この物語は事故で女性になってしまった「河野貴明」こと「十波たかみ」の受難の日々を綴った物語である……とかなんとか(笑)


  てなわけで『たかみ 受難の日々』第二話「楽しい?!お買い物」の始まり始まり〜♪

Presented by lucis



 絶望(って程でもないが)の日から二日後、ある大型百貨店のまえに三人の女性が立っていた。

「さぁ、ついた。今日はたっくさん買わなくちゃねー♪」

「はい。行きましょう」「…!、!!!」

「………………………………はぁ」

 上から春夏、イルファ及びクマ吉、たかみである。
 ここで3人の今日のファッションを説明しとこう。
 まず、春夏はクリーム色のトレーナーに桃色のカーディガンを羽織り、空色のフレアスカートをはいている。5月中旬の少し暖かい陽気では少し暑そうな格好だが、本人はいたって涼しげな顔だ。腰にはウェストポーチが巻きついており、財布などはこの中に入っているようだ。
 次にイルファだが、この娘は特に書くことはない。いつも通りのメイド服で、手には買い物籠を提げている。買い物籠の中にクマ吉がちょこんと入っている。
 最後にたかみだ。片方の膝から下のないジーンズを履き、黒いシャツ(下着)の上から赤いTシャツを着て、その上にジージャンを羽織っている。ここまではかっこよさげな『男』のコーディネートだが、ここからが問題だった。まず背が縮んだうえにウェストまで細くなったため、ゆるゆるになったジーンズにはサスペンダーが付けられていた。胸が大きくなった為、ずり上げられたTシャツはかわいいおへそを覗かせる結果になってしまっている。さらに肩まで伸びていた髪は、春夏に左右に纏め上げられツインテールになっていた。総合して『活発そうな美少女』という風になってしまっていた。

 話を戻そう。
 たかみ以外の二人……春夏とイルファはたかみを置いて妖しげな密談をしていた。

「ふふ……。やっぱりまずはあそこよねぇ」

「ええ。まずはアレでしょう」

「ふふふ」「うふふ」「!……!!」

 三人の目があやしく光り、たかみを射抜く。

「え。え。な……なに?」

「ふふふ……い・い・と・こ・ろ♪」

 二人はそれぞれたかみの両腕を掴むと店の中へ歩き出す。

「え。え。なに、なに?なに?なにーーーー!?」

「いいから、いいから♪」

(な……なんでこんなことに……)

 たかみは引きずられながら、朝の出来事を思い返していた……


     いんたーみっしょんや(や〜)by 今回出番のない姫百合姉妹


 早朝……って程でもない時間。たかみの部屋にて

「起っきなさーい。あっさでっすよー」

「んーー……。だれー?」

 謎の声(わかるだろーけど)を受けて、たかみは目をこすりながら起き上がる。

(うーん……たか君。可愛すぎるわー。抱きしめて、あたまなでなでしたいくらいね)

 たかみの状態を説明すると、自分自身の男物のパジャマは、体の縮んだたかみにはブカブカで、上着からは肩が露出し、スボンは少しずり落ちパンツがチラリと見えてしまっていた。まあパンツといっても男物のビキニパンツなのだが(履き心地が一番しっくりきたらしい)

「おはよう、たか君」

「あー。おはようございます、春夏さん。それじゃ、おやすみなさーい」

 そう言うとたかみは、また布団にもぐって眠りだす。

「こらこらこら。起きなさい、たか君」

「寒ーい、布団返してくださいよ。いいじゃないですか。俺、昨日の引越しで疲れてるんですから」

 布団をぴっぺがされて、たかみは体を抱きながら文句を言った。

「軟弱ねー。あんまりグダグダ言ってると『おしおき』するわよ」

「お、起きましたです。サー」

 たかみは飛び起きて直立不動になる。

「よし。それじゃ、朝食にしましょう。お弁当持ってきたのよ」

 そう言って春夏はリビングに向かう。
 呆然としていたたかみは、数瞬後はっとなって後を追った。


     いんたーみっしょん♪by いい歳してブる春夏…………痛っいたた。す、すいません


「で。何で春夏さんが俺の部屋にいるんですか?」

 リビングで春夏の持ってきた弁当を食べながらたかみはぶっきらぼうに問いかけた。
 ムスッとしてるというよりは、むくれているという感じで可愛くみえる。
 ちなみにこの弁当は春夏がこのみの弁当を作るついでに作ったものであるが、このみに渡した弁当より、この弁当の方が少し豪華だったりする。

「お買い物の迎えに来たのよ。昨日約束したでしょ」

 テーブルの向こう側に座り、たかみが弁当を食べているのを頬杖をつきながら微笑んで見ている春夏が答えた。

「違いますよ。どうやって俺の部屋に入ったんですか?」

「あー、そっちねー。ふふふ〜ん。これな〜んだ」

 手に持ったカードをヒラヒラさせる。

「あー!ウチの鍵じゃないですか。何で持ってるんです」

「昨日の引越しのドサクサでちょっとねー」

「か、返してくださいよ」

「言われなくても返すわよ。はい」

 テーブルにカードを滑らせる。

「もう二度とこんなことしないでくださいよ」

 カードをしまいながら言う。

「ごめんねー。もうしないから」

 頬杖をついたままで微笑みながら謝る春夏。

「はぁ……もういいです。ごちそうさまでした。それじゃ俺は向こうで着替えてきますね」

 立ち上がり、部屋を出て行こうとするたかみ。

「あら。もういいの?食べると思って多めに作ってきたのに」

「俺、もうお腹いっぱいですから」

「まだこんなに残ってるのに……」

 弁当の中身は半分以上残っている。そもそもの量が多かったというのもあるが……

「この体になったせいだと俺は思ってますけど」(肉体的にも精神的にもね)

「そう。それじゃこれは片付けておくわね」

「わかりました。じゃ、俺は着替えてきますね」

 そういって部屋を出て行くたかみ。
 春夏は弁当をじっと見つめていた。


     インターミッションよ! by やっぱり出番のない由真(眼鏡なし)


 前述した格好(髪はストレートのまま)になった、たかみが部屋に戻ってきた。
 ふと見ると弁当箱が空になっている。春夏の口についたソースなどと合わせて考えると、春夏が全部食べたらしい。

「俺の準備はできたよ。で、どこに行くんだ?」

「んーーーー」

 たかみの姿を見ながらうなる春夏。

「なんだよ、考えてなかったのか?それとも俺どっかおかしい?」

 自分の姿を見ながら言う。

「ちゃんと考えてあるわよ。それにおかしくなんかないわ。可愛いわよ、たか君。でも……なんか違和感あるのよねぇ」

「可愛いって……。それで違和感ですか?俺にはわかんないですけど……」

 たかみの言葉を聞いてはっとした顔で叫ぶ。

「それよ!それだわ!」

「は?なんです。俺なんか変なこと言いました?」

「それ!その『俺』って言うのが違和感だったのよ!即刻『俺』と言うのをやめなさい、たか君!」

「え!?」

 思考停止。しばらくして言われた内容を把握すると……

「い、嫌ですよ!何言ってるんですか、春夏さん!」

「…………ちょっと来なさい、たか君」

 有無を言わさず連れて行かれるたかみ。連行先は姿見の前だった。

「見てみなさい、たか君。今の自分の姿を……。可愛いでしょう?」

 言われたたかみは、俯き加減でチラチラと鏡を見る。

(あんまり女になった自分の姿見たくなかったんだけど……春夏さんの命令じゃ仕方ないか……う〜ん、これが『俺』か……た、確かに可愛いかも……皆が騒ぐのもわかる気がするなぁ)

「う、うん。か、可愛い……かも。でもこれが何か?」

「じゃあ、鏡の中の娘が言ってるものと仮定して『俺』と言ってみて。ちゃんと鏡を見ながらね」

 言われたまま口に出す。

「お、『俺』」

「どう?」

「う……。た、確かに違和感あるかも」

「でしょう」

 ニヤリとした笑みを浮かべる。

「で、でも。わ……『わたし』なんて言えませんよ。は、恥ずかしいーーー」

「んー。仕方ないわねぇ。それじゃあ『ボク』でもいいわよ」

「ぼ、『ボク』ですか?」

「そ。それなら少しの違和感はあるかもしれないけど。可愛いからね。オールオッケーよ」

「確かに『わたし』よりは抵抗ないですけど……『ボク』かぁ……。まぁいいかな」

「じゃ、決定ね」

 そうして、たかみの一人称は『ボク』に決まった。

「あ、そうそう。せっかく鏡の前にいるんだから髪整えてあげるわね」

 ウェストポーチから櫛を取り出し梳き始める。

「うわっ!い、いいですよ「動かないで!」はい……」

 暫く後、たかみの髪は左右に髪を纏められたツインテールになっていた。

「これってこのみと同じ……」

「少し違うのよ。たか君、このみより多少髪が長いから少し上に纏める場所を持ってきてあるし、纏める量も多めにしてあるの」

「ふ〜ん……」

 よく分かっていない様だ。

「クスッ。それじゃ行きましょうか」

「あ、はい」

 その後、イルファ(及びクマ吉)を誘い、春夏の案内で百貨店前まで来たのだった。


      いんたーみっしょん♪dy 話には出てきたけど、やはり出番のないこのみ


 百貨店内部。たかみは『聖地』にいた。
 あたり一面には特殊な形をした色とりどりの布地の群れ。
 男が踏み込むには『勇気』を振り絞らないといけない場所。
 それは……!

「きゃー。これ、たか君に似合いそうねぇ」

「春夏さん。これなんかいかがです?」

「うん。いいわね、いいわね。あ、これなんかも良さそう」

 ……女性用下着売り場だった。

「ボク、何でこんな所にいるんだろう……」

 そういえばこの前もタマ姉に連れて来られたなぁ……なんて事を考えつつたかみは呆然としていた。

「ねぇねぇねぇ。たか君、胸のサイズいくつ?」

「し、知りませんよ。そんな事!」

 赤面しつつ答える。

「んー。じゃあ仕方ないわねぇ。たか君、こっち。試着室に来て、測ってあげる」

「え。い、イヤですよ」

「じゃあ、たか君。私に測られるのと、店員さんに測られるの。どっちがいい?」

 有無を言わさない眼光で問いかける。

「測られるのは決定ですか……。じゃあ春夏さんの方がいいです」

「じゃ、たか君。こっちこっち」

 試着室の中に二人で入る。

「それじゃ、バンザーイ」

 上の服を脱いだたかみは両手を挙げる。
 ウェストポーチからメジャーを取り出した春夏はたかみの胸を測る。

「ん……と。アンダーは……68と。で、トップが……82か。Cね」

「C……」

 たかみは嬉しいのか、恥ずかしいのかわからない複雑な表情をしていた。

「たか君。ちょっとここで待ってなさい。適当に見繕ってくるから」

 そう言った春夏は試着室を飛び出ると一分も経たずに戻ってきた。手には数着のブラを手にしている。

「はい、これ。たか君、付けてみなさい」

「え!?」鋭い眼光「えーと……。こ、こうかな?」

「ダメダメダメ!いいわ。教えてあげる」

 別にいいです。とも言えず。

「よ、よろしくお願いします」

「まずね。背中のホックを留めて……慣れないうちは前で留めてから後ろに回してもいいわ。それから……ちょっとゴメンね……脇の肉を前に持ってきて「あひゃ」カップの中にこーやって「ひあっ」納めてっと。あとは紐の位置と長さを調節すれば……しゅーりょうっと。どう?たか君。ブラを着けた感想は?」

「は、恥ずかしいです……」

 赤くなって俯くたかみ。

「あらっ、女としての自覚でも生まれたかしら」

「ち、違いますよ。『男』としてこの状態が変態っぽくて恥ずかしいんです!いや、必要なものだって事はわかってるんですよ。確かにコレ楽ですし。でもなんか胃の上の方を締め付けられる感覚が少し苦しいような……」

「う〜ん。だったらそのうち慣れるわね。じゃあイロイロ持ってきてあげるから、試着しまくっちゃいましょう!」

「え。え。え?え〜〜〜〜〜〜〜〜?!!」

 その後、たかみは春夏やイルファの持ってくる物を着せられ、プチファッションショーをさせられるハメとなった。
 さらには、隣の女性用ティーンズ服売り場でも、たかみはファッションショーをさせられ、フラフラになるのであった。
 そしてこの時着た全ての服を購入し、イルファが持つ(というより担ぐ)ことになった。ちなみに購入資金は源五郎のカードである。


     インターミッション……by 今の所出す予定のないシルファ


 百貨店内部のファーストフード。そこにテーブルの上に突っ伏してだらける美少女の姿があった。
 言うまでもなく、たかみである。服装は買った服に変わっている。どういう服かというと……青い襟のついた半そでの白いワンピースだ。襟の下には少し青みがかった白いリボンが垂れていて、腰の後ろにも同色の大きいリボンがついている。下には濃い赤の(黒と言った方が正しいかもしれない)Tシャッツを着ており、袖の一部が見えてしまっている。下着は小さなリボンの飾りのついたピンク色のブラとショーツだ。ちなみにスパッツを履いて、めくれても大丈夫なようにしてある。

「つっかれたー。もう動きたくなーい」(二人とも調子にのってドンドン持ってくるんだもんなー。最後の方は少し楽しかったけど…………いや!楽しくなんかないぞ!断じて!ボクは男なんだから)

「そう?じゃあ少しここで休んでてもいいわよ。私は地下で晩御飯のおかず買ってくるから」

「あ。だったら私たちは一度戻って荷物を置いてきます」「……!」

「そう?なら、これからは各自自由行動ということで。ん〜……そうね、3時頃にここで待ち合わせってことでどうかしら?」

「いいですよー」「!」

「りょーかーい」

 たかみは二人を見送るとテーブルに突っ伏したままでポテトをつまんだ。
 すでに中身がなくなり、氷だけになったジュースをズズズッと吸い上げたり、ストローの袋に水をたらしたりしながら、たかみは窓の外を見ていた。
 窓の外ではテラスに設置されたミニ公園で遊ぶ子供達と、それと一緒になって遊ぶ、桜色の髪を右側でくくった中学生程度の女の子がいた。

(元気な娘だなー。でも中学生ぐらいに見えるのにこんな時間にこんなとこで何してるんだろう?
  それにしても子供が妙に可愛く見えるのは女になったせいなのかなー。母性本能とか。それってヤバくないか)

 なんてことを考えていたたかみだったが、突然そこに声をかけられた。

「ねぇねぇ。君、暇そーだね」

 顔を上げると、そこには4人の男達が立っていた。男達は軽薄そうな顔をたかみに向けている。

(……………………)《思考停止中》

「これからさ、俺達と遊びにいかない?」

「えーと……」(これは……)

「いーじゃん。行こうよ。ね」

(……ナンパ?ボク、ナンパされてんのか?)

「ほらほら、立ってー」

 男Aはたかみの手を取って強引に立たせる。

「え。え?え!?」

「はい。れっつごー」

 手を取ったまま歩き出そうとする男A。

「ま、ま、待って!」

「だめだめー」

 男Aはたかみを連れて歩き出す。

「わっわっわっ……」(やばい……このままじゃ……)


     タッタッタ…………


 その時、たかみの後ろから廊下を走る音が聞こえてきた。そして……

「まーりゃんキーーーーーック!!」

 飛んできた何かが男Aの後頭部をクリティカルヒットする。男Aはふっとび、床を3回跳ねた後、数メートル擦って止まる。

「な!なんだぁー?」

 振り返るとそこには、さっきの中学生?がいた。

「かよわい女の子を連れ去るワルモノめ!この正義のヒロインまーりゃんが相手だ!」

 まーりゃんと名乗った中学生?の後ろでは子供達が集まって「がんばれー」などと囃したてている。
 子供達は、ヒーローごっこの続きか、ヒーローショーでも見ているかの様だ。

「てめ。このやろ」

 男達がまーりゃんに掴みかかってくる。
 それを見たまーりゃんは落ち着いた動作で懐から何かを出す。

「オカルト研究部謹製、『霊符 青』!」

 まーりゃんの手から放たれた何かが三方向に分かれて飛んでいく。

「ぎゃ!」「うわっ!」「ぐわっ!」

 『何か』が当たった男B、Dは爆発して焦げる。男Cは辛うじて避けた。

「みんなっ!くそっ!」

 男Cは攻撃を続けるが、まーりゃんは全て避ける。しかも、からかいながら。

「こっちこっちぃなーのだ!」

 男Cを誘導するまーりゃん。

(あ。そっちは……)

 掴みかかってくる男Cの横をすり抜けて背中を蹴る。バランスを崩した男Cは手近にあったものを掴みながら倒れる。
 それは……………更衣室のカーテンだった……。

「キャーーーーーーー!!!」

 中にいた女性(おばさん)にボコボコにされる男C。
 それは見ていたものの哀れみを誘う姿だった……。

 そして……。

「大丈夫だったか?」

 まーりゃんがたかみに話しかけてきた。

「う、うん。ありがとね。えーと……」

「まーりゃんだ。まーりゃんと呼べ!」

「うん。ありがと、まーりゃん。ボクはこう…………じゃなくて『十波たかみ』っていうんだ」

「たかみか。たかりゃんって呼んでいいか?」

「いいよ。まーりゃん」

 そんな事を話していると後ろから一人の子供が抱き着いてきた。

「ねぇ、おねーちゃん。おねーちゃんもいっしょにあそぼ」

(待ち合わせの時間まで結構あるし時間までなら)「いいよ」

「わぁーい」

 そんなわけでたかみは時間まで子供達と遊ぶことになった。


     いんたーみっしょんなのだ!by まーりゃん


 あれから1時間後。たかみ達は外の駐車場(その予定地……つまりは空き地)に移動して遊んでいた。
 種目は影ふみだ。最初は手加減して遊んでいたが、意外とすばしっこいのと、対象が小さいのとで意外な苦戦を強いられていた。

「おねーちゃん、こっちこっちー」

 ワンピースの裾を翻しながら追いかける。

「こら。待てー」


     タッタッタ…………ドスン


「わっ」

 たかみは下ばかり見ていたせいで前にいた人に気付かずぶつかって尻餅をつく。

「す、すいません」

 そう言ってぶつかった人を確かめようと上を向くと、そこにいたのは…………。

「よお。やーっと見つけたぜ」

 男Cだった。かっこつけてはいるが包帯姿が痛々しい。
 周りを見ると、いつの間にか二十人以上の男達が辺りを囲んでいた。
 たかみは尻餅をついたまま後ずさったが、後ろに回りこまれていた男に腕を引き上げられ抱きしめ固定される。

「やい、まーりゃんとやら!こいつをどうにかされたくないなら言うことを聞け!」

「…………好きにすればいい」

 まーりゃんは直立不動になる。

「だ、だめだよ。まーりゃん。ボクはいいから逃げて!」

「お前は黙ってろ!」

 男Cが荒々しくたかみの胸を揉む。

「いたっ」

「大丈夫だよ、たかりゃん。わたしは大丈夫だから」

 そういったまーりゃんの表情は中学生にはみえない大人っぽいものだった。
 男Cがまーりゃんに近づいていく。

 その時!
 たかみを拘束していた男の手が緩んだかに思った瞬間、たかみの後ろにあった男の気配が消え去った。
 拘束がなくなったたかみが後ろを振り向くと、そには男を組み伏しているイルファがいた。

(あれは……前にボクがされヤツ……痛いんだよなーアレ)

 そして男の顔をクマ吉が蹴り飛ばし気絶させる。
 その後ろから春夏さんが歩いてくる。

「イルファさん!春夏さん!」

「大丈夫だった、たか君?あなた達……許しませんよ」

 春夏の闘気が膨れ上がる。

「わー!待った待った春夏さん!ボクは大丈夫。大丈夫だから!き、君達も早く謝って!」

「そう?あなた達、女の子にこんなことをしてはいけませんよ。この言葉を聞き反省してこのまま引くんであれば見逃してあげます。行きなさい」

 男達は嘲笑と共に言う。

「バーカ。何言ってんだよ、この年増が」

 ピクッ

「うっせーんだよ。お・ば・さ・ん」

 ピクピクッ

「ボケてんじゃねーのか。このババァ」

 プチン

「うふ……うふふふふふふ…………」

 春夏の闘気が前以上に膨れ上がる。

「あ…………ああああああ……」(も……もうだめだ……この春夏さんは止められない)

 そして春夏は男達に突っ込んでいった……。


 後日、目撃者達の証言。

「俺は美しい死神を……舞い踊る破壊神を見た」

「あれは鬼じゃ。わしは夜叉を、鬼神を見たんじゃ」

「……ガクガクブルブル……ガクガクブルブル……」


     い、インターミッション…………ガクッ……by 男C


 男達の屍を背景に四人(+1)の女達は話をしていた。

「そう。まーりゃんって言うの。私は春夏よ、よろしくね」

「あ。よ、よろしくです。春夏さん」

 赤くなって俯くまーりゃん。

「私はイルファです、こっちのクマのぬいぐるみは妹のミルファ。よろしくお願いします、まーりゃんさん」「!!!」

「わかった。イルイルにミルミルね。よっろしくぅ」

 ガクッとコケそうになるイルファ。クマ吉も籠から飛び出そうになる。

「そ……それはちょっと……」「…………!!」

「んー。じゃあイルちゃんにミルちゃんでどお?」

(さっきよりはマシね……)「それでいいわ……」「…………!……」

「じゃ、改めてよろしく。イルちゃん、ミルちゃん」

「あはは……、よろしく」「!」


     ピピピッピピピッピピピッ


 携帯のアラームが鳴り響く。たかみが待ち合わせの時間を忘れないようにかけておいたものだ。

「あ。もう3時か」

「みんな揃ってるし帰りましょーか。あ。まーりゃんちゃん、私達これから帰るんだけど、帰りに寄ろうと思ってた所があるのよ。良かったら一緒に行かない?」

「行くっ!……って、あ。残念だけど、ほんとーに残念だけど、私これから用事があるんです。春夏さん、私のこと忘れないでくださいね」

 春夏の手を握り締めてそう言った後、まーりゃんは手を何度も振りながら遠ざかっていった。

「クスッ。可愛いけど変な娘ねぇ」

((そんなんですむもんじゃない気がする……))

「それじゃ、帰りましょーか」

 そう言って歩き出す春夏にたかみ達はついていった。


     インターミッションなんだよby 出番なしこのみ 


「ここが……」

「そ。私のお気に入りの店『ディーパープル』」

 そこはレンガの様な外装に(実際はレンガじゃないだろうが……)ドアにはベルがかかった落ち着いた雰囲気の店だった。コーヒーカップを模った看板にはDeepurpleと書いてある。


     カランカラン


 店に入るなり辺りを見回す春夏。

「んー。まだ来てないみたいね。皆、テーブルでいいわね」

 二人に聞くと言うより、確かめるように言うと春夏はさっさとテーブルに座った。二人は苦笑しながらも後に続く。
 暫くして二十代後半ぐらいの男性がテーブルの傍に来た。

「どうも、春夏さん。今日もいつものですか?」

「あ、亮ちゃん。うん、よろしくね。あ。二人とも、こちら『紫光 亮』ちゃん。この店のマスターやってんのよ」

「ご紹介に上がりました『紫光 亮』です。よろしく。それで、お二人は何にしますか?」

「あ、私は飲食できないので」「!」

「んー。ボクはねぇ……このオリジナルブレンド『デザトタイガー』でお願い。ところでマスターさん、その怪我どうしたんです?」

「ああ、これは今朝ちょっとした失言をしてしまいまして、そこの……」殺気が辺りを包む「……いえ、なんでもないです」

「???……そうですか」


     カランカラン


 その時。新たに客が入ってきた。

「あ。来た来た。こっちー」

「どうも、皆さん。お待たせしましたか?」

 入ってきたのは長瀬源五郎だった。

「いえ、まだ注文をとってるとこよ」

「そうですか。あ、マスター。私にはオリジナルブレンド『東方の三賢者』をお願いします」

 そう言ってテーブルに着く。
 暫くしてコーヒーが届くと話を切り出す。

「それで、どうなったの?」

「そうですねー。どっちから聞きたいですか?」

「一昨日言ってた心当たりの方からお願い」

「それですがね。その人と連絡は取れたんですが、直接会って調べないとわからないそうなんです。それでその人、夏季休暇に入るまで戻れないそうなんですよ。だから保留ですね」

「こっちから行くのは?」

「無理ですね。部外者はつまみ出されますよ。あの大学、セキュリティは完璧ですから」

 コーヒーを啜りながら言う。

「うーん……。そっちは仕方ないわね。それで学校の方はどうなったの?」

「そっちの話はつきました。いろいろと手をまわして、貴明君の代わりの交換留学生として、たかみ君を受け入れさせましたよ」

「交換留学生ですか?」

「そう。君はゴールデンウィーク中にその話を持ちかけられ了承。そしてその代わりに今の君が学校に通うことになった……ってことになっている」

「はぁ」

「もちろん交換だから、君のクラスは前と同じ『2−B』だ。嬉しいだろう」

「え」(雄二や小牧と同じか。雄二が不安だな。バレたりしねーよな)

「それと『2−A』にいる由真に合同体育の時なんかのフォローを頼んどいたから」

「え。え?」(フォローって由真が?してくれるのかアイツが!?ふ、不安だ……)

 こうして、いろいろな不安材料のあるものの、たかみは学校に行けるようになったのであった。
 はたして、たかみの学校生活は平穏に進むのか!
 それは次回の講釈で。




     第二話「楽しい!?お買い物」完…………第三話「二回目の初登校」につづく……のか?


あとがき……のようなもの
 今回は萌えを狙ってみました。いかがでしたか?
 今回のネタばらし
 『たかみ君、初めてのブラ』参考資料……ふ○ば君ちぇ○じ1巻、か○まし1巻、ガ○ャ○チャ6巻、能○君は大○惑Jr編4巻
 作品中では分かりにくいかもしれませんが、たかみの髪の長さはこのみ以上花梨以下ってとこです
 交換留学。どこの学校からかは、まだ考えてません。三話目では出てくると思うけど……
 ふと気付いたことだが、クマ吉にはブリーチのコンのイメージが入っちゃってるみたい
 あと、まーりゃんにはミュウミュウのプリンのイメージが入っちゃいました
 それに当初の予定ではなかったのに、まーりゃんが春夏に惹かれてしまいました。あれぇ、何故こうなったんだろう………………まぁいいか
 紫光亮の存在はシャレです。今後出る予定もありません。オリジナルブレンドの名前もあわせて、ちょーっと遊びすぎたかなぁ
 では、次回でお会いしましょう。構想は出来てるから比較的早く書けると思うけど……どうなるかなぁ

管理人のコメント

 前回で女性化し、名前もめでたく決まった河野貴明、あらため十波たかみ。
 今回はTSっ娘が必ず通らねばならぬ試練の道、お買い物の話です(笑)。
 
>総合して『活発そうな美少女』という風になってしまっていた。

 今までうちにはあまりいないタイプの娘ですね。それはそれで萌えです(殴)。
 
 
>「軟弱ねー。あんまりグダグダ言ってると『おしおき』するわよ」

 一体何をする気なんでしょうか……
 
 
>「んー。仕方ないわねぇ。それじゃあ『ボク』でもいいわよ」
>そうして、たかみの一人称は『ボク』に決まった。

 活発そうな娘といえばボクっ娘です。これは定説です(殴)。
 
 
>……女性用下着売り場だった。

 予想はしてたと思いますが、まさに大ピンチ。黒とかピンクとか水色とか言っている場合ではありません。
 
 
>(二人とも調子にのってドンドン持ってくるんだもんなー。最後の方は少し楽しかったけど…………いや!楽しくなんかないぞ!断じて!ボクは男なんだから)

 既にいい感じに流されていますね。
 
 
>「まーりゃんキーーーーーック!!」
>「かよわい女の子を連れ去るワルモノめ!この正義のヒロインまーりゃんが相手だ!」


 原作ささらシナリオの名バイプレイヤー、まーりゃん先輩登場。この娘が年上だと知ったら、たかみはどんな顔をするのでしょうか(笑)。
 
 
>後日、目撃者達の証言。

 一体どんな修羅場が……
 
 
>はたして、たかみの学校生活は平穏に進むのか!

 多分無理でしょう(笑)。
 
 というわけで、次回は学校の話ですね。制服を着るのにもまた一悶着ありそうですが、果たしてたかみの運命は?
 とりあえず、雄二の前で帽子は被らないように(笑)。
 
 
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