燃料もフルタンクになったよ。ありがとうね」
「いやはや、よく食べたね。普段の委員長からはぜんぜん想像もつかないような食べっぷりだったよ。いやほんとマジに。こうも、きれいさっぱり平らげると私も奢った甲斐があったね。もっとも、それで用意していた弾の6割が消失したけれどね・・・」
「それじゃあ、あちこちの部活の出し物があるから見に行こうか」
「そうだね。ってここに見えるのは・・・」
 そう言って私は見慣れたテントに駆けていった。そこは『射撃部』と書かれた模擬店であった。
「おや、深山さん。どっちのほうだったかな」
「直子よ。調子はどう」
「まあ、ぼちぼちだね。この前の大会での助っ人は助かりましたよ。どうです、撃って見ませんか? 貴方なら無料でどうぞ」
「そう、それじゃあ銃を貸して」
 そう言って私は部長から銃を受け取り、遊底の作動状態や空気圧の確認を済ませ、薬室に弾を込めて流れるような動作で照準を合わせて引金を引いたのであった。
「命中したけれど、これ照準調整してないでしょ。これじゃあ素人だったら絶対に当たらないね。本当に良い商売だね」
「まあ、直子さんにはかなわないね」
 私と射撃部の部長と話をしていると委員長がやってきた。
「直ちゃん私もやってみていいかしら」
「おや、おや。誰かと思えば水泳部のエースじゃあないか。え、撃ちたい。それじゃあ俺がやり方を手取り足取り・・・」
「一寸待った。私が教えてあげるよ。あんたみたいな狼に教えたらあっという間にやられるよ」
 そんなこんなで私は委員長に銃の撃ち方を教えてあげていた。
「そう、精神を落ち着けて照門と照星をまっすぐ見て。そして照星の先に狙いたい物を合わせて引き絞るように引金を引く・・・」
『バシ』
 軽い銃声がして的の外側とはいえ、一応命中したのであった。
「よし、命中」
「え、命中って当たったんですか」
「そうよ。まあ一点の部分だけど、命中は命中よ。それじゃあ委員長銃を台に置いて、別の場所に行こうか」
「あ、そうですね。それじゃあ、ありがとうね楽しかったよ」
 そんなこんなで私たちはその場を去った。
「あの、直ちゃん。今度は水泳部の方に行ってみませんか」
「そうだね。それじゃあ、行こうか」
「ええ」
 そんなこんなで私たちは水泳部が主催している場所に向かうことにしたのであった。そして、そこで私は委員長の意外な一面を見てしまった。
「あら、香奈。久しぶりね」
「先輩。鷹乃先輩〜」
「ちょ、ちょっと香奈。カナブンみたいにまとわりつかないでよ・・・」
 私は委員長の変わりようをみてあっけにとられていた。
「いつもの委員長からはぜんぜん想像がつかないね。ほらほら、舞方さんそれ以上はやりすぎだよ」
「あ、いけない。私ったら久しぶりに先輩に会ったものだからつい興奮しちゃったみたいね」
「まあ、あたしも別に香奈のこと嫌いじゃあないから・・・。ところで貴方誰」
 私は自己紹介がまだだったので自己紹介することにした。
「深山直子です。以後お見知りおきを貴方は・・・」
「ん。あたし。あたしは寿々奈鷹乃」
「鷹乃先輩はオリンピックにも出る可能性が一番高い選手なんです。私の憧れの人なんです」
「か、香奈。あなた一寸発想が飛んでいるね」
「でも、このまま努力すればきっとたどり着きますよ。私もそこに追いつくべく努力は惜しまないから」
 私は二人のやり取りを傍目で見たわたしはこれ以上の邪魔は野暮と判断して一人この場所を去ったのであった。そして屋上の壁にもたれながら私は一人缶コーヒーを片手にのんびりと空を眺めていた。
「しずく・・・。私は夢のためにがむしゃらに突き進むけれど、夢を果たした時にしずくに逢えることを希望として進むだけだね。それに私は宇宙へと上ってみせるよ・・・」
「な〜に。そんな所で黄昏ちゃっているのよ。ほら直子帰るわよ・・・」
「なんだ。なんだ。私が一人考え事していたのを邪魔するのは・・・って勇希か。ってことは」
 私は何気なく腕時計をみて驚いていた。
「あれま。もうこんな時間だったか。それじゃあ帰るか。ところで勇希。午後の様子はどうだった。って聞くほうがが野暮か・・・」
「そうね。直子の想像とおり、ぜんぜん駄目だったね。だから委員長も今日で営業を打ち切る決定を下したわ」
「そうか。と、言うことは私たちは明日は丸一日空き時間が出来たと言うことだな。それじゃあ帰るか」
「ええ」
 私と勇希は二人並んで仲良く下校することになった。まあ、店の方が一日でパーになったのはつらいけれどそれでもこの制服は記念に残そうとおもっていた。まあ、明日は思いっきり頭のねじが外れるまで遊びまくろうと思っていた私であった。

(続く)

管理人のコメント


 不調の模擬店を離れて遊びに行く直子と委員長。二人が行く先は……

>『もぐもぐ。はぐはぐ・・・』
>「い、委員長・・・そんなに急いで食べると詰まるよ・・・」

 だんだん本性が出てきました。良い感じです(笑)。


>「命中したけれど、これ照準調整してないでしょ。これじゃあ素人だったら絶対に当たらないね。本当に良い商売だね」

 まぁ、だいたい何処の射撃部でもやっている事です(笑)。


>「ん。あたし。あたしは寿々奈鷹乃」

 「Memories Off 2nd」のヒロインの客演。これで、委員長が同作品の舞方香菜だと判明。なかなか管理人好みのキャラです。


>私は二人のやり取りを傍目で見たわたしはこれ以上の邪魔は野暮と判断して一人この場所を去った

 直子、フられました。ちっ、残念(何


 文化祭初日もこれで終了。二日目以降はいつもの3人での行動でしょうが、さて何が起こるやら?

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