……………そう………、
ソレの前兆は数年前から始まっていた………。
世界各地で相次いで発生する行方不明事件。
ある場所では人前で突然人が消え、ある家庭では就寝中の最中、そして、極めつけはある少女の父親が『割れ目』に飲まれようとした幼い娘を庇い、「両腕」のみを残して消えてしまった怪事件。
それらのどれもが世界に混乱を呼び、政府や警察はおろか、マスコミや大衆の力も全くの無力でしかなかった。
そして、
ソレは起こった。
―精霊獣奇譚・前夜祭 真式―
―第三話 改め 序幕ノ一 ―
―『ソノ日、世界ハ一度終焉ヲ迎エタ』―
※元ネタほぼ無しのオリジナル
―卒業式を近日中に控えたある高校―
とある3年生のの教室では……
「ふぁ〜〜あ………あ〜〜〜かったり〜〜〜なぁ〜〜〜………」
何処にでもいるような男子生徒が大きな欠伸をして暇を持て余していた……。
「ん?どうした?徹夜でネットゲーでもしてたのか正男?」
そして、その男子生徒……本名『会津 正男』に話し掛けているのは腰付近にまで茶色味のかかった髪を持ち、眼鏡をかけた理知的な印象をもつ女生徒。名前は『秋山 正美』、正男の同級生で幼馴染である。
「んぁ?「まーちゃん」じゃね〜〜か、ちげーーよ、ただ………徹夜で『漫画』読み明かしてただけだつ〜〜の」
ただ………
「………あまり違わないと思うが……。ちなみにどんな漫画だ?………よもやエロ本などの類ではあるまいな?」
二人は………
「違う違う、え〜〜〜とたしか………足洗何とかの住人とかういヤツと、変な顔のめちゃ強い奴の出てくる柔道マンガに、砂漠の星で赤い平和主義者と十字架みたいな武器を持った男の出てくるマンガ、それに刈り上げ頭が主人公の新聞で御馴染みの作者の4コママンガ、どっかのレーサーの名前みたいな変な生き物のでてくるマンガ、それと………」
会話でもわかるように……
「………もういい………しかし、何故にタイトルをハッキリと覚えていないんだお前は?」
男友達のような関係であるため、このまま恋に発展することは、
「つーーか、ハイになってたからマンガの内容も殆ど覚えてねえや」
無い(断言)。
「はぁ……おま「あの……」ん?あぁ、琴葉じゃないか、一体どうしたんだい?」
正男の無軌道っぽい行動に呆れていた正美であったが、足元まである濡れ羽色の髪の如何にも大和撫子風の少女……『春日 琴葉』に話し掛けれて何か『慌てる』ように琴葉の方に振り返った。
「いえ……その………ただ……、正美さんと……お話したかっただけですので……(真っ赤)」
返事を返された琴葉のほうも顔を赤らめ、もじもじしながら徐々に顔を俯かせ、
「いや、まぁ、すまない……此の頃、忙しくて構ってやれなくて(真っ赤)」
近頃構ってやれなかった事を謝りつつも琴葉と同じように顔を赤らめながら俯かせていく正美。
向かい合って顔を赤らめながら俯きあう二人の時間はこのまま永遠に続くと思われたが………
「へいへい、のろけはよそでやってくんねぇ〜〜〜か?甘すぎて砂糖を吐いちまいそうだよ……」
正男の介入で中断されることとなる。
「なッ!?」「え…」
その一言で二人の顔は更に赤くなったのは言うまでもない……。
しかしこれは彼等の日常において比較的よく見られる光景である。
そして暫らくして、
「お前達もそろそろ卒業式が迫っている事は判っているな?だが、そうであっても、想い出作りだからって無茶な真似や馬鹿げた真似だけはするなよ?今日の所のは以上だ。だが、何名かは残ってもらう」
「うぇ〜〜〜……」「まじかよぉ〜〜……」「そんなぁ〜〜……」
突然の先生(名前は『小早川 夕日』、通称『ユーセン』(柔道部顧問))からの居残り宣言にクラス中から聞こえる不平不満の声、
「安心しろ、悪い意味で残ってもらうんじゃない」
そして、生徒を宥める教師の発現……
どれもこれも学校では良くある日常である。
しかし…………
突然、日常は崩壊の兆しを迎えた………
「………しっかし、剛の奴もちっこいのに見かけによらず凄いことするもんだな……」
「あぁ、まさか、バイクに乗っていた引っ手繰り犯からバッグを取り戻すとはな…」
結局の所、居残り組に指定されてしまった正男と同じく居残り組に指定された正美が同級生で正義感……というよりも“弱い者の味方”的姿勢をとる『不動峰 剛』のことについて話すなどして、先生がくるまでの時間を潰していた。
だが、
「ん?何だ?東のほうで光が………」
窓の外を見て、妖しげな光を発見する。
「!?何だか嫌な予感がするな………ッ!正男ッ!!」
その光を見て、正美が突然、正男に話し掛け、
「何だ、まーちゃん?」
「ちょっと、琴葉の様子がきになるから見てくるッ!ユーセンにはトイレだと言っておいてくれッ」
「へいへい、わかったわかった。わかったから行ってこいよ、愛しい恋人のもと「すまない」へ?つっこまんのか?」
それらのやり取りの後、正美は走って教室を出て行った。
そしてそういったやり取りをしているうちも光は広がっていき……
「!?な、何だ何だ何が起こってるんだッ!?」
そして、
「お?ひっ?は?ほぁー――ッ!?!?」
光は全てを飲み込んだ…………。
………………………………………
……………………………………
…………………………………
………………………………
……………………………
…………………………
………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
ズズーーーンッ
「ひゃぇッ!?」
大きな物音で目を覚ます正男。
しかし、そこは、
「ありゃ?暗いな……しかもゴツゴツする……って、何で俺瓦礫に埋もれてんだ!?」
そう言いながらも早速瓦礫を押し退けながら脱出を試みようとする正男。
意外と図太い神経の持ち主のようである。
……十分後……
「ふぅ、やっとでれた…………って……」
だが、そこには…………
「ちょ、ちょっとまて映画の撮影かッ!?それともドッ○リカメラかぁぁぁッ!?」
瓦礫に覆われた教室と、崩壊しかけた町並みがそこにはあった………。
「くそ………一体全体どうなってやがるんだ?」
正男はあの後、とりあえず校舎(因みに現在は4階にいる)を脱出するべく彷徨っていたが…………
「まじかよぉ〜………此処まで崩れてんだよぉ〜〜……」
階段の到る所が崩れていて中々下りられずにいた……。
だが、異変が起きたと思われる時間帯のせいか、人がいた痕跡は殆ど見えなかったことは幸いといえた………。
そして、とある入り口や完全に崩れた教室の前で……
――ピチャピチャ……クチャクチャ……ボリボリ……――
「ん?何だぁ?」
教室の中より何かの物音が聞こえ……
「ここ……だよな………」
そこには………
……くちゃくちゃ……
学生服を着た人型の何か………いや、かつては人であったと思われるブヨブヨの肉の塊が、赤く染まった何かを貪っていた。
「あの服は谷沢か……?随分太ったな………」
正男はその肉塊に黒い噂の耐えなかった嘗ての同級生の面影を見ていた……。
そして、谷沢だったと思われるその物体は、
「うぇ……ひ、人を喰ってやがる………しかもよく噛んで…………てか、よく見たら『ごちそうさま』や『頂きます』までしてやがるッ!?あ、ありえねぇ………あの問答無用の礼儀知らずで嫌味なアイツが……ありえねぇ……」
………………………………人の亡骸を食い漁っていた……。
それを見た正男は足音を立てずにその場より何時の間にか姿を消すほどであった……。
暫らくして、
「ふぅ〜〜〜、非常階段で3階に下りられた……」
何とか長いこと使っていなかった非常階段で下の階に降りられた正男であったが……
「けど……どーーーーすッべ?(非常階段もぶっ壊れてて3階までしか下りられなかったし……街は何だか凄いことなっとるし………母ちゃん、大丈夫かな……)」
先のことを考えてやや思考が暗くなりつつある正男であった……。
「お?ここは……無事そうだな」
そんなこんなで無事そうな教室……否、物置に使っている部屋を見つけた正男は……
「(とりあえず、休憩でもすっか……)」
休憩しようとへに入ろうとして……
ブンッ!!!
「うひゃッ!」
間一髪のところで振り下ろされてきたイスを回避、
「だれだッ貴様はッ!!」
そして、その方向を見てみると、
「って、ま、まーちゃんと琴葉さんじゃねぇかっ………。驚かすなよぉ〜〜〜……」
異変前に教室をでていった正美と琴葉のすがたがそこにはあった……。
「?お前、正男か?」「え……?正男君?」
だが、二人は正男のことが一瞬わからなかった……いや、何故だか別の何かを見るような雰囲気で正男の顔を怪訝そうに伺っていた。
「何だよぉ〜〜〜二人して」
「いや、そ、その顔は一体……?」
「顔〜〜〜?」
正美の言葉に正男は自分にかを触って見ると………
なぜか無機質な触感とやたら唇らしき感触が無く、ただ口の長さだけが長い……まるで首元まで口が裂けているのような触感がそこにはあった。
「………え〜〜〜っと鏡、ない?」
「……本当にいいのか?」
「いいのいいの、で、鏡無い?」
正美の警告とも取れる発言を正男は軽く流し、
「えっと………鏡なら此処に……」
琴葉が見つけてきた割れ残った鏡を覗き込むとソコには…………
「なんじゃこりゃ?」
機械的なライトを思わせる瞳を持った無機質で無表情な仮面をつけた自分の姿がそこにはあった。
「………で、まーちゃん達は何で此処に隠れてたんだ?」
しかし、すんなりと受け入れているかのように流す正男なのであった。
「……あんまり驚かないんですね……」「(流石は正男だな)あぁ……それはだな……」カタ……
「ん?」「!!」「くそ、見つかったかッ!?」
その物音のした方向には……。
「…………」
大きな刃物と化した腕を振り上げた筋肉質の怪物が其処には存在していた……。
「下がってろ、琴葉ッ!?」「は、はいッ」バチンッ
突然の正美とともに、聴こえる何かの弾けるような音
「え?」
そして、その怪物に放たれる雷のような“何か”……
ドゴゴォーーーン
「ギョエェェェェェェッ!!!」
正男をも巻き込んで……………
「ん〜〜〜琴葉さん、足速くなってない?」
「え?そ、そうですか?」
あの攻撃の後、一度は正美の放った雷撃?によって動きを止めた怪物であったが、
「おう、前はマラソンとかでもビリばっかだって聞いた事があるし……今はそうは見えないけど」
数分もしない内に再起動してしまい、
「は、はい……ありがとうございます………」
「しかし、余裕だな正男……」
怪物より三人は逃げ廻り、
「…………」
現在に到る。
因みに、正男の髪型はアフロとなっていたが……。
「う〜〜む〜〜〜コレも中々……」
結構気に入っているようである。
「しっかし、このままじゃジリ貧だなっと……!」
「なっ!?正男!何処へ行く!?」「正男君ッ!」
何かを見つけ、脇道へと駆け出す正男……そしてその視界の先には……
「(こいつを引っ繰り返せば……)」
崩れかけた瓦礫と床の一部が存在していた。だが、
「………」「や、やば……」
怪物との距離はもう目と鼻の先程しかなかった。
「せ〜〜〜の……どるぅあッ!!」
「!?」
ズズーーン
しかし、正男は何とか床を引っ繰り返し、怪物を瓦礫の下敷きにすることに成功した。
「まったく、無茶をするよ………」
「ま、成功したんだからいいじゃん♪」
何時の間にか近づいていた正美が正男を諌めるように話し掛け、ソレをはぐらかすような行動をしていると、
「あ、あの………」
琴葉が何かを発見し、
「?何?って、あれ?」「ん?って、おうわぁ………」
その様子に気付いた二人が琴葉が指差した方向を見てみると………
「うぅ……」
崩れて平坦化した瓦礫の下にはスーツ姿に青味のかかった長髪の1人の少女が倒れているのが見えた……。
「た、大変!?早く助けないとッ!琴葉は怪我の応急処置の準備をしておいて!「はいッ」正男は瓦礫をのけるのを手伝って!!「お、おう…」早くッ!!」
そして、正美の指揮の元、瓦礫の下敷きになっていた少女の救出と怪我の応急処置は瞬く間に完了していった………正男の疑問を除いて……。
「……(こいつ、誰だ?しかもこの服はユーセンの着ていた服……?一体全体何が起こってんだッつー――のッ!!)」
そんなこんなで暫らくして……
「ふぅ……目立った外相も無いし、頭のほうも何故か庇われていて大した衝撃も無さそうだし………取りあえずはこれで大丈夫かな?」
応急処置によって何とか手当てを済ませた正美、
「でも、なるべく安定した場所で休ませた方が………」
場所が場所だけに安定した場所に休ませる事を提案する琴葉、
「あぁ………だが、気になる事がある」
そして、正美は自らの疑問を口にする……。
「?何ですか、気になることって?」
「ん?やっぱ、まーちゃんも気になってた?」
「正男もか?そうだな……」
「だ「何故、コレほどまでの災害なのに救急車や警察が出動してこないのかということだ」って、あれ?そういえば………」
正男が自らの疑問を口にしようとするも、その直後に正美が自分の疑問を先に話し始めた。しかも、正男の疑問とは違う内容で。
だが、その内容はかなり深刻な状況を表していた。
「……正男が何に疑問を持っていたのかは置いておくとして、外を見る限りは建物の崩壊もそれほど酷くは無い、この校舎は……まぁ、結構古かったからここまで崩れているとして………何故、1時間以上たっているのに学校の先生方の声が聴こえない?」
「あ………そういえば………!!も、もしか「否、死んでいるという可能性は低いだろうな」え?」
静か過ぎる事に最悪の予想を思い浮かべそうになる琴葉であったが、その瞬間に正美はソノ可能性を否定する。
「たしか職員室は新校舎のほうにあったし今日は職員会議、しかも今日は会議室が電気工事中とかで近くのプレハブ小屋で会議をしているとの話だ」
「皆、気絶中だったりして……」
ポツリとそう呟く正男。
「………そうだな。その可能性は高い……だが、誰一人として起きてこないのはおかしい。しかも、そこに埋もれている怪物は一体なんだ?
それと、正男、そのコスプレ紛いの姿は一体なんだ?」
「あ………」
しかし、そこから新たな疑問へと話題が変化していく。
「………いや、あのさ……嫌なもん見たんだけど一ついいか?」
その新たな疑問の一つに心当たりがあった正男が何かを応えようとする
「何だ?」
が、
「いやさっき上で……まーちゃん!琴葉さんッ!さっさと逃げるぞッ!!」
「何ッ!?」「え?」
その正男の声で反射的に立ち上がって立ち退いた瞬間……
「GUルGIォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!」
瓦礫より怪物が蘇えった。
発見した少女を正男が背負い、
「く………行き止まりか………」
三人は逃げ回っていたのただが………
「正美さん………」
三人は大穴の空いた校舎のはじに追い詰められていた………。
―ドクン…―
「………?(何だ?この感じ?)」
ただ、正男は何かを感じ取ってそれをしきりに気にしているようではあるが……?
「OOOOOOooooooooooooo!!!!!」
そして怪物が飛び掛らんとしたとき、
ガシッ!!
「な?」「お?」「手?」
巨大な何かの手が三人を掴み……
―ドシュ―
「GYIAAAAAAAAAAAAAッ!?」
もう片方の手……いや、槍のような何かが怪物を貫いた。
ソシテ三人が手の主であろう方向を見てみると……
「げ……」「一難去ってまた一難か…?」「??」
ソレは巨人………いや、その顔は歪んで捩れたドラゴンのようであり、身体は骨のような鱗のような金属のような貝殻のような何かで覆われており、その手足も非情に捩れて生物としては奇形でおぞましい印象を与える………そんなグロテスクで醜い巨大なモンスターの姿がそこにはあった。
だが………
「何だか、優しい感触……」
その手は非常に優しく、
「私たちを下ろしてくれるのか?」
その行動はとても親切で
「……つーーことは、俺達を助けてくれたのか?」
まるで守護神のような頼もしい雰囲気を醸し出していた……。
「あ、ありがとうございます……」「すまない助かった……」「サンキュー♪」
巨人の手によってグラウンドに下ろされた三人は、危害を加える様子が無いことから巨人に礼を述べるものの……
『礼ハイイ……ソレヨリモソノ少女ヲタスケルルホウガ先決デハナイノカ?「会津」ニ「秋山」ノ姐御、ソレニ「琴葉」嬢………』
という言葉に同級生の面影を感じ、
「え…?」「その口癖は………」「お前………もしかしたら……剛」
『………ソンナコトヨリモ早ク少女……“小サキ者”ヲ安静ナ状態ニスル』
正体を追及しそうになるも、正男の背中に背負われていた少女のことを指摘された。
「え?そ、そうだな………正男の家が一番近いな」
「そうなんですか?」
「……ま、此処にいるよりかは安全だろうな……」
そう言って、正男の家に向かって急ぎ足で学校を後にしようとする三人、
そのすぐ後、
「で、剛ちゃんはこの後どうするの?」
巨人の肩に止まって隠れていたと思われる蝶のような羽の生えた身長25cm位の小さな少女………いわゆる妖精によく似た存在が
『決マッテイル………校舎内ニ取リ残サレタ“弱キモノ”ヲ救出スル……』
「……ふぅ……私も剛ちゃんに助けれた身だし……わったわよ」
『……』
「でも、今の剛ちゃんじゃ校舎内の様子がハッキリとわからないと思うから、私も手伝うわ」
『危険ダゾ?』
「大丈夫大丈夫♪剛ちゃんの“触手”に乗って誘導するだけだから♪危なくなったら守ってくれるでしょ?」
『ハァ………ワカッタ』
「ん♪じゃ、さっそくはじめましょ」
『ウム』
そういって巨人のチマチマとした救助活動は始まった………。
「………全然、崩れてねぇーな……」
「あぁ……」「はわぁ〜〜〜」
そこには全く崩れていない正男宅があった。
「まぁ、気にしているよりも………お袋ぉ〜〜〜帰ったぜぇ〜〜〜」
気にするのを止めて家に入ろうとすると……
ガチャ
「あら、正男お帰………あらあら、正男、お面なんか被っちゃってどうしたの?それに後に背負っている女の子………もしかして拾ったの?」
どこかの『超機人大戦』にでてくるやたら元気のよさげな金髪ポニーテールの女性を主話せる女性が扉より表れ、変わり果てた息子(正男)の姿に驚くでもなく、正男が背負っていた少女に興味を示したような発言をしていた……。
「……あんまし驚いてねぇ〜〜〜な………ってか、お袋……若返ってねぇ?」
正男も正男で自分の母親が若返っていることの方に興味が移っていた……。
「あらわかる」
「……!そういった話はいいから」「は、早くこの子を安静に……」
「あら♪正美ちゃん、琴葉ちゃんいらっしゃい……」
その後、三人が学校での事などを話すと……
「所で……貴方達、携帯電話はどうして使わなかったの」
「あ」
すっかり度忘れしていた正美に、
「気付いたら瓦礫の下敷きになっててぶっ壊れてた」
瓦礫によって破壊されてしまった正男……
「私は元々持ってなかったもので……」
元々携帯を持っていない琴葉なのであった………。
「ふぅ〜〜……これで一段落だな……」
少女を客室のベッドに寝かせ、一段落ついた正男と正美。
琴葉は会津(母)と夕飯の支度をはじめている……らしい……(何故か、電気やガス、水道などのライフラインには今まで通り使用可能であった)。
因みに、外は物騒そうなのでこのまま正美と琴葉は会津家に泊まる事となった。
「そうね………でも、お父さんとお母さん、後おじさんたち……大丈夫かしら……」
正美は仕事で出かけている自分の両親と琴葉の両親(おまけで正男の父親)のことを心配していた。
「うんまぁ、俺の親父も一緒だから多分大丈夫だろ………っと、それよりもまーちゃん、ちょっと話したい事があるんだが、いいか?」
正美を微妙な言い分で励ましつつも自分の疑問を言おうとするも……
「何だ?あぁ、校舎内でお前目掛けて放ったアレのことだな?」
再び、
「(いや、そうじゃなくて……まぁ、それも聞きたかったからこの際聞いておくか…)……まぁな、ってかまーちゃん何時ぐらいからあんな真似(電撃)できるようになったんだ?」
意思の食い違いが発生してしまった(汗)。
「それがよく判らないんだ……。最初、あの怪物に遭遇したとき、琴葉が襲われそうになってて咄嗟に怪物めがけて掌底を打ち込もうとしたら……」
「そしたら出来たと……」
「あぁ、それに一発じゃ効き目が薄くて何度か打ち込んでたら何となくコツがわかってな。どうやら精神集中し、まるで『雷を解き放つ』感じで一気に掌底を繰出せばできることがわかった」
「………いや、なんていうか………色々とヤベェーな……。あ、それとな……」
正男が正美に何か言おうとするも……
「う……うん………ここは」
少女が目を覚まして話は中断されてしまった………正男、何とも間が悪い男である。
「あ、良かった……気が付いたみたいね」
「う、うん?秋山?それに……其処の仮面のは会津か?」
だが、目覚めた少女は正男と正美のことを知っているらしく……
「はい?」
「…………なぁ………あんたもしかして……ユー…じゃなくて、『小早川先生』か?」
正男は心当たりのあった担任の名を尋ねる。すると……
「?何を言っている、私は小早川だが………って、あれ?私の手はこんなに細かったか?それにこの髪は一体……?」
「…………」
「………(何かこの後の反応予測できるな……)」
「………(ぽふっ)……無い………」ドサッ
やはり、『お約束』な展開が舞っていたとさ。
その後、様々な事があった。
当日の食事の時間に正男と会津(母)の口が凄まじく裂けたり(因みに母親は「あらあら、これじゃまるで『口裂け女』みたいねぇ〜」との談)、
次の日に異変に巻き込まれたのにも関わらず無事に帰宅した正美と琴葉の両親、
彼等の姿は若返っている以外にそれといって変化が無かったのに対し………正男の父親はというと………
駿同のような楕円のような胴体に頭が同化したような体形に始り、触手のような腕に足、更には何だか瞬き一つしない瞳にネコのミミといった………当に『何処かのマンガの天才少女の父親・通称『ちよ○ち』』そのものの姿であった(因みにスーツ姿)。
だが、それでも会津(母)(………本名は『都子』)はその姿でも自分の夫として愛しており、その夜は何年ぶりかの凄いことになっていたという………。
後、変わり果てた父親の姿を見た正男は3日間自室に引き篭ってしまったそうである。
それらの後も、
馴染みの古めかしい商店街では馴染みの八百屋では八百屋主人は樹のような巨人となり、魚屋の女将さんは人魚(何故か宙に浮いていた)に変化し、
肉屋主人は機械仕掛けの大男……何故か『鉄○28号』へと到り、
極めつけはスーパーマーケットの支配人が竜人になっていたことであろう………。
ただ、それらのせいかどうかは判らないが、何故か品物が尽きる事は無かった……。
後、災害後であるため、値段も非常に格安となっていたことを追記しておく。
そして、一週間後………
町外れの裏山……
「先生こんな所で鏡もってなにやってんだ?」
「?あぁ、会津か……ちょっとな………死んだ妻と娘、ついでに3年前に行方不明なった甥のことを思い出していた」
「………いや、だから何で鏡……」
「この顔何だがな…………娘によく似てるんだ……」
その言葉になんとも言えなくなる正男なのであった。
しかし、一息起き、
「そりゃそうと……そろそろ帰らねぇとな……」
と、正男は帰還を提案してきた。
「?何故だ?まだまだ日没まで余裕があるぞ?」
現在は昼ちょっと過ぎぐらいでまだまだ安全だと思われる時間帯なのに帰還を進める正男に疑問を持つ夕日だったが……
「いや、まぁ、剛の奴が言ってたんだけどよ、何かここらへんで『でっかい昆虫』みたいな化け物を見かけたんだとよ」
と、知り合いから聞いた早く帰還したほうが良い原因を述べる正男。
因みに、剛は救助活動や怪物からの守護などをやっており、醜い姿にも関わらず街の人々から結構好かれている。
「フム……で、お前は何故此処まで来たんだ?」
「俺は先生を見かけたのと、ラジオの電波が届くかどうか試しに来たん…」
ガサッ
「「ん?」」
ドゴ……
「ごひゃッ!?」
巨大何かの激突を受け、吹っ飛ぶ正男。
「な!?あ、会津ぅーッ!って、何?」
「GISYA」
そして、残された夕日が見たのは……
二速方向で歩く蟷螂のような鎌を持った甲虫のような芋虫のような虫……不気味な巨大な虫の姿であった。
「くっ、私はムザムザやられたりはせん(ドス)がぁッ!」
夕日は応戦しようとするも、瞬時に肩を居抜かれて地面に叩きつけられてしまい、
「くっ……何をす………(ビリリィィッ)なッ!?」
虫の鎌は下半身の穿いているものを引き裂き……
「ひっ」
巨大な何かの器官が今当に夕日の股間に迫ろうとしていた。
「イ、イヤァァァァァァァァァッ!!」
最悪の予感に元・男性であったとは思えないほどの悲鳴上げたその時……
ガゴォッ「GYAHA!?」
「何してんだテメェ……」
何者かの指先が虫の殻に突き刺さっており、
そこには、吹き飛ばされた筈の正男が首元まで裂けた口を広げ、怒りのオーラを漂わせながら其処に佇んでいた。
「会津…?」
「GRURURURUR……」「やる気かぁ?」
そうして虫は自らの鎌を振り上げて攻撃態勢をとるも……
ブチィッ「GIYA!?」
しかし、その鎌は根元部分から食い千切れていて振り下ろされる事は無く、
「(プッ)あめぇんだよ……」
その虫の後では丁度噛み千切ったと思われる虫の鎌を口から吐き捨てている正男のの姿があった……。
そして、其処で繰り広げられるのは惨劇………
虫が残った鎌で薙ぎ払おうとすると関節部分に繰出される歪な手刀。
ガシュッ「Ge、Gyaaaa」
手刀により鎌は本体より抉り取られ、それによるの激痛で虫が一瞬怯み、
ズドォン「GAHA!」
其処に追撃して繰出されるは人では考えられない方向に捻じ曲がった脚から繰り出される大砲の如く蹴り、
ガシガガガガガガガガガガガガガガッ「!!!!!!!!!」
その首元まで裂けた口で虫の喉元に激しく噛み付き、虫は声にならぬ悲鳴を上げ、
ブン、ズドドォーーーン「!!!―――ッ………」
そのまま放り投げられて地面に激突し、動かなくなる虫………。
「こ、殺したのか……?」
何とか起き上がり、正男の方を伺う夕日……だが、その身体は小刻みに震えており、先ほどの恐怖がまだ落ち着いていないことを表していた……。
「いや、殺してはねぇ…………(バサ)これ、腰に巻いてろよ」
そういって上着を脱いで夕日に投げるようにして渡す正男……。
「え?な!み、見るなッ!」
そして自分の姿を思い出し、顔を赤らめながら上着で隠す……まるで生粋の乙女のような姿が其処にはあった。
「んじゃ、そろそろ引きあげるますか」「あぁ……」
だが……
ガササ……
「GURURURURU……」「KISYAAAAA……」「NYAAaaaa…」「GOHOoooooo…」
既に二人の周囲は虫たちに囲まれていた……。
「まじかよ……」「あ……あああぁ……」
頭を抑えて悩む正男に再び小刻みに震え出す夕日……
そして……
「GURU」「KISYAaa」「NYAAa」「GOHOu」
二人に虫たちが襲いかかろうとしたその時……
GAUNッGAUNッGAUNッGAUNッGAUNッ「GYAHA!?」「GYIHA!?」「GYUHA!?」「GYEHA!?」「GYOHA!?」
突如銃声が鳴り響き、次々と地に伏していく虫たち……。
スタッ……「ふぅ………帰還直後に戦闘ですか………」
そしてそこには、両手に銃を構え、腰付近まである透き通るような髪に和服ともチャイナドレスとも取れる服装をし、耳元には角らしきものが見え隠れさせ、顔に眼鏡をかけた女性が立っていた………。
「誰?」「………」
「ところで………貴方達大丈夫?」
振り返った女性の素顔は何処となく夕日に似ており、
それは……
「柳……?柳じゃないかッ!?」
「?誰………って、この感じ、もしかして夕日さん?」
二人が知り合いであることを表していた。
「ってか誰?」
ただし、……正男は置いてけぼりのようである……。
この日、四聖獣の1人である『青龍の柳』と、後の道化師『無表情な仮面』の接触は果たされ、………正男達が異界への行方不明者などの探索に出されることとなる……。
20XX年……人類はその歴史に大きな変革を迎えた。
異界の支配者による侵略行為、及びに人類そのもの変貌。
人類は精神状態などに応じた姿へと変貌する半精神的な生命体、
Spiritual Beast、通称、『精霊獣』
へと変貌してしまった。
しかし、異界の支配者は変貌した人類を全く制御できず、大国の特殊部隊によって殲滅されてしまう。が、突如として異界の支配者の居城が暴走をはじめ、それに付け加えて世界各地で起きる悪しき精霊獣と化した人々による大混乱、宗教的要因でのいがみ合いによる邪悪な獣達の跋扈などにより世界は終焉へと到るかに思われた。
だが、その時、異界よりその支配者を追って表れた異界の者達の助力や、世界各地での英雄的存在の出現により世界は驚くべき速さで復興していった。
それでも、異界―名は『トービス』―によって新たに齎された情報は世界に波紋を及ぼした……
無数に存在する異界の存在、
異界の支配者の暴走によって引き起こされた行方不明事件の真相、
召喚事故による行き先不明な行方不明者、
そして、全ての厄災の元凶たる『神機(ディバインマシン)』の存在……。
その後、落ち着いた世界は新たな暦として『精霊暦』を採用し、人類…否、世界は新たな一歩を踏み出した………。
次回予告
召喚事故による本格的に行方不明とのなった者達は今何処にいるのか……
「ここは………一体?……そ、そうだ!迅と忠朗太はッ!?」
ある一行が漂着したのは『封神演戯』の登場人物に近い名を持つ人々のいる世界……
「おぉぉ、お嬢様達をお救いくださって本当にありがとうございますッ!!私、烏鴉兵のテイリンと申します、今は亡き主に変わって心よりお礼を申し上げますッ!!!」
その世界は異界の侵略による戦乱の真っ只中にあった……
「ですので、忠朗太様には『覇王剣』を手に入れ、この世界を治めていただきたいのです」
次回、精霊獣奇譚・前夜祭 真式
幻城ノ章 一話
『宝貝たる人々の世界』
をお楽しみに……
後書き
うぃっす、ナイトメアです。
しょっぱなからスイマセン(ToT)。
後、実はFateものは最初は2話だけにしようかと思っていたのですが、結構好評だったようなので、これからはFateものとオリジナルを主軸にしたものを分けて書いて行こうかと思います。
自分の技術力の無さや文章構成の荒さなどは健在で、まだまだ自信は無く、設定や話の構成はできているのに、いざ作成するとなると殆どうまくいきません。
でも、ちょくちょく投稿するようにはしますので、これからもよろしくお願いします。
管理人のコメント
ナイトメアさんから「精霊獣奇譚」の新作が届きました。こちらが「正伝」にあたり、二次創作の「前夜祭」とは雰囲気も異なるようです。
>本名『会津 正男』
前夜祭の語り部の一人、「無表情な仮面」ですね。彼もまた普通の人間だったようです。
>男友達のような関係であるため、このまま恋に発展することは、
>無い(断言)。
すると、娘の白音の母親は誰になるんでしょうかねぇ。
>「いえ……その………ただ……、正美さんと……お話したかっただけですので……(真っ赤)」
>「いや、まぁ、すまない……此の頃、忙しくて構ってやれなくて(真っ赤)」
おや、なにやら芳しい百合の香りが……(殴)
>「ん?何だ?東のほうで光が………」
そして、唐突な世界の崩壊。巻き込まれた正男君はというと……
>「あの服は谷沢か……?随分太ったな………」
脱出の時もそうでしたが、神経図太いにもほどがあります。というより、彼も「変容」しているんでしょうが……
>異変前に教室をでていった正美と琴葉のすがたがそこにはあった……。
あまり変わらない人もいるようです。
>「え…?」「その口癖は………」「お前………もしかしたら……剛」
姿が変わっても内面が変わらない人もいたりするようで……正男君もそうですが。
>「?何を言っている、私は小早川だが………って、あれ?私の手はこんなに細かったか?それにこの髪は一体……?」
こう言う変わり方なら大歓迎です。案外小早川が母親候補でしょうか(笑)。
さて、この後もいろいろあって、変化した世界は安定を取り戻していくようですが、
>異界の支配者の暴走によって引き起こされた行方不明事件の真相、
>召喚事故による行き先不明な行方不明者、
>そして、全ての厄災の元凶たる『神機(ディバインマシン)』の存在……。
と、謎がてんこもりなだけに、今後も波乱が予想されます。世界はどうなり、正男はいかにして二つ名を手にしていくのか、今後もこの話は要チェックですね。
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