あの夜、俺は名雪と一緒にベランダで星空を見ていた。朝、ニュースで「今夜、流星群が見られる」と聞いてさっそく二人で星空を見つめていたのだ。俺たちの住む地方都市は空気がきれいで、星空は夜空一面にきれいに輝いていた。その光景はまるでプラネタリウムでも見ているかのようだ。
「わあ、きれいな星空だよ」
 横にいた従姉妹の名雪が楽しそうに声をあげた。
「そうだな」
 俺もつられて声をあげた。確かにその夜の星空はとてもきれいだった。
「あっ、ニュースにあった流れ星だよ」
 名雪が天空を指差した。見ると、確かにいくつもの流れ星が空の一角から放射状に流れていた。
「名雪は何をお願いしたのかな?」
 俺は名雪に尋ねてみた。
「うにゅ、イチゴサンデーをお腹いっぱい食べたいな、って」
「あはははは、名雪らしいな」
「笑うなんてひどいよ〜、じゃあ祐一は何をお願いしたの?」
「俺か?俺は世界が平和になりますように、ってお願いしたんだぞ」
 俺は自慢げにそう話した。それを聞いた名雪は何か恥ずかしそうな顔をすると慌てて俺から目を離した。

 俺たち2人はしばらくこの夜空の天体ショーの流星雨にみとれていた。するとしばらくして名雪が突然声をあげた。
「うわっ、流れ星が突っ込んでくるよ」
 驚いて顔を上げると名雪の言うように巨大な流れ星が俺たちめがけて突っ込んできた。なんとそれはすごい巨大な白い火の玉のように見えた。あれはひょっとして白色彗星帝国か!?
「うわああああああ・・・・・・」

ガガーン!!!!

 すさまじい衝撃と閃光があたり一面に響き、俺たちはその場で気を失ってしまった。

 西暦200X年、地球に接近した小惑星「トーチタス」が祐一たちの住む地方都市めがけて飛来し、町のど真ん中に命中した。その結果、祐一たちの住む地方都市が小惑星の衝撃で丸ごと別の世界へと吹き飛ばされてしまった。


73万ヒット記念作品

あゆあゆマジカル・コンバット
注:タイトルに特に深い意味はありません


「朝〜、朝だよ〜、朝ご飯食べて、学校へ行くよ〜」
 どこからともなく名雪の気の抜けた音声の目覚し時計が聞こえてきた。どうやら俺の気絶しているあいだに朝になったらしい。なぜか俺はまだあのベランダにいた。どうやら俺はここで気絶したまま一晩ここで過ごしていたようだ。しかも横には一緒にいたはずの名雪がいない。どこに行ったのだろう?
「あれっ、ここはどこだ?」
 俺は目を開けて驚いた。ベランダから外を見ると、なんと俺たちのいる街がぽつんとどこか分からない殺風景な荒野の中にたたずんでいたのだ。本当に街の周りには本当に人っ子一人いないのだ。
(おいおい、俺が気絶してる間に町内が瞬間移動したのか?)
 ただただ圧倒させる俺。どうしたんだ、祐一、大丈夫か?
「ううっ、俺たち流星が突っ込んできて、気絶してどうなったんだ」
「あら、祐一さん、大丈夫ですか」
「あ、秋子さん?」
 俺は秋子さんがやって来たのに気付いた。そうだ、秋子さんなら何か知ってるかもしれない。さっそく秋子さんに質問してみよう。
「秋子さん、俺たち一体どうしたんですか?」
「それが祐一さん、大変なことになってしまったんですよ」
 秋子さんが説明を始めた。秋子さんによれば、秋子さんは昨日はここで倒れていた名雪を抱えてベッドに連れて行くので精一杯だったそうだ。それでここに名雪がいない理由が分かった。
 しかも秋子さんによると昨夜町内に命中した巨大小惑星のショックで、町内が丸ごと別の世界に時空転移してしまったらしい。時空転移した先はさしもの秋子さんでもどこだかさっぱりわからない異世界だそうだ。あまりの展開にただただ仰天する俺。「時空転移」だなんて、そんなSFみたいな話いきなり言われても全然心構えがないので正直困るが。

「そうですか。俺たち異世界に吹き飛ばされたんですか」
「そうなんです。ここがどこか分からないし、わたしも本当に困ってるんですよ」
 秋子さんも本当に困惑しているようだ。ここは俺が何とかしなくては、との使命感が沸いたが、どうやったらいいのか俺にもよく分からないというのが真相だ。
「あ、祐一君だ、こんにちは」
 すると外から、見慣れた声が聞こえてきた。ふと外を見ると、家の玄関の前にあゆが立っていた。あゆはいつもの定番の羽リュックとダッフルコートを着ていた。こんな時空転移にあってものんきなのはあゆらしい。
「おはよう、秋子さん、祐一」
 今度は、家の中の部屋から真琴が起きてきた。彼女とはこの冬いろいろ出来事があって、その結果今ではすっかりこの水瀬家の一員としてこの家に住み着いている。秋子さんも真琴のためにと一部屋真琴の部屋を作ってあげたくらいだ。その結果、昔みたいないたずらはほとんどやらなくなり、今ではすっかり俺や名雪とも顔なじみの関係だ。
「うにゅ、おはよう」
 ようやく、我が家の一人娘の名雪が起きてきた。こんな事態になっても余裕で寝坊する名雪は、さすがに我が家の眠り姫だけのことはある。このズ太い性格にはある意味感心してしまう。
「うわー、ズ太い性格なんてひどいよ祐一」
「しまったあ!ついいつもの口に出してしまうクセが。ごめんごめん」
 俺はあわてて訂正した。この心に思ったことを口に出してしまうというのは俺の悪いクセだ。このクセは何とかしなければ。
「おお、あゆに真琴に名雪、ちょうどいい時に来てくれたな。実は折り入って頼みがあるんだよ」
「「「頼み?」」」
 3人は俺に呼び止められてビックリした。

 数十分後、俺たち一行は秋子さんに見送られながら自分たちのいた街を離れて荒野の中を歩いていた。この時空転移した世界がどんな世界かを調査・探検するためだ。順番は俺を先頭に名雪・あゆ・真琴の順だ。俺が他の奴らをつれてきたのは正解だった、うん。一人じゃ心細いしね。
「で、祐一君の頼みってボクたちを連れて行くことだったの?」
 後ろからあゆがぶつくさ言ってきた。あゆのクセに生意気な・・・
「仕方ないだろ、俺一人じゃ心細いんだから」
(そう言うんならお前一人で行ってみろよ。そういうお前だって一人で行くのは怖いくせに)
 俺はそんなことを思いながら荒野を歩いていった。
「うん、わかったよ」
 そうか分かったか。よしよし。
「あうー、真琴も一緒だもん〜っ」
 後ろから真琴がそう言いながらついてきた。真琴も一人でいるのがいやなようだ。
(真琴って妖狐だろ?一人で十分じゃないか・・・)
 俺は一瞬そう思ったが、すぐにその考えを頭から引っ込めることにした。

 俺たちは殺風景な荒野を歩いていった。あたりには霧がかかり、何とも言えないさびしい雰囲気だった。中学校の時に修学旅行で行った日光の戦場ヶ原みたいだ。やっぱりみんなで来たのが正解だったよ。
「うーん、本当に何もないんだよ」
 後ろから名雪があたりの風景を見てそんなことを言っていた。気持ちはよく分かるぞ。本当に何もないな、ここどこなんだろう。俺もこの風景を見て心配になってきたし・・・・・・
「うぐぅ、祐一君、怖いよー」
 あゆがそんな事言いながら俺の手にしがみついてきた。いかにも怖がりなあゆらしい。前にホラー映画を見に行った時も怖がってたしな。

「あっ、前に古いお城のようなものが見えてきた」
 真琴がそんなことを言いながら前方を指差した。見ると確かに古い西洋式の古城が目の前に見えてきた。さっきまで霧がかかっていてよく見えなかったのが、霧が晴れてきたせいではっきり見えてきたのだ。
「あ、本当だ」
「西洋風のお城だよ。ここって西洋なのかな?」
 名雪がそんなことを言った。うむ、少なくともこの時空転移した先が日本じゃないことは確かだな。それだけは分かったぞ。
「外見だけじゃまだ分からないぞ、名雪。ひょっとしたらここは中世のファンタジーの世界かもしれないじゃないか」
 俺はそう答えた。はっきり言ってこの時空転移した先が剣と魔法の世界かもしれないじゃないか。もしそうだったそれはそれで面白そうだが。
「うん、そう言われるとそうだね」
「とにかく城まで行ってみようぜ。おそらく誰かいるだろうし」
「うんっ」
 俺はそう言うと、再び名雪たちをつれて歩き出した。名雪たちは後ろからとことこと歩いてきた。今度はあの城を目指せばいいんだから歩くのはずっと楽だ。はたしてこの城には誰がいるんだろう?俺にもさっぱり分からないぞ。

 しばらくして俺たちは城に行き当たった。城は一面城壁に覆われていてとても中へ入ることは出来そうになかった。しかも俺たちが歩いてきて来た側にはどうやら城門もないようだ。このままだと中には入れそうもない。どうしよう。
「うぐぅ、どうしよう、祐一君」
 あゆが不安そうな顔つきで俺にたずねて来た。とはいえ、俺にもいいアイデアが浮かんでは来なかった。
「とりあえず、誰かいるか呼んでみるか」
 俺はそう言うとみんなに一斉に誰かいるか大声を出してみようと提案した。うん、悪くはないアイデアだと思う。
「「「「せーの・・・おーい、誰かいませんか!!」」」」
 俺たちは声を張り上げて一斉に呼んだ。

「あれ、誰ですか?」
 その声を聞いたのか、俺たちの横から誰かが声をかけてきた。
「あ、人がいたんだ、よかったね」
 あゆがそれを聞いて安心したようだ。正直な話、俺も人がいると知ってほっと一安心した。これでこの世界がどこなのかも分かりそうだ。

 俺の横から3人の少年少女がやって来た。手前にいるのが3人のリーダーらしく、黒髪のお坊ちゃんに風の顔つきに眼鏡をかけた男の子だ。横にいるのがオレンジ色のウェーブがかかった髪の毛の女の子。どことなく香里に似ている。そしてさらに横に赤毛の背の高い男の子がいた。どことなく北川に似ている。もっとも赤毛で北川のトレードマークの髪の毛のとんがりは全然ないのだが。
 それにしても何かデジャブを感じるな。こいつらはどっかで見たことがあるような・・・
「やあ、こんにちは、俺の名前は相沢祐一だ」
 俺は先頭の眼鏡をかけた少年にあいさつをした。
「こちらこそよろしく。僕はハリーといいます」
 その名前を聞いて俺はビックリした。そうだ、こいつらは俺がこのあいだ読んだ・・・
「ハリーって、君はひょっとしてハリー・ポッターかな?」
 俺は恐る恐るその眼鏡をかけた少年に聞いてみた。俺の予想が間違っているといいんだが・・・
「そうだよ、よく僕の名前を知ってるね」
「そうだよって、本当にハリー・ポッターなのか?」
 俺は驚いて聞き直した。
「うん」
「じゃああそこにあの城はホグワーツ魔術魔法学校?」
「そうだよ」
 その少年、ハリーはそう答えた。
「名雪、あゆ、真琴、大変だぞ!俺たちハリポタの世界に迷い込んじまったみたいだ!」
 俺はただただビックリしてそう叫んだ。信じられない、これはまさに本で読んだ『ハリー・ポッター』の世界そのままではないか。どういうわけか知らないが俺たちはハリポタの世界に時空転移してしまったのだ。
 しかしあれはJ・K・ローリングさんが書いたフィクションの話だったはず、どうやって俺たちはそんな世界に・・・・・・これも小惑星の衝突エネルギーのせいだろうか?
「「「ええ〜っ!!」」」
 俺の話を聞いて名雪とあゆと真琴がビックリして声をあげた。いきなりこんな話を聞いて驚くのも無理はないが。

「じゃあ、時空転移した先はハリポタの世界だったの?」
 名雪が俺に質問してきた。
「そうみたいだな、俺も実物を見るのは初めてだけど」
「どうする祐一?」
「とりあえず、写真でも撮っとこうか」
 そう言うと俺はポケットからカメラ付き携帯を取り出した。そして笑っているハリーに画面を向けると、バシバシカメラで撮りまくった。実物が拝めるなんてこんな貴重なチャンスはめったにないからな。

カシャ、カシャ

「わーい、本物のハリー・ポッターなんだね。こんにちは、ボク月宮あゆといいます、よろしくねっ」
 あゆがそんなことを言いながらミトンの手袋をした手でハリーに握手を求めてきた。ハリーも笑顔で握手に応じた。
「あ、ああ、よろしく」
「ハリー君、よかったらボクの手帳にサインしてくれるかな?」
 あゆが背中にある羽リュックを下ろすと、そこから手帳を取り出した。あゆがそんなものを持ってるとは正直俺にも意外だった。
「いいよ、これだね」
 ハリーはそう言うとあゆの手帳にサインをした。
「わーい、ハリー君にサインもらったんだよっ」
 あゆは大喜びではしゃぎだした。現金な奴だ。

「えーと、オーマイハニーさんだっけ?」
 名雪が少女にたずねた。おいおい、「オー・マイ・ハニー」ってそんな名前の奴いないに決まってるだろ。相変わらずドジな奴だ。
「ハーマイオニーですけど・・・」
 少女がむっつりとした声で答えた。当たり前だ。
「す、すみません・・・ハーマイオニーさん、私と一緒に写真を撮って欲しいんだよ」
「いいわよ」
「うん、じゃあ祐一、デジカメでわたしたちを撮影してね」
 名雪はそう言うとカバンからデジカメを俺に渡した。そして2人でポーズを決めてデジカメの前で立っていた。
「いくぞ、はいチーズ」
 俺はそう言うと2人をカメラに収めてシャッターを切った。

カシャ、カシャ

「わーい」
 撮影を終わると、名雪が大喜びで俺の元に来てデジカメをとっていった。どうやら名雪はハーマイオニーと写真が取れてとってもうれしいようだった。名雪も現金な奴だ。

「こんにちは」
 真琴が赤毛の男の子にあいさつをしていた。確かこいつはロンという名前だったはずだ。俺の記憶ではロンは北川みたいに愛想のいいやつだったはずだ。
「こちらこそ、こんにちは」
「あたしの名前は沢渡真琴よ、真琴でいいから」
「僕の名前はロン、よろしく」
 ロンはそう言うと真琴と握手をした。
「ところで真琴さん、僕たち一体何語で会話してるんだろう?」
 ロン、そういう質問はKanonのSSではしないもんだぞ。どうせ俺たちの世界では日本語が世界共通語なんだから野暮なことは言いっこなしだ。
「そんなこと真琴は知らないわよ」
 真琴がそう言った。さすがの真琴でも答えられなかったか。

「ロン、その子から離れて」
 それを見ていたハーマイオニーが突然金切り声を上げた。どうしたんだ?
「その子って、真琴さんかい?」
「そうよ、この子は妖狐だわ、教科書で呼んだことがあるの、極東のアイヌの伝承で人間に悪さをする妖怪なのよ」
 何でこいつらは一発で真琴の正体が分かったんだ?俺はビックリした。そうだ、こいつは魔法使いだったんだ、だから分かるんだな、納得。
「真琴は悪さなんかしないわよ」
 真琴が頬をプーッと膨らませて反論した。
「本当だ、ルーピン先生が言ってた奴だ。この妖怪め」
「そうだ、この子をどけてくれないか」
 さっきまで真琴と仲良くしていたロンまで手の平をひっくり返したように怒り出した。
「なによ、真琴を馬鹿にして。真琴の実力を見せてあげるわよ」
「やめろ、真琴!ハリポタには手を出すな!」
 俺は必死になって叫んだ。真琴は妖狐だが確か魔法力ではハリーたちのほうが圧倒的に上のはず。そんな奴らと戦ったらこっちがやられるぞ。ここでハリポタと戦ったら、相沢祐一、人生最大の汚点だ。
「これが真琴のチロヌップ・ビッグ・バン・アタックよ!」
 真琴は俺の静止を振り切って、手の上に薄紫の炎を上げる狐火を発生させた。そして手を振るとそれを思いっきりロンにぶつけた。どうでもいいけどチロヌップってアイヌ語で「キタキツネ」のことだ。
「うわわ・・・熱いよー!!」
 真琴の放った狐火は見事にロンの真正面に命中した。ローブに狐火を受けたロンは必死になって体についた火をはらいのけようとした。
「あはははは、最高、最高」
 その様子を見ていた真琴が楽しそうに笑い始めた。はっきり言って怖い性格しているな、真琴・・・わざとじゃなくて純粋無垢でやってる分だけよけいに始末が悪い。
「よくもロンをやったな!エクスペリアームス、武器よ去れ!」
 それを見ていたハリーがやにわにポケットからステッキを出すと、いきなり真琴に向かって呪文を唱え始めた。
「あう〜!!」
 今度はハリーの魔法を食らった真琴が数メートル吹き飛ばされた。真琴は吹き飛ばされると地面をごろんごろん転がった。言わんこっちゃない。因果応報だ・・・

「名雪!」
 俺は名雪に声をかけた。こうなったら一刻も早く事態を止めるしかないからだ。
「どうしたの、祐一?」
「このままじゃ危険だ。街に戻って秋子さんを呼んで来るんだ!」
「分かったよ!」
 名雪はそう言うと急いで街へ向かって走り出した。名雪の足は結構速かった。さすが陸上部で鍛えてるだけのことはあると俺は感心した。

「よし、このまま妖狐を倒すんだ」
「あうー、助けて」
 一方、ハリーたちは真琴を追い詰めていた。1対3なのだから始めから真琴に勝ち目なんかなかった。だからさっき止めろって言ったのに、と俺は心の中で憤慨した。と、その時・・・
「ちょっと待ちなさい!」
「私の出番、助けにきた」
 いきなり声が聞こえた。俺が後ろを振り向くとそこには舞と佐祐理さんがいた。どうやら、この騒ぎを聞きつけて街から駆けつけてきたようだ。しかも舞は剣を抱えていた。これで形勢逆転だ。
「あははーっ、佐祐理たちが相手ですよーっ」
 佐祐理さんはそう言うとどこからともなくステッキを取り出した。佐祐理さんの持っていったステッキはピンク色で柄の先には星が付いている魔法少女がよく使うようなステッキだ。・・・って、何で佐祐理さんがそんなものを持っているんだ?
「祐一さん、今まで秘密にしていましたけど佐祐理は魔法の国からやって来た魔女っ娘なんですよ」
 佐祐理さんが笑いながら俺にそう言った。そして俺の前で呪文を唱えてステッキを振ると、一瞬にして佐祐理さんの衣装が変わった。ピンクのフリルついたスカートにリボンが胸元についた「まさに魔法少女」という感じの衣装だ。なんと佐祐理さんは魔法が使える魔法少女だったのだ。そうか、これも時空転移の影響なのか・・・って、勝手に自己納得してる俺って一体!?
「私も今日知った、驚いた」
 親友の舞も今日始めて知ったらしい。
「それじゃ佐祐理たちがあなたの相手をしますね」
「・・・これで3対3・・・互角になった」
 佐祐理さんはそう言うとステッキを構えた。舞も剣を鞘から抜き出した。そしてハリーたちに向かって剣を構えた。戦闘開始だ。
「よーし、みんな、シッポを立てろーっ!」
 真琴が叫んだ。
「シッポ?」
「あうー、真琴ったら、ついキツネだった時のクセが出たの〜!あはははは・・・」

「よし、ロンはそのまま妖狐を倒すんだ。ハーマイオニーはあの魔法少女を、僕が剣を持った少女を相手する」
「分かったわ」
 ハリーたちはそう言うと3手に分かれた。どうやら、ロンが真琴に、ハーマイオニーが佐祐理さんに、ハリーが舞に狙いを定めたようだ。おいおい、これからどうなるんだ!?この相沢祐一にもさっぱり展開が予測できないぞ。

「ねえ祐一君、ボクたちどうしたらいいの?」
 あゆが俺にたずねた。気持ちは分かる。俺だってKanonのヒロインがハリポタと激しい戦闘をやるなんて予想もしていなかったもんな。
「どうしたらって・・・とりあえずここで様子をうかがうんだ」
 俺はそう言うとあゆと一緒にひとまず荒野の茂みに隠れてこのバトルの行方を見守ることにした。ここにいればひとまずは安心だからな。

バキッ、ドガッ、ズガッ、バシッ!!

 その頃、荒野では真琴とロンが激しい攻防を繰り広げていた。口先だけ(?)で実力のないあゆと違い、真琴は妖狐だから能力がある。たちまち2人の周りではすさまじい魔力と火花が飛び散り、2人は一進一退のデッドヒートしたすさまじい肉弾戦を展開していた。2人のしのぎを削る死闘は、この俺までビシビシ伝わってきた。すごい攻防戦だ。
「あうー、妖力では真琴の方が上なのに〜!」
 真琴が叫んだ。妖力では完全に妖狐の真琴の方が上なのに、ロンにイーブンに戦わされていることから来る怒りだった。
「お前は妖力に頼りすぎなんだよ」
「何ですって!?」
 ロンの言葉に真琴が逆上した。
「そうさ、肉弾戦に持ち込めば僕でも互角に戦えるんだ!」
 ロンはそう叫ぶと、さらに真琴との激しい肉弾戦を展開していった。スゴい、スゴすぎる!この展開はまるで実写版ドラゴンボールでも見ているかのようだった。

ガガーン、ガガーン、ガガーン!!
ギューン、ギューン、ギューン!!
(谷恒生風に)

 一方、こっち側では佐祐理さんがハーマイオニーと戦っていた。二人は、長距離から互いに魔法を放ちながら交戦していた。確かハーマイオニーは優等生だったはずだし、佐祐理さんも勉強が出来る。そのせいかロンVS真琴のような単純な肉弾戦ではなく、互いに相手の打つ手を読み合うすさまじい頭脳戦を展開していた。これには俺も驚いた。
「これでも食らいなさい」
 ハーマイオニーが口の中で何か呪文を唱えた。そしてステッキを差し出すと、ステッキから炎が出てきた。炎はそのまま佐祐理さんに向かって直進していた。危ない、佐祐理さん。
「えいっ、マジカル・ウォーター!」
 佐祐理さんが呪文を唱えると、ステッキの先から水が勢いよく発射された。そして、ハーマイオニーの発射した炎と真正面からぶつかった。そして盛大に爆発した。

ババーン!!

 ぶつかった水と炎は互いに打ち消しあって消滅した。
「あなた、なかなかやるわね」
「あははーっ、そちらこそよくやりますねーっ」
 ハーマイオニーと佐祐理さんは笑みを浮かべると再び魔法勝負を続けた。

「はあっ!!」
 一方、こちらでは舞は剣を構えて大上段にハリーに向かって切りかかった。
「舞、気をつけろ、ハリーはお前みたいに剣が使えたはずだっ!」
 俺は叫んだ。確かハリーは舞と同じように剣を使ってバスリスクを倒したことがあったはずだ。俺が読んだ本の記憶だからたぶん間違いはないはずだ。
「その通りだよ」
 ハリーはそう言うとローブの中から古い三角帽子を取り出した。そしてその中に手を入れると、そこから剣を取り出して構えた。ハリーの取り出した剣はブレードが銀色で柄に赤い宝石が入っている西洋式の剣だ。俺の見た感じでは舞の持ってる剣と互角といったところか。
「えいっ!」
「えいっ!」
 舞とハリーは剣を構えると一斉に相手に向かって振り下ろした。

ガキーン、シャキーン

 荒野の真ん中で舞とハリーは互いに剣を振りかざしながら斬り合いを演じていた。互いのブレード同士が激しくぶつかり合い盛大に火花が飛び散りあう。両者の剣術はほぼ互角といったところだった。練度では舞のほうが上だが、魔力ではハリーのほうが上なので両者は互角だった。とにかく俺が今まで見てきた中で一番すごい勝負だ。
「なかなかやる」
「そっちこそ、すごいよ」
 舞とハリーはそう言うとさらに激しい斬り合いを続けた。
「それっ!」
「・・・・・・」

バッ!!

 ついにハリーが剣を振り上げると思いっきり舞いに向かって振り下ろした。大丈夫か、舞。あせった俺の前で寸前のところで一撃をバク転でかわす舞。すごいや。

 荒野のバトルは延々と数十分間も続いた。まさに天下分け目の超決戦だ。どっちも互角の戦いなので戦局がどうなるのかさっぱり分からない。
「祐一君、この戦いはいつになったら終わるの?」
 あゆが俺に聞いてきた。
「俺が知るか、そんなこと」
 と言い返した。俺にだって、この戦いがどうなるか分からなかったからだ。

「こらこら、真琴、佐祐理ちゃん、舞ちゃん、止めなさい!」
 その時、荒野に秋子さんの叫び声が聞こえてきた。俺がふと見ると、街から秋子さんと名雪が駆けつけてきたのが見えた。名雪に呼ばれて急いで走ってきたからだろう、秋子さんは大きく息をして肩を揺らせていた。
「祐一、お母さん連れてきたよ〜」
 名雪が俺に向かって叫んだ。よくやったぞ、名雪、秋子さんを連れてくればもう大丈夫だ。
「秋子さん?」
 ロンと肉弾戦をやっていた真琴が秋子さんの声を聞いて手を休めると、そちらへ振り返った。
「スキありっ!」
 それを見ていたロンがすかさず真琴に飛び蹴り食らわせた。俺の目の前で真琴が吹き飛ばされるのが見えた。それにしてもこいつ「魔法使い」とか言っておきながらやたらと肉弾戦系の技が強いんだ?戦うんなら魔法で戦えよ、魔法で。
「あう〜!!」
 ロンの奇襲攻撃を食らった真琴は数メートル吹き飛ばされて地面をごろごろ転がった。今日の真琴はこんな役ばっかりだ。
「ほらほら、みんな止めないとわたしも怒りますよ!」
 秋子さんが強い口調で怒鳴った。普段の秋子さんからは想像もつかないようなこわばった顔つきをしている。俺から見てもかなり怒っているのが伝わってきた。

 今度は秋子さんの反対側からなにやら人が出てきた。マントに身を包んでしわくちゃな顔でなにやら陰険そうな顔つきをしている。何だか悪役そうな顔つきだ、えーと、この人誰だったっけ?忘れるとは情けないな、祐一。
「こら、戦闘を止めたまえ」
「スネイプ先生?」
「ポッター、勝手に戦闘したことで50点減点だな、いいか」
 スネイプが勝ち誇ったような顔つきでハリーを見つめた。
「スネイプ先生、今回は相手から戦闘を仕掛けてきました。正当防衛です」
 ハーマイオニーが反論した。確かに正論だ。今回は真琴が戦闘を仕掛けてきたのが一連の事件の発端だ。俺もそれは認める。しかしお前らだって喜々として戦線を拡大していなかったか?
「ふーむ、それにしても限度がある。ミス・グレンジャー、これ以上やると停学処分だがいいかね?」
 スネイプは陰気そうな目つきでじろっとハーマイオニーを見るとそう言い放った。
「はい・・・」
「いいか、3人はそのまま学校に戻るように」
 スネイプはそう言うとそのまま3人を学校へ戻させたのだった。

「どうもすみませんな、うちの生徒が勝手に戦闘をしまして」
「いえいえ、こちらこそいけないんです。真琴たちにはあとでちゃんとしかっておきますから心配なさらなくて大丈夫です」
 秋子さんはそう言いながら懸命に頭を下げた。俺とあゆはその様子を後ろからただ見守っているだけだった。
「そうですか、それでは我輩は帰りますので」
 スネイプはそう言うとそのまま帰っていった。
「色々とご苦労様でした」
 秋子さんはそう言うと、ペコリとお辞儀をしたのだった。

 数日後―
 俺は秋子さんの家で夕食を取ろうとしていた。キッチンでは秋子さんが料理を作っていた。今日の夕食は秋子さんが腕によりをかけて作ったシチューだ。うれしいな。
「あ、祐一」
 名雪がやって来た。
「名雪か」
「真琴、いなくなっちゃったね」
 名雪が、真琴がいるはずの席を見てそう言った。
「今ごろはホグワーツで見世物にでもされてるんだろ」
「うん」
 俺はテーブルにおいてあった雑誌をとると、夕食が始めるまで読書を始めた。名雪はそんな俺を見ながら自分の席についた。

 あの日、俺たちの街が時空転移してから、俺たちは大騒ぎだった。真琴や舞や佐祐理さんが戦いに巻き込まれたこともあった。しかしその混乱も数日のうちにおさまった。
 時空転移後に迷い込んだ世界の住人は、俺たちが小惑星の衝突で時空転移したことを理解してくれた。ホグワーツの連中も時空転移した世界から魔法を使える人間がやってきたことを知ると、さっそく転校の紹介状を送ってきた。しかもわざわざフクロウ便にして、手紙を真琴や舞や佐祐理さんの元に送りつけてきたのだ。それを自宅で見た佐祐理さんは
「あははーっ、佐祐理、大感激ですーっ」
 と言うと大喜びではしゃいでいたそうだ。
 というわけで、真琴たちは今ホグワーツにいる。ただし真琴だけはルーピン先生の「闇の魔術に対する防衛術」の授業で妖怪の見本として見世物にされているそうだ。
「さあ、これが妖狐です。女の子の姿をしていますね。でも妖怪なんですよ」
「あうー」
 ま、真琴の頭じゃとても授業についていけないしな。

「あ、祐一君だ」
 そう言うとあゆが玄関からドタドタとこの部屋に入ってきた。あゆの説明では帰りがけに時間があったので水瀬家に寄ってきたらしい。
「あゆ、なんだかうれしそうだな」
「うん、今日帰りがけにハリー君に出会って、一緒にプリクラを撮ってもらったんだよっ」
 あゆはそう言うと俺の目の前にプリクラを撮って見せた。見るとあゆがハリーと一緒に写っていた。こんなことで大喜びしてるなんてまるで子供みたいだな。
「うぐぅ、ボク子供じゃないもん」
「あ、やべえ、また思ってることを口に出すクセがっ!?」
 俺はそう言うとあゆに平謝りをした。

 そんなこんなもあって、俺はとりあえず毎日を楽しくおくっている。時空転移のせいで両親とは離れ離れになってしまったけど、あゆたちは楽しそうだし、俺も新しい友達が増えたことだし、これもこれでいいんじゃないかなと最近では思ったりもする。時空転移した先も面白そうな世界だし。最近では半ばあきらめてるが、また時空転移があって元の世界に戻れるといいな・・・・・・

 おわる


あとがき

 一発もののKanonのSSです。単発ネタですので、連載の「あゆちゃんの冒険」とは何の関係もありません。ナルスフさんのSSが面白そうだったので自分でも挑戦してみました。作品は主人公(祐一)の一人称視点で描かれていますが、特に深い意味はありません。
 タイトルの「あゆあゆマジカル・コンバット」は『トンデモ本の世界』で紹介されたことで有名な門田泰明氏のトンデモ小説『黒豹スペース・コンバット』のパロディです。とはいっても『黒豹スペース・コンバット』とは一切ストーリーの関係はありません(笑)
 ちなみに作中に登場したトータチスは実在の小惑星です。実際に地球に接近しますが、命中する危険性はないそうです。
 作者が言うのも何ですが、はっきり言ってバカSSです。ストーリーも考えずにライブ感覚で書きまくった代物です。あくまでも一発ネタですので、肩の力を抜いて楽しく笑っていただければ何よりです。
 そういえばストーリーで栞や北川や美汐が登場しませんでしたね。しかもタイトルとは違ってあゆは一度も魔法で戦ってないし、うーん。


管理人のコメント
モーグリさんからKanonとハリポタのクロスオーバー作品をいただきました。管理人はハリポタは良く知らないのですが、なかなかアクションシーン満載の作品に仕上がっています。


>小惑星「トーチタス」が祐一たちの住む地方都市めがけて飛来し

これがちょうど1999年前後に再接近すると言う事で、地球衝突を期待した不届きな人たちも多かったようです(笑)。


>「おお、あゆに真琴に名雪、ちょうどいい時に来てくれたな。実は折り入って頼みがあるんだよ」
>「で、祐一君の頼みってボクたちを連れて行くことだったの?」


いつもの「あゆちゃんの冒険」と比べて、祐一君がレベルダウンしてますね(笑)。


>「ハリーって、君はひょっとしてハリー・ポッターかな?」
>「そうだよ、よく僕の名前を知ってるね」


ハリーたちは映画と一緒の顔なんでしょうか?


>しかしあれはJ・K・ローリングさんが書いたフィクションの話だったはず

人によって、自分は別世界で本当にあったことを書いているだけだ、という事もあるそうですが、さて。


>「本当だ、ルーピン先生が言ってた奴だ。この妖怪め」

最初に気づけ! だからお前はヘタレと言われるのだ!>ロン


>「よーし、みんな、シッポを立てろーっ!」

ガンバ?


>荒野のバトルは延々と数十分間も続いた。まさに天下分け目の超決戦だ。

まぁ、きっかけは単なる誤解なんですが。


>一緒にプリクラを撮ってもらったんだよっ

ハリーたちも日本文化に馴染んでいる様子…


 しかし、異世界に飛ばされると言うイベントは、戻れるなら一度経験してみたいイベントの一つではありますね。

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