暗い何も無い空間に浮かぶ無表情な仮面、そして仮面より染み出るように現れるは黒い紳士服とシルクハットに身を包んだ謎の男
「この度は我等の劇場においでくださってありがとうございます。私、この劇場の案内役兼語り手を勤めさせてもらっています役職名『ポーカー・ザ・マスク(仮面の無表情)』と申します」
 男の周囲には無数の本が舞っており、そしてその一部が男の手の中に納まり、ページが独りでに開いていき、褐色肌の少女のページで止まる。
「さぁ、今回はとある理想に破れて磨耗した弓兵の物語です。では、ごゆっくりとお楽しみください………」
 そういってページの開いた本を残して闇に消えていく男の姿………

 そして舞台は幕を開ける。


―精霊獣奇譚・外式―
―魔界街の住人達―
―第一話にしてある意味第三話?  
とある弓兵の軌跡―
元ネタ(Fateシリーズ、魔界戦記ディスガイアなど)

 そこは魔界にある弓に長けた女性ばかりの寒村……。
「エミお姉様ぁ〜〜〜(はぁと)」
 ツインテール状の大きな縦ロールの一般的な魔界の弓兵たるアーチャーの少女がとある女性の右腕に抱きつき、
「御主人さまぁ〜〜〜♪」
 くすんだ白色をした幾つかに分けた縦ロールの髪に拘束服的な印象を受けるメイド服を着た少女は左腕に抱きつき、
「(何故だ……何故、こんな事に………)」
 そして、二人の中心となって両腕に二人をぶら下げている一際身長の大きな背の女性……(因みに、下半身はスカートではなくスパッツ)は虚ろな目で空を見上げていた………。

――その原因は彼女が『産まれた』時から始まる――

 彼女は気付けば其処にいた………。
 この村、否、この種族独自の出生方法を用いた『転生』によって再び生まれたときから彼女は其処にいた。
 彼女の与えられた名は『エミ』、そしてその前身は理想の果てに磨耗し、捻くれて歪んでしまったガランドウな『守護者(セカイノドレイ)』……その時の名は『エミヤ』という。
 そして、彼女は『産まれた』時から異端だった……。
 その原因の一つは彼女の能力、
 魔力が続く限り、『無限に剣などを生み出す』能力、
 二つ目に彼女が剣を用いた戦闘技術を習得していた事……
 これは、弓以外の武器を認めない(ただし、一部の銃火器やドリルなどは認められているらしいが)種族独自の考え方と反する主義は排他的な種族の中で大きなマイナスイメージとなっていた………
 三つ目に彼女の容姿、彼女は褐色の肌に色素の抜けたような銀髪でその種族において『スナイパー』と称される者達ににも似ているが全く違った存在である印象を与えていた………
 最後に四つ目は、彼女が自分の前の姿と記憶を覚えていた事………
 それは「正義の味方」を志し、一を切り捨て九を救い、助けた相手か怨まれ詰られ、世界と契約してからは無限の絶望を見せられ続けて磨耗してしまった哀れな男としての記憶………
 そのことが最も彼女の異端性を大きく際出させ、村はずれに住む事を強要していた(といっても、彼女自身が勝手に村はずれに移って住んでいただけだが)。

 だが、そんなある日、
「くっ………まさか、食糧不足で魔物が襲撃してくるなんて……」
 村は魔物達の襲撃を受けていた………
 しかも、ちょうど村の猛者(といっても女性ばかり)は出稼ぎにでており不在であった時の襲撃であった。
「あぐっ………」
 今残っているの村一番の弓の使い手が魔物の爪によって倒され、
「ひっ………こ、こないで……」
 一人の未熟な少女に魔物の凶爪が迫ったその時……
 ドス……「ガァッ!?」
 魔物に一本の矢……否、一振りの剣が突き刺さり……
「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」
 そして、その一言と共に砕け散り、爆発する剣……。

 そうして繰り広げられる寒村での英雄の狂演………
 矢の代わりに放たれるは歴戦の武具の贋作達、
 贋作といえどもその力は本物と見劣りしない者が殆どであり、弓より放たれては魔物を屠り、もしくは穿ち、例え接近してきた魔物達であろうとも何時の間にか握られていた白と黒の双剣によってあしらわれて距離は離され、そこを狙撃することの繰り返し、
 そして、
「投影連続層写(ソードバレル・オープン)」
 その言葉とともに虚空に出現する剣群が全ての魔物を一掃し尽くした………。

 彼女の強さは村にとっては衝撃であった………。
 だが、それ以上に衝撃であったのは、
『剣や槍などを矢として扱う』発想であり、
 ソノ考えは瞬く間に村中に広がり、異端ゆえに(少々)疎まれていた(かもしれない)彼女は一気に受け入れられ、その次の日から『剣や槍などを矢として扱う』技術を学びにくる者達が村中から集い始めるほどであった……。
「エミお姉様ぁ〜〜……♪」
 計らずとも助けることになってしまった一人の少女、ロビーナにベタ惚れされてしまったのは誤算では合ったが………。

 因みに、魔物の襲撃を受けた当初、彼女は何故遅れ方かというと………
「■■■■■■■■ッ!!」
 箪笥の角に指をぶつけて蹲っていた為出遅れたそうな………。


 それから数年の時が経ち、
「お姉様………ここ………何処なんでしょぉ〜〜?」
「知らん……」
 二人は謎めいた遺跡にいた…………。
 遺跡の壁に埋め込まれている無数の髑髏……
 各行き止まりごとの部屋には鎖で繋がれた遺体の数々と血塗られた拷問器具………
 そして、遺跡を徘徊する欲情した魔物や空腹の魔物の群れ
 どうして二人がこんな場所にいるのかというと…………
「はぁ………(まさか、あんな所にクレパスがあるとはな………私も勘が鈍ったか?)」
 雪原での狩りの最中、二人は雪原に隠されていた謎のクレパスに落ちてしまい、
 現在にいたるわけである。
「お姉様ぁ〜〜〜(泣き声)」
「………まぁ、大丈夫だろ」
「え?何でですか?」
「あぁ、さっきこの…『デール』が使えるみたいでな」
 そういってエミは道具袋の中に入っていたトビラ状のアイテム『デール』(本来はアイテム界―武具や道具の『中』に存在する世界―から脱出するためのアイテム)を取り出した。
「でも、何故でしょう?」
「どうやら……ここもアイテム界によく似た空間の一種らしい……ほら、『裁判所』もアイテム界の中にあっただろ?多分、あれと一緒な空間なんだろ」
  ※因みに、『裁判所』とは、悪魔にとって“罪”は勲章のようなものであり、それを得るための罪状のアイテム界に存在する空間の事である。
「確かにそうでしたね………ってことは、何時でも帰れるって事ですか?」
「そうなるだろうな……」
「でしたら、もう少し此処を探索してみませんか?」
「はい?」
 先ほどとは打って変わって好奇心満々になっているロビーナなのであった。
 そんでもって………
「ふぅ、此処は思ったよりも狩り場としては有効なようだな…」
 何だかんだ言って狩りを行っているエミの姿があった……。
 だが、突然の出会いと不幸というものはそこ等中に転がっているものであって……。
「お姉様お姉様、此処の部屋………」
 ある日、突然訪れる者である……。
「?何だ?」
 そして、ロビーナの指差した部屋………
 其処には………
「ぁ……ぅ……」
 全身には切り刻まれた後があり、所々が緑やら白やら赤やらの不浄な液体で汚され、全身を拘束された少女の姿があった……。
 その瞳には光は無く、精神は磨耗しきってまるで人形か何かを思わせるほどであり、声がしなければ生きているのかすらもわからない状態にあった。
「「………」」
 その後、
 少女は鎖を断ち切られて村へと運ばれていき……
「フム………エミが連れてきたのだからエミの家で預かればよかろう?」
 という長老(見た目は少女)の一言でエミの家で養う事が決定してしまった(ロビーナはまだまだ若いため、除外された)。
 その夜、
 少女の汚れを落し、手当てをして寝ずに看病をしていたエミであったが、
 突然の眠気ととも夢の中へと誘われてしまう…………

―其処は……―
―全てが焼け爛れ、地面には折れて砕けて錆びた無数の剣群、―
―空は闇で覆わているばかりか所々に巨大な傷があり、そこからは血を思わせる赤い輝きが漏れ、―
―そして、周囲には砕けた廃墟が転がり、その中心で蹲る少女を見たとき………―

 エミは唐突に現実世界に引き戻された。
 そして、おぼろげでは在るが、少女の正体に気付き始めたエミ………。
 それから幾らか月日がたち、
「御主人様ぁ〜〜」
 何とか社会復帰するまでに回復した少女、
 その少女はロビーナによって『コミィー』の名付けられ、今ではエミを『御主人様』と慕うメイドもどきの少女となっていた………。
 理由は不明「コミィーちゃん♪こんどはこの『聖者の血染めメイド服』を着てみて♪」「はいですのぉ〜♪」
……………
 因みに、エミの心中は複雑な事になっていた………。
「あ、あれも私の行き着く先の可能性の一つなのか?いや、そんな筈は無い……だが、あの時の夢は……だが、あのときの壊れ具合は一体……?いやいや、あたしの本質は……………(Endless)」
 何のことかは不明である………。

 そんな日々が続いたある日………

 三人は狩りの途中、魔王城付近の森の丘を立ち寄った時…………
「……!!」「……♪」
「?エミお姉様,何か聴こえませんか?」
「ん?そうか?」
 そういってエミが耳を済ませてみると………
「…!!!」「……(はぁと)」
「……何か聴こえるな……」
「御主人様、ロビーナちゃん、あそこの方から聴こえますのぉ〜」
 そういってコミィーの指した森の一角を『鷹の目』で見てみると……………

 赤毛の侍(女)が弟子であろう侍(女)に(桃色な意味で)襲われているシーンがそこにあった。
 しかも弟子であろう侍(女)(以後、「侍見習い」)には………いや〜〜ん何かが装着されており、赤毛の侍(女)(以後、「赤毛侍」)は押し倒されつつ、首を大きく振り目には涙を浮かべながら嫌がっている意思を示している。
「「「………」」」
 その様子を丘で身を屈め、じっと見ている三人………。
 そして、
「アガァッ!!!」「………〜♪」
 赤毛侍の悲鳴が丘にまで聞こえてきた………。
 そして、行われる何かの行為……
「「…………(ハァハァ)」」
 スールな二人は息を荒げながらその行為を食い入るようにして見ているが、
「……?(何だ?あの赤毛の侍(女)から感じるこの感覚は………?)」
 自らの感覚の違和感故の思考の没頭に行為は目に入っておらず、そして、たまに二人がチラチラとこっちの方を潤んだ瞳で見ていることにも気付かなかった…………。
 しばらくして……
「な、なんだ二人とも……そんな子犬のような目をして……」
「………お姉様……」「……御主人様……」
 そう言って二人が指した方向には………
「………………?」
「……(はぁと)」「………〜〜♪……〜〜(はぁと)」
 何か攻受が逆転し、一方的に侍見習いを『せめている』赤毛侍の姿があった……。
「へ?」
 その光景に一瞬、頭の中が真っ白になったエミであったが………
「お姉様ぁ〜(はぁと)」「御主人様ぁ〜♪」
「え゛?」
 今度は二人が襲い掛かってきた。
「ってか、ロビーナのその右手に持ったソレは何ッ!?その兇悪で卑猥な赤黒い凶器は一体何ィッ!?」
 ロビーナのその手にはエミの言った通りの物体が握られており……。
「え?村の名産品の『ウマの○ン○ン』ですよ?お姉様は知らなかったんですか?」
 そして、エミの叫ぶような質問にそう冷静に答えるロビーナ……。
「御主人様(ピッ)」
「はい?」
 コミィーが指差した方向には………
「………♪」「………(恍惚)」「……(暴走中)」
 先ほどの侍どうしの絡み合いに巨乳で有名な魔法剣士が加わり、赤毛侍を後から胸の肉球が潰れるような激しい運動をしていた………。
 それが一体何を意味しているのかは不明である(核爆)。が、
「「お姉(御主人)様ぁ〜〜(はぁと)」」
 何が行われたのかは全くの謎である。
 ただ、エミが感覚の奔流に飲み込まれて意識を失う寸前に見た光景は………
 事が終わって、「後悔の念」故に頭を抱えてうずくまる赤毛侍の姿と………
 今にも(後悔の念で押し潰されそうなっている)赤毛侍に(PINKな意味で)襲い掛からんとする顔を高揚させた夜魔(サッキュバスなどの種族名)達の姿であった……。


――そして、時は戻って寒村――

 エミはそれから何度も二人に襲われており、何処かへ隠れてもロビーナの鼻とコミィーの目によって発見され、
 固有結界の内部に引き篭ろうとするも結界内部にまで卑猥なソレは侵蝕してくる上にコミィーによって易々と侵蝕されてしまっていた……。(因みに、それ以後固有結界に逃げこもとすると見ているものにとっては楽園(パラダイス)でも本人にとっては地獄(インフェルノ)な状況が展開されてしまうようなっていたとのこと。)
 そして、
 エミが逃避した世界から現実の世界に戻り、虚ろな瞳で上を見上げてみると………
 其処はロビーナの家の天井だった………。
 しかも、エミの体のいたるところ(特に腰や各所の一部)は(何故か心地よい)痛みが激しく、寝ている両側にはロビーナとコミィーが寝ていた………しかも裸で。
「あは、あはははははは…………」
 もう、笑うしかこの現実から逃避する術は残されていなかった。


 余談では在るが、その後、その寒村では名産品を用いた新たな繁殖方法が『発明』され、人?口はかなり増える事になるのだが…………その影には一人の女性の(精神的な)犠牲があったことはあまり知られていない………ってか、犠牲だとだとは誰も思っていなかったとの事……本人意外は………。
「あは、あははは、あははははは……私が子供を私が子供を私が子供を私が子供を(以下Endless)」



 それから、数十年規模の月日は流れ………
「ふぅ〜〜〜……重かったですぅ〜〜……」
「いい値で売れましたねぇ、お姉様♪」
「ん、そうだな……」
 魔王城の大規模な商会の販売店にいらない装備品(もしくは戦利品)を売りにきている三人の姿があった。

 村では狩りの合間に手に入れた戦利品(村では使用しないような物)をたまにこういった場所に売りにくるのが習慣となっており、今回は三人が当番となって売りに来たようである。

 そして、
「ん〜〜〜……あの子達のお土産、何がいいですかねぇ〜〜……」
「そうだな…」「そうですのぉ〜〜……」
 などと、村への(誰かへの)お土産を考えていると……
ク〜
「あら」「お」「あぅ…」
 突然の空腹音、
「……せっかくですから、お昼食べて帰ります?」
「ま、仕方が無いか……」
「あうぅぅ……すませぇ〜〜〜んですのぉ〜〜(涙目)」

「じゃぁ、シロさんの食堂にしますか?」
「この前はメイ嬢の中華料理を食べたし……ま、そのほうが妥当か……(今では奴の方が料理の腕前は上だしな………ハァ………私も丸くなったものだな)」
「あれ?中華料理の『言峰麻婆』はいかないんですの?」
「「それは止めとけ」です」
「?」

 そういって食堂『剣』の方へ歩いていく三人………。
 だが、しかし、其処ではある人物との再会………そして………
 大乱闘が待ち受けているとは、
 三人は予期していなかったとのこと………。

 しかし、今回の物語は此処までという事で………。


………

「いかがでしたか?今回の舞台は?
 大変名残惜しいのですが、今回の舞台は此処までです。
 はてさて、これからこの方達はどのような物語を紡いで行くのは判りません。
 ですが、退屈ではない物語を紡ぎ出す事でしょう。
 それでは、皆さん………
 またのご来店を」

「「お待ちしております」」




次回予告

 魔界街で大人気の料理店、
 侍のシロの和食を中心とした食堂『剣』(手頃な値段でお昼は此処に決まりっ!)
 プリーストのメイの中華料理店『騒々撫子』(何とかジャンプによる出前もやっていて大人気♪)
 夜魔のシェンの経営する甘味専門喫茶店『夢幻母子』(店員は天使に見えない天使達ぃ〜♪食い逃げする奴等にゃ荷電粒子砲でお仕置きだぁ♪)
 道化師姿の魔術師・ティベリウスとハサンの新鮮無国籍及び中東料理店『暗殺者の秘密』(素材はヒ・ミ・ツ♪)
 爬虫類顔親父達とマッソォル・ムェンの『メイド“ガイ”喫茶』(料理の味と値段『だけ』は保証しますッ!!)
 そして、
 謎の怪神父・言峰氏の麻婆専門店『言峰麻婆』
「……………(バタン)」
 唇を真っ赤に腫れ上げさせて倒れる戦士(♂)。
「ふ………またの来店をお待ちしている」
 それを微笑を浮かべて眺めるはガタイのしっかりした怪神父。

 次回、「魔界街の料理人たち」
 をお楽しみ…………じゃなくて、気長に待っていてください(爆)

・後書き
 何故か一日でこの話を書き上げてしまいましたナイトメアです。
 いや、本当に驚きです。遅筆な自分が一日で話を書き上げられるなんてほんとほんと。
 それはそうと、

>さたびーさん
>スパイラル・デバスタさん
>レーンさん
 以上、感想ありがとうございました。
 後、Fateオンリーだったら何時か話が詰まりそうなので、色々な作品とリンクさせながら彼女等の日常の話は続いていくと思います。
 ほんでは。


管理人のコメント
 正伝と同時にこちらも新作が届きました。今回はアーチャーの転生体の話のようです。

>「エミお姉様ぁ〜〜〜(はぁと)」
>「御主人さまぁ〜〜〜♪」
>「(何故だ……何故、こんな事に………)」

……割と幸せそうですね(爆)


>それは「正義の味方」を志し、一を切り捨て九を救い、助けた相手か怨まれ詰られ、世界と契約してからは無限の絶望を見せられ続けて磨耗してしまった哀れな男としての記憶………

 シロもそうでしたが、「彼女」も昔の記憶を残しているようです。


>箪笥の角に指をぶつけて蹲っていた為出遅れたそうな………。

 いいドジっ娘ぶりです(笑)。


>「フム………エミが連れてきたのだからエミの家で預かればよかろう?」

 またスールが増えているようですが(爆)、この娘もエミとは因縁がありそうな様子……


 この後はちょっと評価に困る(笑)シーンが続き、エミとシロの二人も顔見知りになっていくようですが、それにしても。

>「あれ?中華料理の『言峰麻婆』はいかないんですの?」

 まて、それは孔明の罠だ。


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