翼持つものたちの夢

霜月天馬

第10話  どきどき文化祭 初日 前編<


 チュン。チュン・・・
「ん。あ、あれ。もう朝・・・。って大変!直子、疾風起きなさいよ〜」
 朝日によって目を覚ましたあたしは時計を見て二人を起こすべく体を揺すった。時計の針は既に7時20分を回っていた。衣装の搬入や装備の説明といった打ち合わせなどがあるから早めに来ておかないと委員長達に何を言われるか判ったものではないからだ。
「うーん勇希〜後5分・・・・」
「桜花・・・頼むもうすこし・・・」
「ったく。しょうがないわね。奥の手を使うしかなさそうね」
 起きようとしない二人をみたあたしは台所に行って貝杓子をもって二人の頭めがけて思いっきり引っ叩いていた。
『ガン、ガン』
「「痛い(痛て)〜何するのよ(んだ)勇希」」
「二人とも寝ぼけていないで時計を見なさい」
 あたしは憮然としている二人に傍らにあった目覚まし時計を見せた。時計を見た二人はすぐさま目の色を変えた。どうやらあたし達の状況をはあくしたようだった。
「確かに、今日遅刻したら洒落にならんね。判った急ぐよ・・・」
 そんなこんなで、あたし達は朝ご飯もそこそこに学校に向けて出発していた。もちろん夕べまで仕立てていた衣装とオプションも忘れずに持っていったのは言うまでも無い。
「あら、直子さんに勇希。それに白菊君までこんな時間に来るなんてね」
「まあね。なにしろ委員長が私達にやれと言ったのでしょ。言われた以上はやるわよ。はいこれが委員長の分ね」
 そう言って私は委員長のサイズに仕立てた衣装を委員長に渡した。
「あ、ありがとう。しばらくしたら他の女子たちも来る頃だから渡していってね」
「わかった。あとオプションでネコミミとウサミミがあるから、それを使ってシフトの識別に使ってくれれば嬉しいね」
「そう。やっぱり貴方達に頼んだのは正解だったわね。あまり時間の無い状況にもかかわらず、これだけの高品質の衣装を仕立ててくれた事に感謝するわ」
 それを聞いた私は委員長に白状していた。
「そうですか。まあ、私と勇希はガンダム、委員長はアストレイ。ほかの連中はストライクダガーってところね」
それを聞いた委員長は不思議そうな顔で答えてきた。
「それって、つまり。私たちのは試行錯誤の状態だけど、しっかりと作りこまれていて、ほかの連中は完成されているけれど簡略化された状態と認識すればいいのかしら」
「そういうことです」
「そう、やっぱり無理があったわけね。まあ、2日だけ持てば良いから何とかなるわよ」
「二人とも、何喋っているのよ。さっさと着替えないと更衣室詰まるわよ」
 勇希の声に引かれて私と委員長の二人は着替えるべく更衣室へと消えていった。そしてクラスの女子全員に制服が行き渡るころ、みなは着た感想を言っていた。
「意外と涼しいね。それに、思っていたよりも軽い。深山さんありがとう」
 私と勇希はそんな声を聞いて思わず顔を見合わせて、笑みをあげていた。そんな和やかな雰囲気も委員長の一言で急に引き締まった雰囲気になり、私たちは委員長に向けていた。
「いよいよ始まるわね。みんなオプションは持っているね。それにシフト表も持っているわね。それじゃあうさ耳が午後、ネコ耳が午前のシフトとして使うからなくさないようにね。さあみんな。気合入れてやるわよ」
 委員長が気合の入った演説をぶち上げていたのを私は冷めた視線で見つめていたが、今後こういう風にやるようなことも無いだろうと思い、私もまた周りに同調してテンションをあげていった。
「直子、どうやらあたしと直子は一緒にやれないみたいね」
「そうだね。勇希、私のことはいいからあんたは疾風と一緒に見物するなり、楽しんできなよ。私は委員長と回るつもりだから・・・」
「そう、それじゃあそうさせてもらうよ。がんばってね直子」
「1200までには戻ってこいよ」
「判ったわ。それじゃあね」
「ああ」
 勇希はそう言うと、うれしそうな足取りで疾風の腕を組んで私たちの視界から去っていった。
「勇希も相変わらずだな。委員長それじゃあやりますか」
「ええ。直子さん。貴方の働きと指揮を頼むわよ。私も経験が無いわけじゃあないけれど、貴方程はないから・・・」
 委員長のその言葉に私は大きくうなずいていた。
「まかせて、私の働き振りを見せてやるわよ。本当はこんなただ働きなんてしたくは無いけど、おそらくこの先こんな風にバカやれる時なんて、ないんだから・・・」
 そう言って私は委員長たちと一緒にフロアへと出て行った。そして、開店時間になり、どのような状況になるか判らなかったが、どういう状況になってもいいように腹を括ってやることにした。

 1時間後・・・
「むう、誰も来ないとは・・・。なんか誰も来ないと少し不安と言うかダレてしまいそうだ・・・」
「た、確かに隣と被っているとは思ってもいなかったよ。もしかして誰かスパイでもいるのかしら」
 委員長の目が私を見ていたが、私はとっさに否定のポーズをしていた。
「委員長。私と勇希。疾風のやつは無実だよ。だって強制停学食らっていたんだから・・・」
「誰も、貴方たちのことを責めている訳じゃあないよ。これじゃあ赤字確定のよーね。ごめんなさいね
 貴方たちの衣装代はともかく、礼金を払うことは無理みたいね」
 私と委員長が話し合っており、他の人たちはと言うと後方に下がっていたのであった。
 私と委員長が駄弁っていた所に数人の男子たちが店内にやってきたのを見て私は委員長に合図を入れて笑顔で挨拶をして、接客へとむかった。
「いらっしゃいませ何名さまですか」
「ああ、3人なんだけど」
「畏まりました。それではどうぞ」
 そう言って私はバイト先でやっているのと遜色ない動きで客の接客をしていた。そして注文をとって来た私は後ろにいた連中にオーダーシートと声で伝えていた。
「コーヒー3つ。お願いね」
「は〜い。出来たよ〜」
 オーダーが出来たのを確認した私がトレーに乗せて、もって行こうとしたところで委員長が入ってきた。
「直ちゃん。いいわよ私がやるから貴方は少し休んで。勇希から聞いたよ。貴方たち今日の夜明け近くまで作業をしていたのだから。こんなんでミスされたらやばいからね」
 それを聞いた私は素直に頷いていた。
「たしかにそうね。それじゃあ委員長ちょっとお願いね」
「ええ。何かあったら呼ぶから少し休んでなさい」
 そう言って委員長はトレーをもって客のところへと去っていった。そして、特にこれと言ったクレームも出ていないようだったので私は委員長の言葉に甘えて後方の更衣室の壁にもたれ掛かるように腰を
下ろして、そのまま眠りの世界へと誘われていった。

「あれ、直子・・・。あれ、寝ちゃっているしょうがないわね、何か掛けてやら無いと、風邪ひくわね」
 あたしは、かばんの中から銀色の薄布を直子の体に掛けてやると委員長に交代にきたことを告げるべく、委員長を探していた。
「委員長。ああ、いた。どう様子は」
「あ、勇希。見てのとおりね。何せ隣と内容が被っている上に、あっちのほうが露出度も上と来ているからねえ。かなり苦戦しているわね」
「そうなんだ。やっぱり、ちらリズムよりか直接的なスタイルの方が男子の食いつきがいいのかな。ところで委員長。一寸早いけれど交代に入るわよ。直子は・・・って眠ってしまっていたと言うことはぜんぜん客の食いつきが駄目って所ね。委員長替わっていいわよ。後はあたしがやっておくから」
「それじゃあお願いするわね。ああ、直子のことは私が見ておくよ」
「ん。それじゃあお願いね」
 あたしは委員長から引継ぎをして配置についた。それから1時間ほど経過したころ・・・
「ん・・・。あれ、委員長・・・」
 私は寝起きの動いていない頭をフルに稼動させてこの状況を思い出そうとしていた。そう、何しろ今の私は委員長のひざの上に頭を乗せられていた状態だったからだ。
「ああ、直ちゃん起きたのね」
「膝枕してくれたの、ありがとう・・・」
「ん。良いのよ。それじゃあシフトも終わったことだから見物に行こうか・・・」
「ん。そうだね。ああ、委員長。膝枕してくれたお礼と言っちゃあ何だけれど食事をおごるよ」
「え、良いの。それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかしらね」
「っとその前にこの格好じゃなんぼなんでもヤバイから着替えないとね」
「確かにそうね。それじゃあ着替えてからね」
 そんなこんなで私と委員長は着替えを済ませていろいろな出し物の見物をするべく校舎内へと消えていった。

(続く)

管理人のコメント


 文化祭もいよいよ開幕。三人が悪ノリしてつくった衣裳の評判やいかに?

>「そうですか。まあ、私と勇希はガンダム、委員長はアストレイ。ほかの連中はストライクダガーってところね」
>「それって、つまり。私たちのは試行錯誤の状態だけど、しっかりと作りこまれていて、ほかの連中は完成されているけれど簡略化された状態と認識すればいいのかしら」

 その例えで理解できるとは……やるなっ、委員長!


>「そうだね。勇希、私のことはいいからあんたは疾風と一緒に見物するなり、楽しんできなよ。私は委員長と回るつもりだから・・・」

 おや、直子と委員長、かなり気の合う関係ですか?


>「むう、誰も来ないとは・・・。なんか誰も来ないと少し不安と言うかダレてしまいそうだ・・・」

 お、ちょっと意外な展開ですね。


>「あ、勇希。見てのとおりね。何せ隣と内容が被っている上に、あっちのほうが露出度も上と来ているからねえ。かなり苦戦しているわね」

 露出度高いって……良いのか学校の文化祭なのに。


>私は寝起きの動いていない頭をフルに稼動させてこの状況を思い出そうとしていた。そう、何しろ今の私は委員長のひざの上に頭を乗せられていた状態だったからだ。

 うわぁっ! ラブラブだあっ!(笑) どなたか元ネタの委員長のビジュアルを知っていたら教えてください(切実)。


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