〜エピローグ〜



 
戦争の顛末 第12回 英雄の行方                岡崎直幸


 2005年9月26日午後0時からファーバンティで始まった停戦調印式は、滞りなく行われた。停戦条件は9月19日に示された通り、Tactics軍の一時的な武装解除、戦争犯罪人の処罰、ISAFによる1ヵ月間の占領軍政、そしてその後は国連の管理下で新たな民主選挙を実施することで、この国の政治体制を隕石災害以前の姿に戻すことが最大の目的とされたものである。
 勇敢に戦いながらも、奮戦及ばず壊滅したTactics3軍(陸海空軍。この戦争を通じて、9月26日以外は活動しなかった戦略防空軍は例外となる)の再建は、少なくとも20年はかかるであろうと思われている。Tactics連邦の抱える病を治癒させるための医療費は、それほど高額になるからだ。軍備よりも先に、経済やインフラを立て直さないと、国家の基盤そのものが怪しくなる。不況・失業など、国民の不満を放っておけば、第2の大陸戦争が起きないとも限らない。これは1920〜30年代のヨーロッパという前例があり、Tacticsも含めた大陸諸国の国土復興・経済復興は世界の問題として認識されている。
 結局、最終兵器「メガリス」を支配して、世界を滅ぼす覚悟まで決めた軍残党のテロリストたちの野望は、全く実現されることはなかったのだ。
 しかし、9月26日の午前9時以降、世界の注目を集めていたのは停戦調印式が行われるファーバンティだけではなかった。もう1ヶ所、人々の熱い視線が注がれていた場所がある。
 Kanonの北にある都市、スノーシティー。ここの国際空港に、1機の戦闘機が緊急着陸した。それのパイロットこそ、クラナド大陸戦争最大の英雄で、つい1時間前ほどまでメガリス相手に大奮闘し、それを見事に破壊したISAF最高のエース「メビウス1」であった。
 諸人は彼を歓呼の声で迎え、世界を救ってくれた礼をあらん限りの声で叫んだ。しかし、機体から降りてそのまま軍の緊急車両に乗り込んでからの彼の消息は、良くわかっていない。実に不可解なことに、ISAFはなぜか、彼のその後の動向を軍事機密扱いにしてしまったのだ。
 メビウス1は最後の戦いで重症を負って病院に運ばれた、そもそも「メビウス1」とは複数の熟練パイロットが使って敵を混乱させるための共有コールサインだった、などという噂が流れているが、彼はISAFが「開発」したクローン人間のパイロットで、外の世界には出せなかった、という突飛もないものまである。
 ただ、彼がどのような存在であろうとも、ひとつだけ確実なことがある。それは、彼がいなければ、大陸の、世界の人々はこれまで通りの平穏な日常を送ることができたかは疑わしい、ということだ。無論私もそのひとりで、メビウス1が頑張ってくれなかったら、こうして本文章を書いている可能性は低かったであろう……。
(おかざき・なおゆき:戦史研究家)

(Kanon新聞2005年10月18日朝刊 特集記事の一部抜粋)


 諸君、本日10月31日1000時をもって、我々ISAF――独立国家連合軍は解散する。以後、大陸の平和維持は国連の手に委ねられ、諸君の3年に渡る長い任務は終わることとなる。
 諸君の中には、この後も国連平和維持軍に参加して、なおもクラナドに貢献する者、諸君の帰りを待ちわびる家族の元に帰る者、行く末は千差万別だろう。が、ここはあえて区別せず、こう言わせてもらいたい。
 諸君、これまで本当にご苦労だった。そして諸君が祖国のため、大陸のため義務を果たしてくれたことに深く、心から感謝する。
 しかし、戦争が大陸に、そして人々に残した傷は、あまりにも大きい。実際私は、勇敢なる将兵たちの最期に接し、さらに残された家族たちの悲嘆を垣間見た。それは私の稚拙な指揮に大半の責任があるだろう。真に申し訳なく、慙愧に耐えない。
 だが我々には、戦争で命を奪われた全ての人々のためにも、前に進む義務がある。怨讐を超越し、大陸を再び元の姿に、いやそれ以上に素晴らしい世界としなくてはならない。
 今こそ我々は、かつてこの大陸に最大の栄光と繁栄をもたらした「大陸武装中立宣言」の精神を思い返すべきだ。
 今更、70年も前の古い話を持ち出して、再び世界から孤立するのか、と思う者もいることだろう。もちろん、私とて軍拡して大陸に対する他国の干渉を一切許すな、などと言う気持ちはこれっぽっちもない。現に、この戦いは諸外国の助けがなければ、ISAFが勝利を掴むのは難しかったのは事実だ。
 だが、あの宣言の根底に流れていた精神は、融和と団結と、そして博愛の精神だった。大陸がひとつの「家族」となり、困難に立ち向かうものだった。私はそう信じている。
 その精神を再び蘇らせ、皆が大陸の明日に向けて力強い一歩を踏み出すことができたら、大陸の未来は明るい。やがてはこの母なるクラナドを、真の「輝く季節」に導くであろうことを、私は確信して止まないのである……。
 そして願わくは、大陸に、そこに住む全ての人々に、神の御加護があらんことを。
 さようなら、戦友諸君。君たちの歩むべき道が光あふれるものであることを心から祈っている。
 ありがとう、ISAFの勇士諸君。さようなら。

 ISAF最高司令長官/Kanon国防陸軍元帥 古河秋生

(2005年10月31日 「ISAF解散の辞」の一部抜粋)


 
1 3つの再会


 
2005年11月2日 Tactics連邦 首都ファーバンティ とある職業安定所


 大陸戦争の最終決戦場となった(メガリスがそうだという人もいるが)Tactics連邦首都ファーバンティでは、各国の援助もあり復興が急ピッチで進んでいた。
 だが、光があれば影もある。失業者問題はいまだ根本的な解決を見ておらず、実際それを示すように、ここ職業安定所は、戦争難民もかくやと思われるほどの人数で満杯になっている。
 もちろん、待合室も芋を洗うように人が溢れていたが、運良くソファーに座ることができ、職業の斡旋を待っているふたりの女性の片割れが、この現状に耐えきれずにぼやいた。
「これじゃ仕事が見つかるなんて、夢のまた夢ね」
「うう〜、それを言っちゃおしまいだよ、雪ちゃん」
 身も蓋もない深山雪見の言いぶりに、川名みさきが心底困ったような表情で抗議する。
「だって、本当のことでしょ? 需要に対して供給が少な過ぎるのよ。だから職安がこんなに繁盛してるの」
「せっかく言わないようにしてたのに……雪ちゃん、悪人だよ〜」
 戦争に敗れて、ISAFの捕虜になった彼女たちはさほど時を置かずに釈放された(これはほとんど全てのTactics将兵に共通していた。ISAFの立場としては、大量の捕虜に長いこと無駄飯を食べさせるのはそれだけでも大きな負担になる)が、それから間もなく、サブマリナー徽章を外して野に下った。
 壊滅した軍の再建は空軍>陸軍>戦略防空軍=海軍と優先順位が決められていたし、国の復興を優先した予算は、再軍備にそう多く回ってくる訳でもない。となると、戦争で失われた原子力潜水艦の補充など、まずもって不可能だった。優秀なサブマリナーである彼女たちでも、海軍に大した居場所はなかったのだ。だから彼女らは、軍を辞めてあえて民間人に――失業者になることを選んだのだから、愚痴をこぼしてもそれは自己責任の範疇に入るのだが。
 なおふたりが最後に乗っていた艦<ベイオウルフ・Ω>は、ISAF――というより米海軍に接収されたきり、今のところ戻る気配はない。おそらく、いや間違いなく徹底的に調べ上げられているのだろう。もしも返してくれるのなら、秘密のヴェールが全て剥ぎ取られ、米海軍の次世代潜水艦建造に役立つ情報を提供した後のことになる。
 その<ベイオウルフ・Ω>の原子炉自爆を阻止し、首都を救ったことを口にすれば職業のひとつやふたつは簡単に見つかるかもしれないが、雪見もみさきもそれは秘密にしていた。そもそも、首都が陥落したら核爆発で市民もろとも玉砕する、などという発想が軍に存在したこと自体を恥ずべきだと思っていたから、別に自分たちの行為は誇るべきものではなく、それを利用して職を得ようとも考えなかった。
「とにかく、今はこうして通い詰めるしかないわね」
 その前に、餓え死にしなければ良いけど、と小声で呟いて待合室に置いてある新聞「ファーバンティタイムズ」を開く雪見。何か景気の良い記事でもないかと期待しながら。
 1面、政治面は特に代わり映えしない。国連監視下による総選挙は12月23日に決定……。経済は……相変わらず良いことと良くないことが混在しているが、ここ職安にいる限り良いことはことごとく嘘なのではないかと勘繰りたくもなる。
 国際面……カラー写真つきでこの欄を最も広く占有している記事に、雪見と、脇から覗き込んでいたみさきの視線は釘づけになった。
 幸せそうな表情を見せる男女の写真をじっくりと眺めた後、文章を一語一句漏らさずに視線でなぞる。そこには、こう書かれていた。

 
Air皇国、新皇主即位 〜同時に皇妃も内定〜


 前皇主の崩御により、長らく皇主の座が空席となっていたAir皇国に新しい皇主が明日3日、即位する。新皇主に即位するのは国崎宮往人殿下で、つい1年ほど前までは民間人であったが、今年3月、第1皇位継承者であることが判明し、7月には新皇主に即位することが決定していた。
 また、即位式に合わせて婚約発表も行われる。皇妃に内定したのは神尾観鈴さん。神尾晴子博士(Air大学工学部電磁物理学科教授)の長女で、国崎宮殿下とは民間人時代に知り合った。同殿下は一時期、神尾博士宅に長期間滞在していたという。
 即位式は3日午後1時から、首都カンナ市の皇宮本宮殿で挙行され、世界各国から多くの来賓が訪れる。婚約発表はその後、午後5時から行われる予定である。皇妃となるのが正式に決定するのは翌4日の特別召集議会の承認を得てからとなるが、そこでは全会一致で可決することが確実である。結婚の儀は、婚約からおよそ3〜6ヶ月の間に行われるのがAir皇室の慣例となっている。
 この2つの慶事に、Air国内は喜びに包まれている。首都のカンナ市では皇宮に市民が押しかけ、宮内省では臨時の記帳所を皇宮公園に設けた。また各地でも市民が自発的に集まって万歳を唱えたり、提灯を持って道路を行進したりする光景が見られる。
 今回の新皇主即位と婚約発表は、大陸戦争で独立を一時的に失い、戦争が終わった今も癒えない傷を心に抱えているであろうAir国民に、大きな希望をもたらしてしていることは間違いない。
(国際部 上月澪)

「澪ちゃんだね……」
「そうね。彼女、新聞社に戻ってたのね」
 最後の記者名を確認したふたりの顔に、ここ最近していなかった温かい笑顔が戻っていた。かつて彼女たちと行動を共にした上月澪が常日頃から(スケッチブックで)語っていたことがある。
『あのね、平和な記事が書けるような世界になって欲しいの』
 言葉を失っていても、元気さを忘れずいつも一生懸命だった澪。今、少なくともこの大陸では、彼女の言った通りになっているようだった。
 記事に添えられたもうひとつの写真――「皇妃内定の報に湧く神尾観鈴さんの友人たち」というタイトルで、遠野美凪・みちる姉妹と霧島聖・佳乃姉妹(写真には名前までは出ていないが)、そして観鈴の級友たちが大喜びしている写真を見て、そして再び記事本文を通読した雪見は、今までのもの鬱げな声でなく、もっと明るい、希望という2文字を思い起こさせるように、元気に言った。
「上月さんも頑張ってるみたいね。あたしたちも負けられないわよ、みさき」
「うん。早くお仕事見つけなくちゃね」
 彼女たちは無論知る由もない。深山雪見は1年後、道楽で書いた演劇の台本が評論家の目に止まり、その後劇の脚本家として名を馳せ、川名みさきは雪見の演劇に使われる衣装をデザインした結果、デザイナーとしての才能を世に認められることを。
 しかしこれらは未来の出来事なので、彼女たちは新聞記者として頑張る小柄な女性を見習い、失業者からの脱却を計るのが当面の課題である。


 
同日同時刻 ファーバンティ中央公園


「あのおっさんが、全ての元凶だったんだよ。茜」
「……と言われても、私は『髭』に逢ったことがないからわかりません。明義」
 元サブマリナーたちが職を探している頃、ファーバンティ中央公園に、ベンチに腰掛けてベルギーワッフルを食べながら、親しげに話すカップルの姿がある。互いをファーストネームで呼び合うことからも、ふたりの関係は明らかだった。
 Tactics戦略防空軍大尉、南明義は晴れ晴れしたような、同時に不満やるかたない、といった表情で語る。一方、軍を退いた里村茜は微笑を浮かべて、思ったことを素直に言った。
「まぁそうだけどなぁ。とにかく曲者だってことはわかってもらえたと思うけど」
「ふふっ、そうですね」

 南はここに来て茜と逢う――デートをする前に、かつての上官、渡辺大佐を訪ねた。なぜあの髭面の上官は、3ヶ月前にクラナド大陸を滅ぼしかけたメガリスのことを知っていて、自分に破壊工作を指示してきたのか、その真相が知りたかっただけだ。危うくコンクリート塊の下敷きになるところだった(メガリスは倒壊しなかったが)南としては、真相を知る権利があると信じていた。
 だが、その真相は実に滑稽なものだった。
 メガリスを考えつき、大まかな計画として纏め上げたのが、他ならぬ渡辺大佐だったからである。
 渡辺は、地球の軌道上に残り、時折降ってくるコーヤサンの残留破片を、ロケットで軌道外に飛ばすか、安全な場所に落とすことで根本的な問題解決を図ろうとした。そのアイデアが危険な可能性を秘めていることに気づいたのは、うかつなことに「M計画」として発動した後だった。
 正式なプロジェクトとして動き出した「M計画」を密かに調べた彼だが、計画は彼の懸念した通りに変化していた。隕石を処理する「施設」から、任意の場所に隕石を落とす「兵器」となってしまっていたのだ。それはただ祖国を、大陸を守りたいと願っていた渡辺にとって全く不本意なことで、彼はM計画の中止を訴えたが、計画はもはや彼の手を離れて久しく、一介の大佐にどうこうできるレベルを通り越していた。
 そこで渡辺は、計画阻止のチャンスを虎視眈々と待った。やがて彼は密かに手を回し、メガリス開発に(間接的にだが)携わる部署へ部下を送り込むことに成功する。それが南明義だった。
 その後の展開は、渡辺の策謀に巻き込まれた彼が最も良く知るところである。

「でも、おかげで私は……明義と、逢えました」
「ああ、うん。確かにそうだな」
 そうだった。もしも髭が俺を主計7課に送り込まなければ、俺は彼女と、茜とこうしていることはなかったんだな。人生、何が幸いするかわからないな……。そう、俺は今、茜と一緒にいられて幸せなんだ。
 その時、南の考えをまるで見通していたかのように、茜が彼の手を握った。南の手はやわらかい感触と温もりに包まれる。
「あ、茜……」
「……」
 驚いた南は茜を振り向く。が、茜は顔を僅かにうつむかせて南を見ようとはしなかった。ただ、頬がほんのりと赤く染まっていることが、彼女の感情を物語っていた。
「茜……」
 南も思い切って茜の手を握り返し、指が絡んで、しっかりと繋がれようとした時――。
「らぶらぶだね、おふたりさんっ」
「うわあっ!」
「きゃっ!」
 背後からの声に、自分たちの世界に入り込もうとしていたカップルは現実に呼び戻される。慌てて手を放し、立ち上がって後ろを振り向くと、
「あっかねっ♪ お久しぶりっ!」
「し、詩子!?」
 明るく朗らかに、弾むような声音で話す女性が立っていた。茜の幼なじみで、戦争中にはストーンヘンジの操作要員を務めていた柚木詩子中尉(彼女は軍を辞めなかった)である。
「いつからいたんですか?」
「えーと、『でも、おかげで私は……』のあたりからかな?」
「……」
 詩子の言葉に、真っ赤になって下を向く茜。南も茜と同じように恥ずかしかったが、この気まずい状況を打破すべく、懸命に次の話題を考えた。
「……君が、茜が良く話していた柚木さん?」
「うん――じゃなくて、はい。あなたが南大尉殿ですよね?」
 詩子も南のことは茜から(電話やメールで)聞かされていた。彼女はストーンヘンジ破壊後、懸念していたような最前線送りや軟禁状態には置かれず、国防総省のコンピューターシステム管理員として任務を続けた(ただ、ストーンヘンジの件に関しては厳重な緘口令が敷かれたが)。そして戦争を生き延び、今日11月2日、ようやく親友と再会叶ったのである。
 詩子の問いに答えたのは、話しかけられた南ではなく、彼の傍らにいる茜だった。彼女は、照れながらも躊躇なく、はっきりと宣言した。
「ええ、そうです。私の……好きな男性(ひと)です」

 一組のカップルが仲良く友人と再会している時、そこからさほど離れていない公園内で、もうひとつの再会があった。
「うっわ〜、可愛いですねぇっ!」
「ひゅーっ、すごい……生きてるのよねぇ、これ……」
「当たり前じゃない! 縁起でもないこと言わないでよ」
「でも、ほんとに可愛いわねぇ。あんたに全然似てないわよ」
「……怒るわよ、晴香」
「ごめんごめん、冗談よ」
「郁未さんっ、この子の名前は何て言うんですかっ?」
「未悠。未悠って言うの」
 まだ言葉も話せないひとりの幼子を中心にして、3人の女性がにぎやかに話している。
「うーん、僕は無視かい? ははは……」
 女友達が3人寄ればこうなるであろうことは理解していた。が、完全に蚊帳の外に置かれた未悠の父親――天沢郁未の夫は、彼女たちには聞こえない小さな声で、苦笑交じりに呟いた。
 彼は別に影が薄い人物というわけではないが、妻と出逢った頃、彼は2週間くらいの間、郁未から単なる「少年」としか認識されずに、本名すら問われなかったという逸話もある。今もこうしてのけ者にされかけている彼の立場は、「専業主夫」として家庭の収入を妻ひとりに任せていたという一点から見てもあまり高いものではなかった。
 それでも、互いが互いを信頼し、愛しているという点は全く別で、夫婦仲は極めて良好である。そうでなければ、郁未は幼い愛娘を彼に託して戦争をすることなど有り得ない。
「でも、こうしていられるのは平和が戻った証拠なんだけどね……」
 彼は、談笑する3人の笑顔を交互に眺めながら、自らも笑った。今のこの時が、とても幸せなことを噛み締めるように。
 しかし、彼は知る由もなかったが、妻の友人――巳間晴香も名倉由依も、こうして笑顔ができるようになるまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。ふたりとも、この戦争で身内を――晴香は兄を、由依は姉をそれぞれ喪っている。
 無論、彼女たちは悲しみに沈んだ。涙に暮れ、泣き濡れたこともあった。だが同時に、それができたのは幸福なことでもあったと言えよう。
 巳間良祐と名倉友里は、Tacticsの最終兵器メガリスを意のままに動かし、地表に隕石を落とそうとした当事者たちである。もしも生きていたら、A級どころかトリプルA級戦犯に指定されてもおかしくない。その係累たる彼女たちも、本人に責任はなくとも社会的に何らかの迫害を受けていただろう。しかし今ふたりは、こうして堂々と日の光を浴びることができている。実は、彼女たちも世間も、真相を知らないのだった。
 ISAF総司令部は、メガリスの一件について可能な限りの情報公開を行っていたが、その首謀者たちについては「具体的な人員、人数は不明」との見解を示している。これはISAF総司令官の古河元帥が「家族にまで害が及ぶのは忍びない」と考えた末の決定だった。
 この人情の欺瞞工作は、メガリスを占拠したTactics軍残党の大部分が戦死していたことや、地表への隕石落下という最悪の事態は阻止できたことなどから、そう難しいことではなく、現在のところ上手く、確実に進んでいる。
 そのような事情から、良祐も友里もファーバンティ決戦における国防総省攻防戦で戦死したということになっている。分厚いヴェールの向こう側にいるごく一部の人々以外には、このふたりは祖国に殉じた勇敢な軍人として認識されているのだ。実際の行動にはとても問題があったにせよ、勇敢という点は決して間違ってはいないが……。
 結果として、晴香と由依は身内の死を落ち着いて悲しむだけの時間と余裕を与えられた。そして彼女たちの心の傷はある程度まで癒された。
 特に由依は、ISAFの川澄舞という人物から、姉の命を奪ったことと、彼女の最期の模様を知らされ、姉の遺髪を受け取っている(どちらも郵送だが)。由依は姉の仇である舞を恨んではいない。これはあくまでも戦争であり、敵であるISAFが姉を殺すのは仕方がなかった。むしろわざわざ丁寧に知らせてくれた相手に感謝の念すら抱いている。このことは、由依の心をプラスの方向に動かした。
 これが、晴香と由依の幸運である。そしてこの幸運が、親友同士の楽しい再会をもたらした。しかもさらに、もうひとつの出逢いすらやって来た。
「お待たせしました、郁未さん」
「あっ、葉子さん。こんにちは」
 郁未は声の方向に振り直って、新たな笑顔をそちらへ見せた。晴香と由依もそちらを向くが、不思議な表情をした。
「あ、この人は鹿沼葉子さん。私の同僚だった人よ」

 軽い紹介をする郁未。それでようやく納得がいったふたりも笑顔を浮かべて軽く頭を下げる。
 そんな3人、いや、きょとんとして首をかしげる未悠と、つかず離れずの距離にいる彼女の父親を含めた5人に、これまで無表情に近かった葉子は、微笑を向けて、明朗な声で自己紹介をした。
「私の名前は鹿沼葉子です。よろしくお願いします」


 
2 残りし者たち


 
2005年11月6日 Kanon国 首都ポートエドワーズ


「佐祐理……」
「何ですか? 舞」
「……この卵焼き、美味しい」
「あははーっ。舞、ありがとう」
 兵舎の屋上へ続く階段の一角で、昼食を取るふたりの女性士官の姿は、今ではここポートエドワーズ陸軍基地の風物詩となっている。
 ちなみに、川澄舞大尉が食べているのは、倉田佐祐理少佐のお手製弁当である。3段重ねの重箱に彩り良く詰められたそれは、味も外見と見事に合致した素晴らしい弁当だった。つい2ヶ月前まで頻繁に口にしていたレーション(携帯軍用糧食)とは比較にならない。いや、比較の対象にすること自体、佐祐理と弁当に対して失礼に当たるだろう。
「……」
 無言に戻り、再び箸を動かすことに集中する舞。佐祐理はそんな彼女をにこにこと笑顔で見つめながら、自らもゆっくりと重箱の中身を咀嚼する。
 だが、舞の箸がふと、止まった。
「佐祐理」
「はい?」
「あの人のこと、あれで良かったのか?」
 舞の言うあの人に該当する人物は、彼女たちの間ではひとりしかいない。忘れもしない9月26日、メガリス予備管制室を守ろうとして、舞の剣によって倒された名倉友里Tactics陸軍少将のことである。
 舞は、友里の遺言を忠実に履行した。彼女の死に際を妹の名倉由依に手紙で報告し、合わせて遺髪を送っている。友里の息の根を止めたのが自分であることも含めて、余すところなく。ただし機密の絡みもあり、死亡日時と場所は嘘を教えることになってしまったが。
 しかし、肉親の死を知った名倉由依は、一体どれだけ悲しんだのだろうか。そして、その仇である自分のことを一体どう思っているのだろうか? 舞が恐れていたのはその点だった。自分がひとりの姉を殺し、妹を絶望させた。その妹は、私のことをさぞ憎み、恨んでいることだろう……。
「舞」
 表情こそ大した変化はないが、内心では苦しみが渦巻いているだろう戦友に、佐祐理は優しく、かつ明朗に言った。
「大丈夫ですよーっ。舞の気持ちは、きっとあの人の妹さんも理解してくれます」
「でも……」
 なおも躊躇し、何かを言いかけて口をつぐむ舞。佐祐理は、ここが川澄舞の人間的魅力だと思っている。
 舞は、どんな強敵を前にしても恐れない強さを持つ反面、このように倒した敵、その家族を思って自分を責める弱さ、いや、優しさも持っている。この2面性が、日頃は笑顔を絶やさないでも、弟を喪った十数年前の件が未だに尾を引いているわたしとどことなく似ていて……けれども、舞はわたしよりも他人思いで、人のために自分の心を傷つけて……。
(だからこそ、佐祐理は舞を好きになったんです。強くて弱くて、そして優しい舞を……)
 そんな素晴らしい親友を、わたしは守っていきたい、一緒に過ごしたい。ずっと。そう、未来永劫、死がふたりを分かつとも。
「とにかく、舞の優しさは相手にもちゃんと伝わってます。何も思い悩むことはありませんよ」
「佐祐理……」
「さっ、休み時間が終わっちゃいますから、早く食べましょうっ」
「佐祐理、ありがとう……」
「あははーっ、どういたしまして」
 食事はようやく再開された。舞の苦悩も、完全とは行かないが和らいだようで、重箱の中にある極めて美味な品々は順調にふたりの胃袋に納まっていき、この日の昼食もいつも通りに終わった。
 しかし、その後はいつもとは異なった。
 午後、舞は一通の手紙を受け取った。差出人は名倉由依。恐る恐る封を開け、中身を確認すると、食事の時に佐祐理が言った台詞が正しいことが証明された。姉を打ち倒したことには一切触れずに、ただ姉の最期を確認し、髪の毛まで送ってくれたことに対する礼が丁重に書かれていた。
 こうして、川澄舞と倉田佐祐理にも、ささやかな日常が戻ったのである。


 
2005年12月4日 Tactics連邦 サンバルジオン市郊外 サンプロフェッタ空港


 七瀬留美中尉がヘルメットを脱ぐと、彼女の長い青髪がジェットエンジンからの風になびく。
「ふぅっ」
 飛行訓練を終えた留美は地上の新鮮な空気を満喫するため、大きく深呼吸をする。吐いた息が白く染まり、季節が既に冬へ移り変わっていることを実感させた。
「留美、今日も見事だったわよ」
「真希、お疲れ」
 傍らにやってきたのは留美のパートナー、広瀬真希中尉である。彼女も留美と同じ、戦争を生き残った数少ないエースのひとりで、再建途上にあるTactics空軍の牽引役となっていた。
「戦争に敗けてからこのかた、訓練すら満足にできやしないわね」
 ああもう、飛行禁止空域だとか、燃料制限だとか、鬱陶しくてありゃしない……。そう続ける真希は、不満を発散させるように手と手を打ちつけ、留美に言った。
「もっと大っぴらに飛べれば良いのに。あんたもそう思うでしょ?」
「そうね……」
 しかし、留美は真希への回答を曖昧なものにした。相方の悩みは、歴史を知る者にとっては贅沢かもしれないと思ったからだ。首都を焦土にしてまで戦争を続けようとしていたTactics連邦は、最盛期に比べると大幅に力を削ぎ落とされたとはいえ、まだまともな軍隊の保有を許されているのだから。
 60年前、アメリカ合衆国を相手に全力で戦い、爆弾を志願する人間すら輩出ほどの勇戦奮闘でアメリカを苦しめ続けた彼女たちの先祖の国、日本はその報復として軍隊を持つことを禁じられた。代わりに自衛隊という国防軍が存在するが、あまりにも専守防衛に特化し過ぎている(それでも第1級の正面装備と良質の兵員を持ち、守りに徹すれば極めて高い戦闘力を発揮するだろうが)。その上、国そのものがつい最近まで戦争に対応するための法律を持ってはいなかったのだ。日本で「周辺有事法」が成立したのは2002年12月、大陸の軍事的緊張が日々高まっている最中のことである。
 それに比べれば、こうして「Tactics連邦軍」という名の軍事組織が存続しているだけでも幸運よね。たとえ経済復興最優先で、機材や燃料が足らなかったとしても……。
 そう思考を巡らせていると、真希が突然、これまでの話題とは全く関連性がないことを言い出した。
「あれ? あんたまだその髪型にしてるの?」
「ああこれ? うん。もう慣れちゃったから」
「前のツインテールの方が良かったのに」
 留美はついこの前、長年慣れ親しんだツインテールから、単なるポニーテールへと髪型をイメージチェンジさせていた。
 その原因は、彼女の宿敵だった「リボン付き」である。
 留美は一度、メビウス1に手紙を(Kanon軍務省経由で)送ったことがある。戦争が終わってから2ヵ月が経ち、彼女が捕虜生活を終えた頃である。手紙の内容は、自分がTacticsの戦闘機乗り「メイデン」であることを明かした上で、自分が何のために空を飛んだのかを打ち明け、さらに何を思って戦争を戦い抜いたのかを相手に問うものだった。
 メビウス1からの返事は1週間後に届けられた。彼は留美の問いに、誠実に答えてくれた。愛する家族のため、そして愛する女性のため……。自分に何度も煮え湯を飲ませた憎い敵、Tactics軍から悪魔のごとく恐れられたメビウス1もひとりの人間であることを彼女は思い知ったのである。
(もしも……ああいう奴と一緒に戦えたら、あたしは乙女になれたのかな……)
 メビウス1は手紙に、水色のリボンを1本同封してきた。最初は、彼が留美を含めたTactics将兵から「リボン付き」と呼ばれていることを皮肉っていたのかと思った。だがその考えはすぐに否定される。「本当の乙女になれることを祈る」というメッセージが添えられていたからだ。
 留美は今まで慣れ親しんだツインテールからポニーテールへと髪形を変えた。そして彼女の髪を一つにまとめているのがメビウス1から贈られた水色のリボンである。いや、リボンをつけるために彼女はポニーテールにしたのだ。こうすれば、自分の望みが少しでも叶う気がしたから……。
「ま、あんたがそれで良いなら、あたしはとやかく言えないけどね」
「うん」
 このまま空を飛び続けて、果たして自分の目指す乙女になれるのか? 留美の中で、その答えはまだ出せていない。
 ポニーテールが、初冬の風に吹かれて、美しく揺れた。


 
2006年1月5日 ノースポイント上空


『アクトレス、どうした? いつものお前らしくないぞ』
『……済みません、大佐』
『戦争のない元旦は3年ぶりだから正月ボケしてしまうのもまぁわかるが、軍人が平和ボケしては平和そのものを失うぞ』
『はい』
 地上で判定官をしている石橋大佐は、多少困ったような声で斎藤大尉を叱責した。一方の斎藤は、ただ素直に返事をするだけだった。
 しかし、この会話を訓練空域からそう離れていない所を飛ぶE−767で聞いている「スカイエンジェル」月宮あゆ中尉は、斎藤が別にだらけている訳ではないことを知っていた。
 彼は、心の中をひとつの思考に統一できていない。「メビウス1」こと相沢祐一大尉が空軍を去り、名実共にKanon国防空軍(元ISAF空軍)のナンバー1パイロットとなった斎藤がこの年明け初めの空戦訓練で何度か不覚をとったその理由である。
 その原因に、あゆは当事者として大きく関わっていた。
 彼女は斎藤からプロポーズを受けていたのだ。まだ告白すらされていないのに、先回りにも程があるような結婚の申し込み。大空ではそれなりに冷静なあゆも、このいきなりの話に混乱以外の何もできなかった。かろうじて実行できたのは「しばらく考えさせて」の一言を斎藤に告げることだった。これが昨年12月31日――戦争に明け暮れた年の大晦日のことである。
(……どうしよう)
 あゆの悩みも、(斎藤のように行動には出さないものの)出口の見えない迷路に迷い込んでいた。
 無論、彼女は斎藤の想いには前から(戦争中から)気がついている。だが、自分が彼の存在をどう考えているのか。あゆが斎藤に明確な返事をしなかったのも、そこにある。
(ボクを好きでいてくれるのは嬉しいけど……)
『アクトレス。今更言うまでもないが、空での邪念は禁物だ。私の見る限り、お前は今までそんなことはなかったんだが……。何かあったのか?』
『いえ、何でもありません』
(ごめんなさい、斎藤さん)
 あゆは別に自分が悪い訳でもないのに、心の中で斎藤に詫びる。と、ここで石橋の言葉からひとつの記憶が呼び起こされる。
 それは以前、プレッシャーに押し潰されそうになった時、斎藤が自分を慰め励ましながら言ってくれたことだ。
『俺はメビウス1とは違って、特に理由もなくパイロットなった。まぁ強いて言えば、蒼い空に憧れて軍人になったのかな。だから、俺は空が好きでさ。戦争は嫌だけど、空にいれば、飛ぶことと生きること、そして仲間を生かさせることに集中できる』
 しかし、今の斎藤は、この言葉通りにはなっていない。それというのも、斎藤があゆのことばかりを考えているからだろう。本来、邪念の及ばないはずの世界で……。
(えっ? じゃ、じゃあ、斎藤さんはボクのことを、そんなに?)
 あゆ本人も多少自覚しているが、彼女が斎藤への回答を保留したのは、相沢祐一に恋をしているという理由がある。もちろんそれは、どうしても叶わぬ恋だった。彼女自身も諦めていたつもりだった。だが、無意識ではまだなおふっ切れていないらしかった。
 一方、斎藤の心の中は、月宮あゆという女性によって支配されている。その勢力は、彼が好きな空よりも広い。斎藤の過去の台詞からそれを感じた瞬間、これまで抱いていた恋心の性質が、劇的に変化していく。
(祐一君のことは今でも好きだけど、でも、ボクは……そうだ、うん。自分をもっと好きでいてくれる人の方が、ボクにとっても幸せだと思う……)
「ホントに斎藤さんの言った通りだね。『苦しみや悩みは、この大空が解決してくれる』って」
 この時、月宮あゆは空を飛びながら「スカイエンジェル」のコールサインを捨て、ひとりの女性に戻る決心をした。その決意を斎藤に告げたのは、翌日のことだった。
 ただし、幸せを手に入れても、空で死んで逝った者たちを忘れることだけは、絶対になかった。彼女は空を飛ばなくなってもやはり「スカイエンジェル」であり続けたのである。

 一方、月宮あゆを娶った斎藤の、2006年以降の人生は、半分がKanon国防空軍と祖国への献身に費やされた。なおこの年以来「アクトレス」のコールサインを名乗る必要は消え、代わりに「ハズバンド」というコールサインを使った。これを羨ましがった者は3ケタでは足りない人数だったらしい。
 そうして(家庭を顧みながらも)軍務に励んだ結果、彼は最終的に大将まで上り詰め、空軍最高幕僚長のポストを務め、全ての義務を果たした後に軍を退役することとなる。元々エリートコースから離れ、ただ大空を飛ぶことに喜びを見出し、立身出世などはなから眼中になかった彼にとって、この大出世は自分自身でも驚き以外の何物でもなかったらしい。自分の地位に戸惑ったような顔をすることも多かったと、彼の側近や従卒を務めた者は口を揃えて証言した。
 しかし、そんな彼が、常日頃から口にしていた言葉がある。
「俺の奥さんは、仕事でも生活でも、俺に幸福と繁栄をくれたよ。彼女は正真証明の天使だったんだ」


 
3 雪降る街の奇跡


 
2006年1月6日 スノーシティー 百花屋


「よっ、と……っとっと……っ! あうっ!」
「真琴、気をつけてください」
 椅子の上でバランスを崩しかけた沢渡真琴を、天野美汐が押さえる。百花屋は今、パーティーの準備で楽しくも忙しい中にあった。真琴は店の飾りつけを担当していて、椅子に登って天井を飾っていたところだった。
「ありがと、美汐」
「今日は名雪さんの退院なのに、今度はあなたが入院されては困ります。名雪さんがまた来てくれれば、このお店も忙しくなりますから」
「あう〜、ごめんなさい」
「美汐さ〜ん、ケーキの生地が焼けましたっ」
 と、奥の厨房から美坂栞が顔を出して、弾んだ声で言った。制服の上にエプロンを羽織っている。
「わかりました。じゃあトッピングをしましょう。イチゴはありますね?」
「はいっ! いっぱい買ってあります。でも、名雪さんが来るとすぐになくなっちゃうかもしれませんね」
 美汐の質問に答えた栞は心から嬉しそうに笑った。戦争中は危険な抵抗運動に手を染め、平和な日常から離れていた。戦争が終わり、日常は再び幸せなものになったが、今日から水瀬名雪の退院によってそれが本当の意味で戻ってくる。栞の笑顔にはそういう思いが凝縮されていた。
「じゃ、真琴。これは私がやりますから、あなたは栞さんとケーキのトッピングをしてください」
「うん、わかった」
 椅子から飛び降り、栞と同じ柄のエプロンを素早く着込むと、厨房の中に消える。そこからやがて、楽しそうな黄色い声が響いてきた。
「真琴さんっ、そんなにイチゴを乗せたら、スポンジが崩れちゃいますよ」
「栞だって、クリームのバランスが取れてないわよっ」
「そんなこと言う人、嫌いです〜」
「あはははっ……」
(楽しそうですね……)
 真琴に代わって飾りつけをする美汐は、真琴と栞の笑い声に、無意識のうちに顔がほころぶ。
(無理もありません。去年までは明日をも知れぬ身でしたから……でも、私たちは平穏を取り戻せました。大切な人たちも一緒に)
 スノーシティーのレジスタンスのリーダーとして、自分のみならず構成員たちの、そして愛するこの街の安全すらその小さい肩に背負ってきた美汐も、今こうして楽しい笑い声を聞けることに感慨を抱かずにはいられなかった。
 ふと、窓ガラスに映る自分の顔を眺める。
 外に雪の見えるガラスに反射された自分の顔は、真琴と栞のふたりに勝るとも劣らない笑顔をしていた。
 そこへ、ドアベルがチリンチリン、と心地良い音色を響かせ、店内に一組の男女が足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ――あっ、北川さん、香里さん」
「やあ、天野さん。まだ早かったかな?」
「はい。まだ準備はちょっと……」
「だから言ったのに。潤ったら、気が早いんだから」
 そう言って、北川潤・香里夫妻は笑いあった。ふたりの声を聞きつけた妹の栞が駆けつける。
「あっ! お姉ちゃん、お義兄さん。いらっしゃいませっ」
「栞、お仕事頑張ってる?」
「はいっ!」
 元気に答えて、小さくガッツポーズ。名雪の「ふぁいとっ、だよ」真似てみたらしい。そこへ遅れてやってきた真琴が目を丸くして香里の腹部を見つめる。
「お腹、ずいぶん大きくなったんだね」
「ええ。もうすぐ産まれるって」
「今も病院に行ってきたところなんだよ。順調らしいってさ」
 北川と香里は互いに顔を見合わせ、優しく微笑みあった。北川は父親の、香里は母親の顔をしていた。少なくとも美汐はそう感じたが、ふと気になったことを尋ねてみることにする。
「もうお名前は決まっているんですか?」
「ええ。男の子だったら『一雪(かずゆき)』で――」
「それで、女の子だったら『祐名(ゆうな)』だ」
 香里が言わんとしていたことを、北川が引き継ぐ。すると、その言葉から真琴が何か引っ掛かるものを覚えて呟いた。
「あれ、それって……」
「そうよ。名雪と相沢君から取ったの。ふたりとも“奇跡”の実践者だから、あやかりたいと思って」
 祐一はメガリスを破壊して世界を救い、名雪は意識不明の状態から母親と共に目覚め、かくして愛し合うふたりは幸福な再会を成し遂げた。それが香里の言う「奇跡」である。
「名雪はともかく、祐一の名前なんか取ったら、どんな風に育つかわからないわよぅ」
「真琴」
 北川夫妻に、真琴がいきなり無礼な物言いをする。もちろん冗談とはわかっていたが、一応たしなめる美汐。が、北川と香里も同じく冗談で真琴に返した。
「そうだな……将来はパイロットになっちゃったりしてな」
「名雪にだって問題はあるわよ。きっと寝つきの良過ぎる子に育つんじゃない?」
 と、笑い出す夫妻。つられて真琴も、栞も声を立てて笑った。美汐も控えめながら、それに加わる。
 美汐は自覚していなかったが、今の彼女は先ほどガラスに映った時よりも、ずっと良い笑顔をしていた。


 
同日同時刻 水瀬家


「ふぅ、終わったわ」
 蛇口から流れ出るお湯を止め、洗いものを終えた水瀬秋子はそう言って、エプロンを外し居間へ行き、ソファーに座った。美しい顔は穏やかながらも口を真一文字に閉じ、瞳には何か、様々な思いが揺らめいている。
 実年齢よりも遥かに若く見えるこの母親は、最近こうして考え込むことがしばしばあった。
(これまで、皆さんに迷惑をかけてしまいましたね……)
 彼女は娘の名雪よりも一足先に病院を出て、軍人になる前の祐一が修理を手配して元通りになった水瀬家を守っている。「メビウス1」の名を捨てて一民間人に戻った祐一も一緒に住んでいるが、彼はこの街で職を見つけて働き、名雪を訪ねて足しげく病院に通っているため、秋子ほど長く家にいることはない。
 しかし、今日からは違う。名雪が退院して、戦争に巻き込まれる前と何ら変わらないこの家に戻ってくる。そして、新しい幸せな生活が始まる。
「そうしたら、皆さんに恩返しができるわね」
 自分たちが意識を失っていた2年間、ずっと看病してくれた娘の親友、北川潤と香里。レジスタンスとして戦いつつも、いつも自分たちを気にかけてくれていた百花屋の人々。そして――。
(祐一さん、ありがとうございます。それと、これからも名雪をよろしくね)
 戦争そのものを終わらせれば、幸せが戻ると信じて大空の住人となり、その奇跡をものの見事に現実とした、甥にして娘の恋人、相沢祐一。
 この人たちへは、ゆっくり、しかし確実に恩を返していけば良い。これからはそれができるのだ。じっくりと、誠意を込めて……ひとりの人間として、友人の親として、そして義母として……。
 彼女にとって、祐一が自分の息子になることは、もはや確定事項なのだった。
「あら、もうすぐ時間ね。支度しなくちゃ」
 秋子は少しの休息を終えて立ち上がった。彼女も百花屋で今日これから開かれる名雪の退院記念パーティーに招待されていた。主賓の名雪は一旦ここに戻ってから、祐一も含めた3人で百花屋へ向かうことになっている。
 少女のように心弾ませながら、着替えを始めようとしている秋子には確信があった。今日は、そしてこれからの日々はさぞかし素晴らしいものになるに違いない、と。


 
同日同時刻 スノーシティー総合病院


「あんたが……黄色の13か」
「それはこっちの台詞だぞ、リボン付き」
 一般病棟の中央ホールで対面した両者は、言い様がないほど複雑な感情に支配されていた。
 立場的には酷似している。大切な人を奪い、奪われた。ただひとつ違うのは、片方がそれを取り戻していることだ。
 だが、奪われたままの男の態度も、取り戻した男とそう大して違わない。彼は、諦めという形で憎しみから決別していたし、大切な人の死の理由に、自分が一枚噛んでいると思うと、目の前の仇敵よりもまず自分を責めることがどうしても先行してしまう。
 しばらく無言の時が流れたが、それを断ち切ったのは、ファーバンティ上空で目の前の男に殺されかけたが、幸運の中の幸運に恵まれ生き長らえた黄色の13――ISAFの捕虜という立場から今日解放されたばかりの折原浩平だった。
「で、何でオレはこんな所につれてこられたんだ? 病院の世話になるほどオレは耄碌しちゃいないぞ」
「あんたに、逢わせたい人がいる」
「誰だ、そりゃ?」
「逢えばわかるさ」
 浩平から「リボン付き」と呼ばれた、かつてメビウス1のコールサインを持っていた男、相沢祐一元大尉は浩平と顔を合わせてから初めて笑った。

 かつて敵味方として戦った両者は、大きい病院の廊下を並んで歩きながら、ぎこちないながらも和やかな雰囲気で話を交わす。最初に聞いたのは祐一だった。
「ところであんた、何でパイロットに?」
「……空が、好きだったからな。えーと……」
「俺のことは、祐一でいいぞ」
「そうか。じゃあオレのことは“美男子星人”と呼んでくれ」
「はぁ?」
「……いや、オレも浩平でいい」
 浩平にも、ようやく冗談を言うだけの(祐一には通じなかったが)余裕が生まれた。元々ユーモアに溢れた彼であるが、さすがに今のは理解されなかったらしい。
「で、祐一はどうして空を目指したんだ?」
 ジョークが失敗したと確信した浩平が、ミスを糊塗するため話題を元に戻す。
「大切な人を、取り戻すために」
「……そう、か。なるほどな」
(結局“リボン付き”はオレが生んだってことになるのか)
 この時には、浩平も事の次第を全て知っていた。およそ2年半前、この街の上空で撃墜した敵機が民家を直撃したこと。そこに住んでいたのが、今真横にいる男の恋人とその母親だということ。そして、男は奇跡を求めて空を飛び、ISAFを勝利に導いたこと……。
(大切な人、か)
 浩平にも無論、そういう人々はいる。だが、その度合が最も高い人は、もはやこの世界にはいない。彼女は、空よりもさらに高い場所にいる。それが浩平の悲しい認識である。
(瑞佳……)
「あんたにもいるんだろ? 大切な人は」
 心の内を読んでいるかのような祐一の問いに、浩平は驚くが、隠すこともない。素直に答える。
「ああ、いるぞ……いや、いた、と言った方が正しいな」
 浩平の顔が一瞬だけ悲しみに満ちたのを、祐一は見逃さなかった。その時、ふたりはちょうど目的の場所の前についた。祐一は、その場所――入院病棟の待合室の入り口を指して、浩平にニヤリと笑い、言った。
「俺はそうでもないと思うぞ。ほら」
「……?」
 祐一が示す先を覗きこむようにして眺める浩平。室内には、ひとりの女性が窓際に立ち、浩平に背中を向けている。その女性を見た瞬間、浩平の表情は固まった。長い髪に黄色いリボン。その姿にしばし呆然とし、やがて遠慮がちに呼びかけた。
「……みず……か?」
 その声に振り向いた女性は、死んだと思われていた長森瑞佳その人だった。見間違えるはずもない。浩平の幼なじみ。かつて浩平を悲しみから救い出した少女。そして浩平にとって最も大切な女性。しかしその想いを自覚したのは、皮肉なことに彼女を失ってからだった。
「瑞佳!」
 今度ははっきりと叫んだ。もう2度と逢えないはずだった。だが、彼女はまぎれもなく浩平の目の前にいる。
「浩平っ!」
 瑞佳が浩平の胸に飛び込んだ。自分に委ねられる瑞佳の身体の重み、温もり、そして滑らかな髪から発する上品なシャンプーの香り。全てが現実だった。これらが浩平に愛する人の存在を確信させた。
「瑞佳、瑞佳……」
「こう……へい……」
 浩平は瑞佳の背中に両腕を回す。彼の口から出る言葉は、涙声になり、震えていた。
「お前……無事だったんだな」
「うん。わたしもダメかと思ったよ。でも、助かって、ISAFの捕虜になって……」
「大丈夫だったか? 何もされてないか?」
「わたしは大丈夫だよ。助けてくれた佐祐理さんも舞さんも、良い人だったから」
 ストーンヘンジが陥落したあの日、偶然にも原型を保って墜落したSu−37「黄色の4」から、奇跡的に一命を取り留めた瑞佳を救い出した倉田佐祐理と川澄舞は、彼女を正統な捕虜として扱った。が、まだ戦争の最中、無敵の黄色中隊の一員は「戦死」したと言うことにしておいた方が、敵味方の士気に及ぼす影響は大きいとISAFは判断した。だからこれまで、長森瑞佳大尉の生存は伏せられていたのだ。
 だが、浩平はそんな事情など知らないし、どうでも良かった。ただ、愛する女性へ、己の想いを明らかにできる。それだけで良かった。
「オレ、やっとわかったよ。お前を失ってからわかったんだよ。オレは瑞佳のことが好きだったんだってこと……」
「気づくのが遅いよ……」
 浩平の胸の中で、瑞佳が呟く。
「わたしはね、いつだって浩平のことが心配だったよ……」
 瑞佳の瞳から、つうっ、と輝く雫が零れ、頬を伝った。
「初めて逢った時も、一緒に軍へ入った時も、そして捕虜になってる間も、ずっと……」
 言葉を一度区切り、浩平をじっと見つめ、そして最高の笑顔を浮かべた。
「ずっと、好きだったんだよ。浩平」
「瑞佳っ……」
 ふたりは、もう一度強く、強く抱きしめ合った。

「祐一……もういいの?」
 廊下を少し進んだ所に、名雪が待っていた。病室にいる時の寝間着姿ではない。ちゃんとした外行き用の服だ。数ヵ月のリハビリ生活を終え、母親に遅れること1ヵ月。今日、彼女は退院の日を迎えたのである。
「ああ。これで俺のするべきことは全て終わった」
「祐一……良かったね、あのふたり」
 そう言って名雪が視線を向ける先では、浩平と瑞佳がまだしっかりと抱き合っている。
「そうだな。良くわかるよ。俺もそうだったからな」
「ごめんね……わたしのせいで、祐一は……」
 名雪はうつむきながら呟いた。彼女の表情は「苦渋」の単語がそのまま当てはまるほど、祐一への申し訳なさで満ちている。瞳からは今にも涙が零れ落ちそうだ。
 平和になった今でも、祐一は戦いを思い出すことがある。自分が殺した人々のことを思い、彼らの命を奪ったことに苦しむのだ。もちろん祐一は、パイロットになったことを後悔してはいない。が、それでもこうして思い悩むのは、根は善良な彼の優しさゆえだった。
 一方名雪は、祐一の苦しみの元凶は全て自分にあると信じている。ひとりで病院のベランダに佇み、何もせずただ空を眺め、過去の行為を振り返る祐一の姿をよく見かけている彼女は、その度に祐一と同じくらいに思い悩んでいる。自分のために、恋人は死地へ赴き、心を傷つけた。自分のせいで、祐一を苦しめてしまった……。この負い目は一生消えないだろうことを、彼女は自覚している。
 しかし、祐一はそんな自分を好きでくれている。目覚めたばかりのわたしを抱きしめてくれて、ずっと一緒にいると約束してくれた。だから、わたしも、祐一を好きでいる。
(祐一……今度は、わたしが祐一を守るよ……)
 わたしじゃ役不足かもしれないけど、少しでも彼の心を癒して、もっともっと幸せにしてあげたい。大好きな祐一のことを……。
 そんな想いが通じていたのだろうか。祐一は名雪を優しく抱きしめた。愛しい人の体温が、鼓動が感じられる。生きていると実感できる。そして祐一は、ゆっくりと語りかけた。
「もう言うな。俺は今ここにいる。名雪のそばにいる。ずっと、これからずっとな」
 一旦言葉を区切り、名雪を放して彼女の顔を見つめる。
「だから、お前も俺のそばにいてくれると嬉しいな」
「もちろんだよっ。わたしは祐一が大好き……愛してるよ」
「俺もだ、名雪……」
 ふたりの顔が近づき、唇が重なり合う。幸せなキスだった。

 全ての退院手続きを済ませ、病院の外へ向かいながらも、恋人同士の楽しい話は続く。
「さて、いよいよ退院だな」
「うんっ。久しぶりのお家だよ〜」
「まぁ、あまりゆっくりはできないけどな。百花屋でお前の退院祝いがあるんだから、家に帰って寝たりするなよ」
「祐一、ひどいこと言ってる……」
 頬を膨らませてぼやく名雪だが、すぐに機嫌を取り戻し、屈託ない笑顔を花開かせて言った。
「でもね、わたしは寝ないよ。百花屋さんのイチゴサンデーが食べられるんだから」
「ははは、そうだな。天野も栞も真琴も、イチゴをたくさん用意して待ってるさ」
「楽しみだよ〜」
 そう笑って病院の玄関を抜ける。すると、灰色の空からは白い結晶がちらほらと舞っていた。
「わっ……雪だよ」
「そうだな、いつの間に降ってきたんだ?」
「あの日と同じだね。5年前の今日、わたしと祐一が再会したあの日と」
「ああ、そうだな……」
 ふたりの関係の原点となった雪は、幸せな日々が存在していた時と同じように降り積もる。そしてこれから、その幸せな日々が再び始まる。優しい雪と共に……。
「さぁ、帰ろうか。俺たちの家へ」
「うんっ!」


 
カノンコンバットONE シャッタードエアー

   
――完――



 
あとがき ――KCO本編完結に際して――


 まずは、今年3月末からこちら、び〜ば〜ダムさんのご厚意で連載させていただいた「カノンコンバットONE シャッタードエアー」も、皆様のおかげをもちまして、このたび完結となりました。私にとっては初めての連載作品となりましたが、多くの方々のご協力、ご助言、ご感想がなければ、完成は難しかっただろうと思います。
 特に、当作を受け入れてくださったさたびーさん、素晴らしいイラストや図面を書いてくださった神奈備祐哉さん、そして掲示板や某所のチャット、メールなどで技術的アドバイスやストーリーのアイデアを下さった、たかつかささん、春巻れいじさん、TMPさん。この方々には、どんなに感謝しても過剰ということはありません。
 この場をお借りして、深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
 次に、これはネタバレの蛇足になりますが、この作品の執筆の経緯について、ちょっと触れます。
 Tactics・KeyのSSで、戦闘機ものは決して少なくありませんが、私はエースコンバット04(以下AC04)をクリアしても、鍵ゲームとのクロスオーバーを書こうというアイデアは全く思いつきませんでした。
 ところがある日、巨大掲示板「2ちゃんねる」の葉鍵板に「ACE COMBAT04」(スレタイトルはうろ覚えです。現在過去ログを探していますが、見つかっていません:泣)というスレッドを発見しまして、いわゆるAC04と葉鍵ネタを合わせるというものでした。
 最初は面白がってROMしたり小ネタを書き込んだりしていましたが、もともとAC04は、主人公の少年や黄色の13など、フライトシューティングだけでなくストーリー性や人間ドラマも重視したゲーム。これに鍵のキャラクターを当てはめてみよう、と考えるまで、そう長い時間はかかりませんでした。
 大まかなストーリーはゲームをそのままなぞれば良く、主要キャラクターの配役もほぼ決定し、本格的な空戦SSを目指して執筆を始めたのですが、そこは軍艦や戦車も好きな架空戦記読み(最近はあまり読めなくなってしまいましたが)の書く電波文章、いつの間にやら当初の思惑を外れて、レジスタンスは出てくるわ参謀が出てくるわ……。結局開き直って仮想(火葬)戦記として書いて行くことにしました。
 まぁ、それが幸いしてか、大体のキャラクターを登場させることができ、またどうにか完結も叶いましたが、なんだかこのエピローグでは単なるラブコメになってしまっているような気が……(大汗)。
 とにかく、これまでの長丁場に、根気良く付き合ってくださった読者の皆様には重ね重ねお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 なお、外伝の構想もいくつかありまして、冬コミを終えて一区切りついたらこれらの執筆を本格化して行きたいと思っています。
 それではまたこの先、KCOワールドで皆様とお会いできれば、とても幸せです。

U−2K



 
参考文献


 エースコンバット04 シャッタードスカイ パーフェクトガイド(ソフトバンクパブリッシング)
 エースコンバット04 シャッタードスカイ オフィシャルガイドブック(エンターブレイン)
 献エースコンバット04 シャッタードスカイ 公式ガイドブック(小学館)
 エースコンバット2 ナムコ公式ガイドブック(NAMCO)
 戦闘機名鑑 ジェット時代編 上下(コーエー)
 戦車名鑑 現用編(コーエー)
 戦艦名鑑(コーエー)
 空母名鑑(コーエー)
 戦闘機メカニズム図鑑 鴨下示佳 著(グランプリ出版)
 爆撃機メカニズム図鑑 鴨下示佳 著(グランプリ出版)
 図解 現代の航空編 ビル・ガンストン+マイク・スピッツ 著/江畑謙介 訳(原書房)
 トム・クランシーの戦闘航空団解剖 トム・クランシー 著/平賀秀明 訳(新潮社)
 小学館の学習百科図鑑12 航空 飛行機のあゆみ(小学館)
 ポスターブック 世界の軍用機(同朋社出版)
 戦闘機がよくわかる本 坪田敦史 著(イカロス出版)
 世界の最新鋭軍用機500(成美堂出版)
 世界の最新兵器カタログ 陸軍編 空軍・海軍編(アリアドネ企画)
 世界の戦闘機・攻撃機カタログ(アリアドネ企画)
 週間デル・プラドコレクション 世界の戦闘機No.35 F−22ラプター(扶桑社)
 月間ミリタリーエアクラフト 2002年10月号 最新ステルス戦闘機(デルタ出版)
 世界の艦船別冊 艦載兵器ハンドブック(海人社)
 世界の艦船2001年11月増刊 世界の大型水上戦闘艦(海人社)
 Kanonビジュアルファンブック(エンターブレイン)
 Kanon公式原画・設定資料集(エンターブレイン)
 タクティクス設定原画集(コンパス)
 輝く季節へビジュアルファンブック(アスペクト)
 AIR ARTWORKS(パラダイム)

 その他、多くの文献、ホームページを参考にさせていただきました。

 著者・訳者・編者の方々に、厚くお礼申し上げます。


管理人のコメント

 さて、まずは祝辞を。
 U−2Kさん、「カノンコンバットONE シャッタードエアー」完結、誠におめでとうございます。
 なんと言うか、非常に良いものを読ませていただきました。登場人物の個性、戦闘シーンの描写、どれをとっても見事と言う他ない作品でした。
「Kanon」をはじめとするTactics・Key作品と現代戦もののクロスオーバー作品はいろいろあるのですが、私の読んだ中でも「KCO」は白眉の出来だと思います。
 私は、この作品の掲載を手伝い、管理者の役得として毎回最初にこの作品を読むことが出来た事を、非常に幸運に思っています。
 まだ外伝があるそうですが、そちらも非常に楽しみです。今後もU−2Kさんが多くの人々を楽しませてくれる作品を書いてくれることを大いに期待するとともに確信しつつ、最後の解説に変えさせていただきます。
 もう一度…「カノンコンバットONE シャッタードエアー」完結、誠におめでとうございます。また今後もよろしくお願いします。


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