水平線の向こうに、緑の山並みが遠ざかっていきます。そのどこかに、わたくしたちが長い年月を過ごした、あの隠れ社があるのかもしれません。
「これで……大和の国も見納めですね」
 わたくしが言うと、傍らに立っていた柳也さまが頷きました。
「そうだな……このような長い旅になるとは思いもしなかったよ」
 長い旅……そうです。隠れ社が都の貴族が放った軍勢の襲撃を受け、燃え落ちて以来、わたくしたちはずっと旅をして参りました。それも高野山に着いた時に終わったと思っていたのですが。
 高野山。その単語を思い出した途端に、心のどこかが痛むのをわたくしは感じました。
 わたくしは……主の願いを叶えてやる事ができませんでした。それどころか、こうして逃げるように生まれ育った地を離れなければならない。これから向かう土地は、大和の国にも負けない良き土地だとは聞いておりますが、それでも見知らぬ土地に向かうのには不安があります。
 いえ、わたくし一人の事であれば、さほどのことも無いでしょう。ですが、わたくしには守り、お仕えせねばならぬ方がいます。その大事なお方を、遠い外つ国へとお連れせねばならないのです。
「柳也どの〜、裏葉〜、何をしておるのじゃ」
 その時、船の舳先から、明るい声が聞こえてきました。
「神奈、そのようにはしゃいでいて、海に落ちても知らぬぞ」
 柳也さまが言いました。言われた神奈さまは、たちまちむくれた顔になられました。
「何を言うのじゃ。余はそのようなへまはせぬ」
 いつもながら思うのですが、神奈さま……わたくしの最愛の主……は、むくれた顔も愛らしゅうございます。その顔を見て、無意識に笑っていたのでしょうか。柳也さまが、微笑みながらわたくしを見ていました。
「裏葉、少し明るい顔になったな。まぁ、いろいろあったが、ともかく我らは生き延びたのだ。前を向いて歩こうじゃないか」
 わたくしは頷きました。柳也さまの言うとおりです。わたくしたちは今生きています。神奈さまの母君さまの御遺志にお答えするためにも……前に進まなければ。
 ご挨拶が遅れました。わたくしの名は裏葉。生き神とも言うべき「翼人」の末裔、神奈備命さまにお仕えする侍従にございます。ですが、様々な事情から今は追われる身となり、遥か海の彼方の新天地を目指して落ち延びる旅の途上にあります。
 その国……「蓬莱ノ地」。そこに、何が待っているのでしょうか……?

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外伝 空の史劇

第一話 蓬莱ノ地


 船旅は順調に進みました。船長(ふなおさ)も、「このように日和の良い航海は珍しい」と驚いていたくらいです。わたくしは、これはきっと母君さまの加護があったのではないかと思いました。
 そうした中で、あの柳也さまが、外海に出てからしばらくして、真っ青な顔で倒れたときには、さすがのわたくしも驚きました。船長によると、いわゆる船酔いと言うもので、病ではないそうです。
 ですが、床に横たわったまま、青い顔をして喘いでいるお姿は、とても屈強な高野山の僧兵たちを敵に回して、獅子奮迅の働きをされた方とは思えぬ体たらく。
「柳也さま、なんと益体の無い」
 思わずわたくしが言いますと、柳也さまはきれぎれに申されました。
「そ、そうは言うが……苦しいのだぞ。うぷ……な、なぜ……俺だけが……」
 そうなのです。神奈さまもわたくしも、船酔いにはかかりませんでした。
「日頃の行いのせいであろう」
 神奈さまが楽しそうに仰います。柳也さまがお倒れになったときは、それはもう世も末かというほどの嘆きようでしたのに。きっと、可愛さあまって憎さ百倍、と言うところなのでしょう。
 ……何かが違うような気もいたしますが。
 もっとも、航海も3日目になりますと、柳也さまもようやく慣れたのか、起き上がれるようになり、わたくしたちも一安心いたしました。この頃には船も黒瀬川(黒潮)に乗り、時には海豚が船の周りを泳ぎまわって、神奈さまの旅の無聊を慰めてくれる事もありました。
 海に出てからおよそ半月。それまで青黒かった海が、次第に緑色に変わってきました。船長によると、これが「蓬莱ノ地」の岸辺に近づいた証なのだそうです。そろそろ船に飽きていた神奈さまも、黒瀬川と親潮の潮目を越えるとき、またしても船が揺れて、酔いがぶり返していた柳也さまも、この報せに元気を取り戻されました。
 船がいよいよ「蓬莱ノ地」に着いたのは、海が緑色になって二日後の事でした。船長が船をつけたのは、わたくしたちが乗船した泊よりも、もっと大きな湊町です。
「意外に栄えているんだな」
 柳也さまが、その賑わいに目を見張られました。わたくしたち同様、大和の国から来たと思しき人々も多く見られますが、明らかに唐土(もろこし)の人や、あるいは南の島々に住むという肌の赤い人々も、多く泊とその周りの市にたむろしています。
「祭りのように賑やかじゃな」
 神奈さまが目を輝かせておられます。わたくしも少々驚いておりました。「蓬莱ノ地」と言えば、誰もが一度はその名を聞いた事があるとは言え、こうして海路を一月近くも掛かる場所。人が住み、それなりの暮らしを営んでいると聞いてはいましたが、半ば化外の地であることを覚悟していたのですから。
「初めて来る者は、大体驚くよ」
 船長が言います。この地へ大和の国から人々が来るようになったのは、実は数百年前にまで遡る話なのだそうです。古くは、蘇我氏に敗れた物部の一族。その蘇我氏もやがて新興の藤原氏に追われ、この地へ来た者たちもいたそうです。彼らはやがてこの地に自分たちの国を作るようになったとか。船長はまるで自分が見てきたように、大和を追われ、この地に生きるよすがを求めた人々の話をしてくれました。
「見たところ、あんた方も大和にはいられなくなったようだが……やはり藤原の?」
「まぁ、そのようなものですね」
 船長の問いに、わたくしは答えました。神奈さまを討たんとした都の公卿たち。その筆頭は今をときめく関白藤原兼家どのですから、あながち間違いでもありますまい。
「そうか。まぁ、今ここまでやってこようと言う連中は、だいたいあんた方と似たような境遇だから、驚きはせんがね」
 船長が笑いました。その笑顔は、ここなら誰でも過去のしがらみにとらわれずに生きていく事ができる、だから安心しろ、と言っているように思えました。
「そうか。世話になったな、船長」
 柳也さまが、僅かな荷物を抱えて船室から上がってこられました。
「大儀であった。余は船に乗るのは初めてであったが、楽しかったぞ」
 神奈さまも船長に礼を言いました。ですが、ここでこれから生きていくには、もう少し普通の言葉遣いを学ばせるべきかもしれませんね。
「良いって事よ。達者で暮らすんだぞ」
 船長の豪快な笑いに送られ、わたくしたちは久しぶりに動かぬ陸を踏みしめました。市の喧騒に包まれながら、わたくしは言いました。
「ここならば、生きていくのに不都合はなさそうですね」
 柳也さまが頷かれました。
「うむ。だが、仮に他の人間がいなくとも、神奈を守って生きていく事はできよう。俺と裏葉がいれば」
 その「俺と裏葉がいれば」と言う言葉を聞いたとき、わたくしは心の臓が高鳴るのを感じました。
 何故なのでしょうか……
 
 
 わたくしたちが蓬莱ノ地に着いてから、二年ほどの時が流れました。
 この地は、大和の国よりもずいぶん広く、誰のものとも定まっていない土地が多くありました。無主と言っても、それほどの田舎ではなく、あの湊町から歩いて半日ほどの、山のふもとにある土地です。わたくしたちはそうした土地に小屋を掛け、畑を耕す暮らしをはじめました。
 柳也さまは刀を鍬に持ち替え、懸命に働かれました。あまり豊かな土地とは申せませんが、三人が糧を得るには十分でした。収穫を湊町に持っていき、ささやかながら収入を得る事もできたほどです。
 神奈さまは健やかに成長され、美しい女性になりつつあります。わたくしが料るのを見様見真似で手伝ううちに、その腕もお上げになられました。柳也さまとお似合いの夫婦になられる日も近いのではないでしょうか。
 その事を考えると、わたくしは寂しい気持ちになる一方で、なんともいえない胸の疼きを覚えます。神奈さまは柳也さまを好いておられますし、柳也さまも、相変わらず煮えきらぬ態度なのは、本当に益体も無いお方だと思いますが、神奈さまを嫌ってはいないはずです。
 それなのに、柳也さまが神奈さまのお気持ちに応えようとしないことに、どこか安堵するのは、何故なのでしょうか。
 手塩に掛けた娘を嫁がせる母の気持ち、なのでしょうか。
 いえ、これはそう言うものでは……
 
 その事について考え出すと、気持ちが沈みます。別の事を考えましょう。
 今わたくしたちが住んでいる辺りは、何処の国にも属さない場所です。あの湊町には、港の長や多くの船を持つ網元、大店の主などが談合で方針を決める寄り合いがあるそうですが、そう言うのは国の仕組みとはいささか勝手が違いますね。
 ですが、もっと北のほうに行くと、いくつかの村や町を治める大身の豪族たちが割拠しているそうです。その中でも、特に大きな二つの領主がいて、それぞれ「槻の国」「御根の国」と名乗っているとか。国と言っても、ほとんど山賊のようなもので、まともな国とは申せないそうですが。
 湊町で、その事に詳しい商人に聞いたところでは、槻の国はかつての物部、御根の国は蘇我の一族の末裔が治めているとかで、非常に仲が良くなく、弓矢の沙汰になる事も珍しくないそうです。無理も無い事とは思いますが、せっかく逃れてきたこの広い土地で、相も変わらず戦に明け暮れているというのは、どうなのでしょうか。
 柳也さまは「では、あまり北へは行かぬ方が良いな」と仰っていました。別段用事はありませんが、戦に巻き込まれる危険は犯さないに越した事はありません。
 ……ですが、戦の方から近づいてくる事までは、止めようがありませんでした。

 三年目の春、いつものように湊町へ行ったわたくしは、町を覆う不穏な空気に気が付きました。これに近い雰囲気は……そう、隠れ社に都の軍勢が迫ったときに感じています。わたくしは旧知の商人の店を訪ないました。
 彼はいささか腰の定まらない様子でした。事情を聞くと、槻の国がこの町の近郊まで勢力を拡大してきており、談合衆に支配下に加わるよう強談判に及んだと言う事でした。
 それだけならば、わたくしもそれほど気には留めなかったかもしれません。ですが、続いて商人から聞いた話は、とても聞き捨てにはできないものでした。
「槻の国の領主は、三年前に夫婦者が連れて来た、黒髪の美しい娘を探しているらしい」
 という噂です。
 わたくしと柳也さまはもちろん夫婦ではありません。しかし、世間にはそう見えるかもしれない、と言うのも確かです。
 いえ、正直に申し上げますと、わたくしはそうした誤解を受ける事を楽しんでおりました。もとより、わたくしの身は神奈さまのために捧げております。並みの女としての幸せを求めるつもりはありません。ですが……少しくらいは、そうした夢を見ていたかったのです。
 ともかく、これは抜き差しならない事態と言っても良いでしょう。神奈さまが市で遊ぶのを気に入っておられるため、わたくしと柳也さまは、よく神奈さまを連れて市に行っていました。当然、この湊町で、槻の国が求めている条件に合う娘が神奈さまであることは、多くの人々が知っています。わたくしは買い物を切り上げ、急いで小屋に戻りました。

「裏葉、どうしたのじゃ。そのように血相を変えて」
 戻ってきたわたくしは、ずいぶん顔つきを変えていたようです。夕餉の支度をしていた神奈さまが不審そうな顔をされました。
「いえ、何でもありませんよ。それより、柳也さまは?」
 わたくしの問いに、神奈さまは裏の戸口の方を向かれました。神奈さまが口を開くより早く、木を断ち割る軽やかな響きが聞こえて参りました。どうやら、薪割りの最中だったようです。わたくしは神奈さまに頭を下げ、裏の戸口からもう一度外に出ました。
 はたして、柳也さまは諸肌脱ぎの格好で、鉈を振るっておられました。わたくしが傍によりますと、柳也さまは汗を手で拭ってわたくしの方を向きました。
「裏葉、いかがした?」
 表情が戦人のそれになっています。わたくしの表情から何かを察する所があったのでしょう。手短に事情を話しますと、柳也さまは難しい顔つきになりました。
「……一刻の猶予もないな」
 ややあって、柳也さまは決断を下しました。
「この庵を引き払う。今宵のうちにも出立するぞ」
 わたくしは驚きました。状況が切迫しているとは思っていましたが、柳也さまの考えは、わたくしの更に上を行っておられました。
「槻の国の者はあまり良い評判を聞かぬ。そのような者たちが神奈の力を欲するからには、ろくな目的ではあるまいよ」
 柳也さまはそう仰ると、すぐに旅支度を命じられました。わたくしは小屋に戻ると、神奈さまを呼び止めました。
「なんじゃ、裏葉。余も暇ではないのだぞ?」
 夕餉の支度を度々遮られ、ご機嫌斜めのようですが、わたくしも事情が事情ですから、怯んではいられません。神奈さまに噂の事と、今宵の内に別天地を目指して旅立つと言う事を申し上げました。
「なんと……」
 神奈さまは驚き、そして寂しげな顔になられました。
「三年……三年も過ごしたのだぞ。それなのに、また追われるのか。余に安住の地はないと申すのか?」
 それは悲痛な声で、わたくしは申し訳ない気持ちで一杯になりました。このような理不尽な定めに神奈さまが悲しみ、憤られる気持ちは良くわかります。ですが、黙って槻の国の者に神奈さまを囚われるわけには参りません。
「神奈さま、柳也さまとわたくしがいる限り、けっして神奈さまを悪しき者どもの手には渡しませぬ。必ず、心安んじて暮らせる所までお連れします。どうか、どうか……」
 わたくしは頭を下げました。神奈さまは首を横に振りました。
「そのような事をせずとも良い、裏葉。余とてまた隠れ社に閉じ込められる事など望みはせぬ。参ろうではないか、新たな地へ……」
「はい、神奈さま」
 わたくしは頷きました。その時に改めて思ったのでございます。
 このお方のためならば、例え生命を捧げる事になったとしても厭いはしない、と。

 旅の準備は、月が沖天にかかる頃には整いました。わずかばかりの銭や、道中をしのぐ為の糒(ほしいい)、干し魚などの携行食。柳也さまは3年ぶりに刀を腰に帯びられました。かつて高野山の山道で僧兵たちを尽く打ち倒した武人の精悍な面影が、鮮やかに蘇りました。
「ふ、稽古は怠っていないが……出来ればこれを使うような羽目にはなりたくないものだ」
 そう言って、柳也さまは囲炉裏の傍で何かの細工をすると、わたくしたちの方を向きました。
「では参ろうではないか、神奈、裏葉」
「うむ」
「はい」
 わたくしたちは頷くと、そっと夜の中へと歩み出ました。
「柳也どの、どちらへ参るのだ?」
 神奈さまの問いに、柳也さまは南の方を指されました。
「北の方は槻の国があり、東の方は人の往来が盛んで、遠くまで我らの噂が伝わっているやもしれぬ。まずは南へ向かおう。こちらにはあまり人の手が入っておらぬそうだからな」
 港の船乗りたちに聞いた噂では、この蓬莱の地の南の方には緑の生えぬ不毛の地が続いている、と言う事です。そのような所へ神奈さまを連れて行って大丈夫なのかと思いましたが、ここは柳也さまの判断を信じるべきでしょう。高野山へ向かった時も、幾度となく柳也さまの指示がわたくしたちを救ったのですから。
 南へ向けて、わたくしたちは歩き出しました。一刻ほど過ぎた時でしょうか。山道を越えるところで、わたくしはそれに気付きました。
 闇の中の赤い光。炎です。わたくしたちが三年を過ごした庵が赤々と燃え上がっていました。
「柳也どの……、あれは!」
 神奈さまの叫びに、柳也さまは頷きました。
「囲炉裏に油壷を埋めたのだ。これで庵が焼けているのを見れば、追手も迷おう」
 それは武人としての策だったのでしょうが、わたくしはもちろん、神奈さまも思い出していました。あの忌まわしい夜を……隠れ社が焼かれた日のことを。炎に追われ、為す術もなく必死に逃げ延びたあの時の事を。
「大丈夫だ。今度はあのような事にはならぬ。俺が刀にかけて誓う」
 柳也さまは力強く仰いました。その声に、神奈さまの身体の震えが止まっていきました。

 幸い、追手がかかる事もなく、わたくしたちは南へ下りつづけました。二月ほどもたつと、最初は至る所にあった鬱蒼とした森は姿を消していき、またいくつかあった街や村も見られなくなり、代わって背の低い潅木が点在するだけの広い草原がわたくしたちの前に現れました。そして、暦の上ではもうそろそろ冬に入っても良い頃であるにも関わらず、少し動くと汗ばむほどの暑さが待っていました。
 このような土地も気候もわたくしたちには初めての経験でしたが、それより恐ろしいのは、草原に徘徊する獣たちでした。
 中には鹿や猪もいて、柳也さまも獲物には困らない様子でしたが、大和の国では毛皮になった所しか見た事のない豹や、それに良く似た大きな猫のような獣が隙あらば襲ってこようとしていたのです。
 一晩中火を焚き、時には大声で歌うなどして獣たちを脅しながら、わたくしたちは何とかその草原を進み続けました。そして、庵を捨てて三月目の出来事でした。
「柳也どの、裏葉。あれは街ではないか?」
 川を渡り、小さな丘を超えた所で、神奈さまが前方を指されました。
「何、どこだ?」
 柳也さまはその方向を見ました。わたくしも当然それに参加します。するとどうでしょう。
 確かに、小さな街がそこにはあったのです。草原を横切る川が二筋合流する所に面した、ちょっとした高台の上に築かれた、街と言うよりは村に近い規模の家々の集まりでした。
「今宵は久々に屋根のあるところで眠れそうだな」
 柳也さまはそう言って笑いました。わたくしも安堵しました。地獄に仏とはこの事だと思ったものです。
 ですが……そこは仏の住む街などではなかったのです。

(つづく)

原作者のコメント

「カノンコンバットONE」原作者のU−2Kです。

 これまで謎とされていましたが、ついに今明かされる、Air皇国建国秘話!
 背に翼を持つ「翼人」を皇祖とする、クラナド大陸最古の統一国家。その1000年の歴史の始まりを、この度さたびーさんが有り余る筆力を持って、書き始めてくださいました。
 前作「翼の還る処」で、KCO世界に大きな広がりをもたらしていただき、そこに、この「空の史劇」加えて頂けるのは、原作者として極めて光栄なことです。ありがとうございます。


>「これで……大和の国も見納めですね」
 生まれ育った国を追われ、遥かな旅路へ。万感胸に迫る一言です。 

>ご挨拶が遅れました。わたくしの名は裏葉。生き神とも言うべき「翼人」の末裔、神奈備命さまにお仕えする侍従にございます。
 神奈さま一行の中でも最も冷静で、知識に長けた裏葉が語り部とは、実に的を射たキャスティングです。

>船長が船をつけたのは、わたくしたちが乗船した泊よりも、もっと大きな湊町です。
 ここは一体、現在のクラナド大陸のどのあたりなのかが気になります。
 推察するに、大陸西海岸、Tacticsの首都ファーバンティよりも南東に下ったどこかだとは思うのですが……。

>この地へ大和の国から人々が来るようになったのは、実は数百年前にまで遡る話なのだそうです。
 実際には、日本人の流入は縄文時代の頃からあったのですが、この時代では古代史の研究にも限界がありますので、数百年前とわかっているだけでも大したものでしょう。

>わたくしの身は神奈さまのために捧げております。並みの女としての幸せを求めるつもりはありません。ですが……少しくらいは、そうした夢を見ていたかったのです。
 うう、健気です……(泣)。傍目から見れば三角関係と言えるのに、あえてそうしないのが、裏葉さんらしいというか。
 でもこの時代なら、一夫多さ(殴)

 さて、新たなる逃避行をはじめた神奈さま一行。
 3ヵ月かかってようやく辿り着いた場所でも、また良からぬことが待ち受けていそうな気配ですが、彼らの運命やいかに。


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