丘を登っていくと、ますますその街の輪郭が露わになっていきました。周りにぐるりと逆茂木を植え込み、櫓の上には見張りらしき人もいました。こちらに弓を向けているのは確かで、危うい気はしたのですが、柳也さまには乗り切る自信がおありなのでしょう。ずいずいと進んでいきます。
 やがて、わたくしたちは門の前に辿り着きました。門番らしい、槍を持った男が威嚇するように穂先をわたくしたちに向けています。
「何もんだ、お前ら」
 唸るような男の問いに、柳也さまは堂々とした態度で答えました。
「旅の者だ。一夜の宿をお借りしたい。街の長か誰か、ここを仕切る者に取り次いではもらえまいか」


カノンコンバットONE シャッタードエアー

外伝 空の史劇

第二話 翼の夢



 そこは、草原の獣たちを狩り、毛皮を取ることを生業にしている人々の住む街……と言うよりは、小さな砦でした。話によれば、まもなく雨の多い季節がやってくると、草原は至るところで川が氾濫し、水浸しになるそうです。そうなる前にこの街についたのは、幸運なことでした。
 門番の人が呼んできた街の長……屈強な、どこかの兵といっても通用しそうな男でしたが……は、柳也さまと二言三言話すと、思ったよりも簡単に街へ入れてくれました。彼が言うには、最近商売敵の毛皮取りたちが出没して、良い狩場や水場を巡って戦いになっているそうです。それで、このような厳重な警戒をしているのだとか。
「そういう訳だ。まぁ、悪く思わんでくれ」
 長が意外にも腰の低い態度で頭を下げてきました。
「うむ……まぁ、そういうことなら仕方あるまい。それより、宿の方は貸してもらえるだろうか? 礼はこの程度しか出来ぬが……」
 柳也さまが銭の束を取り出すと、長はほう、と感心した口調で頷きました。
「それだけあれば上等よ。適当な空家を貸すから、好きに使ってもらっても構わぬぞ」
「忝い」
 柳也さまが頭を下げられました。わたくしも一緒になり、長に礼を言いました。
 そのままわたくしたちが連れてこられたのはつい数日前まで、狩人が使っていたと言う家でした。主は獲物を売りさばくため、既に西の方へ船で戻って行った、という事です。
 捕った毛皮を干してでもいたのか、家の中はむっとするような獣の臭いに満ちていました。一瞬ですが神奈さまも顔をしかめられていましたが、ずっと野宿をしてきたこの三月に比べれば、屋根があると言うだけで、ここは極楽のようなものです。それを思い返されたのか、明るい顔で言われました。
「なかなか良い家ではないか。のう、柳也どの、裏葉」
「うむ……」
 柳也さまは、どこか上の空と言った表情で答えました。それを感じ取ったのか、神奈さまが不機嫌な表情をされます。
「柳也どの、余の話を聞いておるのか?」
「む? ああ、済まぬ。聞いておるゆえそう膨れるな」
「嘘をつくでない」
 これだけなら、何時ものほほえましいやりとりとしか思えなかったでしょう。ですが、おそらく、柳也さまはこの時既に、その戦人としての勘で、何か予兆めいたものを捉えていたのかもしれません。

 そして、夜になりました。住人が引き払ったとはいえ、布団などは残されており、粗末なものでしたが、久しぶりに柔らかな布の上で眠れると言う事は、大変な贅沢のようにさえ思えます。
 ところが、布団を用意したのに、柳也さまは傍らに刀を引き寄せたまま、壁に体を預けておいででした。
「柳也さま、眠らないのですか?」
 わたくしが尋ねますと、柳也さまは頷かれました。
「もう少しな。ちょっと考え事をしている所だ。裏葉は俺に構わず寝ると良い。そいつのようにな」
 柳也さまの視線の先では、神奈さまが既に熟睡しておられました。
「むにゃ……くぅ〜〜〜」
 こうしていると、とても生き神として祀られ、あるいは畏れられているお方とは思えません。思わず笑みがこぼれます。
 そうしていると、急に旅の疲れが押し寄せてきて、わたくしはそのまま眠りに引き込まれていきました。

 ですが、眠っていられたのは、そう長い時間ではありませんでした。
「裏葉、起きろ。裏葉」
 そんな声と共に、身体が揺さぶられました。柳也さまです。
「柳也さま、夜這いの相手を間違えるとは、なんと益体の無い」
 わたくしは言いました。この時、わたくしはまだ何が起きているのか、正確には認識しておりませんでした。
「そのような戯言を言っている場合ではない。囲まれている」
 真剣な声に、わたくしの眠気も消え失せました。全身の感覚を研ぎ澄ませますと、家の周囲にかなりの気配を感じます。元よりわたくしは柳也さまのような武人ではありませんが、ここ三月の間、獣たちの徘徊する場所を潜っているうちに、いくらかなりとも修練を積む事が出来たようです。
「何者でしょうか?」
 小声で尋ねると、柳也さまは首を横に振りました。
「わからぬ。が、ろくなものではあるまい」
 柳也さまはそう答えると、神奈さまの口を手で抑え、軽く揺り動かしました。
「む……む〜?」
 目を覚まされた神奈さまですが、口を押さえられているので、声が出せません。柳也さまは耳元に口を近づけて囁かれました。賊がいる、とでも話したのでしょう。神奈さまが真剣な表情になられました。
「神奈と裏葉は納戸にでも隠れているんだ」
 柳也さまはそう言って、太刀の鞘を払いました。ですが、外の賊は十数人はいるでしょう。高野山の僧兵ほどな手練れはいないようですが、この数ではいくら柳也さまでも、苦戦は必至と思います。わたくしは荷物を引き寄せ、懐刀を取り出しました。
「裏葉」
 柳也さまが厳しい声を出しますが、わたくしも引く気はありません。
「神奈さまと貴方様の背中は、わたくしがお守りします。なれば、存分に賊の輩を成敗なされませ」
 わたくしはそうきっぱりと言いました。柳也さまはしばし困った表情をされましたが、苦笑いをすると、刀に一振りくれて気合を入れられました。
「わかった。頼むぞ、裏葉」
「はい」
 わたくしは懐刀を抜き、頷きました。すると、神奈さまが柳也さまに言われました。
「柳也どの。不埒者どもとはいえ、命を奪う事はまかりならぬぞ」
 それは、かつて高野の山中で神奈さまが命じられたことでした。
「むろん、覚えているさ」
 柳也さまはそう言うと、おもむろに戸を開け放ちました。今まさに踏み込もうとしていた賊が、機先を制されてたたらを踏みます。柳也さまは無造作にその腹を薙ぎ、返す刀で首筋を打ち据えました。ものも言わず、賊が倒れます。
「胡乱な奴輩どもめ、何用か!」
 戦人の気合を込めた一喝と、見せたばかりの妙技が、賊どもの動きを制しました。凍りついたようになった彼らですが、その中で一人だけ、柳也さまに気合負けしていない男がいました。
「大人しくすれば命までは取らんぞ。女どもを渡しさえすればな」
 その声には聞き覚えがありました。
「長か。自ら夜中に賊の真似事とはご苦労な事だ。それとも、槻の国の手先か?」
 柳也さまが詰問すると、賊の長――街の長でもあります――は首を傾げました。
「槻の国? 何の事だ。わしらはただ女どもに用があるのよ」
「そうだ。上玉を二人も囲うとはいい身分じゃねェか。俺たちにもお裾分けを寄越せ!」
 夜闇の中でも、賊どもの目が血走ってぎらぎらしているのがわかりました。考えてみれば当然と言う気もしますが、このような男しかいない場所に、女子が二人来たのです。どのような手を用いでても、手篭めにしてくれようと考えるのは、自然な成り行きかもしれません。
 もちろん、わたくしは彼らのような者たちに身を委ねる気はありませんし、それは柳也さまも同じです。
「あいにく、俺とあの二人の間に、お前たちが思うような事はない。が、渡す気もないな」
 そう言うと、柳也さまはすっと刀を構えました。
「お前たちの中に、老いた親、幼き子、妻や妹(恋人)がいる者は刀を引け。さもなくば容赦なく斬り捨てる」
 実際には斬る事はなくても、太刀で殴られれば、並みの人間は骨を砕かれ、動く事すらままならぬ目に遭う事になるでしょう。柳也さまの気迫ははったりではありません。賊たちも、腕っ節には自信があるのでしょうが、柳也さまのように武人としての修行を積んだわけではありませんから、それに押されてたじろぎます。
「ええい、お前たち何をびびってやがる! 殺れ、殺っちまえ!!」
 苛立ったのか、長が叫びました。その声に押されるようにして、三人の賊が柳也さまを取り囲むようにして襲い掛かりました。
「柳也どの……!」
 神奈さまが悲鳴をあげかけた時、すっと柳也さまが動きました。賊のそれとは違い、無駄のない……まるで舞のような体捌きで刀を振るいます。次の瞬間、悲鳴すらあげずに賊たちは地面に崩れ落ちていました。
「……な!?」
 賊たちが動揺します。柳也さまの強さが想像を超えたものだったからでしょう。実を言えば、わたくしも驚いていました。三年間剣を握っていなかったと言うのに、柳也さまの武は、高野山の時のそれよりも、さらに精妙なものになっていたからです。
「これ以上はやめておけ。お前たちの腕では、俺にはかなわぬ。今なら何もなかったことにしてやれるのだがな」
 柳也さまはそう言いながら、更に一歩進み出ます。
「く、くそっ!」
 長が何かを取り上げました。矢のつがえられた半弓です。柳也さまとの距離は、ほんの十歩ばかり。もし矢が放たれたら、とてもよけられる距離ではありません。
「柳也さま!」
 わたくしは叫びました。しかし、柳也さまはそんなものはなんとも思っていませんでした。
「はっ!」
 長が矢を放つより早く、柳也さまは一気に踏み込み、横薙ぎに太刀を振るわれました。次の瞬間、長の手にしていた半弓は真っ二つに断ち切られ、あっさり地面に転がります。
「な……」
 呆然とする長。ようやく気付いたのかもしれません。目の前の柳也さまが、自分たちとは桁の違う強き武人であることに。
「もうやめておけと言ったはずだが?」
 柳也さまが刀を下げた格好で言いました。ですが、隙がありません。たじろぐ賊たち。このままわたくしたちの勝ちか、と思いました。
 そこに油断があったことは否めません。突然、地面に倒れていた賊の一人が起き上がり、わたくしたちに襲い掛かってきたのです。
「え……きゃあっ!?」
 不意を討たれ、わたくしは懐刀を使う暇すら与えられませんでした。手にしていたそれが弾き飛ばされ、腕を乱暴に掴まれてしまいました。わたくしにできた精一杯の事と言えば、神奈さまを部屋の隅に突き飛ばして、賊の刃の届かぬ距離に押しやれた事でしょうか。
「裏葉!?」
 賊たちに隙を見せないように振り向いた柳也さまとわたくしの目があいました。
「動くな。動けばこの女の命はないぞ!?」
 賊が言いました。その刀の切っ先は、わたくしの喉に突きつけられています。
「無礼者、裏葉を放せ!」
 神奈さまもわたくしのことを心配してくださっています……それだけに、このような不甲斐ない仕儀になった事を申し訳なく思いました。
「形勢逆転だな、旦那」
 長がにやにやと卑しい笑みを浮かべて、柳也さまを見ました。
「刀を放して大人しくしていれば、命までは取らんぞ?」
「く……」
 柳也さまが逡巡しているのがわたくしにもわかりました。ですが、このままではわたくしたちは賊の手に落ち、柳也さまも殺されないまでも、奴婢の類に身を落とされてしまうのは確実です。
「柳也さま、駄目です! わたくしには構わないでください!」
 わたくしは叫びました。ここで一番正しいのは、わたくしを見捨ててくださる事です。そうすれば、柳也さまは自由に戦う事ができるのですから。
「しかし……!」
 柳也さまが歯噛みされています。わたくしの事を案じてくださるのは……それはとても嬉しいのですが、大事な事は神奈さまの御身を守る事であって、そのためならばわたくしなど捨石になっても構わないのです。
 それでも柳也さまがわたくしのために迷うと言うのであれば……
「裏葉、いかん!」
「裏葉!!」
 神奈さまと柳也さまが口々にわたくしの名を呼んでいます。これから何をしようとしているのか悟られたようです。ですが、もう止まりません。わたくしは目を閉じ、自ら賊の刃に向かって……
 ですが、襲ってくるはずの喉を貫かれる痛みは、何時までたっても襲ってきませんでした。
「え?」
 わたくしは目を開けました。すると、賊はどういうわけかわたくしの足元に倒れこんでおりました。そして、その横には天秤棒のようなものを担いだ、屈強な男が立っておりました。
「いかんなぁ、何の騒ぎかと来て見れば……」
 男が言いました。わたくしは、その声に聞き覚えがありました。もちろん、神奈さまと柳也さまにも。
「お主……」
「なぜここに?」
 お二人の問いかけに、男はにやりと白い歯を見せて笑いました。

 翌日、わたくしたちは川を下っていました。
「こうして船に乗るのも久しぶりじゃな」
 神奈さまがまた舳先ではしゃいでおられます。
「神奈、そのようにはしゃいでいて、川に落ちても知らぬぞ」
「何を言うのじゃ。余はそのようなへまはせぬ」
 いつか聞いたような会話に、わたくしは思わず吹き出しそうになりました。それをごまかすため、わたくしは横に立っていた夕べの恩人に頭を下げました。
「あのように益体もない話ができるのも、貴方様のお陰。まことにありがとうございました」
「ははは、気にするな」
 恩人は豪快に笑いました。それを聞きつけ、柳也さまがこちらを振り向きました。
「それにしても、あなたに助けられるのはこれで二度目だな、船長」
 そう……恩人は三年前にわたくしたちをこの「蓬莱ノ地」まで運んでくれた、あの船長だったのです。
「まさに奇遇だな」
 船長は頷きました。彼の話によると、この季節は夕べ泊まろうとした狩人たちの砦に食料を届け、獲物や狩人たち本人を西の湊まで運ぶ仕事をしているのだそうです。毛皮は大和の国や唐土まで持っていけば相当な稼ぎになるとか。
「それで、昨日はたまたま食料を運んできてたんだが……あの騒ぎだろう? 何かと思って外に出たら、見知った顔があったもんだから、つい手が出ちまった」
 船長が笑います。あの後、彼がわたくしたちの身柄を預かる事を宣言し、文句があるなら今後お前たちの仕事は請け負わない、と言うと、賊はすごすごと引き下がっていきました。船長の船が命の糧を運んでくれるとなれば、それも当然でしょうが。
「ですが、今後あそこでの仕事はやりづらくなるのではありませんか?」
 わたくしが懸念を口にすると、船長は首を横に振りました。
「かまわんさ。俺はあんたたちが気に入ってる。それに、一度運んだ荷物がちゃんと扱われているかどうか、確認するのも船長の仕事さ」
「船荷か、俺たちは」
 柳也さまが苦笑しています。
「たいして変わらんさ」
 船長はひとしきり笑った後、真面目な顔になりました。
「それは冗談としても、どの道この仕事は続けにくいだろうな。あの湊が槻の国に押さえられてから、取引は先細る一方でな」
 あの湊……わたくしたちが初めて「蓬莱ノ地」に来た頃はあれだけ栄えていた街も、今はすっかり寂れてしまったそうです。槻の国の王……「槻の高台(うてな)」の意で「高槻」と呼ぶそうですが……は、尾根の国との戦のため、湊にも莫大な矢銭(軍資金)を上納させるなど、ずいぶん横暴な事をされているそうです。
「今じゃあの辺りはひどいもんさ。あんたたち、逃げ出して正解だったよ」
 柳也さまは「そうか……」と呟くように言いました。即座に逃げ出した自分の判断が間違っていなかったと知って、安堵されているようです。
「ところで……」
 話を変えて船長が切り出しました。
「あんたたち、どこまで行くんだ?」
「南の方の土地が暖かくて良いと聞いている。そこまで行こうと思っていたが……」
 柳也さまが答えると、船長はそうか、と頷きました。
「じゃあ、望みの土地まで送っていってやろう。どこでも好きな場所で降ろしてやるよ」
「良いのか? 銭はないぞ」
 柳也さまが驚いた声で言うと、船長は笑みを浮かべて首を縦に振りました。
「言っただろう。俺はあんたたちが気に入ってると。それに、この先は女連れで歩いて越えられる場所じゃない」
「そうか……すまん、厄介になるぞ」
「ありがとうございます、船長」
 柳也さまに続いて、わたくしも頭を下げました。

「女連れでは越えられない」と言う船長の言葉の意味は、しばらくして良くわかりました。陸地に沿って進むと、すぐに緑が尽き、岩だらけの荒地が広がっていたのです。ここから見る限り、草木一本見えません。地獄の賽の河原とは、このような場所なのではないでしょうか。
「南に行く連中が一番難儀するのが、この荒地だそうだ」
 と言う船長の言葉に、わたくしたちは納得せざるを得ませんでした。
 そんな荒地に沿って進む事数日。ある夜、わたくしは気配を感じて目を覚ましました。見ると、横で神奈さまが身を起こしておられました。
「どうなさったのですか? 神奈さま」
 わたくしが声を掛けると、神奈さまは、ぼうっとした口調で答えられました。
「夢を見たのじゃ……」
「夢?」
 わたくしが問い返すと、神奈さまはまだ夢の続きを見ているような声で答えられました。
「そうじゃ。奇妙な夢じゃった……大地に八本の首を持つ龍がうずくまっていて、盛んに炎を吐いておった。その火の玉が、西や南の空に向けて飛んでいって、そこを飛んでいる鳥たちを追い散らしていたのじゃ」
 確かに、それは奇妙な夢です。それも、あまり吉兆とは思えません。
「裏葉……余はなんだか不安なのじゃ。このまま南に向かっても大丈夫なのであろうか?」
 わたくしも不安に襲われました。神奈さまは翼人です。生き神に等しいお方です。そのお方の夢ともなれば、軽々しく扱うわけにも参りません。
 ですが、今のわたくしたちには、南へ向かう以外の道はないのです。わたくしは神奈さまを抱きしめました。
「わかりません……ですが、神奈さまには柳也さまとわたくしが付いております。何があろうと、神奈さまを守って見せます。どうか、心安んじられませ」
「裏葉……そうじゃな。おぬしたちがおるなら、龍であろうと鳥であろうと恐ろしゅうはないな」
 神奈さまが微笑まれました。ですが……わたくしの方は、一度覚えた不安をなかなか打ち消す事が出来ずにいました。
 波路はいまだ遥かに続いておりました。

(つづく)


原作者のコメント


 さて、神奈さま一行が安住を求めて渡って来た「蓬莱ノ地」=クラナド大陸でも、彼らは再び逃避を始めなければならなくなりました。
 その途中、立ち寄った集落にもただならぬ危険が待ち受けていたのでした……。

>呆然とする長。ようやく気付いたのかもしれません。目の前の柳也さまが、自分たちとは桁の違う強き武人であることに。
 さすがに強い。後の世で、Air陸防隊の特殊部隊――皇立特務連隊にその名が冠されるだけのことはあるというものです。

>そう……恩人は三年前にわたくしたちをこの「蓬莱ノ地」まで運んでくれた、あの船長だったのです。
 義理堅く、良い男、いや漢のようです。現代で言う「シーマンシップ」を見事に具現化しているというか。
 彼ももしかしたら、KCO本編で登場している誰かの先祖なのかもしれませんね。
 
>槻の国の王……「槻の高台(うてな)」の意で「高槻」と呼ぶそうですが……
 やっぱり「俺は参ったああああああっっ!」とか叫ぶんでしょうかね?(笑)
 で、その子孫は戦艦ファーゴの艦橋で戦死する運命なのでしょうか。

>「そうじゃ。奇妙な夢じゃった……大地に八本の首を持つ龍がうずくまっていて、盛んに炎を吐いておった。その火の玉が、西や南の空に向けて飛んでいって、そこを飛んでいる鳥たちを追い散らしていたのじゃ」
 これは……ストーンヘンジのことですね。
 元々は隕石迎撃用として造られた巨砲。しかし運命は彼を翻弄し、鳥を襲う悪龍へと変えてしまいました。神奈さまはそんな悲しい宿命を垣間見たのでしょうが、それにしても1000年先の予知夢とは……。

 思わぬ再開を果たした船長の機転で難を逃れ、さらに南を目指す神奈さま一行。苦難の旅はまだまだ終わりそうにありません。
 この後、彼らをどんな出来事が待ち受けているのか。それはまさに「神のみぞ知る」でしょう。



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