巨大な要塞…Tacticsの最終兵器メガリスの中心部から眩いばかりの閃光が迸り、天をも焦がすほどの火柱が星の降り注ぐ天空へ向かって噴き上げた。
その大爆発の中から一機のF-22が飛び出してきたのを確認し、この最後の戦いへと赴いてきたパイロットたちの間で歓声が爆発した。
茂美も、勝利した事、何よりも世界が救われたことに心からの喜びを感じていた。歓喜の歌に唱和しつつ、彼女はこの戦争中最後の祈り…この戦いの間、ずっと守ってくれた感謝の祈りを彼女の信じる神に捧げていた。
2005年9月26日、クラナド大陸戦争最後の決戦は終わった。そして、川口茂美の長かった戦いの日々も、ようやく終わりを告げたのである。
カノンコンバットONE シャッタードエアー
外伝 翼の還る処
エピローグ 明日に続く道
11月3日 Air皇国首都カンナ 蒼空宮(皇居)
翼を持つ少女の形に例えられるカンナ市街地。日本の東京に例えれば霞ヶ関に相当するこの地区は、国会議事堂や宰相公邸、各省庁などが立ち並ぶAir皇国の政治の中心地である。が、なんと言っても目立つのは、地区の6割を占める皇居、蒼空宮だ。
この日、Air皇国は全世界に二つの重大発表を行った。一つは、民籍降下していた皇位継承者、国崎宮往人殿下の皇籍復帰と次期皇主への即位。そして二つ目は婚約の発表であった。
この二重の慶事に国民は湧き返り、夜になっても市街地では市民たちが練り歩いていた。商店街では飲食店が祝賀セールを開始し、ただ同然で市民に食べ物や酒が振舞われる。やがて、誰からともなく肩を組んで国歌「鳥の詩」を合唱しはじめ、その歌声が全市にこだましていた。
そうした喧騒とは別に、皇居蒼空宮では祝賀晩餐会が開かれていた。政治家や市民の有力者、経済界の要人、それに国外からの来賓も多数来ている。寛容な事に、Tactics連邦にまで招待状が送られていたのだが、さすがに遠慮したのか誰も来ていない。
「…落ち着かないわね」
そうした中に、川口茂美大尉(終戦と共に一階級昇進)の姿もあった。Air空防隊の第一種礼装である蒼色の制服に身を包み、会場の隅にある椅子に腰掛けていた。彼女が呼ばれたのは、なんと言ってもこの戦争におけるトップエースの一人である、と言う絶大な功績がある。ISAF・Tactics両軍を通じて第六位、女性パイロットとしては第三位の27機撃墜を数え、Air空防隊に限れば間違いなく第一位の戦績である。
それを考えると十分招待を受ける価値が茂美にはあったのだが、自分を田舎神社の一人娘と思っている彼女には、自分がとんでもなく場違いな所にいるような気がしてならなかった。
「茂美ちゃん、もっとリラックスしていこうよぉ」
「お料理、美味しいですよ」
そんな茂美の肩を叩くのは、親友の霧島佳乃と遠野美凪である。「マイペース」と言う言葉が服を着て歩いているようなこの二人は、この場でも全く物怖じしていなかった。茂美は苦笑すると、二人についてテーブルに移動し、いろいろと話をはじめた。
30分後
「はぁ…二人とも大変だったのね」
Tactics軍に抑留あるいは拉致され、軟禁生活を強いられていた美凪と佳乃の話を聞き、茂美はため息をついた。
「そんな事ないよぉ。茂美ちゃんのほうがずっとがんばったと思うよ」
佳乃が満面の笑顔で言う。顔がほんのりと赤いのは、酒が回ってきたためだろう。
「私もそう思います…これはよく頑張ったで賞…ぱちぱちぱち」
美凪が頷きながら白い封筒を差し出す。中身はクラナド大陸諸国共通お米券だ。
「ありがと、美凪」
茂美は苦笑しながら、初めて会った頃から変わらない親友の気持ちを受け取った。
「ところで、怪我はもう大丈夫なの?」
茂美が聞くと、美凪はこくんと頷き、笑顔で答えた。
「大丈夫…聖先生に直してもらったから」
佳乃の姉、聖はサマータウンで唯一の開業医だ。しかし、Air皇立大学の医学部を出た才媛であり、その技術は非常に高い。Tacticsに拉致されていた頃も、彼女が人質たちの健康維持に万全の手腕を尽くしてくれたのだ。
「じゃあ安心ね」
茂美は笑った。そして、真顔に戻って言う。
「それにしても…せっかくこうして集まる機会なのに…観鈴に話し掛けられないのは寂しいわね」
「あはは、仕方ないよぉ。観鈴ちゃんはもう雲の上の人になっちゃうんだもんね」
佳乃が言うと、美凪も頷いた。
「ええ…それにしても、あの国崎さんがまさか皇太子様だとは…びっくりです」
「本当はおめでたいことなんだけどねぇ」
そこで三人ははぁ、とため息をついた。
三人の共通の親友、神尾観鈴は間もなく皇妃という立場になる。彼女こそ、新皇主である国崎宮往人殿下…陛下の婚約者だからだ。今も、上座の方でひっきりなしに訪れる賓客たちに笑顔で挨拶をしている。横に立っている母親の晴子がガチガチに緊張しているのと比べると雲泥の差だ。やはり、彼女もマイペースである。
「あの観鈴が皇室に入ってやっていけるのかしら…心配だわ」
茂美が言うと、佳乃が心配ない、と言うように手を振って言った。
「大丈夫だよぉ。往人君も結構アバウトな人だったし」
「…往人君?」
茂美が誰それ、と言うような表情をすると、美凪がちょっと低い声でささやくように言った。
「霧島さん、不敬罪は死刑ですよ」
「あっ、いっけなーい」
笑う佳乃を見て、茂美は「往人君」が皇主陛下であることに気が付いた。もちろん、今時不敬罪というものは無いが…そう言えば、二人とも陛下とは面識があったんだよね…ということに気がついて尋ねてみる。
「ねぇ、陛下ってどんな方だったの?」
すると、佳乃と美凪は指折り数えながら往人のことを語り始めた。
「えっとね、無愛想で…いつも不機嫌そうな顔で…ちょっとエッチで…」
「いつもお腹を空かせていて…おかずの取り合いで、良くみちるとケンカしていましたね…」
おいおいおいおい、と茂美は思った。誰が聞いているのかもわからないのに、良くそれだけこの場で言いたい放題言えるものである。しかし、二人の話は終わっていなかった。
「でも、ほんとうは優しくて、話してると楽しい人だったよぉ」
「困っているときに親身になってくれましたね…」
逆に美点を挙げはじめた二人の表情が、微かに寂しそうになるのに、茂美は気がついた。
(ひょっとして…二人とも陛下のことが好きだったのかな?)
陛下がサマータウンに来たのは、茂美が空防隊に入るために街を出た後の事だと聞いている。狭い街だから、二人も陛下とはすぐ顔見知りになっただろうし、触れ合う機会も多かったのだろう。
(もしそうなら…陛下は充分素敵な人なのかもしれないな)
親友三人がそろって想いを寄せた男性なのだから、たぶん間違いないだろう。それなら、観鈴のことも余り心配しなくても良いのかもしれない。
「そんな良い人なら…きっと観鈴は幸せになれるわね。じゃあ、乾杯しましょ。あの娘の未来のために!」
茂美が率先してグラスを取り上げると、美凪と佳乃も影のない笑顔になり、グラスを手に取った。
「「「かんぱーい!」」」
三人がそれぞれのグラスを空けた時、皇主陛下と観鈴がお色直しのために一時退席する、とのアナウンスが流れた。二人が侍従に先導されて退室していく。それを見送っていた三人だったが、そこへ初老の男性が近づいてきた。
「失礼ですが、遠野美凪様、霧島佳乃様、川口茂美様でいらっしゃいますか?」
三人が顔を見合わせて頷くと、男性は頭を下げて言った。
「陛下と観鈴様がお呼びでございます。こちらへどうぞ」
蒼空宮内の一室
三人が通されたのは、会議室のような長いテーブルの置かれた部屋だった。そこには、既に茂美たちの知っている人物が揃って待っていた。
「にはは…お久しぶり、みんな」
黒いタキシード(あまり似合っていない)を着込んだ往人皇主陛下の横で、鮮やかなピンク色のドレスに身を包んだ観鈴が、満面の笑顔を浮かべていた。
「わぁ、観鈴ちゃん綺麗〜」
佳乃が正直な感想を漏らし、侍従が無礼な、と言うように怒った表情を佳乃に向けた。それに気付いた茂美は、皇族に対する最上級の敬礼を取り、改まった口調で言った。
「お久しぶりです、観鈴様」
まだ往人と観鈴は婚約した、と言うだけで、身分的には観鈴は民間人だ。よって、茂美がこのような口調ではなく友人として話しても、本当は全く問題ない。しかし、そういう建前で動かない世界もあることを茂美は知っていた。
「にはは…川口さん、そんな風に話さなくても良いのに」
観鈴が困った様な表情で言う。これに対し、茂美は「ですが…」と遠慮して見せた。
「普通に話そうよ。お友達でしょ?」
観鈴が重ねて言った。茂美は微笑んだ。これなら普通に話しても侍従は文句が言えない。彼女は一歩進み出て、観鈴に手を差し出した。
「お久しぶり、観鈴。それに、おめでとう」
「にはは、ありがとう」
二人の手がしっかり結ばれる。それを見て、佳乃と美凪も同じように手を重ねて婚約おめでとう、と口々に言った。
「まぁ、立ち話もなんだ。座ってくれ」
そこで初めて往人が口を開いた。頷いて、三人は向かいの席に座る。
「せっかく呼んだのに、全然話が出来なくてごめんね」
観鈴が謝る。三人に招待状を出したのは観鈴だったのだ。茂美だけは政府からの招待状も来たが、当然受付で出したのは観鈴から来た方である。
「ううん。それなりに楽しませてもらったわよ。ね、みんな」
茂美が言うと、佳乃と美凪も頷いた。
「それでまぁ、お色直しを口実にこういう場を設けさせてもらったわけだ」
往人が言った。茂美はおや?と思った。初めて会うはずなのに聞き覚えのある声だ。そして、ヤオビクニ基地がストーンヘンジの砲撃で破壊された日にウラハ基地に電話してきた男だと言う事に気がついた。
「陛下、失礼ですが…」
念のため茂美があのときの事を聞くと、往人は懐かしそうな表情で頷いた。
「あぁ、覚えているぞ。あの時は本当にエライ騒ぎだったな。まぁ、時間はかかったけど本当に助けてもらったわけで、感謝するよ」
往人はざっくばらんな口調で言った。
「いえ…出来ればもっと早く参上したかったのですが」
茂美は答えた。もっと早く、とは、往人も含めてストーンヘンジ関係者たちが軟禁されていたのを特殊部隊が救出した時の事だ。その時に脱出機をエスコートしたのはメビウス1とアクトレスの二人だったので、その話を聞いた茂美は「私も行きたかったのに…」としばらくボヤいた覚えがある。
「ははは、そう固くなるなよ。俺にも普通に話してくれてかまわないぜ」
笑う往人に、茂美は困った表情で「いや、あの…さすがにそういうわけには」と答えた。付き合いの長い佳乃と美凪はそれぞれに好きな呼び方で呼んで、また侍従に睨まれていたが、これは往人が睨み返して黙らせている。
「ともかく、いろいろと積もる話もあるだろう。ゆっくり聞かせてくれ」
こうして、5人は戦時中の話をいろいろと語り合った。やはり、茂美の戦いの話が多くなる。ストーンヘンジ空爆のときは、ちょっと佳乃の表情が曇った。彼女もプログラマーとして開発に参加していたからだ。
ファーバンティやメガリスで黄色中隊と渡り合い、それぞれ一機ずつを撃墜したときの話には、全員が感心した表情になった。黄色中隊の無敵ぶりは彼らも良く聞かされていたからだ。
やがて時間は過ぎ、時々往人と観鈴が会場に顔見せに行く以外は途切れることなく話に花が咲いていた。そして、佳乃がそろそろ3人が関心を持っていた事について尋ねた。
「それで、結婚式はいつに挙げるの?」
これには往人と観鈴は顔を見合わせ、ちょっと照れたような表情になった。
「いや…実はまだ決まっていないんだな。一応、しきたりとかで6ヶ月以内にはあるらしいんだが」
往人が答えた。そして、何かを思い出したように手を打つ。
「そうそう、その事でな、観鈴から川口さんにお願いしたい事があるとか言ってたよな」
往人が観鈴の方を向いた。
「…私に?」
茂美が言うと、観鈴は頷いてその「お願い」を口にした。それは、茂美を驚かせるに充分だった。
「ええっ!?う、うちで!?」
茂美が言うと、観鈴は手を組んで茂美を上目遣いに見た。
「ダメ?」
「だ、ダメなことは無いと思うけど…父さんがなんていうかな」
茂美は考え込んでしまった。第一、格式とかは大丈夫なのだろうか。
「とにかく、家に帰って相談してみる」
茂美にはそれしか言えなかった。
2006年9月8日 蒼空宮内の一室
その日、Air皇国の国民が待ちに待ったイベントが始まろうとしていた。婚約発表から約10ヶ月を経て、往人皇主陛下と神尾観鈴の結婚の儀が行われようとしていたのである。
婚約発表から今日まで、慣例を破って10ヶ月も結婚の儀が執り行われなかったのは、往人と観鈴の希望による。大陸全土に惨烈な被害を残した戦争の後で、家族や愛する者を失った国民も多い中、自分たちだけがさっさと幸せになることは出来ない。二人はそう言ったのである。
また、どちらも民間人だった時代が長いことから、皇室のしきたりや儀礼に慣れる為の勉強をしていたこともあった。しかし、それらもようやく終わり、とうとう本番の日を迎えた。この日はAir皇国の建国記念日にもあたり、国民にとっては二重の意味で祝賀すべき日となった。
「…お父さん、準備できた?」
蒼空宮内の控え室で、茂美は父に声をかけた。彼女は久しぶりに巫女装束に身を包んでいる。すると、神主としての正装をしっかりと着込んだ父がゆっくり振り返った。
「ああ…しかし、緊張するなぁ…」
「まさか、こんな大舞台を任せられるとは思わなかったもんねぇ…」
やや青い顔をした父に茂美も同意する。そう、今日の結婚の儀は伝統に則り神前形式で行われるが、その一切の進行を取り仕切るのが茂美の実家の神社に任せられたのだ。
突然田舎の神社に大役を任せたい、と言う希望を伝えられた宮内庁は一時大混乱に陥った。「前例がない」と言う文句を盾にそれを拒否しようとした宮内庁だったが、往人の
「前例がないって、俺自体が前例なしの塊みたいなものだろ。良いから気にするな」
と言う言葉に、しぶしぶ同意している。
しかし、調べてみると茂美の実家は建立800年を数え、国の守護神である神奈備命だけでなく、大陸を伝染病が襲ったときに命を捨ててこれを鎮めたと言う伝説の聖女、白穂比売命まで祭られている格式の高い神社であることが判明し、反対の声は霧散したのだった。
「そんな事言われても、うちが田舎神社であることに変わりはないがなぁ」
茂美の父はそう言って苦笑しながら、儀式に使う神具を持って歩き始めた。茂美も後につき従う。今日の彼女はAir空防隊の軍人ではなく、儀式の進行を補佐する巫女役だ。
「そう言えば、お前軍人辞めるんだったか?」
歩きながら父が言う。茂美は苦笑してその間違いを訂正した。
「辞めるわけじゃないよ。空防隊から近衛に転属するの」
Air皇国には陸海空の防衛隊の他に、皇室護衛のために近衛隊が存在する。と言っても、いわゆる儀杖兵やSP、侍従武官の役目を負う存在で、実戦部隊ではない。茂美は皇妃付けの侍従武官と、皇室専用機の操縦士を兼務する事が内定していた。
空防隊…特に療養を終え、参謀として復帰した佐久間や米屋は翻意を薦めたが、茂美は自分の意志でこれを通した。もちろん、空を飛ぶことは今も好きだ。しかし、飛ぶことは辛い戦いの思い出にも直結していた。いつかそれらを自分の中で消化し、精算できるまで、戦闘機の操縦桿を握りたくはなかった。また、茂美がそばに付いてくれる事は観鈴も喜んでくれた。
「そうか。まぁ、頑張れよ」
「うん。さ、そろそろだね。頑張ろう、お父さん」
父の激励に応え、茂美は長い廊下を進んでいく。それは、彼女の明日へと続いていく道のようにも見えた。
―完―
あとがき
と言うわけで、カノンコンバットONE シャッタードエアー外伝「翼の還る処」はこれにて全話完結です。
KCO本編ではたった一言しゃべっただけ、原作でも似たような扱いの川口さんを主人公にして、本編では語られることのなかった裏の事情や戦いを描写する、と言う本作の目的を、充分達成できた…かどうかは不安なのですが、書きたいことは全て盛り込めたので個人的には満足しています(笑)。
「翼の還る処」はこれで終わりますが、KCOの世界はまだまだ原作者U−2Kさんをはじめとする多くの優れた作家さんが魅力的な外伝を構想しており、ますます広がっていくものと思います。
最後にここまでお付き合いいただいた皆さん、素敵な川口さんwithF-2支援戦闘機のイラストを描いてくださった神奈備祐哉さん、そして誰よりもKCO世界の生みの親であり、外伝を書きたいと言う私の願いを快く了承してくださったU−2Kさんに限りない感謝の気持ちをこめて終わりの挨拶に代えさせて頂きます。皆さん、どうもありがとうございました。
2003年1月 さたびー
原作者U−2Kのコメント
長きに渡ったクラナド大陸戦争はISAFの勝利にて終結し、その勝利を勝ち取った人々には、報酬として平和を楽しむ権利が与えられました。
今回は茂美と、彼女と親しい人々の、ある日の幸せな情景です。
>やがて、誰からともなく肩を組んで国歌「鳥の詩」を合唱しはじめ、その歌声が全市にこだましていた。
ま、まさか……あの歌ですか?(驚愕)
だとしたら、すごいミステリアス、かつぶっちゃけた国ですね(爆)<Air皇国
あ、でも、もしAir国歌が我々の知るオリジナルの「鳥の詩」だったら、「飛行機雲」という単語があることから、制定は新しいのかもしれませんね。
>ISAF・Tactics両軍を通じて第六位、女性パイロットとしては第三位の27機撃墜を数え、Air空防隊に限れば間違いなく第一位の戦績である。
女性1位は黄色の4=長森瑞佳、というのはすぐにわかりますが……2位は七瀬?
だとしたら見えないところで頑張ってたんですね。文中では撃ち落とされてばかりだ(ZIPZIPZIP!「誰のせいよ、誰の!」と遠くから声)
>美凪が頷きながら白い封筒を差し出す。中身はクラナド大陸諸国共通お米券だ。
大陸共通とは……要は、KanonでもTacticsでも使えるということですね。
これが制定されたのはいつなのかわかりませんが、こういうものがあることからも、隕石災害以前の大陸が経済的にも強い結束をしていたことが窺えます。
>今も、上座の方でひっきりなしに訪れる賓客たちに笑顔で挨拶をしている。横に立っている母親の晴子がガチガチに緊張しているのと比べると雲泥の差だ。やはり、彼女もマイペースである。
想像すると何だか微笑ましい光景です(笑)。
しかし、晴子さんとてクラナド有数の頭脳の持ち主、Air国立大学工学部電磁物理学科教授、神尾晴子博士です。皇妃の母親という立場に緊張するのはともかくとして、祝賀会にいるのは別に不思議でもなんでもないですね。
>黒いタキシード(あまり似合っていない)を着込んだ往人皇主陛下の横で、鮮やかなピンク色のドレスに身を包んだ観鈴が、満面の笑顔を浮かべていた。
観鈴のドレス姿が麗しいことを疑うのは不敬になりますが(爆)、たとえ皇主になったとしても、やはり奴(これも不敬)に一番似合うのはステゴサウルスのTシャツではないかと(笑)。
>大陸を伝染病が襲ったときに命を捨ててこれを鎮めたと言う伝説の聖女、白穂比売命まで祭られている格式の高い神社
なんと……白穂さんまで神様になっていたのか……。
これなら確かに、小さいながらも伝統深い神社です。
やはり、茂美が生き残り、エースになったのもこのふたりの神様の守護があったからなのかもしれません。
さて、カノンコンバットONE シャッタードエアー外伝「翼の還る処」完結おめでとうございます。
私がKCOの本編を書き始めたときは、このような事態は全く想定していませんでした。
さたびーさんは私が最も尊敬するSS作家のおひとりでして、尊敬の念はかつて「SaToHeart」の企画で展開された「パシフィック・ストーム作戦」「ミッドウェイU」「ロシアン・クエスト」などの作品群を拝見するうちに生まれ、やがて確固たるものになって行きました。
しかし、当時それらの素晴らしいSSを読むだけだったこの凡人=自分が、まさかその方に自作SSの外伝を書いていただけるとは……。未だに信じがたいことです(笑)。
しかもそれは、本編でちょこっとだけしか登場しなかった川口茂美が活躍し、本編であまり触れていない部分を見事に補完、そしてKCO世界に新たな世界観を創り上げました。
執筆の早さ、クオリティの高さもまた特筆に値します。
さたびーさん。このような素晴らしい作品を書いていただき、また読むことができたこと、原作者として無常の喜びです。
本当にどうもありがとうございました。
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