ＡＩＲ〜夏の終わり〜
第一話 「黄色いパンダナの少女」
作者: 暇の人
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夏の夜はやはり熱い。
俺は今、誰もいない、町の郊外を歩いている。
二日前、俺はこの町に来た。
ちょっと人形芸をして路銀を稼ぐつもりだった。
普通の人形芸と違って、俺の人形芸は線や糸のような仕掛けを使わずに、生まれてからずっともってい る特別の "力"で、人形を自由に動かせる。その芸では人々に受け入れられるはずだった。しかし、理由はわからないが、俺の人形芸を見てくれる人は一人もいなかった........正直言って、この調子だと、一生この町から出られないかもしれない。
「……よし」
もう一度、人形芸をしてみる。俺の人形芸は面白いかつまらないか、この目で確認してやる。
人形を口袋から取り出し、力を両手で集中して、人形に念を込んだ。
ぴょこり
人形は起きて、歩きはじめた。数十分の間、人形は動き続いた、俺の意のままに。
うむ、間違いない、面白い芸だ。
「ぴこっ！！」
「！？」
突然、背後に奇妙な音が響った。後ろを振り返ると……
「……毛玉？」
「ぴこっぴこっ！！」
「…………」
もう深夜だから、化け物や物の怪が出て来ても無理はないが、こいつはどう見てもそのようなものじゃない。
「なんの用だ？」
「ぴこっぴこっ！！」
言葉が通じないらしい。
やつは俺をしばらく見てから、"ぴこ"と言う足音を立てながら、人形を口でくわえて、俺の前に立ち止まった。
人形を渡してくれるのかと思った瞬間、毛玉は俺の人形をくわえたまま……
「お、おいこら！」
逃げやがった。
状況はわからないが、とにかくあの毛玉の後を追わなければいけない。こうやって、一人と一匹の鬼ごっこは始まった。
「ハア…… ハア……野郎！」
途中、さすがに疲れすぎて追いつけなくなった時、あの毛玉は前方で俺を待っているように立ち止まった。俺がやつを追い続けたら、やつも逃げた。
どうやら毛玉は本気で俺の人形を盗むつもりはない。逆に俺をどこかに導いていると思う。俺になにをしたいかは知らない。だが、大切な人形がやつの手(口)にある以上、後に続くしかない。
ついに、鬼ごっこの終点についた。 山道の上にある、人気のない神社だ。
「ハア、ハア…… 毛玉は、どこだ！？」
俺は石段を登って、毛玉の姿を捜す。
夜の神社は、とても静かで、風は気持ちいい。
月光のおかげて、周りははっきり見える。
そして、やっと毛玉を見つけた。
やつは、一人の少女のそばに座っている……
「う？」
青い短い髪、ちょっと子供っぽいが、可愛らしい顔。
袖のない、真っ白い上着を着ている。
右手首に巻いた黄色いパンダナはとても目立つ。
無表情なまま、夜空を見上げている。
しかし、何かおかしな気がする。
今は11時くらいだろう、どう考えても女の子一人でこんな所に来るべき時間ではない。
「な、お前……」
異様な空気に耐えられず、俺が少女に近付いて、声をかけてみたその時……
「……たとえば……ほしのかず」
「……え？」
「……おばな……かる……や……」
「……はぎ……き……」
少女は俺を無視して、意味不明な言葉を口から漏らしてきた。神社に来る前は楽しそうに奇声をあげていた毛玉は今、本物の人形みたいに静かに少女を注視している。
まさに怪談のようだ……
あの毛玉より、この少女の方が物の怪みたいだ。
不思議な事に、俺は恐怖もなにも感じない。
「……」
気がついたら、少女はこちらを見ている。
その時、
ドゴ！！
「くう！？」
突然、息が苦しくなって、得体の知れない激痛が電流のように全身に走った。
ドゴ！！ ドゴ！！
「ギイ！ ガアア！！」
「ぴ、ぴこっ！ ぴこっ！」
毛玉は俺を心配しているのか、いつの間にか俺の隣にいて、奇声をあげ続けている。しかし、今の俺はやつに構う余裕はない。
全身の激痛は絶えることなく続いている…… そのあと、俺の意識はそこで途絶した。
「う……」
目が覚めたら、全身の痛みはなくなっていた。 しかし、周りに見ると、全てが変わっていた。
「ここは……どこだ.... ！ 声が！？」
少女も、毛玉も、そして神社も、どこかへ消えてしまった。 今の俺は、見たことない金色の海に立っている。
もともと低い、聞き慣れた俺の声は、男ではありえない程高くなっている。
それだけではない。 首筋までの白い髪は、 銀色になって、長さは一気に太ももまで伸びていた。
胸の筋肉は男があるはずはない、柔らかいな二つの膨らみに変わっていた。
手と足も胸に負けないほどやわらかくなり、その上細くなってしまった。 ただ、右手首には、おかしな黒いあざがある。
ずっと着ていた男の服は、昔の村でよく着られていたような着物になった。
声も身体も、まるで女の子になっているように、いや、もう完全に女の子になってしまっているのがわかる……
「いったい、どうしたんだよ……」
いきなりすぎて、何があったかまったく理解できない。
「……」
「……?」
気が付くと、俺の隣に、女の人がいる。
神社にいた少女じゃない。外見は三十歳くらいだろう、銀色の長髪と、俺と同じ着物を着ていた。
彼女はとても悲しい目で、俺を見ている。
「えっと、 誰だお前？」
さっきまで自分の異変のせいで混乱状態になってしまったのに、何故かいまは俺自身より、目の前にいる女の人の方が気になる。
「…………」
質問に答えてくれるのか、女の人は口をゆっくり開く、だが、声はあまりにも細すぎて、話の内容は全然聞こえない。
なんだか彼女の哀しい顔を見ていると、気が落ち着かない。俺は彼女に近寄って、話相手でもしてやろうとするつもりで、彼女の肩に触った。その瞬間、強烈な波動が彼女から爆発した。俺はその波動に巻き込まれてしまった。そして、視界は段々暗くなって、意識がまた途絶した。
あとがき:
どうも、暇の人です。
前にこのSSを掲示板で書きましたが、いまはメールで投稿します。
まだまだ未熟ですが、必ず頑張ります。
見ての通り、AIRのTSものです。
出てくるキャラクターは少ないから、中篇SSになると思います
第二話は作成途中です、たぶん、一週か二週で出来るはずでしょう。
よろしく……
管理人のコメント
暇の人さんから「ＡＩＲ」の二次創作を戴きました。さすがに、最近アニメが公開されて、再び注目度が高まっている作品と言えます。
＞うむ、間違いない、面白い芸だ。
常に現実を見せ付けられながらも、決して屈しない往人君の精神力は見上げたものです(笑)。
＞「……毛玉？」
ポテト登場。佳乃とセットになっていないところを見ると、原作と違い、この時点で往人はヒロインたちとは出会っていないようです。
＞ついに、鬼ごっこの終点についた。 山道の上にある、人気のない神社だ。
これも、この時点では来る事の無い場所です。
＞青い短い髪、ちょっと子供っぽいが、可愛らしい顔。
佳乃登場。神社でのイベントが早く発生していますね。
＞今の俺は、見たことない金色の海に立っている。
＞声も身体も、まるで女の子になっているように、いや、もう完全に女の子になってしまっているのがわかる……
＞気が付くと、俺の隣に、女の人がいる。
最初は往人が白穂に憑依(？)したと思ったのですが、彼女が別にいるところを見ると、どうやら違うようです。
原作よりも早い佳乃シナリオの進展、そして女の子になってしまった往人。謎が深まる展開で、先が楽しみです。
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